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53/86

53 迷走

 大した戦闘でも無かったが、ほどほどに疲れたので、ご飯を食べる事にする。次の馬車は1時間半ほど先だ。折り畳みの鍋でコーンスープを作っている三人をよそに、シシリアに耳打ちをする。


「何かおかしいよな?テトラの檻の鍵と言い、今のガーゴイルといい、対象が低レベルとは言え、人間が出来る範囲とは若干ずれているし、相手の意図が分からない」


 シシリアは、ウィリスに入れてもらった、冷えたレモネードを飲みながら言う。


「そうっスね。弱いから太刀打ち出来ない人が対象だけみたいな……実験みたいで意図的な物を感じますね」


「だよなあ」


 こちらに気付いたウィリスがやって来て、座っていたオレの手を引っ張る。


「連れてってくれるん? いやー、歳だから腰重くて……」


「そうじゃ無くて、コーンスープ出来ましたよ。は、早くしないと、焦げちゃいます!」


 人間の年齢と天界の人間の年齢差を比較した天界ジョークは、効かないようだった。

 オレは尻に着いた砂をバシバシと払うと、マグカップを持ち、スープをついでもらいに行った。


 街に戻ったら上司に報告がてら聞いてみよう。


 ダべりながらスープを飲み、マグカップを洗い終わった辺りで、馬車に乗って街へ戻る馬車が通りがかったのでのんびりと帰る。うーん、上司も何か感じられていたら対抗も出来るんだが。


 ただ、相手が人間だと、逆に天界に居る人間は手が出せない。

 例外で、地上に降りている天界人はそれを正すことが出来る。


 馬車から降りると、シシリアが報告の時間をずらそうと言い出し、オレの方が先に教会に祈りに行く事になった。ついでにギルドへの報告も、任せておく。

 

 今回は居住まいを正して、しずしずと男神像への前へと進んで手を組んで祈る。


((セネカくん、今日は何か有った? まあ、君の報告は大体僕には楽しいんだけど))


(それどころじゃないですよ)


 オレはテトラの入っていた檻の鍵や、今回のガーゴイル像の事を話す。


((うーん、それだけだと、黒魔術士かも知れないし悪魔かも知れないし、判断に困るね。悪魔が暇を持て余して戯れに力を貸した人間とかかなぁ。今の段階だと何も言えないから、気を付けてねぇ))


(はい、心にとめておきます)


((うんうん、怪我が無いようにねー。自分で治せるだろうけど、自分で治せない怪我は負わないようにね))


 そこまでで、上司への報告は終わった


 黒魔術師が相手の場合も有るかー。悪魔相手よりは良いかな……戦うとしたら、オレとシシリアだけになる。他の三人を連れていけなくなってしまう。何せ戦闘の規模が違う。


 天界と魔界の大戦争へ発展はしないだろうが、ヒビくらいは入ってしまう。天界と魔界は基本的には不干渉なのだ。出会ったら、お互いに引く事になっている。


 そうならないでくれると助かるんだが。


 オレが視界の海に沈みながら歩いていると、前から来る人にぶつかった。


「ぎゃっ」


 よくよく見ると、シシリアである。いくらなんでも「ぎゃっ」は無いだろう。


「センパイがもう終わったと思って来たのに、かち合っちゃったじゃないッスか。私は、これから報告に行くのに」


「仕方なかろうもん」


「時間をずらした意味無くなっちゃったじゃないですか。でも、うーん、そですねえ、今回は報告する事多いですし。この後、皆と食事しに行くから、私は急がないと」


「またなー」


 教会前で別れ、オレは自然とレストラン街……の突き当りの食事処へ行き当たった。ここはアイクが前に行ったとかでお勧めされた所だ。


 山の幸が売りな店で、川魚や山菜などを出してくれるらしい。メニューを見ても、イマイチ分からなかったので、店員のおススメを出してもらう事にした。


 緑色のちょっと渋いお茶を飲んでいる間に、櫛に刺さったアユという魚が出てくる。それと一緒に山菜のお浸し、筍という物が入ったご飯がトレイに乗って出てくる。


 小さな火鉢のようなような物の上に網が乗っていて、更に深い皿のような物が乗っていた。火が通ったら下の火を消すらしい。


 他のメニューのように食前酒から出てくるタイプでは無さそうだ。


 カタカタと蓋が動いて食べ頃を伝えてくる。豆腐というとろりとした塊を口に含むと、熱々で口の中ではふはふとすることになった。しかし、他の野菜や入っている肉の味を吸っており、甘しょっぱい味がする。


 川魚も食べるのは初めてだ。しょっぱ苦い皮と共に、ざくっと魚の身が口に広がる。そう沢山食べられるものでは無いが、大変美味しい。


 食べなれない味であったが、何となくホッとする味であった。


 その後も、しみじみと味わっていたら、あっという間に食べ終わってしまった。


 お腹もいっぱいになったし、次の依頼の事を考える。

 今までの事を踏まえて、何か心積もりをしておいた方が良いかも知れない

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