10 おや、様子が……
18時にもう一回投稿します
街までの間に、少女の熱視線を感じても話しかけては来ないという、微妙な空間に居て、個人的には大変居心地が悪かった。商人だという父親は、ニコニコしながらこちらを見ている。
おっさんよ、自分の愛娘が得体の知れない男を頬を染めながらチラ見してますよ。一度助けたからって、簡単に人を信じず、安全を考えた方が良いぞ。吊り橋効果というやつでは?
「ははは、お強いですね、何の職業なんですか?」
「冒険者だ」
「あの手際、手慣れてますねぇ。レベルもかなり上なのでは?」
「いや、冒険者は始めたばかりだぞ?」
「何と、そうなんですか。とてもそうは思えず……いえ、本当に助けていただき有難うございます」
雑談をしながら荷物と一緒にガタコトと揺れ、馬車はゆっくりでは有るが街へ進んでいき、20分ほどすると、城門へ着いた。
風が温かく、昼寝をしたい気分にすらなってくる。時刻は昼、眠くなると言う物だ。
しかし、仕留めた獲物の隣で転寝というのも、何だな。
門番が進み出てくると、小さく「おお」と商人のおっさんに挨拶をする。
「おー。マーガスさんじゃないか、久しぶりだな。ん? そっちの兄ちゃんは今朝出てったやつじゃないか、何でマーガスさんと一緒なんだ?」
「いやぁ、途中で野盗に襲われてね。その青年が助けてくれたんだ」
「ほー、兄ちゃんやるじゃねえか」
門番と商人は親し気に話している。よく街に来るって言ってたし、顔見知りなんだろう。
「そうだ、襲ってきた野盗はここから20分程行った所の木に縛ってある、後で回収してくれ」
商人のおっさんが門番へ伝えると、「了解」と返事が返って来た。
実は、野党は馬車で運ぶのには人数が居た上に、やつらの足並みに合わせる筋合いは無いので、途中の木に括って来た。年頃の女の子と一緒に乗せるのも、問題だしな。
街に着くまでに命が有るかは、改心して神が許すかどうかに寄るかも知れない。魔物も出る場所だし。よしんば助かっても、道を踏み外したままなら、今後それなりの罰が下されるだろう。
しかし、人間と戦ってレベルが上がらなくて良かった。確かに人間を切ってレベルアップしたら、犯罪したい放題だもんな。それを、システムに組み込んだ地上の民はすごい。思わず感心して、ふぅむと唸った。
「冒険者ギルドに寄るから、オレはここで」
用事は済んだので、羽兎と一緒に荷台から飛び降りると、焦ったような様子で少女が荷台から顔を出して、こちらに呼びかける。
「あの! お名前をお聞きしても良いでしょうか?」
「……セネカ・ルドヴィカだ」
「ルドヴィカ様……ルドヴィカ様……」
少女は、噛みしめるようにオレの名前を口の中で、もごもご繰り返している。
「私の名前はステラ・マーガスと申します。またお会いする機会が有りましたら、食事でもご一緒していただけますか?」
「そうだな。もし、会えばな」
ステラは、ほっとしたように胸をなでおろす。
商人のおっさんは、そんな娘を温かい目で見ている。
……返す返すも居心地が悪い。
「ルドヴィカさん、また会いましょう。暫くはこの街に居ますので、御縁がありましたら、また。」
「ああ」
オッサンと握手をして別れると、その足で冒険者ギルドへ向かう。想定外の事が起きて、思ったより時間がかかったな。オレは今日は宿以外の食事をしようと思って、朝から楽しみにしていたと言うのに。さっさとギルドの用事を済ませて、食べ歩きをしよう。
「よお」
ギルドに戻ると、受付嬢が「またか」という顔をするが、瞬時に営業スマイルを浮かべる。流石、プロだな。素早い。
「お早いお帰りですね」
「草原に、わらわら居たからな。そう、時間はかからないさ」
そんなに簡単には見つからないんですけどねぇと受付嬢は言うが、そう言えばサーチで草むらの中まで探したからさっさと終わったのだった。
やはり、もっと街の外で時間を潰すべきだったか。
「すぐに査定を致しますので、あちらのラウンジでお待ちいただけますか?」
「ああ、分かった」
そうは言っても、たかだか兎5匹だ、すぐに終わるだろう。
飲み物を飲んで待つ事10分。査定が終わったのか、名前が呼ばれた。
「ルドヴィカさん」
「ああ」
オレはスタスタとカウンターに行く。
「かなり状態が良かったので、銅貨50枚になります! またお願いしたいくらいです。服飾ギルドも喜ぶと思いますよ!」
「ああ、考えとくわ」
銀貨を袋に入れて食べ歩きに行こうとギルドの扉に手をついた時、後ろから声が掛かった。
「ねえ、君、ちょっといいかな」
振り向くと、サラサラの明るい若草色の長髪美人がオレに声を掛けて来ていた。
ーーーーー何だろう、嫌な予感がする。




