13 情け容赦なく
次はお昼更新です
コルルルルル!
子供のうがいのような音をさせながら、キャタピラーが突進してきた。知能が低い魔物なので、無鉄砲で向かってくるだけだで連携なんてものは無い。
ツノをオレに向けて芋虫とは思えない速度で走って来る。ほぼジャンプしていると言っても良い。
もちろんそれを真面目に受ける筋合いは無いので、すれ違いざまに一本の角の根元を槍でガツンと破壊する。ピンポイントで力を入れれば、爆散せずに、根元から奇麗に割れるのだ。
それだけでそいつは気を失ったようで、動かなくなった。しかし、何を思ったのか、それを見た他の芋虫が、青くなったり赤くなったりと点滅している。……芋虫なのに動揺してるのか?
そんな知識が有ったとは驚きである。しかし、そこで手を緩めるオレでは無い。ジリジリと後退する芋虫に襲い掛かり、次々と仕留めていく。
振り向きざまに一体、足を止めさせてから上から眉間を狙って一体、下から突き上げ、下に落ちてきたのを目掛けて一体。依頼の数は仕留めているから良いと言えば良いのだが、出てきた分を全部仕留められなかったので負けた気分だ。ーーー狂戦士すぎるか?
とにかく、倒したキャタピラー三体(+一本)分のツノを、背負い鞄に入れ、ホビット・ウルフの毛皮を狩りに行く事にした。
キャタピラーの縄張りからやや歩いて、ホビット・ウルフの縄張りへ張り切って突っ込んでいく。縄張りに突っ込んで行けば狙われるのは必定で、あっという間に囲まれ、躊躇なく飛び出してきた。
素早いと言っても図鑑上の話で、流石にオレの地力に叶う筈も無い。
連携を取りながらオレに向かってくるが、そんな事は無意味だ。向かってくる敵向かってくる敵、すべてを屠る。流石に必要以上に倒すのには天界に属している者として気が引ける。
せめて、こいつらの毛皮が人の役に立てば良いんだが。
オレは胸の中で手を組み、祈りを唱えながら、せめてもの情けで一撃で止めを刺していく。
毛皮を5匹。今回は川までは遠かったのだが、血抜きなどをしないと、重くて街まで持って行けない。二匹ずつ川に運ぶと、先に運んだウルフの血抜きをしている間に、次のウルフを運んでくる。川が赤色になって自分が命を奪った事にやや良心が咎めるが、地上に下りなくても命を貰って生きているので、それを自分がやるか他人がやるかだ。
ため息を吐くと、血と内臓が抜けて軽くなったウルフの毛皮を持って街へ戻る。
門の所で門番に冒険者証を提示すると、親父がガシガシと頭をかく。
「これはまた……坊主、今のレベルいくつだ?」
「6だ。多分、次に何かこなすと7になると思うぞ」
「死に急いでるなぁ。本当に気を付けろよ」
「分かってるって。これでも安全マージン取ってるんだから」
通常の力をもってすれば、爆散して肉塊になってしまい、破片も残らないだろう。
セーブしているから、この程度で済んでいるのである。オレの安全は心配しようも無い。
冒険者ギルドに戻ると、捕って来た獲物を窓口にどさりと置くと、ギルド嬢がドン引きした顔をする。その顔を他所に依頼書とを出すと、顔を引きつらせながら解体部門のギルド員を呼び、換金してもらい、懐が少し暖かくなった。
もう何件か依頼をこなせば、ランクも上がるかも知れない。
今夜は外で食べる事にしよう。そう決めてあちこち探すうちに、串焼き屋を見つける。香ばしい匂いはここか……、豚串と牛串とホタテ串の三本を買って、更に果実水を買う。これで今日は串焼きパーティーだ!!さらにバゲットを買えば完璧である。
オレは、そそくさと宿に戻り、部屋のテーブルに荷物を置き、椅子にどっかりと座る。素晴らしい……これぞ冒険者だ。自分で稼いだ金で飯を買い宿代を稼ぐ。これぞオレが求めていた姿だ。
天界の転生課より冒険者の方が向いているんじゃ!? 命をいただくのは抵抗が無い訳では無いが、依頼が有るのは大抵は魔物である。少しだけ気持ちが楽だ。
天界に居ても、肉も魚も食べるしね。
それにしても美味い。ギルドに居る冒険者のおススメを聞いて買ってきたのだが、ばっちり好みだ。冒険者は汗をかくので、少し塩が多めなのが難点だが、それは、もうそういうものだと思ってしまえば良い。果実水と一緒に摂れば、良い具合に中和されてバゲットも進む事、進む事。
もぐもぐと口を動かしながら、明日の予定を立てる。
午前中にダンジョンに行って、午後はボアを狩ればいいだろう。
ダンジョンではアイテム探しより、レベル上げ目当てだけだし、ボアは荷物になるからな。
食べ終わってから祈りを終えると、先ほど汲んできた水で顔と体を拭いて、後はクリーン魔法をかける。そして上着を脱いで楽な格好になってベッドへ入る。おっと、下は履いてるぞ?
こうして依頼が二件終わり、爽やかな気持ちで寝入ることが出来た。スヤァ。




