11 姫パーティー
昼に10を投稿しています。
次は20時に。
女性は若草色のサラサラの髪、金色の悪戯っぽい瞳の人好きのする女性だ。温厚そうな邪気の無い笑顔でニコニコ近付いてくる。
「何か用か?」
オレがぶっきらぼうに言うと、女性は目をしばたたかせると、気を取り直したように軽く咳ばらいをすると、再び話しかけてくる。
「あなたでしょ、ここ数日だけで急激にレベル上げてるの。もうそろそろパーティー組んだ方が良くない?実は私達、クレリックを探しているの。みんな今はレベル8だけど、レベルが低くてもクレリックなら助かるわ」
「ふーん」
オレは、しばし考える。
女性の後ろには、推定、戦士、魔法使い、斥候がい居る。女性は……何と、戦士風の恰好をしていた。この構成って、仲間うちで女をめぐって血みどろの戦いが発生するパーティーじゃないか?
ラウンジを横目で見ると、笑いをこらえてる者、呆れている者、気の毒そうな者と千差万別だ。
要するに、このパーティーは何か問題が有るという事だ。
ーーー面白い、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と言うが、何も得る物が無くても、オレにウケれば問題が無い。よし、行こうじゃないか。
「よし、一緒に行こう、オレはセネカ・ルドヴィカ。クレリックだ」
「私はエッタ・スカルゴよ。ヨロシクね、セネカ」
初対面で呼び捨てか。男なら有りがちなんだが、女性に名乗って、すぐに下の名前で呼んでくるとは珍しい。と言うか、社会人になってから初めてだな。
幼稚舎だって「くん」付けだったぞ。
まあ、そんな事はいい。オレは面白さを取るぜ!
そんな訳でその女性に着いていって、仲間を紹介される。
オレが予想通りの職業で、名前は戦士がオーガン・アイゼス、魔法使いがルイス・アイゼス、シーフがアクア・モーゼスと紹介される。
面倒くさいから心の中では職業名で言おう。正直覚えていられない。
エッタが紹介して、それぞれと握手をすると、皆やけに力が強い。ははは、これは面白い物が見れそうだ。
「じゃあ、近くの遺跡に行かないか。あそこはスライムの魔石も取れるし、レベル15程度までだけど、浅い層なら俺達でも十分通用するはずだ」
こうして、あれよあれよと言う間にパーティーを組まされてしまった。
一応遺跡へ行くので、もしもの時のために、食料を準備してから集合して行く事になり一旦別れた。
遺跡の前で待っていると、4人がわいわい言いながら来た
ーーーーーー仲が宜しい事で。
「じゃあ、行きましょう!」
「おおー!」
エッタが号令をかけると、他の三人が追随する。
「おー……」
そうして、手慣れているのか、戦士を先頭にしてずんずん入って行く。敵のレベルは1から始まって6程になり、オレ達も3階層まで来た。
一般的に、敵のレベルは、階層を経る毎に強くなっていく。こいつらはそれまではオレに露払いをさせ、後ろからキャッキャと言いながら着いてくる。
思わず戦士に倒さないのかというと、オレのレベルが上がらないから、ここでレベルを上げた方が良いと偉そうに言われた。
そろそろ敵のレベルがオレの冒険者証より高くなってきているのだが……。確かにオレのレベルは1上がったが、何もしないのはどうなん?
敵のレベルが6になってから、初めて他の人間が前に出てくる。
ん?
オレが先頭にならなくなっても良くなったので、後ろに下がって回復をかけるのを待っていると、
4人がかりで敵の体力を1だけ残し、エッタが止めをさすという、どこからどう見てもパワーレベリングです有難うございます。な状況が始まった。
こうやって、エッタのレベルも8に上がっていた訳だ。
「いたーい!」
エッタが小さな悲鳴とも言えない悲鳴を上げると、戦士がこちらへずんずんと歩いてくる。
「おい、エッタたんが怪我をしたんだぞ! さっさと治せよ!」
敵に止めを刺した後に本人が怪我をしたと言った場所を見ると、紙で切ったん?程度のかすり傷しか負っていなかった。これを治すか治さないかは微妙だが、オレなら治さないかな。
しかし、他にする事もないので、適当に治しておく。
「ファースト・エイド」
傷口に近づけたオレの指が光ると、みるみるうちに傷はふさがっていく。
「有難う!」
エッタが笑顔を見せると、背中側から舌打ちが聞こえる。
「チッ、気が利かねーな」
これは、思ったよりも、ろくでもないパーティーだな。
「オーガン、そんな事言わないの! 治してくれたんだから」
「エッタたんがそう言うなら良いけど……」
どういう茶番?
そんな調子のままエッタのレベルが9まで上がると、そろそろ引き上げようという事になった。
上までの道を歩いていると、エッタが腕に絡みついてきた。
「ねえ、セネカって腕が良いのね、このまま正式にうちに来ない? 前の人が抜けちゃったの」
それを聞くと、先に歩いている戦士と魔法使い、後ろを歩いているシーフと板挟みになりプレッシャーをかけられる。おそらく、このせいで前のクレリックが抜けたんだな。
姫サーならぬ、姫パーか?
「いや、オレもまだまだ一人でやりたいから遠慮するわ」
「パーティー組んだ方がいいのにぃ」
エッタが頬を膨らませるが、姫を取り合うなんてギスギスしているパーティーはごめんである。
「悪いな」
しかし、何故か腕に絡みつかれたままギルドに帰る事になった。
ギルドに着いて魔石を換金して人数で割ると、大した金額にはならなかった。これじゃやはりソロでやったほうが早いな。
「じゃあ、また機会が有ったらよろしくね」
エッタは、最後まで名残惜し気に絡みついていた手を、そっと放した。
ふー、ようやく解放された。
4人がギルドから出て行くと、鎧を着た戦士の男が眉を顰めながら近寄って来た。
「おい、エッタのパーティーに入って、何とも無かったか?」
「いや……何も無かったが?」
「良かったな、エッタが気に入らないと、わざとダンジョンに置いて来たりするんだ。あそこの姫パーはタチが悪い」
やっぱりか。っていうか、やっぱり姫パーって言うんやね。
「もう組まないから大丈夫だ」
「おう、気を付けろよ」
こうして大した実りの無いまま、オレの初パーティ経験は終わった。
次は、もっと組みがいが有るペーティーに入りたいものだ。




