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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
七章 シャーリィ
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八十一話 処置

……お久し振りです。木崎咲です。


一月も待たせていまい申し訳ありません。そして、今後も不定期更新になりそうです。

ごめんなさい。

 赤い太陽が中天に到達する頃。


 ミカはリューリティティの部屋である図書館にいた。


 ミカは周りを見渡す。


 同じ机にククル、タマモ、シャーリィが。


 隣の机にはリューリティティ、ラスティローレン、フェアがそれぞれ座っていた。


 ミカはメンバーだけでなく部屋自体も軽く見渡す。


 背の高い本棚が大量にあるせいで分かりづらいが、部屋事態が少々拡大されていた。


 初めて入ってきた頃、ここには本が積まれたりしていたのだが、今は全てが本棚に収まっている。


 ミカはよくコレだけの量頑張ったな~、等と思いながら最後の一人が来るのを待つ。


「…すまぬ。遅くなった」


 その最後の一人であるリリィが、謝りながらミカ達の元へとやって来た。


「別に遅くはないでしょ。集合時間の鐘はまだ鳴ってない―――」


 ゴーン!


 ミカがそう言ったタイミングでちょうど鐘が鳴り響いく。


「―――これが集合時間の鐘なんだから」


 鐘の音が鳴り終わるのを待ってからミカがそう訂正する。


 因みに鐘の音は一度しか鳴っていない。


 魔族は時間について細かくないようで、時刻を告げる鐘は一日に四回、朝昼夕晩に一回ずつしか鳴らないようにしているらしい。


 時間にルーズなら何故時間前に集まったのか、と思うかもしれないが、それは集合に動かなければならないグループが少なかったからだ。


 リューリティティ、ラスティローレン、フェアの三人は元々ここが部屋、溜まり場である。


 そして、ミカ、ククル、タマモは同じグループであり、開始時間について厳しめの日本人であるミカがいる。


 残りのシャーリィとリリィは別々ではあるが、シャーリィは調整の為にリューリティティと居たらしく、実質集合のために動かなければならなかったのはミカ達とリリィの二組だけだったのだ。


