50 波止場と名前
わー、50話。びっくりです。 これからも細々書いていきます。
明日も大体お昼更新です。
街まで戻る馬車が来るまで、木の下で女子チームに睡眠をとらせる。オレとアイクは一晩くらいなら平気なので、寝ずの番をする。馬車の中で、ウトウトくらいは出来るしね。
陽が昇って二時間ほどすると、街行きの馬車が現れる。この馬車は比較的安全な場所を通っており、護衛も付いてはいる。国の間を行き来するので、国から補助金も出ているそうだ。まあ、何も無いよりかは安心かな。
行きはウィリスがヒャッハーしていたので、帰りはドキドキしたのだが、何事も無く街へ着いた。疲れもあるだろうが、早くこの親子を国から逃がしてあげたい。
切符を買いに行くと、夜の便が取れたので、一緒にご飯を食べる事にする。
食事のマナーが気になったので、個室を取る事にしたのだがーーーーやはり何と言うか、基本的なマナーすらなっていなかった。テーブルに手をつかない、とか身を乗り出さない、とかそういう事もだ。
フォークとナイフを使えとは言わないが、これは由々しき事態である。
見慣れない食べ物ばかりで興奮しているのも有るんだろうが。
「ホラ、がっつかないで、お母さんの真似してみ」
オレが椅子に座り直させると、少年はハッとして、母親の方を見た。眉を八の字にして困っていたので、少年は落ち込んでしまったようだ。
「すぐに出来るとは思わないで、少しずつお母さんの真似してみな。これからは色々な物が食べられるだろうけど、他の人にジロジロ見られるだろうし、落ち着くんだ」
そう窘めていると、シシリアが「センパイが、大人をしてる……」と言っているが、聞こえないフリをする。言われなくても、オレは大人である。
少年は、ゆっくりとご飯に手を伸ばし、今度は母親の見本を見ながらゆっくりと口に運んで行った。
ぎこちなく、たどたどしいながらも食事を終える事が出来た。
「すごく美味しかった……」
少年は満足げだ。船の時間まではまだ有るので、街を散策する事にする。
母親に抱き上げられながら、あちらこちらを忙しなくキラキラした目で見まわしている。
見る物すべてが新しいのだから、当たり前だろう。
噴水広場でジェラートを買ってやり、ベンチに座らせるが、ダッシュしていかないように、服の端っこを持つ事も忘れない。このくらいの子供って、親の手を振り払ってぶっ飛んでくからね……。事故防止である。
しかし、さっきご飯を「お腹いっぱい」食べたとは思えない食べっぷりだ。甘い物は別腹ってやつ?
散々歩き回ると、ようやく夜になる。
未だ少年は好奇心でいっぱいだが、船の時間も迫って来た。乗り場へ行った方が良いだろう。
陽が傾いた波止場を、のんびりと歩く。
いよいよ、海の先の南の国へ行く。
子供の手を握りながら、母親は俯きながら口を開く。
「何で、ここまでして下さるんですか?」
確かに儲かるとか、得をする話では無いが。
シシリアが母親の前に回って、ズバリと言う。
「やらない善より、やる偽善ってね。強いて言えば自己満足かな?」
「そ、そうですよ。あんなところに閉じ込めておくなんて……」
ウィリスも激しく同意する。
「でも、オレ達が手を貸せるのはここまでだ。後は自分達で頑張ってくれ」
オレは、当面の生活費を渡す。これなら2人で細々と暮らしても、一か月くらいは持つだろう。その間に仕事が見つかると良いのだが。
「有難うございます……有難うございますっ」
またもや泣きそうになる母子を、タラップまで送る。
「あ、忘れてた」
少年が、母親の肩越しに、こちらを見ながら言う。
「お兄ちゃん、名前は? 僕はテトラ!」
おーっと、名前を聞き忘れてたぞ。今気づいた。
「セネカだ。また会おうな」
「うん、絶対だよ!」
母親はこちらが見えなくなるまで、ぺこぺこと頭を下げていた。
今回の事は地獄に仏(神)だからな。早々有る事では無い。
「行っちゃったねえ」
「良かったです、助けることが出来て」
パティとアイクが、若干寂しそうに言う。長い時間、一緒に居た訳では無いけど、時間の長さの問題では無いだろう。オレにその後を知る術はないが、元気にやってくれれば良いと思う。
「でも」
シシリアが手を組み、ため息を吐くのと同時にくるりと回る。
「今回はマイナス収支だから、次はちゃんとした依頼をしなきゃですよ」
「あ」
全員が、その事を忘れていた。
だが、今回の事は、心の中だけだが、オレには誇れる事だった。
「何か、儲かる仕事有りますかね」
シシリア、今は浸らせてくれよ。
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この先も頑張りますね。




