23 下へ参ります
小部屋のボス以外は特筆するような事も無く、昼間のような明るさのライトで歩いていく。逃げる場所の無い敵は、棒立ちと同じだ。経験値が貯まっていくだけである。
「あ、有りましたね……」
ウィリスが指差す通りに、下に続く階段が見える。女子三人を見ると、結構疲労しているな。オレも多少は疲れているので、今日はここまでか。
ーーー嘘です、オレも疲れてます。
「とりあえず、汚れを落とすか『クリーン』。今日は、もう休もう」
三人は、それだけで顔が明るくなる。
「ダンジョンの中で、この清潔感……!」
「嬉しいです!」
「センパイ、サイコー!」
三者三様に喜びを口にして、はしゃぐ。
とりあえず下に薄い毛布を引いて、水を飲みながら固形食糧をもぐもぐする。
ん?何か忘れてるような……。
「あ」
「何ですか、センパイ」
「前にダンジョンで、折り畳み用鍋手に入れたんだった」
記憶の彼方にあった物が、”食事”を引き金に、記憶の海から登って来た。
「もー!何で今頃言うんです!!」
「でも、火種とか無いしな。一人で四人用とか使わないと思って忘れてたわ」
「今度は、準備して下さいよ!」
「え、やだ。次とか無いでしょ」
分かんないでしょー! とシシリアはジタバタしながら言っているが、ハーレムパーティーじゃ無くなってから言って欲しい。オレは今回だけだと思ったから、引き受けたのだ。せめてもう一人男が居ないと、他の冒険者にひそひそする事は目に見えてる。って言うか、もう言われてるだろうな。
せめて、もう少し信用出来る男を連れて来てから誘ってくれと言うと、シシリアがオレをぽかすか殴る。殴られたかて、オレの名誉の方が大事なのだ。男一人でフォローしきるって言うのも難しいし。
「ほら、結界張っとくから早く寝な」
オレが結界石(範囲で結界を張る為の石)を四隅に起き、念の為に、更に上から結界魔法をかけておく。
結界石を置いているという事と一応敵が入ってこないであろうセーフティーエリアで安心したのか、比較的深く寝ている。
女3人だけのパーティーじゃ限界があるよなぁ……。早く良い人見つかると良いね。
体感で朝となり、皆を起こそうとしたが、冒険者だけあってまだ頭がハッキリとしないながらもそれぞれ起きて来た。朝食をもそもそと食べる。
ーーーーーーーーーーーもし次が有れば、鍋を使って簡単なスープくらいは飲みたいな。冒険者向けの道具を扱う店で、お湯に溶く食料も有った筈だ。今回はそれも考えずに来てしまったので、次回に生かしたい。ここまで潜るなら、固形食糧だけだと、味気なさ過ぎて飽きてくるぞ。
準備が終わったら出発だ。
階段を降りていく。7階はーーーー湿地?
湖でなくて良かった、流石にレベル11じゃ浮遊魔法は使えないだろう。
「これは、どういうフロアなんだろうな、シシリア情報は?」
「水の生き物……ディープワンっていう、脚の生えた魚のモンスターが居るみたいですね。後は歯が有る大魚で、水辺から飛び出してくるとか」
「それは……階段一段上がって、サンダー唱えてみるか?」
オレがウィリスを見ると、ウィリスが首を振る。
「今の私では、フロアに響くようなサンダーは打てないです……」
そっちも無理かぁ。
しかし、フロアに出る敵も、そこまで強くなさそうである。
フロアの造りとしては、穴倉の中に道が作られている様相で、あちこちに水が滴り、苔むしている。
「足場が悪いな、気を付けて歩こう」
暗がりにライトを飛ばして、通路内を煌々と照らす。
このフロアは6層とは違ってそこまでは暗くない。しかし、暗いと、それだけで敵に有利になってしまう。
尤も、冒険者に有利なダンジョンなんて聞いた事は無いが。
ぴちょんぴちょんと、どこからか水が落ちている音がする。
急にひんやりとした湿気っぽい階層になったので、少々面食らう。
あつかったり、寒かったり。同じダンジョンとは思えないな。
足元がじっとりとして、どろどろしている場所も有る。慎重な足取りで歩を進める。
「わっ」
パティが脚を滑らせ、頭から転びそうになるのを、手を引いて体勢を整えさせる。
「大丈夫か」
「う、うん、有難うございます」
パティが赤くなって慌てて離れる。若者らしいなあ。
オレが感心してると、シシリアが横目で睨んでくる。
「現地人とは恋愛NGッスよ?」
始まっても居ない物語を進めようとするな。




