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54 新しい依頼

試験的に朝投稿です。次回は昼に。

 それから二、三日は市場を見たり波止場に行ってぼーっとしたり、本を読んだりして過ごした。

 

 最近は冒険漬けだったので、体を休める事も肝要である。

 走ってばっかりいると、非常事態に動けないと、と自分に言い聞かせる。


 やっぱり休むのが下手になっているな。どうしても手持無沙汰になってしまう。


 そうして3日経つと、約束した集合の日になった。アイクは欠伸をしており、寝不足のようだ。しっかり者のアイクにしてみれば珍しいと聞いてみると、知り合いと会って、酒が進んだらしい。


 まあ、仕事に差し支えさえ無ければ文句は言わんけど。


 ギルドに入ると依頼ボードをよく見る。


 ちなみに、只今のレベルはアイクが24、その他四人が22だ。後衛職はともかく、前衛であるパティの2レベル差はいかんともしがたいので、どこかでテコ入れせんとな。


「ん-、ハルピュイ退治、セイレーン駆除……ちょっと高レベルですね。あ、こんなのどうです?」


 シシリアが依頼ボードの一点を指差す。


「屋敷の遺品整理? これは冒険者向きじゃなくないか?」


 眉を寄せてシシリアを見ると、シシリアは首をフルフルと振る。


「あ、出(・)る(・)らしいですね……」


「エっ、出るってまさか!?」


 ウィリスの呟きに、パティが驚いた猫のようになっている。


「こういうのって教会に頼むものじゃないんですか?」


 アイクも首を傾げる。


「単純に、教会に頼むと高い。あと、そういうのには護衛を付けなきゃいけないから、普通は派遣しない。教会関係者は貴重だから、本来は外部に出したがらないからな」


「え、じゃあ、セネカさんは……」


 ウィリスが水色の髪を肩に滑らせ、首を捻る。


「センパイは、センパイですもんねぇ」


「大人には色々事情が有るんだ」


 オレが言うと、三人が(察し)という顔をする。オレは教会にも入れるし、破門された訳でも無いんだが。




 依頼を受ける手続きを済ませると、屋敷の管理をしているという人の住所へ行く。


 ドアのブザーを押すと、中から白髪の老人が出て来た。


「この依頼を受けて下さる方が居るとは……とにかく中へどうぞ、詳しくお話します」


 オレ達は応接間へ招かれて、ソファを勧められる。ほどなくして使用人がお茶を持ってきてテーブルにそっと置くと、下がって行った。


「どこから話したもんですかね……」


 男は白い顎髭をこすりながら考えを巡らせているようだった。


「ああ、自己紹介がまだでしたね、私はオーガンと言います。元は屋敷の管理をしていた執事長でした」


 オーガン氏の話によると、元々は屋敷の主に仕えていたのだが、ある日、馬車の事故で主が突然帰らぬ人になったらしい。ここまではまあ、よく有ると言えばよく有る話だ。


 しかし、屋敷の権利をめぐって一族で争いをしていく内に、不審な死を遂げる者が一人や二人ではなかった。そうして時間が経って屋敷に人の出入りが無くなると、幽霊が出始めて、今度こそ誰も手を出さなくなった。幽霊なんか居る訳が無いと屋敷に意気揚々と入って行った者も、精神を患って帰って来たそうである。


 こうして持ち主が宙ぶらりんになってしまったので、冒険者に何とかしてもらおうと思ったわけだ。


「今回はクレリックの方がいらっしゃったようなので、期待しています」


 期待しているという割にはオーガンの声には覇気がない。多分、今までどんな冒険者が来ても解決しなかったので、実際はあまり期待していないのだろう。


「お茶を飲み終わりましたら、屋敷へご案内します。お茶請けもお出ししますので、屋敷に備えて、しばしゆっくり召し上がってください」


 妙な緊張感の中、お茶を飲み菓子を食べる。霊相手なら得意分野なのだが、足が沢山有る動物が住み着いていたら、オレは一抜けするぞ。


 オレが決意をしていると、全員がお茶を飲み終わり、オーガンに連れられて、ぞろぞろと問題の屋敷に行く。屋敷に近づけば近づくほど暗くなってくる。


 まだ時間は昼なのだが。


「ここは、いつでもそうなのです。それだけで冒険者も倦厭(けんえん)されてしてしまって……」


 門を潜り、古いドアを開ける。人の出入りが無いと言うだけあって、埃っぽいし、黴臭い。仮にもう一度人が住むとなったら、カーテンと絨毯はそう取り換えだろう。


「私はこの辺で失礼いたします。何か有りましたら鍵を返してください」


 オーガンは深くお辞儀をすると、去って行った。


「幽霊、ね」


ふと思いついてパティを見ると、平然としていた。


「パティはアンデット系苦手じゃなかったっけ?」


「あー、あれは骨とか肉が中途半端に付いているのが嫌なんですよ。幽霊は肉とかついてませんし」


 やだなぁ、 と半笑いをしている。


 気が抜けているが、アンデッドが出ないとは限らないんだがなぁ。

 もう少し気合を入れて欲しい。

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