62 600年の沈黙
明日も昼です。
あと一日でシルバーワーク終わっちゃいますね……。
陽が昇ると、いつもより早く目が覚めた。
流石に何も遮る物も無い陽の光は、決まっている起床時間を早くさせた。
伸びをしながら、ふと横を見ると、木苺や木の実などが大きい葉っぱいっぱい置いてある。
真影の剣は沈黙しているが、コイツが取って来てくれたのだろう。
絵面を見ると結構ギャグでは有るが、一応、無理を言った上だが、やってくれた事には変わらないので有難い。小腹を満たす為にそれらをモグモグ食べる。剣はまだ寝ている(?)ようだ。剣が睡眠をとる必要があるかどうかは甚だ疑問だが、沈黙しているので、そう思う事にした。
しばらく木の実をもぐもぐしていると、真影の剣が起きた(?)
「ぬ、先に起きておったか。昨日お前が言っていた通り、木の実などを見つけておいたぞ」
「有難うな、助かったわ」
『お主、礼を言えるやつだったのか……』
「へし折るぞ」
剣が心持ち、三歩くらい後ろへ下がった。
特にやる事も無いので尻ポケットに入れていた布で、剣を磨いてみる。
『おお、結構良い具合だな。流石に600年手入れされてないと、クるものがあるぞ……』
こいつ、相当暇してたんだな。やけによくしゃべる。
みんなに普通の剣として紹介して、落ち着いてから喋るのを暴露するつもりだったのだが、守れるだろうか。ただただ心配である。
「600年、雨風に晒されただけあって、汚いわ。布が真っ黒」
『きたっ……!?』
オレが言った通り、年月による汚れはいかんともしがたい。
それでも、それでも刀身は曇っていないので、流石と言えるだろう。
「ところで、使う人間ってレベル27だけど平気か?後々レベルに差が出ると置いて行く事になるそ?」
『そこは安心するがいい。拙は使い手と共に成長していくからな』
ほー。
かなり優秀な武器だな。
それからは、剣の自分語りが始まった。あの戦争はどうの、こういう主人に仕えただの。
テストでその辺は勉強したとはいえ、そんな物は既に頭から抜け落ちかけている。
オレが「ふわぁ」と欠伸をしたら、話を聞けと怒られた。
「でも、なんだかんだ言って洞窟の奥に置いて行かれたんだろう?」
『拙が強すぎたのだ、無駄な強さは、ただの暴力だからな。最後の使い手が殺された後に、洞窟に社を作られて奉納されていた』
「んで、土砂崩れに会ったと」
『その通りだ』
何らかの地下の変動で、社ごと崩れたのだろう。しかし、崖の下に引っ掛かっていたのはかなり間抜けだが。アレ、ほんとう~~~っに、見つけられなかったからね。いや、オレ達としてもロープも本当ならもっと太かった方が滑落しなくて済んだのだが、男性1人女性3人では引っ張る力も弱かったし、縄の耐久力も弱かった。まあ、仕方あるまいよ。
そんな状況でも剣をゲット出来たのは僥倖だろう。
うるさいのを除けば、威力は高そうだ。
そんな話を適当にしていたら、遠くから声がする。
「セネカさーん! 居ますかー!?」
「センパーイ!」
アイクとシシリアである。
「ここに居るぞー」
腰を上げてそちらへ駆けて行けば、シシリアが手の中の剣を見る。
「あの状況で、よく手に持ってられましたね」
「も、もう、ダメかと思いました……!」
「当たり所が悪くなければ、クレリックだから自分で治せるよ。気にすんな」
服が破れているのを見ると、オロオロとしているが、怪我は最初からしていないので、後ろめたい気がするが、そういう設定なのだから仕方ない。
「パティ、とにかく手に入れたから、持ってみてくれ」
「はい……わぁ、何か、すごく手に馴染みます! 今までの剣と全然違う感じ!」
軽くブンブンと素振りを振って確かめている。銘入りではあるから、それなりに使える筈だ。剣が自我を持っているので、使用者と一緒に息を合わせて馴染んでいくっていうことなんだろう。
「いやー、セネカさんのマップが無かったら洞窟から出られませんでしたよ。道がすごく複雑で……あ、荷物持って来ました」
「おお、やっと武器が戻ってきた」
「センパイはシールド張ってれば、ちょっとやそっとじゃやられないから大丈夫だって言ったんですけど、皆焦っちゃって……」
シシリアは形だけでも焦ってくれ。
「だ、だって、崖から落ちたんだよ、武器も荷物も持ってないし! ……怪我は無さそうで良かったです」
「途中で木がクッションになったからな。怪我も治せる程度のものだったし」
「それでも、街に戻ったら着替えた方が良いですねー。一人だけビリビリですよ」
ビリビリって。
ともかく、服の修復は回復魔法の範疇外だ。
まずは見かけを何とかしよう。




