32 強引な勧誘
日は巡って出発の日。やはりいつも通りの時間に目が覚めて、身繕いを済ませて待ち合わせ場所へ急ぐ。
15分前に着いたのに、そこには既にアイクが緊張した面持ちで立っていた。
「お、アイク早いじゃん」
「新顔が、遅刻する訳にいきませんからね」
良い心がけだなー。
雑談をしながら待っていると、待ち合わせ10分前に女子3人がやってくる。潜る期間が少々長い為、荷物も多めになってしまうのだ。しかし、何か有って離れ離れになった場合に食料が無いとどうしようもないので、自分で持つしかないので、どうしようもない。
一か所にいるだけなら、持ってあげてもいいんだけどね。分断された時に危ない。
「それじゃあ、行くか。案内はシシリアに任せていいのか?」
「オッケーです。このシシリアにお任せあれ」
ふと思い出したが、シシリアには注意しなければいけない事が有ったのだ。
「おい、シシリア」
前を歩いてるシシリアに横並びになり、小さい声で話を始める。
「お前、結構強引に勧誘したらしいな。可哀そうだから、そういうのは止めなさい」
「だって、センパイは欲しいし、どうせ前衛がパティだけじゃ不安だったから順当じゃありません?」
「そりゃ、バランスだけ見たらそうだけど、方法がひどいんよ」
「そですかねー?」
この子、自分が強引なの分かってないわぁ。
「もういいわ……せめて慮って優しくしてあげな……」
右手を上げて「慮ってます!」と言っているが、アテにならないのでオレが見守っててあげよう……。
そう心に決めていると、シシリアは森に向かって草を分け入り、どんどん獣道に入って行く。
「ちょちょちょい、これ本当に道なん?」
他の三人を見てみても、不安な顔だった。
「人気とは言え、場所は分かりにくい所ですからね。選ばれたパーティーだけが入れるんです」
選ばれてるのか? 無謀にしか見えないぞ。
進む事、半日。突如キャンプ地のような開けた場所に出た。
直系20メートルくらい有るだろう。
焚火の跡も有るし、確かにキャンプしていたパーティーがいるみたいだな。
「ここで、一回休憩入れておきましょうか。あまり長居時間歩いていても、次の休憩場所が少し離れているんで、今日の内に中継地まで進んでおきたいです」
皆一様に肩の力を抜き荷物を置く。
「あ、今回は携帯用折り畳み鍋を持ってきたぞ」
しばらく前にダンジョンに潜った時に手に入れたものだ。前回一緒に行った時に持ってこなくて怒られたからなー。
「良かった、これでお茶くらい飲めますね……」
セフィルがしみじみと言う。ごめんね、こんなに染み入る程言うなら、前回も持ってくれば良かったわ。
「ここなら前回使ったパーティーの簡易かまどでお茶くらいは飲めますね。私、ティーパック持ってきたんですよ」
他パーティーが使ったと思われる簡易かまどへ鍋を乗せて、ウィリスに水を入れてもらって沸かす。後は個人のコップにティーパックを入れて完成だ。まだ陽も高く、もう少し進むので簡単にナッツやドライフルーツを齧ってティータイムだ。旅にしては、のんびりとした時間である。
お茶を飲んだ後は日の始末をして、さあ出かけようか、と言う時に茂みが大きく揺れた。
ガサガサガサガサとデカい音をかけて出て来たのは、レッドベアという熊であった。
体長三メートル。スピードもかなりのものだ。
凶暴で、人を見たら襲ってくるので、熊撃退スプレーなどで逃げるのが一番だ。
そう、一般人ならね。
我々にとっては、素材&お肉にしか見えない。
「シールド! よし、行くぞ!アイクとパティは首を攻撃! シシリアは眉間を攻撃だ、ウィリスは目に風魔法!」
それぞれ頷いて、オレの指揮の通りに着実に動く。
ステップで左右に散って、両サイドから切り込む。
首は薄皮しか切れなかったらしく、大した出血もしていない。
「『迅雷』!」
シシリアの放った連射した矢が三本、眉間に刺さったが、これも決め手に欠けた。
「どいて下さい!『ウィンドカッター』!!」
グオオオオオォォォォウ!!
流石に目は効いたか。そこだけは無防備だが、熊にそこまで考えるだけの知能は無い。
ベアは辺りが見えなくなった事と、痛みで暴れ始めた。
辺り一帯を攻撃しようとめちゃくちゃに腕を振る。
「ウィリス、拘束魔法使えるか?」
「ま、まだです」
オレの問いに、ウィリスが目に見えて落ち込んだ。やっぱりこのレベル帯で拘束魔法は無理か。
「じゃあ、風で上から地面におしつけてくれ。少しだけ動きが鈍る」
「はい」
「『ウィンドウォール』!」




