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47 開かない鍵

「僕が悪い子だから……」


 すまん、女の子じゃ無かったのか。


「どこが悪い子だって言われたんだ?」


 こんな子供が自分が悪いと定義づけるのは、周りの人間の影響だ。何の理由も無く、子供がそんな事を言う筈がない。


「この白い髪と、赤い瞳が気持ち悪い。悪魔の子だから、悪い事が起きるから外に出ちゃいけないの」


 少年は手入れをされていないのか、腰までの雪のように白い髪と、赤い瞳に、陶器のような白い肌、体はこんな場所に閉じ込められているので筋肉のつきようもなく、細い。


 良く見ると、檻の中にテーブルが有り、その上の皿に食べ物と飲み物が置かれている。誰かしらの世話は受けているのだろう。


 だがしかし、だ。


 シシリアを見ると、頷いている。そう、単なる……と言っては何だが、アルビノなのである。遺伝子のバグによってメラニン色素が作られなくなる遺伝子疾患だ。もちろん悪魔の子などと言うのはあり得ない。


「ここへは、お母さんが来るのか?」


「お母さんが三日おきに……多分、今日来ると思う」


 オレ達が檻の前で話をしていると、ガタガタガタッっと音がして、「ひっ」と声がする。殺気などは感じなかったので放っておいたが、この小屋に来た人間だったわけだ。


 入って来たのは女性で、檻の中に居る少年とオレ達の間に手を広げて割って入る。


「誰です、あなた方は! この子に近づかないで!!」


 まるで獰猛な狼のような、今にも噛みついてきそうな剣幕だった。


「そうは言われても、村からその子の歌声が呪詛と間違われてて、呪いじゃないか調べてくれって村から依頼が出てるんですよ」


 先ほどの少年の発言を聞く限りでは母親が通って世話をし、オレ達の間に割って入ったという事は、それなりの感情はあるらしい。


「呪詛……?」


 女性は勢いよく振り返ると、少年はしゅんとした。


「とにかく呪詛などではありません。お帰り下さい」


 女性は「お帰りはあちら」とでも言うように手で出口を指示している指示(さししめ)している。

 でも、解決しないと帰れないんだよな。子供が閉じ込められているし、この状況を報告しても状況が悪くなるとしか思えない。


「何で、この子は閉じ込められてるんですか?」


「それは! ……この子の見た目です。私も、悪魔の子を産んだと、ほぼ村八分で生きています。ただ、この子を閉じ込めておくならば殺しはしないと言われたんです」


 どうやら、依頼が有った村とは別の村の様だな。


「そうは言っても、親の髪の毛が遺伝したとか親の目が遺伝したとかの、遺伝が全くなかっただけの話だぞ? 先祖から、たまたま何も受け継がなかったんだ」


「???」


 遺伝の話は分かるが、劣性遺伝子の話までは分からないようだ。この技術が遅れている世界では、遺伝子學が進んでいないだろうからな。


「うーん、親の特徴を全く受け継がなかった子だから、親と違うんだとしか言えないな」


 オレがそう言うと、女性はホロホロと涙を流し始めた。


「わた、しっ……旦那に、「オレの子じゃない」って言われ、れてっ……絶対そんな事っ、無いのに……」


 女性が堰を切ったかのように、しゃくりあげる。

 こういう時、父親も一緒に肩を持ってくれれば良かったんだろうにな。


 この女性一人の肩には、重すぎた。

 少女のように泣く母親を見てから、少年は不安そうにオレに視線を移した。


「僕は悪魔の子じゃ無いの?」


「もちろん」


「じゃあ、ここから出れる?」


「うーん、出ても良いけど準備しないとな」


 母親は、女子三人に背中をさすられ慰められている。こういう事は異性には出来んな。シシリア達が居て良かった。

 横でアイクがオロオロとしている。





 母親が泣き止むまで待って、話をする。


「とにかく、ここに居ても仕方ないぞ」


「ですが……」


「それなら!」


 ポンとシシリアが手を叩く。


「南の海の向こうに、多国籍の種族が混ざった国が有るそうですよ! そこでなら目立たないと思います!」


「よし来た、採用。たまには良い事を言うな、シシリア」


「たまにはって何ですか、もー!」


 ボケツッコミをしつつ、算段を考える。取り敢えずは村に戻って、次の日に馬車に乗って二日。一日休憩を挟んでとんぼ返りをする。そこからまた馬車に乗る事二日。その次の日にまた馬車で二日となると……合計8日か。オレ達は冒険者だから多少の無理が効くが、この母子はどうだろう。


「迎えに来るまで5日くらいかかるが、その間に準備出来るか?」


「は、はい。でも鍵が……」


「オレが壊せるから大丈夫だ。移住できるように荷物を纏めておけ」


 魔法がかかっている方は簡単に解除出来るし、物理的な方を壊す時に大きなカギでも使って、それっぽく見せよう。


 『アンロック』を使える事は内緒だからな。しかし、いつまで隠せるものだか。


「よし、呪詛の方は、洞穴が風で鳴ってるとかにして、適当に村長に誤魔化そう。お前もその間は歌っちゃだめだぞ」


 どんどん段取りを決めていくと、パティが前のめりになって讃えてくる。


「すごい、すごいですよ! セネカさん! こんなに簡単に解決しちゃうなんて!」


「さすセン、悪知恵が回りますね!」


 シシリアは後で説教だな。

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