29 常識を問うても
明日からはお昼固定になります
帰りの馬車では戦利品を分け合い、今回の企画の成功を称え合う。今度は、お互いにもう少しレベルを上げてからまたやろうと約束をして、街の馬車降り場で別れてギルドへ向かう。
「よくご無事でしたね。話を聞いた時には、止めようとして、上と揉めていたのですが、その間に出発して しまって、心配していたんですよ?」
どうやら受付嬢に散々心配をかけていたらしい。
「とくに、ルドヴィカ様!! 冒険者証を見せて下さい」
すごい剣幕で捲し立てられたので、思わず素直に渡してしまった。
「なっっっっんですか! コレ!! 前回見せていただいた時はレベル8でしたよね?もう12じゃないですか!」
ここまで一息で息継ぎ無しで言われてしまった。
すごい肺活量だな。
考えてみたら、シシリアの時もギルド依頼では無かったし、今回もそうだったので特にギルドに申告していなかったのだ。
「もーうっ!」
ギルド嬢は頭を抱えて天を仰いでいる。
「はあ、はあ……」
「気持ちは落ち着いたか?」
オレは、おっかなびっくり声をかける。
「もう、いいです……ルドヴィカ様に常識を問うても無駄なようですね……」
受付嬢は、ふぅーと息を吐いて肩を落としていた。
「でも、今回はパーティーの楽しさが分かった気がするから、今度は前向きに考えてみるよ」
「本当ですね?」
オレが受付嬢に怒られている間にゴブリンやオークなどの素材などの買取り査定も終わったらしく、セウスがこちらへやって来た。
「おーい、分け前だ。今回は楽しかったよ、機会が有ったらまた組もうぜ!」
三人は手を振りギルドから出て行く。いやー、有意義だったね。拘束時間も5日と短かったし。
また、やってみてもいいな。
オレが鼻歌交じりでギルドから出て行こうと扉に手をかけると、背中から声がかかる。
「あー、見ーつけた、センパーイ!」
げっ、シシリア。
「あ、『げっ』て顔しましたね!?『げっ』て。それより、探してたんですよー」
何だか、嫌な予感がする。
「前衛候補見つけたんですよね。センパイにも面接に参加してもらおうと思いまして!」
てへっ!と可愛らしく笑って見せる。だが、そのスマイルは、オレには通用しないぞ。
「何で、オレが……」
「前衛見つけたらパーティーに入ってくれる約束でしたよね?」
そんな約束をしたような、してないような?
「そんな、覚えてないって顔をしてもダメです。ホラ、行きますよー」
シシリアは、恐ろしい力でオレの腕をつかみ、連行していく。街中を、ずるずると罪人のように引きずられ、シシリア達が泊っている宿屋へ着いた。
「あ、セネカさん、お久しぶりです!」
「この間は、あ、有難うございました」
シシリアも、パティやウィリス程度に抑えてくれないかな。パワー有りすぎるんよ、この子。
連れて行かれた先はシシリア達が借りてる宿屋で、食堂のテーブルに見慣れない男が1人と、パティとウィリスが座っている。
男の隣の空いた席に座る。4対1って、オレの時の時より気が重いと思うんだが。
「そうね、まずは自己紹介から始めてもらいましょうか」
「はい、僕はアイク・ウォレフです。剣士で、田舎から、つい最近こちらへ出てきました」
アイクは亜麻色の髪とターコイズブルーの瞳で、割と若そうに見える。
シシリアは設定年齢は18歳(爆笑した)らしいので、パティとウィリスも似たような物だろう。同じくらいの年代が良いのだが。
「自分、年齢とレベルは?」
お見合いの「ご趣味は?」のノリで聞いてみる。
「19歳、レベルは13です。戦士で、武器は片手剣です」
堂々とした態度で有り、傲慢さは無く、かと言って臆病そうでもない。
「何でソロだったんだ?」
「いや、田舎から出て来たばっかりだったんで、勝手が分からず……。街を把握するために、お使いクエストこなしてたんです」
ふーん。
悪い子じゃないっぽいじゃん。
「そっちの女子達はもう紹介受けただろうけど、オレはセネカ・ルドヴィカ。シシアリアと同郷の者だ。……実質、これってもう単なる顔合わせだろ?」
オレはシシリアの方を睨む。
「だって、決まっちゃわないと逃げちゃうと思いましたんで! これなら、センパイも入るしか無いですし、自分の言った事には責任持ちましょうね」
う、ぬぬぬぅ。
正直、こんなに早く見つかるとは思わなかった。こんな田舎の純朴性な青年を連れてくるなぞ。
しかし、男に二言は無い。オレは、あっさりと白旗を上げる事となった




