24 魚魚魚
今度は滑らないように速度を落として進んでいく。段々と道が、普通の土から川の間を縫うような道へ変化していく。
いくつもの道を通って来て壁に辿り着いた所で、隣の空間に繋がる穴が有った。覗いてみると……。
ダンジョンの中に……橋?
壁と壁の間に川が通っており、どうやって通った物かと思ったが、大きな眼鏡橋があった。キョロキョロとあちこちを見ても、他に道のような物は無い。十中八九、下の川から何かが出てきてバクりだ。
しかし、他に横道も無く、ここを通るしかない。他の道は、マッピング上は全て潰していて、ここしか通れる場所が無いのだ。
「おー……下からの攻撃に気を付けながら行くぞ」
橋に足を掛けると、ミシミシと音がして何となく危うげだ。正直言って、川に落ちそうである。
それでも半分ほどまでくると、何とか周りを見渡す事が出来た。
開けた場所が、逆に不安になって来る。これまで狭い道ばかり通って来たので開放感が無防備で怖くなるのだ。遠くまで見回すと、水面から何かがこちらへ猛烈なスピードでこちらに迫って来ていた。
大きいな。
ん?
背びれ……が、遠くなのに、すごく大きいのだが!!
近づいたらどんな大きさなんだ!?
ビュオワァァァァァーーーー!
そんな音をさせながら、真っすぐにこちらへ近づいてきたと思うと、ザバァッと何かがオレの身長を優に飛び越す高さで飛び上がった。逆光を背に受け、こちらへ飛び込んできたのは……魚、に足が付いたモンスターだった。
シシリアの言った通りだな。あれが、ディープワン……ん!? え、なにあれ。
足! 足が、ごっつい!!
魚自体はただの大型犬程でかさではあるが、普通の魚である。しかし足が、逞しい……いわばマッチョだ。
「き、気持ち悪い」
オレが眩暈を起こしていると、シシリアが眉を顰めて言う。
・・・・・
「あいつ、走って来るんですよ」
「え?」
オレが身構えるまでもなく、ディープワンが足で駆けて突進してくる。魚のくせに!!
ガツン!
オレに突撃する衝撃で、大きな音がした。シールドはしてはいたが、リフレクションでは無いので、体に怪我は追わずとも、オレの方が体ごと吹っ飛んだ。
「っと!!」
オレはぎりぎりで踏ん張って手すりを掴むと、ディープワンを睨みつける。かと言って魚に表情が有る訳も無く、その虚無顔からは何も読み取れない。
オレは槍を構えると、パティの横に並ぶ。
「突進に備えるぞ!あいつが突撃してきたら、カウンターだ」
「う、うん」
パティがぎこちなく頷くと、隣に並んで剣を構える。オレが吹っ飛ばされたのを見たせいか、少々動揺しているようだ。まあ、オレも見方がこんな魚に吹っ飛ばされたらビビるわ。
またもや突進をしてくると、パティとオレの間に飛び込んでくる。
パティが反応出来ていなかったので、ここはオレがやらないわけにいかない。
「させるかよ!」
眉間を突き刺すと、「ギュエ!!」と喉の奥から絞り出されたような声を漏らす。まだ死ぬには至らないようで、槍を額から抜き再度切りつけようとした時に、更に橋の下からもう一匹躍り上がって来た。
「二匹かよ……ウィリス、『サーチ』!!」
「は、はい!」
唖然とした様子だったウィリスが、ようやく動いた。
「ディープワン レベル10
胴とエラが弱点
サンダーも有効 です!」
「付与魔法頼む!」
「エンチャント・サンダー!!」
ウィリスが杖を掲げ高らかに呪文を唱えると、静電気が全身を覆ったような感覚がし、パチパチと武器に雷が宿る。
「まずは先に出てきたやつの方を攻撃するぞ! 切りつけた後、シシリアは弓!」
「了解です!」
息が有ってるとは言い切れないが、なるべくパティの剣の軌跡に合わせて槍で突く。ディープワンは、胴体を切りつけられて青い血を流しながらたたらを踏んだ。
「『迅雷』!!」
シシリアはそれを逃さずに、捕らえきれない程の速さで矢を射った。その矢も寸分たがわずと言っていいほど切りつけた傷に吸い込まれる。
ギョゲゲギュオーーーー!!
ディープワンが大きな叫び声をあげて、泡を吹きながら橋の下に落ちて行った。
残るは一匹!!
そう思って睨みつけると、先ほどの個体よりは慎重なようで、じりじりとオレ達との距離を測っていた。
ここが草原なら、枯れ草が丸く固まった、タンブルウィードがコロコロと転がってきそうな雰囲気である。見た目だけなら決闘だ。。
しかし、一対一の戦いでは無いので、先の一匹と同じに屠らせてもらおう。
先にシシリアに足元を狙わせて動きを封じ、オレの突きとパティの切りつけで腹に一文字の傷が出来た所に、ウィリスがサンダーを打ち込む。
それだけでは流石に死なかったので、オレが懐に入り、すれ違いざまにエラの内側に槍を打ち込んだ。こちらが素早かったから出来た芸当だ。それを合図にパティとシシリアが、もう前回の傷をなぞるように攻撃を打ち込んだ。
元々傷が有った場所に、更に深く傷が入ったので、辺りはディープワンの青い血で染め上げられている。
グェ……ゲェェ……
ぐらりと体が傾き倒れると、苦しげな声を出していたが、やがて事切れた。
首が有る動物なら首を落としても良かったのだが、首が無かったのだ。
斯くしてマッチョな足の付いた魚との戦闘は終わった。
ーーーーー別の意味で怖かったな。




