68 帰れないかも知れない遠足
本日、64~69話を更新しております。
明日は12時固定に戻ります。
翌朝起きて、朝食を済ませてからギルドに行くと、入り口の横でアイクが待っていた。
「中のラウンジで待ってて良かったんだぜ?」
「いや、いまだに妬みの目で見てくる人が居るんで」
そういう事か。シシリアのパーティー『火炎の蕾』は、未だに女パーティーとして名高い。そこへ入ったオレ達を、妬んでいる者もまだいるのだ。
「センパイとアイクさん、早いですね!」
少々遅れて三人がやってくる。
「早くギルドに入りましょう、昨日の依頼料貰わないとですよね」
「依頼料を沢山貰えるといいのですが……」
「依頼料は決まってますからねぇ」
そうして、わちゃわちゃ言いながらカウンターに依頼完了の申告をしに行く。そう言えば、カウンターに来るのは久しぶりな気がする。
「皆さま、お帰りなさいませ。依頼完了したのですね。こちらが依頼料になります!」
受付嬢はニコニコしながら金貨の袋をカウンターに置く。
「ところで、みなさまレベルはいくつになられました?」
「僕は34ですね」
「私達は33ですね……」
「オレも33だ」
オレ達の返事に受付嬢は頷く。
「これだけの実績とレベルなら、Dランクで良さそうですね」
「やっっった!」
パティは嬉しさのあまりぴょんぴょんと飛び跳ねる。Dランクと言えば、中堅に一歩踏み入れたと言っても良いだろう。
オレにしてみれば、冒険者生活は半年ほどか。半年でDランクって順調なんだろうか。
アイクに聞いてみると、順調すぎる程、順調らしい。
確かに、先にパーティーを組んでるシシリア達と大差無くなっているので、それもそうか。オレ個人としては一人でレベル上げは出来るので、目くらましにパーティー組んでる感が有る。
しかし、パーティーを組んでみると、それはそれで良い物だ。
なにせ、一人で冒険をしていると、喋る相手がいない。ソロの冒険者も居るには居るが、そういうのは一人が平気なヤツだな。今となっては、オレもソロだと暇である。
「しかし、次はシシリアの弓を新調したいよな」
オレが、皆で囲んでいるラウンジのテーブルを指でトントンとしていると、シシリアが眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。
「弓ってダンジョンで出にくいんですよね……ダンジョン産の武器を持っている弓術士も少ないです」
「そうなんだ……」
それを聞いて、ウィリスもしゅんとした顔をする。
「あ、それなら、エルフの森の弓の職人とかどうですか?」
アイクが閃いたとばかりに一指し指を立てる。
「そんな所行けるのか?普通エルフって人間嫌いだろ。村に入れてくれるとは思えんが」
「僕とパティさんは戦士ですから入れないですね。彼らは鉄の臭いを嫌いますから」
「オレも槍を持ってるが?」
アイクは一瞬目を瞬かせるが、すぐに横へ目を泳がせる。
「クレリックだから大丈夫かも……?」
曖昧過ぎる。
「最悪、シシリアだけ着けばいいだろう」
「センパイ、いい加減過ぎません?」
しかし、今回依頼をこなしたので、少しだけ余裕が有る。個人的な財産もあるし、寄り道しても良いのではないだろうか。
「次に依頼受けるにしても連続はきついし、息抜き気分で行ってみる事にするか」
ギルドで地図を広げて位置を確認する。
「西の森ですね、やっぱりだけど、森のど真ん中……」
ウィリスが地図を見ながら言う。
「自分で言っておいて何ですが、迷いの魔法とか、かかってたりしないんでしょうかね。よく童話や小説とかで有るようなものが」
アイクは小説とか読むのか、少し意外だぞ。
だが、考えてみたら、確かに「肉体こそ全て!」とか言うタイプでは無いな。
「でも、そんな物が有ったら地図に書けなくないですか?」
パティがテーブルに片方の肘をつきながら、もう片方の指で地図をつつく。
「うーん、キャンプ気分で、着けたらラッキーという事で行くか?」
異議無しという事で、二日後に森の近くを通る馬車に乗る事にした。
馬車の通る街道からは徒歩2日、上手くいけば往復で1週間くらいであろうか。
でも、見積もり通りにしか準備をしないのは命を安売りしている冒険者なので、もちろん多めに食料などを持って行く。
シシリア達と別れる前にコソリと耳打ちする。
「そう言えば、真影の剣って荷物持ちとか出来ないの?」
オレが言うと、剣は怒ったようにカタカタと鳴った。
(『拙は! 竿では! 無い!!!』)
こう……魚の量り売りをしているような情景が浮かんでしまったのだが、真影の剣にとっては侮辱だったらしい。ごめんて。
その後、剣の機嫌を適当にとって各々戻る事にした。
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