44 殴り魔法使い
それから二日後、近くの森で、ウィリスの装備の試し打ちに行く事にした。
ウィリスは珍しくワクワクとしており、明るい笑みを浮かべている。
この子のこんな顔は、初めて見るな。
腕力的にはそこまで力が出ないという事で、オレの方で身体強化の魔法をかける。今の所、身体強化の魔法を唱えた事は無いのだが、今回は武器を試してみながら今後に活かせるかオレとしても練習を兼ねている。
「じゃあ、私が追い立てるから、パティが倒す一歩手前くらいに弱らせて。ウィリス、準備いい?」
「う、うん」
シシリアが指揮をして、パティとウィリスが位置取りを確認している。オレとアイクは棒立ちで見学しているだけだ。正直、身体強化魔法をかけた後は、やる事が無い。
数刻の後。
そして、今、オレ達の前では残虐物語が繰り広げられてる。
「いくよー!」
「よしきた!」
「えい! えいえい!」
中型犬程の昆虫型モンスターを追い立て、ウィリスが最後に、棘付きの、魔法使いとは思えないような杖で叩き潰している。
赤や緑の体液が飛び散り、手や顔を濡らしている。
爽やかな顔で次々と屠っていく儚げな少女は、バイオレンスでシュールである。
守られているのが嫌と言っていたが、これからはこんな光景が広がる場面が有るのだろうか。
体の耐久力自体は無いので、後ろで魔法職に徹底して欲しい所なのだが、鬱憤が溜まっているのなら、解消させてやるのがパーティーメンバーと言う物なんだろうか。
ふと横を見ると、アイクが居ない。飽きてしまったのかと思って周りを見回すと、ざわざわと低木が揺れ、ガサッとアイクが顔を見せる。
「レッドベアが居たから狩ってきました」
「手早いなあ」
「待ってるだけだと手持無沙汰なんで、ちょっと」
「ちょっと」で狩ってくる敵では無い筈なんだが。
チラリとシシリアの方を見ると順調そうである。あちらは放っておいてレッドベアを捌くか。
川辺に運ぶと、アイクは手慣れた動作で、すっすと捌いていくのに驚く。
「アイク、手慣れてるな」
「下っ端扱いされて、散々やらされましたからね。小遣い稼ぎにもなりましたし」
この子、何で一々不幸なんだろう。可哀想で涙無しには語れないというやつである。
血抜きを済ませて木に干すと、3人が戻って来た。
「戻りましたー!」
シシリアの後ろからパティとウィリスが付いてきている。その二人を見てギョッとした。
青や赤や紫、色とりどりで夏の花壇にも負けないような鮮やかな事、この上ない。
「センパイ、パティとウィリスにクリーン魔法かけてあげて下さい」
「お、おぅ」
カラフルな二人を丹念に清浄する。
「すっごく楽しかったです! これから雑魚が出て来た時は、私もお手伝い出来るかも知れません!」
晴れ晴れとした笑顔でウィリスは言う。普段の引っ込み思案な所は微塵も見られない。
魔法使いでなければ、前衛の方が向いてそうとだと言いたくなるかも知れない。
この間のクレリックパーティーを考えると、「DOKI★魔法使いだけの殴りパーティー」が……成り立つはずは無いな。
今後は弱い敵にのみ許可するとして、普段は魔法使いに徹してもらおう。
「それはそれとして、ここ数日は休んだから、そろそろ次に行きたいですねー」
「今度は、もっと違う所に行きたいよねっ」
パティとシシリアが伸びをしながら言う。
「じゃあ、明日ギルドの依頼ボードを見てみるか」
「な、何かお役に立てればいいのですが」
元のウィリスに戻ってしまった。二重人格か。
「今日は全員揃ってるから、皆でご飯に行きませんか?」
「賛成!」
アイクの提案にシシリアが是を唱える。
森から街に戻り、食事処を探す。
「男が2人居るから、お洒落な所って感じでも無いな。アイクは他所から来たし、パティはここの出身だっけ? お勧めの食事処教えてくれ」
「うーん、いくつかは有りますけど、魚料理メインの所はどうですか?」
「いいな。じゃあ、そこを頼む」
オレ達はぞろぞろと街中を移動し、店へと行く。
着いた先には、浅い青と白を基調としたお洒落な店だった。男には入りにくいんじゃ……と思ったが、店の中からは男性客が多い事が分かった。
「この店、海鮮が美味しくって、大盛りにもしてくれて、リアちゃんにも好評なんですよ」
案内しながらパティが言うのでシシリアの方へ顔を向けると、目を逸らされた。天界の民とは思えない量の飯を食うからな。多分、財布にも優しいのだろう。




