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天界からバカンスで降りて来たオレ、冒険者になって世界を満喫します!~バカンス先なのに、何故か後輩がいるのですが~  作者: 夢咲みやと


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21/29

21 八本までなら

明日もお昼更新です

「キャー!! キャー! キャー!!」


 5階層に、パティの悲鳴が響き渡る。響き渡る悲鳴に敵が寄って来る。寄って来た敵を順当に屠って行く。これはもう、戦闘と言うよりは作業だな。……パティの声はよく響く。

 武器に聖魔法を付与し、それぞれをバッタバッタとなぎ倒す簡単なお仕事になってしまっている。

 何せ、パティが叫ぶ限り敵は寄ってくる自動敵収集装置になっているのだ。


 完全に包囲されているので、後衛のシシリアとウィリスを挟んで、オレも前線に出ている。武器に触れた所から「じゅわっ」と蒸発していくので、大した手ごたえも無い。

 

 シシリアだけはゾンビ中心に攻撃をしている。レベル10でスケルトン相手に百発百中で当てるなんて、異様に見えてしまうので、ゾンビ中心なのだろう。


 そんな訳で、オレは自然とスケルトンを相手にする事になる。歯をカタカタと言わせ錆びついた剣や槍でこちらを攻撃してくる。苔や土が付いて、不潔感が増しているな。普段なら一気に浄化してしまうのだが、自分の冒険者カードに順当に経験値を貯めないと解除できる力が限られる。経験値の糧となりたまえ。


 早く、枷の無い生活をしたいものだ。流石に人間の寿命を考えると、場所を変えてレベルリセットからの再出発になるが仕方無いな。


 パティの叫び声が止んできたかと思って周りを見ると、パティの前の敵は、かなり減ってはいるが、まだいた。粗方片付いたのかと思ったのだが、単純に叫び疲れただけだったか。


「ホラ、今は敵が集まってるし、ファイア使え」


 オレがウィリスの背中をポンと叩くと、スッと背筋が伸びる。シシリアが前線で戦っていたので魔法を撃ちこめなかったのだろう。


「はい! 『ファイヤー!』『ファイヤー!』『ファイヤー!』『ファイヤー!』」


 おお、爆撃とも言える火系魔法を情け容赦なく打ち込んでいる。敵はプスプスと煙を立てて崩れて行った。


「やった? やったね! やった!」


 満足そうにふんすーと鼻息の荒いウィリスの隣で、パティがぴょんぴょんと飛び跳ねる。前線で誰よりも頑張ってたからね……。お兄さんは嬉しいよ。

 オレは、出会って間もない少女に後方兄面をして、うんうんと頷く。


「みんな、それなりに経験値入ったんじゃないか?」


 オレがそういうと、女子達三人は示し合わせたように『バッ』と冒険者証を見る。


「うわうわうわ、もううレベル11!! かつて無いスピードで貯まってる!」


「すごいですね……」


「いやいや、流石センパーイ!」


 こっちもそれなりに敵を倒していたので、もう10レベルだ。このレベル差なら、寄生とは言われないだろう。

 このフロアは粗方殲滅したと言っても良いので、更に次のフロアへ足を進める。


「シシリア、次のフロアの敵は?」


「うーん、ここまで来た事無かったんですけど、ギルドの本では暗闇から現れる影みたいな狼とか、目玉のお化けとか、全体的に擬態系のモンスターが多かった筈です」


 階段を降り切ると、聞いていた通り、誰が付けたのか分からないが、通路の端に蠟燭の明かりが揺れていた。灯りが有るのに足元が暗いって矛盾だよな。何の為の灯りなのかと言う。


『ライト』


 手のひらほどの光の玉がやや前方に言ったかと思うと、光を強め、昼のように明るくなる。


「ここまでします……?」


 シシリアが耳打ちをしてくるが、二人が全くの役に立たないと、流石にレベル上げすら出来ない。


「問題無いだろ、レベル上げさせるんだから、敵が見えない方が問題だ」


 そぉですけどー、とシシリアはもにょもにょ言ってるが、レベルを上げるのが先決だ。

 狩って狩って狩って狩って、狩り尽くす勢いでないと。


 そんなんじゃ3回層下には行けないぞ。


 オレが鼻息荒く拳を握ってると、シシリアガニヤニヤしながら耳元で囁く。


「虫が出てきたらどうするんですか? センパーイ」


「……8本までなら平気だ」


「じゃあ、蜘蛛までですね」


 それ以上足の有る敵が、また出ない事を祈る。






 しかし、暗がりの無いフロアで影に擬態をするモンスターなど、裸も同然で、バッタバッタと倒していく。30まで倒したところで、面倒になって数えるのを止めてしまった。


 コウモリも目玉も、灯りに照らされると驚いたように逃げようとしたが、それを逃すオレでは無い。オレ達の前に有るライトと、敵の背中に出すライトで挟み撃ちにする。


 そうすると、敵はあからさまにオロオロして、そこを一刀両断だ。


 ただ、このフロアは迷路のようになっており、地図を書かなければ、とてもでは無いが進めなかった。


 オレは右手の法則を使う事を諦め、ノートに地図を書き始める。距離感には自信が有るので、細かくメモれている筈だ。順当にマッピングしていると、有るところで気になる事が出て来た。


「ここに、どこからも入れない空間が有るな……」


「どういう事ですか?」


 手書きマップを覗いているオレの横から、パティがひょいと顔を出す。この子、ちょっと距離感がバグってるんだよな。シシリアの知り合いだとしても、そう簡単に男に触れちゃダメですよ?オレは変な気を起こしようが無いけど。


「どの方向から見ても入れない壁が有る、何かが有るとは思うけど、行っても良い物か悪い物か判別がつかないな」


 その部屋にボスと呼ばれる部屋の主が居るには、四方に壁を作るのは意味が分からないし、宝箱が有るにも、入れないのでは意味が無い。


 空間は10メートル四方ほどで、今オレ達の目の前に壁がそびえ立っている。

 

 さて、何が有るやら。


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