31 冒険昔話
一日中ダラダラとして疲れを取り、次の日にシシリア達が泊っている宿屋へ5人が集合する。それぞれが飲み物とナッツなどを頼み、テーブルにつく。
店の中には、シシリア達をチラチラと見ている冒険者もいた。女子だけのパーティーとしても、追放パーティーとしても有名なのだろう。前に同じ馬車に乗った男冒険者も女だけのパーティーになっていた事を知っていたしな。そして、そのパーティーに男が二人も同じテーブルに着いている。端的に言って注目の的である。
「さて、昨日言ってたダンジョンだけど、遺跡の中に別の空間に繋がっている穴場な場所ですよ」
「何それコワイ」
オレは、反射的にそう言ってしまう。何でそんなダンジョン推すの?
「ちゃんと、帰って来てるパーティー居るんですってば。昨日も言いましたけど、かなり良い装備手に入るんですって」
「か、帰って来られる確率は?」
「敵にやられなければ9割くらい?」
シシリアの反応にウィリスがふるふると涙目で首を振る。そりゃ怖いよね、敵にやられなくても1割は帰って来ないなんて。オレはおでこに手を当てて、否やを唱える。
「安全マージンを、あまりにも考えて無くないか?」
「確かに、この辺のダンジョンじゃレベル的に微妙だし、行ってみても良いかも知れないですね」
アイクよ、自分の身がかなり危ないんだぞ?
「あ、推奨レベル14くらいだし! 浅い層からレベル上げながら行ったら良くない?」
良くない。が、これは強引に連れていかれるやつだ。きちんとフォローしてくれるからこそ、二人を纏めてこれたんだろうけど。最初からこれだと、マジでびびるわ。
事実アイクは驚いてるし。
「あいつ、ただ大口叩いてるだけじゃなくて、きちんと根拠が有って行動してるから、一見無理矢理に見えても大丈夫だよ。慣れてくれ」
「あ、ああ……」
オレが肩を叩いてフォローするが、目を丸くしたまま固まっている。
「取り敢えず、どういう旅程で行くんだ?」
「そですねー。明後日の出発で、馬車は出ていない所なんで歩きで二晩。ダンジョンの中は一週間籠りたいと思ってます。そうしたら2週間は食料とか準備した方がいいですよね。水はウィリスちゃんが出せますけど、魔法使えない所も有るかもですし、各自、必要最低限の準備はしといて下さいね」
それぞれ了解をし、その場は解散となった。
宿屋から出ると、後ろからアイクの声が掛かる。
「セネカさん! その、食事とかどうですか?」
そう言えば、殆ど会話してなかったな。これからパーティーを組むと言うのに、言葉もあまり交わして無かったので、この機会に仲良くなって置くべきだろう。
オレ達は場所を移し、街の食事処へ入った。時間は既に午後の2時。客足がいったん収まった時間なので、少々のおしゃべりは構わないだろう。男二人でカフェっていうのも何だか恥ずかしいしな。冒険者の男がカフェに入ってると言うのはあまり見た事が無い。
オレは肉たっぷりのハンバーガーとコーヒーを頼んで、アイクはカツレツに紅茶と言うお洒落さんなメニューだった。
何は無くとも腹に飯を入れようという事で、アイクはバクバクとカツレツをかきこんでいる。流石に食べ盛りな年頃だな。オレはそんな年頃は250年前に過ぎ去ったが。若いっていいね。
それぞれ頼んだ飯をやっつけると、飲み物をのみつつ会話を始める。
「あの、『火炎の蕾』のパーティーなんですが」
「ああ」
「以前に、クレリックが追放になったって本当ですか」
「本当らしいな」
「僕も、少しでも何かやっちゃったら追放ですかね」
心なしかブルブルしているが、大丈夫か。
「どうやって勧誘されたん?」
「いや、冒険者登録の拠点移動届け出してる時に、レベルと職を聞かれて……誘われていきなりだったんで、着いて来ちゃったんです……」
まるで詐欺じゃん。
「先に怯えてても仕方無いだろ。誰もかれも追放する訳じゃ無いだろ……多分。一応オレはシシリアと同郷だし、何か言いにくい事が有ったら、オレを通してくれれば大丈夫だ。適当に言っておくから」
「セネカさん、良い人なんですねぇ……」
こんな純真なヤツをひっかけるなんて、シシリアは悪女決定だな。
話は自然とアイクの前に居た街やパーティーの話になる。
「そういや、何でこの街には一人で来たんだ? ソロだったのか?」
「いえ、僕は……」
その瞬間、アイクの目からハイライトが消えた。
「パーティーリーダーが女性問題起こして、それが嫌で抜けて来たんです」
「……よくそれで、もう一回パーティー組もうと思ったな」
「僕は船に乗って元の国を離れたんですけど、港からこの街に来るまでに結構苦労して、やっぱりパーティー組むのが良いかなって。もう一人男性居るってシシリアさん言ってましたし、面接有るって聞いていたのでヤバそうなら辞退しようかと」
マジでオレを逃がさない為に、コイツ入れたな。巻き込まれたアイクが可哀想だ。天上に籍を置きながら悪魔のような奴だな。
「大丈夫だ、オレが悪いようにしないから」
「うっ、有難うございます」
食事処を出た後で、アイクはまだこの街に来て間もないという事で、旅に出る準備ができる店をあちこち回る。最後は宿屋に送り届けて、めちゃくちゃ感謝された。
次にシシリアに会った時には、説教だな。