「妾が最後とは思わんかった」


 リリィがミカ達のグループの席に座りながら呟く。


 彼女も急いで来たわけではなく、全員が集まっていたことに驚いて謝ったらしい。


「全員読んだ?」


 全員が席に付いたのと同時に声。


 聞こえた方を向けばリューリティティが見覚えのある紙を片手でヒラヒラとさせていた。


「説明書ね。私達は読んだわ」


「妾も」


 ククルとリリィは返事を返し、ミカも頷く。


 タマモも少し遅れて頷いた。


 彼女は本当に可能なのか?と半信半疑のようだ。


 ミカ達の返答を確認したリューリティティは小さく頷く。


 直後にシャーリィそっくりの少女がリューリティティの机に現れる。


 リューリティティが魔法で転移させて来たのだ。


 服装はゆったりとしたパジャマのような白い服で、髪は結ぶこともなく伸ばしたまま。


 褐色の肌に燃えているような赤色の髪、シャーリィと瓜二つの少女がリューリティティの机に横になっている。


 胸が薄く上下していることから生きている事がわかるが、目を覚ます様子はない。


 タマモが驚きリューリティティへと視線を向けていたが彼女は簡単な説明をする気もないらしい。


「できる?」


「わからん。が、やらねばシャーリィが消える。なら、やるしかなかろう」


 リューリティティの問にリリィが少し緊張した面持ちで答える。


 リューリティティは小さく頷き、今度はシャーリィへと視線を向ける。


「いつでも良いわ」


 それだけで何を言わんとしたのか理解したようで、シャーリィは強く頷く。


 ミカ達のグループは彼女の近くに座っていた為に、彼女が少し震えているのがわかった。


 失敗すれば消える。


 怖くない筈がないのだ。


『空間変質。設定並び一時固定。完了』


 リューリティティはシャーリィが頷いたのを確認してすぐに詠唱のようなものを口にする。


 それは予想よりも圧倒的に短い時間で終わり魔法が発動した、らしい。


 らしい、というのは、はっきり言って本当に発動したのか分からないためだ。


 目を凝らしてみても場に変化は見られない。


 不自然に光ったり、不思議な風が吹くこともなかった。


 何が変わったのか、説明を聞いていなければ分からないだろう。


 彼女が行ったのは詠唱で口にした通り、空間そのものを変質させる魔法だ。


 その空間内では、例えあり得ないことでも彼女のルールの通りになる。


 今回のルールは、『実体の無いものに触れられる』だ。


 ここで言う『実体の無いもの』は気体や光等ではない。


 霊体や思念等、いわゆる精神に関するものに触れる事ができるようになるのだ。


 触れた感触が無いだけで、気体や光にはきちんと実体―――粒子や元素がある。


 手をかざせば光は当たるし、熱も感じる。


 だが、感情に肉体が触れることはできない。


 同じ感情同士感じることはあっても、それに肉体的に触れることはできない。


 それが当然だ。


 だが、今この空間はその当然が当然ではなくなっている。


 感情は表に出る(・・)。出ているのであれば触れられる。


 それが、今のこの空間だ。


『対象構築。其は汝の分け身。汝は器であり、汝の本質は其である』


 続いてリリィが詠唱を始める。


 リューリティティのものよりは長いが、それでも効果に対して短すぎる詠唱だった。


 彼女の魔法はリューリティティのものとは違い、見ただけで何が起きたのか大体の予想が付くものだ。


 シャーリィの頭上に半透明なシャーリィが現れていた。


 幽体離脱、というやつだ。


 リリィが行った魔法は、簡単に言えばそれを任意で引き起こすものだった。


 その効果を目にしたミカは、位置の関係上、上を向いていた視線を正面にそっと戻す。


 何故か?


 本質である霊体なので、本質には関係の無いものは見えないのである。


 つまり、半透明のため分かり難かったが、服を着ているようには見えなかったのだ。


 下げた視線の先にはシャーリィの実体が、夢うつつのような状態で座っていた。


「シャーリィ、だけ……」


 この状況にククルが小さく驚いたような声を上げる。


 それを聞いたミカはそういえば、と説明を聞いたときの事を思い出す。


『リリィはまだ魔法のコントロールが覚束ないから、シャーリィだけではなく他の誰かも同じ状況になる可能性が高いの』


『リューリはレジスト可能と書いているけれど、それは頂点だから。それに、レジストできるからと言っても影響を受けない訳じゃないみたい。もし、リリィの魔法でリューリの場に干渉してしまったら……』


