七十四話 昼休み
fate/goのクリスマス情報来ました!
流石はサンタアイランド仮面。
背後に新クラスのアビゲイルだけではなく、人気のエレシュキガルも控えていたのですね。
・・・魔法のカードを購入すべきでしょうか。
ククルから他にも伝承のような物を幾つか軽く聞くと、昼食にはいい時間となった。
朝はククルが料理を振る舞ったので、昼はミカが料理を作製することに。
作ったのはグラタン擬き二つ。
ここに来て何度も料理を行ってきたので、そろそろ焼いて味付けするだけではない、少々凝ったものを作りはじめても良いだろうと思っての物。
そして、盛大に失敗した。
調味料を間違えるという、ベタな事をやらかしてしまったのだ。
故に擬き。
グラタンにしては少々酸味が強い物になってしまったと思われる。
別に食べられない物を使ったわけではないので食べられはする。
するのだが、とても美味しいとは言えないものになっていることだろう。(オブラートに包んだ表現)
(見た目そっくりで、違う調味料が悪い。分量とかは間違えてないはずだし)
などと変な所に責任転嫁をしつつ、ミカはこれをテーブルに出すか悩む。
因みに完成品の味見はしていない。
調味料の間違いに気づいたのは既に焼き終わるのを待つだけの状態の時だったので、それを口に含む勇気を出せなかったのである。
(……嫌だね。捨てよう)
テーブルに出せば自分もこれを食べなくてはならなくなる。
そのことに思い至り、ミカはそう判断した。
幸いここは城。
それも王が住んでる城だ。
食材は豊富にある。
少々もったいないとは思うものの、美味しくないものを無理に食べる必要はないのだ。
(今日も簡単な、適当野菜炒めと……卵焼きで良いか)
そう思い、グラタン擬きへと手を伸ばそうと―――
「……あれ?」
グラタン擬きが台所から消えていた。
「今日はいつもより凝った感じね」
いつの間にかククルがグラタン擬き計二つをテーブルに乗せていたようだ。
彼女はテーブルの前に座り、スプーンで一口分のグラタン擬きを掬う。
「あ、ちょ―――」
そして、ミカが止める間もなく、彼女はグラタン擬きを口に含む。
「……」
そのままの姿勢で彼女は停止した。
ミカは、あちゃー、といった表情で天を仰ぎ見る他に無かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、再起動した彼女は震えながらも笑みを浮かべ「お、美味しいわ」等と宣ったので言い出し難くなってしまったが、彼女が二口目を掬った所でストップをかけ、調味料を間違えたと正直に話した。
彼女は涙目で「何でそんなものを出したの!」と言ってきたが、「あんたが勝手に持ってったんでしょ」と言ったらおとなしくなった。
その後、ミカは改めて昼食を作った。
もちろん調味料には細心の注意を払って。
先ほど劇物を食べさせてしまったので、念のため体に優しそうな野菜スープと軽い炒め物を作り、昼食を済ませたミカ達はそれぞれ別行動をすることに。
「そう言えば、お母さんも笑って食べてたっけ」
ミカは廊下でそんな事を呟く。
思い出すのは幾つだったか曖昧なほど昔。
料理を何度も誉められ、調子に乗って創作料理等を作った時のことだ。
キャベツ、さつまいも、チーズ、牛バラ等、自分が好きなものをぶちこんで塩胡椒、ラー油で炒め、チーズがいい感じになったら卵で閉じた食べ物。
ほとんど同時にぶちこんでいるので、当然さつまいもに火は通っておらず、牛バラも赤い部位が少しではあるが見えていた。
それでも当時の自分は、それを自信作等と宣って母親に出したのである。
その時彼女は、食べる前からククルと同じような少し無理した笑みを浮かべ、彼の料理を食べていた。
そして、「お、美味しい」と言って完食したのである。
その時は無理をしているのに気付かなかったが、後に自分で食べ、酷い料理だった事に気づき、母親を攻めた思い出がある。
何で不味いと言わなかったのか、と。
母は驚き、何故そんな反応をするのか、と当時は思っていた。
美味しい物を作りたいのにそうじゃ無いものを美味しいと言われた、というのが怒った理由だったはずだ。
ここら辺は良く覚えていないが、とりあえずその日にお腹を下したという事だけははっきりと覚えている。
原因は勿論自身の料理である。
(……平気かな?)
