63 なんでも鑑定
ちょっと次の週初めまで休みます
週が明けたら少々多めに更新します
「それにしても、洞窟から出て、回り道したとしても早かったな?」
「洞窟の出口から出るのに、距離は有ったんですけど一本道だったんで、助かりましたよ。とにかく、セネカさんもご飯食べていないでしょうし、お昼ご飯作りますね」
アイクがマップを差し出しながら言う。
お、お母さんだ!
アイクは携帯鍋でお湯を沸かすと、花茶を淹れた。冒険先で、なんという優雅なお茶だ。
そうしてもう一回お湯を沸かし直すと、乾燥したパン粉と牛乳と乾燥コーンを出す。パン粥だろうか。
それだけで心が潤う。食はやはり人間を豊かにするのだ。
オレが荷物を詰め直していると、シシリアがクイクイと袖を引く。
「何ですか、あの剣」
「剣? 真影の剣の事か? 素早さ、力、魔力アップするぞ。前回はアイクに剣を渡したから、今回はパティに渡せばいいだろ」
「そうじゃなくて」
そうじゃなくて?
「あの剣、普通じゃないですよね、センパイの『サーチ』で見抜けなくても『ブレスド・アイズ』なら看破出来るでしょう? 銘有りと言っても、何かが有るとシシリアセンサーにびりびり来てるッスよ」
避雷針かな?
皆に聞こえない距離なので、口調が戻っている。
「あいつ、喋るんだよ。こっちが地上の民じゃないって見破ったぞ」
「ひぇっ」
「どうやら600年以上前に打たれたらしいな。言葉を信じるなら、歴戦の猛者に使われていたらしいぞ」
シシリアはパティと剣をジロジロと見る。
「まあ。パティが強くなるのは良い事ですけどー。剣が喋る事は内緒なんですか?」
「今の所はな」
そこまで言った所で、アイクから声がかかる。
「パン粥出来ましたよー」
「何か有ったら、その時はその時で」
「暢気ッスねぇ」
「ある程度は適当じゃ無きゃ、やってられないだろ」
後ろから「そですけどー」と聞こえるが、オレ達はともかく、4人の安全マージンさえ取れば良いのである。これはうちのパーティーの強みだな。
…………苦手なタイプの魔物が有ったりするけど。
アイクの所へ戻ると、パン粥が配給される。胃袋を掴むと言うのはこう言う所だろうか。マメだからこそ前のパーティーでは雑な扱いをされたんだろうが、オレ達は胃袋の救世主を逃さないぜ!
ほどほどのレベルになってきた事も有って、アイクの剣技も中々と言ってもいい。パティはまだ甘い所が有るが、経験を積むうちに良くなっていくだろう。冒険者をやっている限りは、毎日が経験の糧になっていくからな。
洞窟の前から入った時には馬車乗り場まで2日までだったのだが、断崖絶壁へ回り道をした事で、もう一日かかることになってしまった。
3日の間、三食の内、一食はアイクにおかずを作ってもらえると言う、豪華な旅だ。
もう絶対、他所のパーティーには渡さないぜ!
途中でボアやウルフなどが出るが、もはや固まり肉にしか見えなかった。素材など全部を持っていけないのが残念だが仕方るまい。
タンパク質を摂取しながら馬車の通り道まで3日かけて戻ってゆく。
真影の剣が女子チームに迷惑をかけない事を願うが、こればっかりはオレにはどうしようもない。
そっちはシシリア任せだ。
馬車の街道に座る事半日、ようやく馬車便が来た。ずっと歩いているのも疲れるし、ようやく楽が出来ると言う訳だ。女子側は相変わらず尻に小さなクッションを敷いているが。
これで歩かなくて済む。あとは真影の剣を鑑定させる場所だが……オレに心辺りが有る。
面白い事が好きで好奇心が抑えきれない、天界人のソルベと言う名の者が降りている筈だ。
場所の調べは、付いている。
おれが看破できない事は無いと踏んだうえで話を合わせてくれるだろう。
その為に、前もって口裏をあわせておかないと。
疲れてはいるけど、まずは、そちらに行かないといけないな。
オレは疲れているを叱咤し、街中へ歩を進める。
途中で食べ歩き出来るチキンを買うのを忘れない。街の外では油ものは出来ないので、冒険者には揚げ物は贅沢品なのだ。
唐揚げを食べ終わる頃、噂に聞いている鑑定屋のドアの前まで来る。ごみをポケットに仕舞うと、店のドアを開けた。
「いらっしゃー……おや、君は」
はちみつ色の癖っ毛と、鮮やかなブルーの瞳が人懐っこく見える。
「地上の民じゃないだろう?」
流石に同郷は分かるか。
「多分、近々『真影の剣』と言うのが持ち込まれる。古い時代の喋る剣なんだが、持ち主にそれっぽく誤魔化してくれないか」
「おやおや。嘘の鑑定結果を出すなんて、鑑定士の名折れだね」
「オレは、今は地上の民と旅をしているんだ。まだレベルが高くないから、上レベルの冒険者連中に目を付けられたくない」
「なるほどね……それなら、うん、不服だけど承ったよ」
「悪いな、頼む」
そう言い残すとドアから出て、オレのやるべきことは終わった。
これだけ働いたのだから、休んでも良いだろう。数日は食堂メニューを食べる事にして、ヨレヨレしながら宿屋に帰ったのであった。




