6 初めての薬草採取体験
あと一話更新します
次の朝。
ギルドに行ってみて、依頼ボードの前に立つ。
ボードはランク別と種類別に分けており、とても見やすい。
ちなみに登録したオレのランクはルーキーのFランク。モンスターを倒してレベルを上げてもギルドでランクの申請をしなければ、ランクアップはしない。今日は薬草採取をしながら片手間でスライムでも狩ろう。下積みの帰還は、とにかく地味な仕事やるしかない。
「採取、採取……これだな」
オレはボードから依頼書をひっぺがす。それを持って窓口に持って行くと、愛想の良い受付嬢が出迎えてくれる。
「これ受けるよ」
依頼書をカウンターに置いて確認してもらう。依頼を受けて成功したか失敗したかはギルドも有る程度把握したいので、受付をしてから仕事をするのだ。
「はい、トトト草の採取……採取依頼は初めてですよね、一応ギルドに有る図鑑を見てから行くのをお勧めしますよ。お気を付けて行ってくださいね」
「ああ」
受付を終え、形ばかり図鑑を開く。本当はサーチで名前まで分かってしまうのだが、ポーズは大事だ。
一応ざっと眺めてから、本棚に戻す。
「じゃあ、行ってくる」
「はい、いってらっしゃいませ!」
ギルドの入り口から出て、昼ご飯を買ってから城門をくぐる。昨日の親父は非番なようで、今日は別のおっさんが出入り口の管理をしている。街を出る俺とは逆に、相変わらず入る人は列になっていた。門番の親父と昨日話した事には、商売の流通の関係で人の出入りは多いそうだ。
これ、昼間に帰って来るとしたら入り口で待たされるな。戻る時は混んでる時間を外そう。
かくして森を分け入って暫くすると、小川が見えてくる。川と言っても浅瀬で、脹脛にも届かない。ここの水辺に今日の採取以来の草は生えている。
「サーチ……っと、見えてきた見えてきた」
川の縁にちょろちょろと控えめに茂っている。依頼書に有ったトトト草と言うのは、傷薬の材料だ。神殿で治してもらうのはそれなりの金額がいるので、庶民はもっぱらこれを混ぜた傷薬を使うそうだ。
傷と言って思い出すのは生まれて3年目の頃。階段で転んでしまったが、まだその頃は魔法も使えずに泣いていたら、家の中に居た父と母が慌てて出てきて治してくれたものである。懐かしい。
もう何年実家に帰ってないんだろう。このバカンス終わったら、少し顔でも見せに行くか。
それはそれとして、当たり前だが傷と言うのは痛い物だ。せめてもと、品質の良い物を摘んでいく。その時に、軽く背中に『ぽいん』という音にふさわしい衝撃が走った。
後ろを振り向いていると、額にちっこい角を付けたイタチのようなヤツが威嚇してきていた。大きさはオレの膝程か。サーチを使うと、名前は「ツノタチ」まんまだな。LVは5。オレを見て襲ってきたらしいが、シールドを張っておいたので、これにぶつかったと言う訳だ。
ツノタチは、猫のように「やんのかステップ」を踏み、まだまだ闘争心が有るようだったが、オレは今は採取している。一つの事に集中したいのだ。
オレは一つ考えて、魔法を張り直す。
「リフレクション」
これは自分を守るシールドと違って、攻撃をされた分が相手に跳ね返る魔法である。オートで攻撃をしているような物なので、採取が終わった時にまだ生きていたら倒させてもらおう。今のカード上のLVはオレの方が下だが、それは紙の上だけの話だ。
やる気になったら瞬殺なのだが、今日のオレは沢山採取をして、ギルドでドヤりたいのである。
なので、討伐は後日にしたい。
オレはツノタチをシカトして、採取に励んだ。一生懸命採取していたら、気付けば昼だ。
どうやらツノタチは諦めてどこかへいったらしい。
オレは出来るだけ奇麗な川辺の石に座ると、今朝買ったサンドイッチを出した。
そして、口を開けながら正面をみたら
ーーーー居た。
イノシシが。
「サーチ」
レッドボア。臭みが無く、肉質がジューシー。レベル5。
「うーーーーーーーーん」
オレは考える。倒してしまったらLvは上がってしまうだろう。しかし、食べると美味いと出ている点でオレの中の心の天秤がぐらぐらと揺れる。あれってギルドに頼むか肉屋に行けば、良いお肉が食べられるのでは……?
オレの中では、既に肉料理の塊にしか見えなかった。
心の天秤は、あっさりと肉の方に傾いた。




