56 屋敷の精霊
再び屋敷が、ゴゴゴゴゴゴ揺れる。
二階の美術室に合ったと思われる剣が飛んできて、オレを目掛けて飛んでくる。それでも、全てが弾かれ、床に落ちた。仲間にもシールドをかけているので、抜かりはない。壁にかけられていた絵画は、全て揺れに堪えきれずに落下した。
三階からは壺や皿が飛んできた。
今は踊り場に居るので、二階と三階の物で挟み撃ちをされた感じだ。ガチャガチャと何個もの陶器が飛んできて、悉く破片へと姿を変えていく。
四方八方からの攻撃は、流石に他の4人は反撃したり攻撃したり出来ない。ここはオレしか対応出来ない。
そもそも相手は精霊なのだから、事象に攻撃するのは困難だ。
シャンデリアも落ちてきて、ガラスの破片をまき散らす。
「きゃあっ!」
「うわっ!」
後ろで、他のメンバーの悲鳴が聞こえた。
館全体が震えてるかのように、風が荒れ狂う。
……………!………!!!!
もはや、館の精霊は、言葉さえ発することが出来ない程に怒っている。
恐らく、認められないのだ。
待っても待っても帰って来ない館の主人、土足で入って来る親族。
その全てが。
「分かっているだろう、認めろ。主人はもう、帰って来ない」
オレがそう諭ても、部屋の中の黒い影はぐるぐると苛立たし気に渦巻いているだけだ。今の攻撃でオレを傷つけるのが無理だと分かって手をこまねいているのだ。
「今なら、オレが送ってやれるぞ」
ピタっと空気が止まる。
「オレ達が帰っても違う人間が来るだけだ」
……シュジン ト オナジトコロ ニ イケル?
「残念だが、それは無理だな。精霊は、人間の輪廻の輪に乗れない。そのかわり、他の家に渡る事が出来るかもしれない」
「そんな事が、出来るんですか?」
ウィリスがパティと手を取りあって立ち上がってる。
「そもそも悪霊や人間の霊と違うから、教会の人間が来ても祓えない。だから、教会に頼んでも冒険者に頼んでも的外れで、呪いらしき事も止まないんだ」
…………………………。
どうやら精霊は集まって、ごにょごにょ相談してるらしい。集合体の意思は、個々でハッキリしているようだ。もっと境界が曖昧かと思ったのだが。
ワカッタ オクッテ ホシイ
「よしきた、任せろ」
オレは、スタッフ代わりに、杖を掲げもつ。
光はどんどんと強くなり収束する。
『リベルティ』解放
星さえも巻き込んで光が集まると、今度は淡い光となりホロホロと瞬きながら虚空へ消えた。
「……消えたんですか?」
パティが光が散った辺りを見つめて言う。
「昇華したって言う方が適切かな。またどこかで発生するかもしれないし、そのまま何処かの家に行くかもしれない。ああいうのは、本来は人間が好きな物なんだ。気に入った主人には力を貸すが、そうでなければ出て行くか、または行かせる為に危害を加える」
「それじゃあ、精霊さんも寂しかったんですかね」
「どうだろうな」
正直、人間以外に魂を昇らせた事が無いので、上手く出来ているか、自信が無い。
それでも、何百年待っても来ない人を待ち続けると言うのも不毛だ。
「それぞれが納得して昇って行った筈だが」
「これで親族の人も死ななくなるでしょうし、きちんと管理できる人が主人になれると良いですね」
アイクの言葉に、全員が頷いた。
一息ついた所で、シシリアがため息交じりで言う。
「それにしても、この惨状どうしましょうね」
シシリアの声に辺りを見回せば、オレ達の周りには武器庫から飛んできた剣がぶちまけられ、美術品などは粉々になっていた。
「もう呪いとかは無いだろうけど、これの弁償とか言われたらどうしようか……」
オレ達の呟きは、屋敷の天井へと消えて行った。
この状況のまま鍵を返しに行くのは気が引ける。
とりあえず、武器は武器庫、壊れた美術品は集めて行き、落ちた額縁は持てる範囲の大きさの物はかけ直した。地味にこの作業が辛かった。
下手をしたら、戦いの方が楽だった感も有る。
片づけをしていたら、窓から光が入って来て、外から陽が入ってきた。
「天気も正常に戻ったんだな」
窓から外を見ると、雲が中心から無くなって輪になっており、虹がかかって神秘的な雰囲気を作っていた。
館の中の瓦礫の山を見て、我に返る。
鍵を返しに行くのが、本当に気が重い……。




