52 お小遣いには安すぎる
その後、数日は堂々と引きこもりをしたオレだが、今日はギルドにパーティーで集まる日になった。
部屋を出ない事が続くと出たくなくなってしまうが、あまり引きこもっているとお金が無くなってしまうので、引き続き冒険者で生計を立てねばなるまい。あと、普通に手持無沙汰になる事が分かった。
レベルの内訳としては、アイクが23、他のメンバーが21だ。結構上がっているんじゃないか?
これなら魔法を一部解除してもよさそうだ。何がいいかな……。
「そろそろ討伐依頼が良いですかね、手軽でお金が入りますし」
テトラの事を言っているのだろう。この前も言われたが、自分は絶対間違って無いと言えるぞ。
さて、依頼依頼……っと。
「遺跡の入り口を守っているガーゴイル退治?」
「初心者向けのダンジョンの、入り口ですね」
アイクが読み上げていると、パティが覗き込んで、思いもよらない近さに、ぎょっとしている。この子の距離感は、若いアイクには毒だな。本人に直接指摘すると可哀想なので、シシリアにでも言ってもらおう。
それはともかく、ガーゴイルか。普通初心者向けのダンジョンなんかに、そんなものができるか?
オレが考え込んでいると、シシリアがペラリと依頼書をオレから奪っていく。
「ふーん、面白そうじゃないですか? まだ、ガーゴイルと戦った事無いですし」
ウィリスが後ろで若干困った顔をしている。多分、今まで「面白そう」な依頼で、碌な目に遭わなかった事が有ると推察される。苦労してきたんだね……と思ったが、これからはオレとアイクも巻き込まれるという事か。
「初心者向けの洞窟の前と言うだけあって、そこまで依頼料は高くないですねー」
「行くだけ行ってみるか。小遣いくらいにはなりそうだし」
全員で頷くと、代表してオレが窓口に持って行く。
「こんにちは、ルドヴィカ様。こちらを受けるのですね……はい、承りました」
手続きを終えると、念の為に二日分の食料を準備をして、馬車に乗って行く。歩いても行けるのだが、余裕を持つために乗っておいた方がいい。
2時間程馬車に乗ると、問題の遺跡に着いた。
しかし、ガーゴイルは石像になって入り口を守るように、左右の台座に鎮座ましましてる。
「近づくと動くタイプだな。ウィリス、いっちょ火魔法を撃ってくれ」
「は、はい『ファイアー』!」
石像にファイアーが着弾すると、ギギギギっと壊れかけの人形が動き出すような軋む音がして、石像の表面の石がパラパラと剥がれ落ちて来た。
石像から完全に生身に戻ると、奴らは上空を旋回しだした。
「ウィリス、サーチ」
「はい、『サーチ』!ガーゴイル、レベル24、弱点属性……無しです!」
オレが見ても、弱点属性は出ない。
しかし、それはまったく何も効かないという事では無い。
「一番得意な魔法を続けて撃て、他はオレが身体強化魔法をかける!」
腕力と素早さを強化した上で、オレ自体も聖魔法で参戦する。
「『アシッドレイン』」
敵の防御力を下げる魔法だ。ある程度は加減しているとは言え、結構下がったんじゃないか?
身体強化をした上で、アイクとパティが切りかかる。アイクが先陣を切り、軽く刃をあてると、後ろからパティが力を入れて切りかかる。数度切り結ぶと、背後に回り込んでいたアイクが返す刀で攻撃をした。
ガーゴイルはそちらに気が回らずに、少しよろめく。
その隙を逃さずにアイクが切り込むと、少量だが血が舞った。
「『イラプション』!!」
元々ウィリスの魔法はレベルよりも効果が強いが、これもかなりの威力がある。
どろっ
ガーゴイルの表面が、皮一枚溶ける。
もう一匹はと言うと、弓でシシリアが牽制をしている。
「『天破』!」
名前通り、矢は雨となり、ガーゴイルの動きを妨げる。
その上で何筋も血の筋が走った。
名前通り、矢は雨となり、ガーゴイルの動きを妨げる。
その上で何筋も血の筋が走った。
即座にパティとアイクはそちらに走って行き、弓の雨が止んだのを見計らって切り込みに飛び込む。足や翼を中心に切り込んでいると、力を溜め切ったのか、シシリアが叫んだ。
「離れてください!スターダストレイン!」
矢は星屑となり、それぞれが小さな爆発を起こし、着弾した物は大きく弾け、ガーゴイルの表面を抉っているようだった。
「僕が、行きます!」
アイクが、そう言い、一番にかけていく。
「あ、私も行きますよ! アイクさんずるい!」
仲間内で勝負してどうするの。
しかし、抉った表面に切り込んだのは、相当ダメージが入ったようで、足を切り裂きそこを瓦礫に変える。残るは胴体だ。
パティは身体強が唱えられた俊敏な足と腕力を使い、その首へ剣を向ける。
同時にアイクは頭に剣を向けていた。
ザッ!
と言う音を立てると、そちらも石に変わる。
今はただの瓦礫だ。
これは多分、元々は無かった物だろう。こんな物が有ったのなら、早々にギルドに依頼が行っている筈なのだ。
何が目的なのか?
オレは、人ならざる者の存在を感じて、ぞっとした。




