73 幕間2
いつもと視点が違います。
明日もお昼更新です。
エルフの森から街道まで1日、馬車に乗ってから3日かけてシシリア達は街へ帰ってきた。
打ち上げは行きつけの海産物の店。見かけによらず大食漢なウィリスをはじめ、『火炎の蕾』の女子3人のエンゲル係数は高い。
そこに男子二人が加わった物だから、かなりの量がテーブルに乗った。
貝と白身魚が入ったアクアパッツァやボロネーゼパスタ、ガーリックバゲットやプレッツェルなど、色々なメニューをシェルしながら食べていく。
ここはメニューが多く安いので、そんな3人でも満足出来る店だった。
腹が膨れると少々談笑し、三日後にギルドで集合することにして解散した。
セネカとアイクと別れ、パティとウィリスとも帰ろうかと言う所で、シシリアはそれを断って教会へ行く事にして一人道を歩いていた。
そろそろ上司へ報告せねばならぬ頃だ。
教会の扉を開け通路をしずしずと歩き、シシリアは神像の足元へ来ると、手を組みこうべを垂れて深くうつ向く。一見真摯に祈っているように見えるが、実際の所は上司への報告である。
上司たる神の一人と、神像を通してやり取りをしているので、祈っているのと大差無いのかも知れないが。
(いらっしゃいますか、上司?)
((あら、シシリアちゃん、元気~? 何か面白い事でも有った?))
(いえ、報告は義務ですよね? 楽しいとか有ります?)
この上司は、いざとなれば頼りになるのだが、如何せん、普段がちゃらんぽらんだ。おそらく、今もネイルでもしながら通信をしているのだろう。
たまに「じりじり」や「ふーっ」と言った音が聞こえる。
((義務と言うか、聞いとけばいいって感じ?))
軽い物言いに、シシリアはふぅーっと息を吐く。
修羅場に塗れた職場に居ても、上司はお洒落を忘れない。これでしごできなのだから誰も文句は言えないのだ。
そこで、森の出来事や以前の件も併せて報告する。
((ふぅん、堕天したコねぇ。最近人間界で騒いでいるコがいるってことは、他の部署でも報告があるんだけど。そのコの事かもね))
他の部署から報告が来る程なら、自分が把握出来ていない件も有りそうだ。
(どう対処したら良いですか?)
((今の所、特には。こちらから手を出すと、あちらからケチを付けられる口実をつけられちゃうからね))
上司の言葉に、シシリアは頷く。
((それより!))
その言葉にシシリアの眉がピクリと動く。
((ね、どうだった? 恋の花が咲いたりしなかったの??))
例の溺れた時の、人工呼吸の件だ。淡々と報告していたのだが、この聞き上手な上司に全部白状させられたのだ。本当に言う気は、決して、無かったのだ。
(しません!)
((あらあら~。咲いても良いのよ?))
(咲きません!)
((命を救ってくれたのに……。んもぉ、そんなに固くならなくて良いのよ。現地人とでなければ楽しんできなさい))
(上司こそ、この状況を結構楽しんでないっスか)
((うふふ~、仕事と家の往復しかしていないから退屈なのよね))
一瞬無音になる。シシリアが首を傾げると、上司が真面目な声で続ける。
((セネカくんは、回復が得意だから離れないで。彼の真骨頂は、槍じゃ無くて聖魔法よ。コレ、隣の部署情報ね))
(はい、そうですね?)
確かに、色々な局面で、槍よりも魔法を誓っている場合も有る。
((わかってないなぁ、彼の近くに居れば私の可愛い部下は安全だって事! とっさの判断を間違えても、全て彼がカバーしてくれるわ))
(そんな丸投げしちゃっていいんですかね)
((大丈夫。彼はそういう性分だから))
ふふ、と神像越しに上司の声が漏れる。
((まあ、とにかく気を付けてね。地上も何が有るか分かった物じゃないから))
(はい、分かってます)
((それじゃあ切るわね~))
ぷつりと通信が途切れる。
祈る姿勢から姿勢を戻すと、教会内の人が自分に注目しているのが分かった。
パティの言葉を思い出す。
『リアちゃんもセネカさんと同じくらいレアきゃら扱いだよん、目立つ容姿ってのも問題だねえ』
自分は何かのカードではないので、止めて欲しい。それならば長居は禁物だ。
シシリアはしなやかな足で踵を返し、外に出る。
『咲いても良いのよ?』
上司の言葉が脳内でエコーする。
(咲かない! 咲くわけないでしょ!! 救命救急措置で!!)
教会の外に出て人知れず地団太を踏む彼女を見ているのは、もうすぐ地平線に隠れる夕日だけであった。
実はこの話一回消えてしまったんですよね……セーブ方法間違えてて、元データが消えてしまって、しばらく唖然としました。
自分可哀想すぎるので、星とかブクマで慰めていただけると立ち直れます。
マジ、ありえなす……おーんおんおん。




