42 あれです、あれ
お昼固定更新です。
見つけた武器や装備は自分達で装備する事にして、宝石は換金しようとギルドに持ち込んだ。
ギルドのラウンジの隅で雑談をする。
割と敵が強かったという事で、あの宝箱に入っていた宝石も結構な値段になった。その分け前をギルドの端っこのテーブルで分け始めると、「わあっ」とウィリスから小さな声が上がる。
「どうしたん?」
「結構な貯金が出来たから、新しい武器欲がかえちゃうんです」
「ウィリス、今持ってるのじゃだめなの?」
パティがテーブルに肘をつきながら、ストローでレモンティーの氷をつついている。
「あの、どこかのダンジョンで何か手に入るかも知れないとは思うんですけど、武器を買い替えたいんです」
武器って今持ってる魔法使い用のスタッフじゃだめなん?
「あー、あれか!」
あれって何だ。訳も分からずに首を捻るばかりである。
「じゃあ、今から買いに行こうか」
「え、オレ達も行くの?」
「仲間の事ですからね~。行きますよ、センパイ」
オレは女子の買い物に付き合う趣味は無いのだが、アイクと一緒にシシリアに背を押され、あれよあれよと言う間に武器屋まで連れて来られてしまった。
ここは魔法使いの装備専門店で、武器屋と言う割には、ローブやアクセサリーなども置いている。
オレのサーチによると、性能より若干値段が張るような気がするが、そもそもまだ地上の金銭感覚が完全に分かっているとは言えないからな。オレが思うよりも、まっとうな金額なのかも知れん。
「魔法使いのアクセサリーって、高いですね……」
横からアイクが、ぽそぽそと話しかけてくる。
「やっぱり値段設定が、高いのか?」
「戦士は、そもそもアクセサリー自体あまり出回っていないんですけど、魔法使い程の値段はしないですね」
ふむ。いつかアイクにもアクセサリー取ってあげたいね。
「あ、あった!」
そんな会話をしていたオレ達の背中で声がする。ようやく武器が決まーーーーー……
「何あれ」
「何でしょうね」
「普通、魔法使いってああいう武器使う?」
「聞いた事無いですね」
何度目をこすっても、その物体のシルエットが変わる事は無い。
ウィリスが選んだのは、先端に沢山の棘が付いて、お世辞にも「杖」というには程遠い物だった。
「ウィリス、それ買うん?」
オレが戦々恐々としながら聞くと、ウィリスは、今までにない晴れやかな顔で笑った。その笑顔は眩しい。尊さすらある。あるんだが。
「今までずっと守ってもらってばっかりだったのが、心苦しかったんです。でも、これなら魔法付与して敵を殴ったら少しくらいはダメージ入るかと思って」
その釘バットのような物で戦うと……?
「ま、魔法は使えるのか?」
「はい!先端に魔法を増幅する石が入っていて、魔法もばっちりです!」
釘バットを手に笑う、見た目だけは儚げな少女を見ていると、ギャップで風邪を引きそうだった。
「早く試してみたいです!」
ニコニコ顔のウィリスに、シシリアがピースを向けながら言う。
「じゃあ、数日休んだら、試しにいこっか! 皆して結構、装備変わったから、連携の仕方とか見たいしね!」
言っている事はもっともなのだが、不安しかない。
「あ、センパイと私は明日は食材の買い出しですよ~。アイクさんも来ます?」
「うーん、僕は良いかな、休みたいし。メモを書くから食材を買っておいてくれる?」
「了解、了解。シシリアちゃんにお任せあれ!」
いっそ、全部をシシリアちゃんにお任せしたくはあるが、何故か、オレも一緒に行く事になってしまった。店から出て皆が捌けてから、シシリアはオレに向き直って、シシシと笑う。
「デートですね、セーンパイ」
「ただの、荷物持ちにするつもりだろ」
「分かっちゃいました?」
そんなボケツッコミをしながら、それぞれの宿屋へ帰ってゆく。
ちなみにその夜、オレは爽やかな顔を鮮血で濡らして敵を撲殺するウィリスの悪夢を見た。
……現実にならない事を祈るのみである。




