4 城外のヒミツのレベル上げ
お昼上げ。もう一話投稿します。
「職業はクレリック、武器は……」
次の日、オレは冒険者ギルドのカウンターに居た。
「やり?……槍をお使いなんですか?」
冒険者ギルドに所属している事の証、ギルド証を申し込みに来たのはいいが、対面の受付嬢はオレの使用武器の項目を見て、困惑していた。後ろから下卑た笑い声が聞こえて来た。
「アイツ、クレリックなのに槍だってよ。前衛に出てきて、すぐに死にそ~」
「あの、お奇麗な顔で何とかするんじゃね? 魔物にも美的感覚があるかも知れないぜ」
そう、気にした事は無かったのだが、どうやら天界の人間は、一般的には地上の民より容姿が優れているようだ。顔の醜美は良く分からないが、清潔感だけは有るつもりである。
「槍で大丈夫です。慣れているので」
「はぁ、教典とかではないのですね……」
ギルドの受付嬢は、不思議そうにペンをトントンしながら考え込んでいる。
何が不満なんだ。人間のように教典が無ければ神の代行者たる魔術が使えないわけでは無いし、そもそもオレは槍術が好きなのである。槍術の同好会にも入ってたぞ。……最近は忙しくて、幽霊部員だったけど。
それに、ハルマゲドン対策で、学生の頃に大抵の武器の扱いは勉強させられたっつーの。天使なめんな。
「承知いたしました。それでは、その通りに登録させていただきます。セネカ・ルドヴィカ様。職業クレリック、武器は槍術で登録致します。”冒険者ギルドへようこそ、あなたの活躍を期待しております”」
お決まりのセリフを聞くまでに、時間がかかってしまった。
なにはともあれギルドの会員証だ。しかし、ここで俺は小細工をしておく事にした。素のままのオレの力を地上で表示すると、とんでもない事になる。卑怯な手口では有るが、偽装しておくのだ。
俺自身のカードのレベルが上がってきたら、徐々に解除していこう。
「あちらの依頼ボードで仕事を選べます。と言ってもルドヴィカ様はルーキーのFランクまでの依頼しか受けられませんが、レベルを上げるだけなら城砦の周りに居るスライムがお勧めですよ」
ふむ……依頼ボードを見ると、確かに薬草採取や簡単な素材採取など、お手軽系の依頼が有る。
だが、せっかくなので力をセーブした人目を欺いた上で、どれだけ地上で通用するか試してみるか。これは城壁外で、スライム討伐をしてこよう。
オレは武器屋で、適当に安い槍とローブを買った。これでどこから見ても、冒険初心者だ!!
そそくさと門に向かうと、門番の親父に声を掛けられる。
「おい、昨日通った坊主じゃないか。冒険者登録したのか?浮かれて上位の魔物に手を出さんようにな」
「おう、ありがとう」
適当に返事をしたが、ここら辺のモンスターで力の加減を見るだけだ。それに、いくら何でも上位的存在など出る訳は無い。しかし舐め腐った行動に出て、大きな個体に喧嘩を売る輩も居るのだろう。門番の親父はそれを心配しているらしい。律儀だ。
「ちょっと槍の調子見るだけだから大丈夫だ」
槍を振りながら城外へ出る。
さて。
「ステータス・オープン!」
これは、地上の人間が自身の力を可視化したもので、今の実力が分かるらしい。すげーな、地上の民。
・Fランクレベル1
・ヒール
・ファーストエイド
・ファイヤー
・ライト
・クリーン
・シールド
「まずは、スライムー」
キョロキョロとするが、流石に城門を出てすぐに見つかる訳も無く、近くの森辺りにまで行かないと出現しないらしい。まずは探す事から始めないとな。
「サーチ」
森の中を少し分け入ってひらけた所を見つけると、探索系の魔法を使う。そうすると、近い所にいるわいるわ。スライムが大漁である。
ちなみに、サーチは本来人間で言う所の魔法使いの領域だが、オレはそっちは初級どまりだ。
天界に居る間は失せ者探しの魔法としてしか役に立たないと思っていたが、いざ地上に降りてみると、役に立つものだ。何でも学んでおくものである。
オレは人に見つからないように少々奥に行くと、切り株に腰かけた。
それからスライムを一匹ひきつけて、ファイヤを使う。
ファイヤー
ヒール
ファイヤー
ヒール
ファイヤー
ヒール……
オレは、スライムの体力を一だけ残し、延々ヒールとファイヤーを繰り返す。
生かさず殺さず。そんな事務的作業をしていくと、経験値がみるみる内に溜まっていく。
今現在、レベル3。まだまだいけるが、一気に上げると怪しまれるので、今日はこの辺で切り上げるか。
そうして立ち上がると、後ろから女子特有のかん高い声がした。
「あれ、センパイじゃないっスか」
顔を上げると、地球の輪廻転生課所属で後輩のシシリア・ビネスが居た。ざっくばらんな喋りかたをするが、女性である。
金茶の髪を高めに括っており、皮鎧という軽装である。弓を持ち、一目でアーチャーに扮している事が分かる。ショートパンツからスラリとタイツを履いた足が伸びている。
ショートパンツがミニスカート状になっているたので、一瞬ドギマギしてしまった。
「何で、ここに居るんだ?」
「私はバカンスで20年くらい、ココに居るんスよ」
「へー、俺は降りて来たばっか。自分、地球担当なのに、何でここにいるの?」
「確かに地球の中の日本のサブカルは気になったんスけど、特技を活かそうかなーって。しかも、私達の容姿って浮くじゃないスか」
「確かに」
オレは気の無い返事をすると、周りを見回す。
「自分、連れ居ないの? 一人?」
「ナンパみたいなのやめてくれますか。センパイと違ってパーティー組んでて、他のコは後で来ます。
ーーーーーーーでも、センパイ見ましたよ」
ニヤっとシシリアが笑う。
「ヒールとファイア繰り返して、敵を殺さないで無限にレベル上げるとか……鬼の所業ッスね!」
ダブルでGJの手を見せてくる。そういうところだぞ。
「楽したかっただけだわ。しかもただの敵じゃん……」
「まあ、確かにレベル上げとかしんどいから、楽できる部分はしないとですけどー」
軽く雑談していると、遠くから「リアちゃーん、どこー?」と呼び声がする。
「アレ、自分の事呼んでるんじゃないの? 早く行ってやり」
「待ってー、今行くよー!」
目の前でシシリアが急に口調を変えて返事をするので、オレはギョッとして目を丸くした。そうして、こちらへ向き直ると、やや眉間に皺を寄せて言う。
「これから行動範囲被るかもですけど、あくまでも同郷の知り合いくらいにしといて下さいよ。私もバカンス中なんで」
そうしてる内に、戦士系の装備の女の子と、魔法使い系の装備の女の子がやってくる。この二人がシシリアのパーティーメンバーなんだろうな。女3人姦しいとはよく言ったものである。
仲間の姿を認めると、それじゃ、また!と仲間の方へ小走りで行ってしまった。
「どうしたのー? あの人格好いいじゃん! リアの知り合い?」
「郷里の知り合いなだけだよー」
女子三人でキャッキャウフフしながら街の方へ歩いて行った。
なんなん、アレ。女子って怖いわぁ。
無限レベル上げは鬼の所業。