 と、途中で話を終わらせていたが、続きは何となく予想できたので聞かなかった。


 シャーリィが消えてしまうのだろう、と。


 実際は『影響を受けた全員が消えてしまう』とミカの予想よりも大事だったのだが。


 ちなみに、ククルが言葉を濁したのは『ミカには言わないように』とあった為だったりする。


 目が覚めたときにいてくれた方がシャーリィが喜ぶと考えての計らい。


 ミカにとってはただの迷惑、どころかそれ以下なのだがそれが分かっているからあえて言わないようにとの計らいだった。


 タマモもその事はしらない。


 ミカの近くに居たために巻き込まれた形である。


 ともあれ、そのような危険を少しでも減らすためにこの集まりでリューリティティとリリィの二人は始まる前に席が決まっていた。


 気休めだろうと、互いに一番遠い席を選んでいた。


 元々干渉が起こる確率は低かったのだが、リリィはシャーリィのみのピンポイントでの魔法行使を成功させた。


 その事にククルは驚いたのだ。


「……行く」


 周りがどう思っていようと関係ないとばかりに、いつの間にかミカ達のテーブルに立っていたリューリティティがシャーリィの霊体を掴む。


 普通なら触れる事が不可能な霊体だが、今この空間は、『実体の無いものに触れられる空間』だ。


 表に出ているのであれば、感情だろうと魂だろうと触れる事ができる。


 触れる事ができるのだから掴むことも当然可能だ。


 リューリティティは掴んだ霊体を用意していた別の体へと近付ける。


 この空間の弊害だ。


 本来であれば、霊体は人形等の空の器に直接入ることが可能らしいのだが、この空間ではそれが出来ない。


『実体のあるものが実体の無いものに触れられる空間』は同時に『実体の無いものが実体のあるものに触れられる空間』でもあるのだ。


「リリィ!」


 リューリティティが鋭く叫ぶのと同時に彼女の手がシャーリィをすり抜ける。


 彼女が自身の魔法を解除したのだ。


 リューリティティはすぐさま転移を行使しシャーリィから距離を取る。


 リリィが対象を指定しやすいように。


『対象指定。その器こそ汝である!』


 リリィはリューリティティが消えるのを確認する前、声を聞いた瞬間に詠唱を始めていた。


 そうしなければ、間に合わないからだ。


 魂というのはあやふやな存在だ。


 そもそも一定の形を持ったものではなく、決まった定義を持っているわけでもない。


 本来であれば、形に出来るものではないのだ。


 リューリティティの手を離れた瞬間からシャーリィの形が崩れ始めていた。


 リューリティティの魔法は空間変質。


 この空間は彼女の魔法によってルールを定義され、一時固定(・・・・)されていた。


 固定だ。この空間内にあるものは全て彼女のルールに縛られる。


 だから、彼女が魔法を解いたことによってシャーリィは魂の形を保てず、日本で言うところの成仏をしかけていたのだ。


 だが、それもリリィの詠唱が終わるまでの短い時間だけだった。


 彼女の詠唱が終わった直後にシャーリィの崩壊は止まり、スー、と用意した器の中に入っていった。


 短い時間でかけてしまっていた玉のようなものも全て器に入っていく。


「……」


 誰もが口を開くことなく、シャーリィになったはずのものに注目する。


 十秒、二十秒。


 三十秒経過して、リリィが『失敗したのか』と目に涙を浮かべた頃。


「……ぁ、っ」


 器からそんな声が聞こえてきた。


 誰もが静かに見守る中、器の少女はゆっくりと瞳を開け、体に力を込め始める。


 どうやら上体を起こそうとしているようだが、ほんの数センチ上体を上げるのが限界らしく、不自然な姿勢で止まっていた。


「無理」


 それでも力を緩めなかった少女に、コツン、とリューリティティが軽く拳を落とす。


 はふ、という力の無い声、というよりただ息を吐き出しただけのような音を発して少女はまたテーブルの上に仰向けで倒れた。


 彼女がちゃんと生きている事を確認したリューリティティは次の確認に移る。


「名は?」


「…ぁ……ぃ」


 リューリティティの問いに少女は答えようとはしている。


 口もしっかりと動いているのだが、声が上手く出せないようで、意味のある言葉が喋れないようだ。


 リューリティティは返答に声が必要ない方法に質問の仕方を変える。


「リリィ?」


 彼女は少女に指を指して問いかける。


 少女は首を横に振る。


「タマモ?」


 彼女は少女に指を指して問いかける。


 少女は首を横に振る。


「シャーリィ?」


 彼女は少女に指を指して問いかける。


 コクン、と少女は首を縦に振った。


「精査と調整が必要。けど、成功」


 リューリティティは周りを見渡してそう口にした。


 それを合図に、リリィがシャーリィへと近寄り『良かった』と涙する。


 友人を目の前で失ってしまった経験のある彼女は、だからこそ、誰よりも仲間の無事を喜んでいた。


 それを端から見ていたミカだが、シャーリィがリリィに何かを言い、双子のような二人から視線を向けられたことによって傍観者の立場では居られなくなったのを理解した。


 ミカはシャーリィに近づく。


「良かったね」


 彼女が楽にミカの顔を見れる位置まで近づいたミカは笑みを作って一言だけ口にする。


 他に言うべきことなど無かった。


「……ん」


 それだけで満足なのか、シャーリィは笑みを浮かべて頷く。


 長く感じたが、かかった時間は約五分程。


 開始して僅か五分程でシャーリィの延命、いや、転生は完了したのだった。


この話でシャーリィ編は終了です。


元々短編位の気持ちで書き始めたのですが普通に一章分かかってますね。難しい。

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