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65/87

65 洞窟のセイレーン

この一話前に更新しております。

お昼にも更新予定です。

「これで状態異常の対策は良し、と。滑車を降りるぞ、降りたら動かずにその場に留まってくれ」


「はい」

 

 それぞれの返事に満足して頷くと、オレが一番に降りる。ロープの具合を確かめるためだ。今回は大丈夫だとは思うが念の為である。海特有のごつごつとした崖を降りて行き、下に着いたので合図をする。


 順番に、パティ、シシリア、ウィリス、アイクと降りる。広い道では無いが、何とか波で水に濡れずに済むようだ。湿気っぽいのは仕方ないな。


「『ライト』」


 岩を波で穿(うがた)れ、ごつごつして危うい足元を、注意しながら進んでいく。

 中に進むにしたがって、歌声はハッキリ、そして大きく響いて来る。


 30分程進むと、広い天井の行き詰まりの場所に出る。中心には海水が入り込み円になっている。真ん中の岩が高く突出しており、そこに三匹のセイレーンが腰を下ろしていた。神話の時代には鳥の翼を持ち、顔は人間であるという話も合ったのだが、実際は人魚に近い姿の様だ。


 しかし、噂に聞く人魚の姿とは違い、肌は青く、瞳孔は縦に裂けて、口からは牙が覗いている。指に至っては爪が長く刃物の様であった。


 尾には毒が有るらしい。


 魅了を含んでいた歌を止めたセイレーンは、オレ達に気付くと、超音波のような声を出し、こちらを足止めしようとしてきた。


 キョワーーーーーーーー!!


 音は耳に響き、脳を揺さぶる。状態異常にはならないが、これは少し辛い。

 足を止めたのを好機と見たのか、爪を振り上げてきたが、歌が効いているわけでも魅了されているわけでは無いので、後ろに下がるに留まる。


 攻撃が当たらなくてイライラとしたのか、ギリィと歯ぎしりをして、爪を振り上げる。


 その攻撃をパティが剣で受け止める。


「パティ、下がれ。シシリア、ウィリス、右のやつを狙え!! 出来る事なら、喉を先にやれ!」


「はい!」


「分かりました!」


 一回パティ達を下がらせて、後衛の二人に号令を出す。


「『永続』!」


 シシリアの矢が連射されて、一つ残らず当たっていったが、致命傷には至らずに、歯がみをして悔しがっていた。


 ウィリスはと言えば、杖を高く掲げて、雷を溜めている。


「サンダーボルト!」


 水辺に居る三匹には、海面を伝って稲妻が走り、残らず当たっていた。


 グゲッッ


 先ほどまで美しい歌を発していたとは思えない程に濁った声を出すと、背から海に落ちていく。


 その隙を狙ってアイクは高く跳躍し、中心の山へ降り立った。そして右へ体を捻ったかと思うと、剣を逆手に取って、一匹の喉をかき切った。


 切られたセイレーンは喉から血が迸り、海に広がっていく。藻掻いているが岸辺に辿り着き、そこでパティが斜めに切った。


 これで後二匹。


 仲間がやられた事でいきり立ったのか、細かった瞳孔が更に細くなった。今度は歌とは思えない音で脳を揺さぶる。


アァァァァァァッ!!



 状態異常には、かからなかったものの、最大音量で平衡感覚が若干おかしくなってしまった。

 オレは足を踏ん張ると、叫び声をあげている一匹の喉を突き刺す。

 

 これでこいつも声を出せない。


 高台から、再び矢と魔法が降り注いでオレが突いたヤツを攻撃していく。矢と雷が雨と降り、逃げ場を失わせる。そこからアイクが足場を蹴って、中心に降り立った後に壁に戻りつつ大振りで縦に切った。


 セイレーンは縦に分断され、叫び声も出せずにその体を水に横たえる事となった。


 残り一匹。


 すると、突然最後の一匹が海の中に潜った。

 姿を見失った事で、オレを含む全員が体を固くする。


 どこまで潜ったのか、しばらく間があると、突然水面からセイレーンが水面から飛び上がって、後ろに居るウィリスに向かって、刃物のような爪を伸ばした。


「ウィリス!!」


 シシリアがウィリスを突き飛ばして位置が変わると、攻撃の標的は自然と変わる事になってしまう。


「うっ……!」


 シシリアの腕から鮮血が散った。即座に駆け寄って怪我を見てみると、かなり深く切っていた。


「『ヒール』!」


 血が止まり、逆再生をするかのように傷が治って行く。

 ホッとしたのもつかの間、ユーターンしてきて、大きく飛び上がったセイレーンの尾がシシリアに襲い掛かってくるが、一緒にいるオレをも巻き込もうと言う魂胆だ。


「シシリア、離れろ!」


 シシリアに声を掛けるが、シシリアの目は敵に釘付けになっている。


「チッ」


 オレはシシリアを腕に庇って、水しぶきを上げて水中へ入ってしまう。


 すぐに水から上がるつもりだったのだが、水流が思いのほか強く、どんどん深く沈んでいった。


 ガボッ


 口の端から少し空気が漏れて、歯を食いしばる。

 幸いな事に腕の中のシシリアは大人しくしているので、暗い急流に流されていった。

連載も再開という事で、★やらブクマを入れて下さると嬉しいです。

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