67 見えない魔法とチキンカツ
本日、64&65&66を更新しております。
次は出来ましたら20時に。
明日以降は昼更新固定です。
暗い中を延々と1時間程歩くと、岸壁の下に出た。
「これで外には出れたけど、あいつらとどうやって連絡を取ったもんかな」
「今回はどうやって連絡取りましょうかね。って言うか、センパイってはぐれのプロじゃないっスか?」
「オレのせいじゃないと思うがなぁ……」
しゃがんでぼんやりしていると、遠くから声がしてくる。
「おーい! セネカさーん!」
んー……デジャヴ?
『見つけだぞ! おーい! おーい!』
あれ、見間違いかな?
ごしごしと目をこするが、見間違えではない。
「あの声って、この間言ってたセンパイが見つけた剣ですか? 聞いた事無い声です」
声をした方を見ると、剣が先導してふよふよと浮きながら進んでいる。
おい! 喋れる事をばらしたんかい!
全員が合流した所で真影の剣が、ぷんぷんと怒っていた。
『困るではないか。この人間は音を拾えなくて、拙が声を出すしか無かった』
それを言われると、痛い所だ。
「もう驚きましたよ、二人は水に落ちるし! 剣は喋るし! どうしようかと思いました!」
パティが身振り手振りで怒りを表し、雷を落とす。
しかし、あれは不可抗力である。
「ま、まあ二人共無事だったんだし……ね、パティちゃん?」
ウィリスの取り成しに、パティが拳を収める。
「それより、この剣の事、教えてもらえませんか?急に叫んで飛んで行ってしまいましたけど、ただごとではないですよね」
アイクがビクビクと身を引きながら見る。真影の剣をパティに渡して良かった。アイクに渡してたら、怖がって使えなかったかもな。それにしても、まさか女性しか使用出来ないとは言わないよな?
『お前、失礼な事を考えて無いか?』
「考えているかもな」
『そこは嘘でもそんな事は無いと言う所では無いのか……』
「オレは正直なタイプなんだ」
オレは崖であった事を皆に話す。
「う……喋る剣ですか。確かにパティさん向きですね。僕だと気になって仕方ないですし」
「ちょっと!どういう意味ですか!」
アイクの思わぬ弱点だ。
とにかくさっきの洞窟の入り口に、この『鎮魂歌の珠』をセットすれば依頼クリアだな。
よし、さくっと帰るぞ。
歩いている内に夜となり、ギルドには明日報告に行く事にして、解散する事にした。
海に飛び込んだだけあって、頭から靴まで磯臭い。
「うえー、ベタベタする……」
宿屋に入る前に取り敢えず上着を絞り、荷物を部屋に置くと、水を汲んで来ようとしたが、流石に水浴びがしたい。ファイアーで温度調節をし、井戸の横で数回かぶる。はー、やっぱりお湯を浴びるとスッキリ感が違うな。
クレリックで通しているので、魔法使いの呪文を使っているのは見られるとまずい。明るい内は出来ない裏技である。最初からこれやれば良かった……。
服は時間がかかるのでここでやらずに部屋へ持ち込む。クリーン魔法と風魔法の合わせ技で服をふわりと乾燥させた。その辺の洗濯屋にも負けない洗いあがりである。
「よし」
服を整えると、食堂に降りた。今日はがっつりと肉が食いたい気分だ。
「おかみさーん、今日はチキンカツで!」
「はいよー」
炭酸水を飲みながら、しばし待つ。酒場の中は活気があり、皆の顔も明るい。
そう言えば、オレ達ってパーティーで同じ宿屋を使って無いよな。まあ、それぞれの宿屋の良さが有るし、無理に変える事も無いか。
オレがそう思い直していると、ようやく頼んだ料理が運ばれてきた。
「お待たせ、チキンカツだよ!」
ナイフなど使わずに、フォークでぐさりと指すのが冒険者風だ。
そもそも食べやすいように切ってあるが。
外はさくさく、中はジュワッだ。この宿屋特製だと言うソースもカツによく合っている。付け合わせのキャベツも進むという物だ。
美味しさもあってさっさと食べ終えてしまったので、お金を置いて自分の部屋に戻る。
明日はギルドで依頼達成の報告をして、教会にもいかないとな。
剣の事とセイレーンの事を上司に報告せねば。
あの人、どこかオレの報告を面白がってるフシが有るんだよな。ちょっとやそっとのことじゃ怒られないのは良い所だが。
その日は海水に使って疲れた事も有り、気絶するように眠りに入った。




