35 おかわりお断り
明日も、お昼目安です。
「せーの!」
シシリアの掛け声で一歩を踏み入れる。
その途端、ぐにゃりとした目眩がして、土の地面に降り立つ。
後ろを振り向くと、既に出口が閉じられていた。
「違う空間に来るって言うのは、この事か」
通用するか分からないけど、念の為にマッピングはしておくか。
「わあ、洞窟に入った筈なのに、上に登って行くんですね」
上を見上げたアイクが目を丸くした。
そう。土の上に降り立ったのに、天上に向かって階段があちこちに伸びている、所謂、塔の体を成していた。壁は高さこそ有るものの、天井近くは空いている。よじ登れればなぁ。この階段を利用すれば、上に行けるという事だろう。何階ほど上に上る必要が有るか分からないが、おそらく上に行けば行くほど良い物が取れるのだろう。
「今回は、塔なんですねえ」
シシリアが顎に手を添えて、感慨深げに呟く。
「この前の階層が変わるダンジョンと何が違うんだ?せいぜい、それがダンジョン全体になっただけじゃないか?」
「うー……ん、階段が移動したりというか、この様子だと空間が歪んで、目標と違う部屋に飛ばされるみたいなんですよね。マッピングするのも苦労するかもです」
「それなら、部屋に印を付けながら移動するしか無いな。帰ってきているパーティーが9割居るって事は、法則性はあるんだろう。慎重にいくぞ」
ダンジョンに入ると、高い壁に遮られて無数の階段が伸びているのが見える。
飛べれば早い話なのだが、そういう訳にいかない。まずは自分のいる部屋をメモる。
よし、進もう。
オレ達が出た部屋は殺風景な荒れた部屋で、どこぞへと道がいくつか進んでいる。とりあえず、一番近そうな階段を目指すがそこへは直接行く事は出来なかった。
一番近い場所すら、回り道をしなければいけないとは……まことにもって、面倒くさい。
元の部屋に戻り、回り道をして階段の方へ歩いて行くと、最初の階段が有る部屋に着いた。まずはそこへ上って行く。今度は階段だけが無数に見える部屋に見えた。これはまた、上に行く階段を選ばないといけないな。
塔の壁の小窓からはちらりと地面が見え、ここが2階だと分かる。
そのまま3階を目指して歩いて、新しい階段を登った所、今度は登った場所は行き止まりだった。
これは……階段の上り下りだけできつそうだ。
しかたなく2階へ戻り、また違う部屋へ目指して歩いて行くと、角でモンスターに出会う。塔でに出会うのにふさわしい、翼が有る黒いトカゲのようなモンスターだった。大きさは50センチメートルほどか。
口から氷のような白い息を吐きながら、くるくると天井付近を旋回する。
「ウィリス、『サーチ』!」
「『サーチ』!ダークネス・リザード、レベル13。弱点は光と火です」
「よしきた! 全員一瞬目を瞑れ!『ライト』!!」
超強力なライトを使うと、目が潰れるような光が出た。これで敵もクラクラである。
「ウィリス、武器への火属性の属性付与の後は待機!まずは翼を狙え!」
「はい!」
それぞれが返事をし、オレの指示通りに散って動いてくれる。まずは火の属性が付与されたシシリアの『迅雷』で無数の矢が敵に降り注ぐ。それが翼や敵の体をチリチリと焼いて、敵はややバランスを崩す。
そこへウィリスがファイヤーボールを打ち込むが、敵はヘロヘロと飛びながらも、それを回避した。
下へ墜落しそうになったところで「キゥキゥキゥ!!」と超音波のようなような音が直接脳を揺さぶる。
それを聞いたのか、おかわりで二匹がやってきた。
火魔法を感知したのか、二匹ともウィリスに向かう。
「きゃっ……!」
そこまで肉薄されると、シシリアは矢を射れない。
その代わりにアイクとパティがダッシュしてダークネス・リザードに迫る。アイクの剣が一匹が翼を切断し。パティの剣がもう一匹の胴を掠る。
「パティ、アイク! 下がれ!」
指示通りに二人が横へステップで交わすと、そこに魔法を撃ちこむ」
「『ホーリー・バレッド』!!」
オレの正面に、何発もの光の弾が浮かび上がり、呪文と共に一斉に敵に着弾した。
魔法の勢いで起きた土埃が収まると、床の上に三匹が落ちていた。
「ホラ、パティとアイク、とどめをさせ」
「う、うん!」
「はい」
敵を倒したものの、まだまだ階段は続いている。
「階段で戦闘になると困るな。いつもより慎重に行こう」
みんな慎重な面持ちで頷いている。
…………正直言って、オレの太ももが悲鳴をあげているが、皆は平気そうなので言い出せなかった。
宜しければ、ブクマ、星などお願いいたします。




