41 ドライトマト
明日もお昼目安です。
塔の隙間から朝日が入り、テントの隙間からでも明るくなったことが分かる。
もそもそと起きあがると、他のメンバーはまだ起きていなかった。昨日は、少し無理させたからな。
昨晩の内に、鍋に汲み置きしておいてもらった水を火にかけて乾燥した野菜を入れる。味気ないけど、携帯固形食糧だけよりは何倍もマシだ。
「あ、お早うございます。もし良ければ、僕やりますよ?」
アイクがスッキリと起きてきて、オレの横に並んで杓子を受け取った。
場所を譲ると、手際よくアイクが自分の鞄を探り、乾燥したトマトを出す。それをお湯に浸して一緒に煮る事によって、良い香りが辺りに漂う。このくらい上の階だと、敵が匂いに釣られて、わざわざ来る事も無いだろう。
しかし、それは人間にも通用する話で、匂いにつられて皆が起きて来た。
「うわぁ、良い匂い~」
「お腹、空きました……」
「まともなご飯、最高だね!」
ははは、と軽い笑みを浮かべて、アイクが1人1人にスープを配る。
「冒険者で、中々ドライトマトとか持ち歩いてる人も希少だと思うんだが、料理が出来るのか?」
「出来るって程では無いですが……前のパーティーでご飯役とかもさせられていたので」
涙無しでは語れないと言うやつだ。
アイクを追い出したハーレムパーティーとやらの行く末が気になるね。罰が当たりますように。
「もしかして、アタシ達が荷物を持ち寄れば何か作って貰えたりするのかしら」
パティが、うーんと考える仕草をするが、そんな為に冒険者になったわけじゃないだろう。
「おい、パティ、無理を言うんじゃーーーーーー」
「いいですよ」
「ん?」
オレがやんわりと止めようとしたのだが、意外にもオーケーの返事が返ってくる。
「僕が全ての食事の荷物を持つとかではなくて、分担して持ってくれるのなら良いですよ。以前のパーティーでは食材まで僕の荷物に全部乗せられたから嫌でしたけど、他の人にも食材を持ってもらえるなら大丈夫です」
「そ、そうか」
女子三人は、きゃっきゃとはしゃいで喜んでいる。今までは、ぼそぼそした固形食糧だけだったからね。そんな贅沢は考えた事も無かった。
「大丈夫なのか、負担にならないか?」
オレの念押しにアイクはあっけらかんと答える。
「何か役目が有った方が落ち着くんです」
「根深いな。まあ、早く、安心出来るパーティーにするつもりだ。背を預けてもらえるように頑張るよ」
「ここまで来て、充分に以前のパーティーとは違うって分かりますけどね」
そこからは、トマトスープを飲んでまったりとしてしてから、野営準備を片付ける。
帰りは戦闘を交えつつ、2日かけて下へ降りる。
一番下の階層を降りて入って来た洞窟の穴に入ると、入って来た穴に入ると、違う場所に出た。
え、ここどこ。
「あー、やっぱり違う場所へ出ちゃったんですね」
シシリアがオレの後ろからひょいと覗き込む。
「やっぱり?」
「いや、どこに飛ばされるか分からないって言ったじゃないですか? 帰りもどこに飛ばされるか分からないんですよ」
そう言えば、1割が帰って来ないって言ってたけど、そういう事?
塔の部屋も変な場所だったし、道もかなり複雑だった。しかも、出る所は、入った所と違うと来たもんだ。これは確かに大変だな。
「ここがどの辺か、分からないな。取り敢えず南に向かって歩いて行くか」
この国では南に交通の要所が有るので、道が密集しやすい。それを狙っての事だ。太陽の位置から現在の時刻を考えてみて、二時間程度は歩くだろうという覚悟だ。何はともあれ森を抜けないと。
チーユチーユ、チュチュチュ……
朝しか囀らない鳥の鳴き声が聞こえる。オレ達は荷物を担ぎ直し、旅立つ準備をする。
よし行こう。
オレとアイクは横並びになり、殿をパティに任せる事にした。
「どう、このパーティー。余所より程々待遇良いと思うんだけど」
「そうですね、何よりハーレムパーティーじゃないですし、クレリックのセネカさんの腕も確かですし、正式に入れて欲しいです。前のパーティーって回復の優先度低かったんですよね」
「やっ……た?」
オレは拳を振り上げたが、その前の「ハーレムパーティーじゃない」に念押しされている事に気が付いた。傷が深い。可哀想に、オレ達はそんな思いはさせないぞ。
だが、食事の向上はオレも願ったり叶ったりなので、今度から色々と食材を荷物に入れておくとしよう。
今まで見なかった店のお聞き込みをして、普通の日持ちのする食材を持って来れば良さそうだ。
オレは冒険の楽しみが増えて、ワクワクとしてきた。




