34 燃えろよ燃えろ
明日もお昼です
「セネカさん、セネカさん、交代の時間です。お、起きてください」
テントの外から、若干あわあわした声がする。あー、火の番の交代時間か。
短い睡眠の後だったので、目をこすりながら外へ出る。
ウィリスはたっぷり寝たいという事で、一番最初の火の番をしていたのだった。
「おはよう、ウィリス」
「おはようございます、眠れましたか?」
「いやー、流石に外だとね。背中痛くて」
外で探索をしていたりダンジョンを歩いていたりして外に泊まる時には、荷物になるので薄い敷布を敷くのがせいぜいだ。仕方が無いが、寝るのには苦労する。
軽く雑談してからウィリスを解放し、火の番に専念する。
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しばらく我慢していたが、退屈だ。何か小さめの本でも持って来れば良かった。誰かを起こして喋る事も許されないので、絶賛暇である。
何か暇をつぶす方法ー……と考え込んでいると、僅かに結界に入ろうとするヤツの気配がした。
この森に居ると言う、大型のシルバーウルフかも知れない。
『リフレクション』
オレは結界を反撃型に変えると、ビシバシと当てていく。一見酷いように見えるが、相手はモンスターだし、別に進んで殺している訳でも無い。倒すのは、本気でこちらに危害を加えようとしているやつだけだ。
昼間焼肉パーティーしちゃったから、こっちへ来たのかも知れないな。焼肉の後片づけをしたとしても、完璧に匂いが消える訳でも無いし。服の臭いなどはクリーン魔法で飛ばしたが、辺りに漂っている匂いまではどうしようもない。
結界はこのキャンプ地の3周りくらいは遠くまで囲んでいる。そこに入ろうとしている敵を、一匹ずつ消していく。これは虐殺では無い。あくまで正当防衛である。
36匹目の敵を屠った所でもう敵が近付いてこなくなったので、群れが全滅したか逃げたかしたのだろう。気配が消えた。
その時、後ろのテントがもぞもぞ動いて、シシリアが出てくる。
「はよーッス、センパイ。今、結界で遊んでたでしょ」
なぜバレた。
そして、誰も起きていないので、口調が戻っている。
「気配が近付く度に、片っ端からバンバン消えてましたからね~、『こりゃ、やってるな』と。モグラ叩きみたいで、相変わらずエグイッスね!」
ぐっとサムズアップしてくるが、こちらが虐殺しているみたいな言い方すな。
いや、シシリアに何かを言っても無駄だ。
「とにかく交代だから、オレは寝るぞ。何も有る筈無いが、一応気を付けろよ」
「ハイハーイ!」
相変わらずノリが軽い奴である。
オレはもそもそと自分のテントに戻り、バッグを枕にして天井を見つめる。
「違う空間に、繋がるダンジョンねえ……」
前回と何が違うのだろうか。前回も、正体不明の階層に行った事は有るが、それとはまた違うのだろうか。
その後は朝まで火の番は無いので、安心してスヤリと寝る。
しかし、悲しいかな、やはり出勤時間に体は起きてしまうのだ。そんな体に沁み込むほど連勤してたって言うのは、何だか物悲しい物を感じるな。
オレがテントから出てくると、丁度パティとウィリスが鍋を火にかけて、お茶の準備をしていた。
「あ、おはようございます。早いんですね」
「おー、体が勝手に起きるからな。嫌な習慣だよ。どんなに夜更かししてても勝手に目が覚めるからね」
「な、なんか大変なんですね」
パティとウィリスが微妙な顔をしている。
背中から、ゴソゴソもそもそとテントが変形したと思ったら、シシリアが這い出て来た。
「みんな早いッs……早いね」
寝起きで口調が危うい。もう少しで被った猫の皮が剥がれる所だったぞ。
「ところでアイクは?」
「あ、何だか素振りに行ってます。近くに居るから周りの事は心配しないでくれって言ってましたけど」
「あれ、皆さん起きて来たんですね」
噂をすればなんとやら、だ。アイクはタオルで汗を拭きながら、戻って来た。
オレと違って、アイクの習慣は素振りなんだろうな。何か、かっけぇぇ。
「メンバー揃ったので、朝食が済んだら進みましょう!」
パティの声で、マグカップにそれぞれお茶を組んで、固形食糧と一緒に食べる。
「昨日は早めに休んだから、距離を稼ぎましょう!」
シシリアが意気揚々と弾んだ声色で先を指差す。でも、その先には、やはり獣道が続いているだけで、人が通っている気配が無い。本当にダンジョンに着くのだろうか。
その後、小さな戦闘は有ったものの、滞りなくただの穴倉にしか見えない場所に着いた。
「ここ、本当にダンジョンなの……?」
ウィリスが怖がってふるふるとしている。
小動物みたいに震えてるわ、可哀想に。
「うん、この中に一歩踏み込んだらちゃんとダンジョンだよ。さーて、行きましょ!」
オレ達は、こうして、シシリアの後に連なってダンジョンに吸い込まれていくのだった。




