19 熱帯で出会った
「そこ!デーモン・バット行ったよ!!」
「ふん!ファイヤボール!!」
「よし来た!瞬速!!」
説明すると、蝙蝠をやっつけていたパティが敵を取り漏らし、一部をウィリスが炎の魔法で攻撃、その他をシシリアが残りを弓矢で攻撃している。
結果から言うと、オレは防御魔法をかけた後は、灯りとして突っ立っていただけである。
ーーーー以上現場からお送りしました。
ダンジョンの中は暗くて灯りが無くては歩けないが、それ以外はあまり活躍出来ていない。こんなんで良かったのか?
現在のオレ達は3階層にいる。今の所、特に危なげな様子は感じない。彼女らの自信のあり方も、不安の欠片も感じない。この後の階層で躓いたのだろうか。とは言え、女子だけのパーティーじゃそれだけで男から狙われやすいか。見張りの番も女子だけの体力じゃ厳しいだろうしな。
そう思いながら4階層に降りると、様子がガラッと変わった。植物生い茂る明るいフロアだった。更に言うなら、若干暑い。
足を踏み入れた途端に、女子三人の動きがぎこちなくなる。
「ここの敵が、見通しの悪い所からで出て来たり、遠くから猿に似た何かが、毒矢みたいな物を飛ばしてくるんですよ」
驚いてそこに立ち止まったオレの後ろから、シシリアが忌々しそうに言ってくる。
しかも、ウィリスまで眉を顰めて呟く。
「虫も出るから嫌い……」
なるほど。死角からの攻撃の上に、虫が嫌いな人間には辛い階層だな。
「ここを越えたら、今度は謎にレンガで整備された階層になるんだよね」
パティが言うに、これまで凸凹した穴倉を歩いてきたのに、ジャングルの次は一転まったく違う環境になるそうだ。普通逆だと思うのだが。ダンジョンを作った何かが地下から地上へ作って来たが、何か原因が有って、地上まで手が伸びていないのかもしれない。
敵の腹に向かっているような物なので、あまり気分の良い物では無い。後ろを振り向くと、これまでと違い。パティとウィリスの二人は不安そうな顔をしている。シシリアはと言えば、面倒くさそうだが、それだけだ。おそらしく、庇いながらも力をセーブしなくてはいけないので、その加減が難しいのだろう。
「基本はウィリスがサーチを使って、オレが目視する。この環境なら虫とかで沢山反応してしまうだろうから、その中でも大きい反応を教えてくれ。オレはこれでも目が良い方だ」
「ひぇっ……は、はい」
「サーチで反応しきれない奴はパティに頼むな」
「分かった!」
新入りの身では有るが、オレが指示を出していいんだろうか。放っておいてもシシリアが出せると言えば出せると思うが、サーチしてる間に近辺の敵はどう対応するのか、という話になってしまう。オレが出した方が早くは有る。
いざ進むとなると、ウィリスの手が一瞬震えたが、ロッドを構えて静かに呪文を唱える。
「サーチ」
今、ウィリスの目には生き物の居場所がぼんやり写っているだろう。
オレもこっそりサーチを唱える。こちらでも用心しておくに限る。
「あ、そこに大きな反応が!!」
唱えるや否や、オレの10メートルほど後ろを指す。反応がさほど大きくない『ジャングル・アイソポッド』と言う虫だった。虫かー、あまりデカいのはいやだな。
しかし、オレの前に現れたのは。
足の沢山有る、60センチメートルくらいの昆虫とも蟹ともつかないモンスターであった。
ひっっっ
こ、こ、ここんなに足が多いとか聞いてない!!
オレは足が沢山ある動物は苦手なんだ!!
恐怖のあまり最大火力の魔法をぶっ放そうとした時に、耳の後ろから『ピィン!』と空気を裂く音がした。
ザンッ!!
敵に矢が命中して、目の前のアイソポッドがスローモーションのように吹っ飛ぶ。
はー、ビビッた、心臓が口から飛び出そうだ。勢いで天界に戻るかと思ったわ。
「……センパイ、もしかしてビビりました?」
「ファーストコンタクトがあんな虫じゃ、驚くわ」
「虫が苦手系男子ですかー……」
「多くないなら、大丈夫だって!」
「本当ですかねぇ」
早く下の階層に行きたい!!寧ろダンジョン外に出たいまで有るぞ!!
「ま、他の子も虫は苦手系なんで、速足で駆け抜けると思うんで大丈夫ですよ」
シシリアはオレの頭をよしよしと撫でるが、何たる屈辱だ。
そして、帰りにもここを通らねばならない事に気が付いてゲッソリする。
うん、この依頼を早く済ませてしまおう。




