61 転落すると分かる事も有る
さて、運が良いのはマッピングした物を置いてきた事。運が悪いのは、オレが食料を持っていない事。
一人一人にカンテラを持たせておいて良かった。カンテラでは4人集まっても光量は落ちるが、無いよりはマシだろう。食事をしたのは然程時間は経っていないのだが、サーチで野イチゴなどをブチブチとむしって食べる。
腰には小さなナイフが有るので、川さえ有れば魚などを取れば凌げるだろう。
ーーーーー有るか分からんけど。
とにかく食料を確保してから、落ちた場所に戻らねばいけない。皆が探し辛いからね。取り敢えずは木の実はサーチで確保する。残念だが川は無かった。
獣などを狩ても良いのだが、火の跡が有ると皆に怪しまれる。木の実だけか、寂しい。黄昏ながらポケットをごそごそ漁ると、食べかけの保存食が出て来た。これで一晩は備えられるな。
結界を適当に張っておけば敵が自滅してくれるので、自分は寝ているだけの簡単なお仕事だ。やれやれ。
上着を丸めて枕にすると、落ちた時にも離さなかった剣を見る。
「こいつの為に落ちたんかぁ。何か損した気分だな」
そうすると、剣がカタカタカタカタと震えてきた。更に、ゆらりと柄を上にして赤く光り始めた。
『おい人間、随分と手荒に扱ってくれたな! この真影剣を扱えぬ程の……程の?』
「何だ?」
『お前、普通の人間では無いな?』
「剣に、そんな事が分かるのか」
『お前が地上の民でないでない事くらいは、匂いで分かるな』
それは、物理的な物か感覚的な物かによって、オレの中での扱いが全く変わるぞ。
『これは良いな、地上の民じゃないものに使われた事は無い。お前になら使われても良いぞ』
『良いぞ』だと? オレは槍しか使わない設定なのだ。剣は学生時代にやっていたが、もうギルドにも槍だと登録しているし、パティとアイクの手前、どう言えば良いのだ。
「お前は他の仲間に渡す。オレは槍使いだからな」
そう言うと、剣は飛び跳ねているので、どうやら怒っているようだ。
表情が無いので動作でしか感情が分からない。
「オレはパーティーを組んでるから、その戦士に渡す。お前、とりあえずは他のメンバーの前で喋るなよ。様子を見ながら出ないと、街での様子も分らん」
『ぬ、ぬう、拙は600年振りに他人と話すのに、喋るのもいけないのか』
うっ、そう言われると、良心が咎めるじゃないか。
だが断る。
「まあ、どっちみち助けが来るまでは時間が有るから、暇だな」
崖の下で適当にくつろぎつつ、真影の剣と駄弁る。
「どうしてあんな中途半端な位置に居たんだ? 誰にも見つけられないだろ」
『それが、土砂崩れでな。元々はお前らが居た位置に居たのだ』
土砂崩れに巻き込まれたとか銘付きの剣か……物悲しい。
「格好悪すぎるな」
『失礼であるぞ』
…………………………。
あっ。
「お前、浮けるのに、どうしてあんな場所に居たんだ?」
『ばかめ、地面に刺さっていたし、飛ぶ高さも限度が有るのだ。察っしろ。好きで、あのような場所に居たのではないわ』
「間抜けとしか、言う他無いな」
『ぐぬっ』
これだけで完封できるとは、この真影の剣とやらは大したことは無いのかもな。少し哀れっぽい目でそいつを見ると、何となく、しゅんとしている気がする。
「ま、使う相手が出来る事は良い事じゃん? 少なくとも暇じゃなくなるぞ」
「それより先に、助けが来るかが問題では無いか?」
「だよなあ」
そんな風に駄弁っていると、辺りはすっかり暗くなった。
「それじゃあ、オレ寝るから」
「おい、拙は退屈なのだぞ? もっと喋べるべきだろう」
「いやいやいや、さっきも既に寝る態勢だったし、自立できるなら、その辺を少し見ておいてくれ」
「何故そんなことを拙が」
「オレが寝るから?」
「おい、本当に寝るのか!?」
「おやすみー」
先ほどまで寝る準備をしていたので、会話を切り上げ後は寝るだけである。枕を丸め直し、ごろりと横になる。空は今日も奇麗である。星空を見て夜の冷たい空気を吸いこむと、速攻眠りに入った。
明日は探しに来てくれるかな。




