69 エルフの森の依頼
もう一話更新。
これ以降こそお昼固定更新になります!
当日は快晴で、冒険日和である。少なくとも、雨の日には出かけたくないのは万人共通だと思う。
例よって例の如く、馬車に先に乗り、女子3人を乗せるのを手伝う。今日は貸し切り状態で、森の近くまで乗せてもらえる事になった。尻が痛くなる頃には森の近くへ着くと言う寸法である。
「アイクは尻が痛くなったりしないのか?」
オレの問いに対して、アイクはあっけらかんとして答える。
「今までの馬車で、慣れてますからね」
なるほど、尻の強さもレベル34という事か。強いな。
馬車はガタガタとオレ達を乗せ、森の間際で降ろしてもらった。
地図の近くまで来たところで、安全確認の為にオレが少し先を歩く事にした。
森の木々は、オレ達を拒むように立ちふさがっている。
手をかざしてみる。ーーー特に反応は無い。
一歩、足を踏み込む。
途端に、ぐにゃりと視界が溶けた。
「!?」
後ろを振り返ると、誰も居ない。迷わされたか。
どうやって戻ったものかと思っていると、近くの茂みがガサガサと揺れた。
殺気は無い。
「あれ? センパイ?」
しげみから、シシリアの金髪のツインテがひょっこりと飛び出て来た。
「分断されたみたいですね、しばらくこのまま歩いてみますか?」
方位磁石はぐるぐると回っていて使い物にならない。あの地図は「ここまでなら行ける」という曖昧な境界線を現したものだったらしい。
「そうだな。木に印を付けながら歩こう。ぐるぐる周りをしていたら意味は無いが、有る事を願おう」
時計を見るに一時間程歩いた所だろうか、今の所は同じ場所を歩かされているという事は無いので、そのまま印を付けながら歩く。
突然木々がザワザワと揺れたと思うと、突如、ひょっこりと金の牡鹿が現れる。
その牡鹿と共に、薄いグリーンの衣を着た人物が出て来た。
「エルフ……」
森の賢者、森の人とも呼ばれている。人の世に降りてきているエルフもいるし、見た事も有るが、このエルフとは存在感からして違った。
「如何にも、我はエルフだ。天上の民よ、何用でこの森に来たのか」
噂通りに、他種族には塩対応だ。しかし、一目で天上の民だと分かるのはすごいな。
「姿を見せてもらえるって事は、何かしらの条件に当てはまったって事なんだろ? 実は、こいつの弓が欲しいんだ。迷宮の宝物殿から出る以上の物をな」
「………………………………」
エルフは長い沈黙の後に口を開く。
「…………ついて来い」
踵を返すと、元来た道であろう方向へ、ずんずん進んでいく。
足元の悪い中さっさと進めるのは森へ慣れてるのか……と思いきや、足元を見ると木や草がスッと横に避けている。流石は森の人だと言えよう。
……その後に、わざとでは無いが、オレ達が踏んでしまうから意味は無いんだけど。
「もう、森を抜けるぞ」
エルフがそう言うと、開けた場所に出た。遮る物も無くなったので、天から陽が柔らかに降り注いできているのが見える。森の外とは匂いも違うし、清涼な気分になるな。
森を通り抜けたオレ達は、遠巻きにジロジロ見られるが、こればかりは仕方無いだろう。
自分達しか居ない場所にオレ達という異物が入ってきたわけだからな。
オレの前を歩いていたエルフは、振り返って告げる。
「ここが長老の家だ。この村で何かを得ようとするなら、まずは村長に話を通すのが筋だ」
ごもっとも。
エルフは一軒の家のドアを指し示す。
こんこんこん
ノックをして、中に声を掛けた。
「村長様、外の世界からの人間が来ました。話を聞いてやって下さい」
しばし間が有り、中から髪の長い女性が現れた。髪の色はオレと同じプラチナで、瞳は森を連想させるエメラルド。髪から長い耳が覗いており、これぞエルフの代表という雰囲気を醸し出していた。
いや、村長だから代表なのは当たり前か。
「あなた方か、森の結界を通り抜けてきたのは。用向きは弓の調達だと聞いたぞ」
「分かっているなら話は早い。頼めるだろうか?」
「流石に何の対価も無しと言う訳にはいかないな」
想定内だ。しかし何を言われるかが問題だな。出来ない事は、言われても困る。
「最近、このエルフの森を脅かす者がいる。そやつは大いなる森の化身の姿を影で照らして影響を与えておる。我らの武器では太刀打ち出来ないのだ。あなた方の仲間には鉄を扱う物がいるだろう?」
「オレも扱ってるんだが……それよりも、仲間を頼りにすると言う割に、里へは入れないと言うのはムシの良い話じゃないか?」
「確かにそうだな……では招待しよう」
村長が自分の目の前でくるりと円を描くと、魔法陣が展開される」
その途端、宙から三人が現れた。
「わっ」
「あっ」
「きゃ」
ぐしゃっと三人それぞれが、地面人投げ出される。乱暴だなあ。
「この娘に弓を授ける代わりに、あなた方に依頼が有ります。そこに最近大いなる森の化身を汚染している件を解決して下さい。主様が弱ってきているのですが、影に効く武器が扱えず、私達には手出しが出来ないのが現状です。このままでは弓に使う材料も取れずに、願いを聞こうにも出来る状態では有りません。是非とも解決をお願いいたします」
そうして、先ほど言った条件を、オレ達を見据えて復唱してきた。




