37 橋を架ける
何事も無く交代時間になり、もう一度眠りに就く前に、シシリアのパーティーの事を少し考えてみた。
レベルが低い、女子だけのパーティーと言うのは狙われやすい。シシリアの事だから、(色んな意味で)何が有っても守れるし、レベルが上がればそれなりのパーティーを組む事を考えていたのだろ。しかし、知り合いであるオレ、かつ不足職のクレリックに狙いを定めて捕まえに来たわけだ。
天上の民であれば、色々な意味で地上の民へ手は出せない。そこも安心ポイントなのだろう。運悪く捕まっちゃったよな……。だが、かつての同僚を見捨てるのも忍びない。出来る範囲で手を貸す事にするか。
ここまで考えがまとまったところで、オレは再び即座に眠りに入った。我ながら、すごい特技だ。
日が昇ると朝食を摂ってまた上の階を目指す。
ところが、何階歩を進めても元の部屋に戻って来てしまう場所に当たってしまった。戻っても他に道は埋め尽くしてしまい、他の道に進む事が出来なくなった。
「ん-……」
マッピングを見ながら辺りを見、更に天井を見る。そこには崩れかけた上る階段が有った。真ん中がぽっかり抜けたようになっている。
あそこを上らないとダメだろうな。
「シシリア」
「はいはい?」
「お前、ちょっとあそこに行け」
「何の冗談ですか!?」
「冗談だ。お前だったらフックを投げて行けるかと思ったんだが」
「流石に無理ですね。矢の重さが違ってしまうので、投げられないです」
やっぱりそうか。仕方無いな、上手くいくか分からないが。
「センパイ、何やってるんですか?」
「石にロープを括りつけて、階段の手すりに巻き付けてみる」
オレはそう言うと、こぶし大のやや尖った石にロープを括りつけて投げる。
幸いにもグルグルと小柱に巻き付いてくれ、ぐいぐいと引っ張っても動かないようになった。
こちらの階の階段にも動かないように固定する。
縄を移動する事になってしまうが、流石に強風に煽られそうな外周の縄移動はしたくない。
「オレが先に行くから、皆は後で来てくれ。殿はアイクだな」
みんながコクコクと頷いているが、大丈夫だろうか。縄を移動するには結構移動するのは、結構筋力がいる。かと言って、今のウィリスのレベルで魔法で腕力がどうにかなる訳じゃないので、単純な自分の腕力だ。
最初にぐいぐいと縄のたるみを確かめると、今の所緩んでいる感じはしない。オレが渡った後に上の階段に着いた分を結び直せばいい。
「よし、行くぞ」
グッと腕に力を入れて、渡って行く。距離自体は大したことは無いので、危なげなく渡る事が出来た。
残りの4人はオレが手を伸ばし何とか引っ張り上げる。
「ふー、地上までの高さを見ると、6階……かな?」
行きつ戻りつしていたが、ようやく新しい階層に上がれたようだ。
新しい階層に着くやいなや、すぐに禍々しい青い炎を纏った、翼の付いた蛇が出て来た。数は4。
「セルフィ、サーチ!」
「は、はい。『サーチ』! 名前はロサンド、レベル15。弱点は氷です!」
「付与魔法を押さえて、氷で翼を凍らせてくれ」
「はい、『アイスボール』!」
飛ばした魔法が、翼の一部をぴしりと凍らせる。
それに伴って、スムーズに飛ぶことが出来なくなり、動きがぎこちなくなった。まだ階段の近くなのでパティとアイクが動く事が難しく、シシリア頼みになってしまった。
「『疾風』!」
シシリアが三本の矢をつがえ、連射する。それぞれが一部をかすめ、それなりに傷をつけた。無傷な一匹は、即座にこちらに向かってきた。
「アイク!」
「はい!」
二人が戦うには狭いが、1人なら問題が無い。アイクの個人的な実力も見たい。足元の危ない通路を、低い姿勢で駆けて行く。敵に肉薄した時に、縦に構えると言うよりも、突き刺すように突進する。
その動きに反応出来なかった敵は、半分に分断され、階段下へ落ちて行った。
残りの羽が凍った3匹は、更にシシリアの『迅雷』を食らった上でウィリスのアイスボールで氷漬けになり、ゴトリと床に転がった。それにパティが止めを刺して歩く。
「あー、今回は良い所無しだったなー」
パティは、唇を尖らせて拗ねている。
「オレなんか戦ってもいないぞ」
しかし、それは慰めにもなっていなかったらしく。
「セネカさんは、ちゃんと指示を出してるじゃないですかー」
パティの機嫌は、その後、中々良くならなかった。
自分の指示の出し方は、まだまだのようだ。