ミカは廊下を曲がる際に軽く自身が来た道を振り返る。
昔の事を思い出していたミカは、ミカの失敗作を食したという母と似た状況になっているククルを少し心配していたのだ。
が、彼女は既に通路を曲がった後のようで、その姿は見えなかった。
「ミカ」
「っ。びっくりした。シャーリィか」
急にかけられた声に、ビクッ、と驚く。
来た道を意識していたミカは曲がった先にいたシャーリィに気がついていなかったのだ。
「街に降りましょう」
「……はい?」
唐突な提案にミカの口から間の抜けた声が漏れる。
気がついていない間に何か会話があったのかと疑った程だ。
そして彼女は、一瞬止まったミカの手を握って歩き出す。
当然握られたミカはついていくしかない。
「いや、待って、僕城から出る許可とかもらってないんだけど」
「別に閉じ込められてる訳じゃないでしょう?」
「まぁ、そうだけど……」
そう、ミカは人間として魔族の城にいながら、一点を除いて特に行動を制限されたりしていないのだ。
その一点もこの国からは出るなというものだけ。
ほとんど自由だ。
それでも城から出ていなかったのは、知らない場所に一人で行く気が無かったというのもあるが、最も大きい理由はどういう目を向けられるか分からないからだ。
何せ魔族の国だ。
細かくいうなら人間と敵対している魔族の国だ。
そこに人間が一人放り出されたらどうなるか。
少なくともいい思いはできないだろう。
「……図書館の片付けをする約束がですね―――」
なのでミカは断ろうとする。
こじつけではなく実際に図書館の片付けをするという約束もある。
リューリティティとの約束である片付けがもう少しで終わりそうなのだ。
そう、まだ終わってなかったのである。
絶対にあのときの食事と割りが合っていない、とミカは思う。
「いいから行きましょう。街の様子とか見ておくべきだと思うわ」
だが、そんなミカの思いを無視するようにシャーリィの足は止まらない。
口調はいつもと変わらず明るい感じだったが、唐突に現れたことといい、彼女がどこか切羽詰まっているようにミカは感じた。
「……はぁ。分かった分かった。リューリさんに報告してから―――」
「ダメ!」
ミカはしょうがないとばかりに頷き、今日は休みを貰うということと街に出るということをリューリティティに報告しようと思ったのだが、それをシャーリィが強く止める。
「何故?」
ミカは立ち止まって尋ねる。
手を繋いでいるシャーリィも合わせて止まる。
「そ、それは……」
そして、彼女はミカの問いに俯いてしまう。
そのまま数秒。
彼女は何も答えない。
彼女の手から力が少しずつ抜けていく。
ミカが少しでも手を引けば、彼女の手はミカの手から離れるだろう。
「……はぁ」
ミカはため息を吐いて彼女の手を改めて握る。
「言いたくないならいいよ」
「……ぇ?」
ミカの言葉が意外だったのか、シャーリィが小さな声を漏らして顔を上げる。
その瞳は涙で濡れていた。
「……」
想定外の涙にミカが固まる。
「……」
ミカが固まった事によって、顔を上げたシャーリィとミカが見つめ合う形になった。
その間僅か二秒。
シャーリィが堪えきれず再度顔を伏せる。
「っ。あー。その、街に行くんでしょ?道、知らないから、案内を……」
彼女の動きでミカは再起動したのだが、泣いている子に何を言えばいいのかわからず、視線をあちこちにさ迷わせながら自信なさげに話を進める。
「……こ、こっち……です」
彼女は消え入りそうな声を出して、ミカの手を引っ張っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
城から出ておよそ十五分程歩いた頃。
バス停のような所に到着し、しばし待機することに。
「で?誘ったからにはオススメルートとかあるの?」
「え?こう言うのって男性がリードするものなのよね?」
「この街を知らない人間に何を求めてるんですか。無理ですよ」
「あ、そうよね。どうしよう……」
城内で微妙になっていた空気も外を歩いているうちに晴れたようで、二人は普段の態度で会話をする。
ミカが気になったのは今日の予定。
この街については何も知らないため、少々楽しみにしていたのだが、彼女の回答を聞いて満足するのは無理そうだな、と思う。
「ま、行きたい場所とか、行ってみたい場所くらいはあるでしょ?時間までそういう所を回ればいいんじゃないかな?」
「いいの?でも、それだとミカが楽しめるか分からないじゃない?行きたい場所とかないの?」
「街を知らないのに行きたい場所があるとでも?」
「見てみたい物とかは?」
「ないかなー」
「・・・勉強してたのよね?一応この国のこと。本当にククルから学んでたの?」
「簡単にはね。元々知識零に近かったんだから、数ヶ月で理解とかできんわ」
「でも、それだとミカが―――」
「僕の事は気にする必要ないよ」
「・・・やっぱり、期待してないってこと?」
「逆。全く知らない街だからね。街の空気自体に期待かな~」
と、二人で話している間にバスが見えてくる。
「うん。知ってた。車が有るもんね。期待なんてしてない」
そう、バスだ。
ファンタジー要素の欠片もない普通のバスである。
「えぇ……。自分の言葉をいきなり否定しないでよ」
ミカの呟きにシャーリィが反応する。
期待していると言った直後に期待していないと言われたのだ。
ミカの呟きは乗り物に対して言った言葉なので期待云々はシャーリィの勘違いなのだが、彼女は結構ショックを受けていた。
上げて落とされた気分というやつである。
「ん?あぁ、ごめん。そういう―――」
「童、謹慎から抜け出しおったか?」
隣同士に座っているのでミカにも彼女の呟きは聞こえていた。
その内容から彼女が勘違いをしていることに気付き、訂正をしようとするが、バスが目の前に停まり、そこから降りてきた人物から声をかけられたことで止めざる終えなかった。
怪訝な表情を浮かべながら降りてきたのは蛇女の魔族。
半月前に王の間にてミカの出自を聞いた者の一人(?)だ。
「いや、謹慎されていた訳ではないですよ?出てなかっただけです」
ミカは彼女の足(?)を見ながら答える。
階段を下りる際の足(?)の動きが階段なのにスルスルという音が似合う動きで、階段を降りてる動きには見えなかったのだ。
ミカは内心でスゲーと思っていた。
「成る程、引きこもりであったか。なれば、その体つきにも納得というもの」
彼女はそう呟いて道を開ける。
彼女が手に持っている紙束が気になったが、乗り降りにそんなに時間をかけるのは良くないということでミカは彼女に軽く頭を下げるだけしてバスへと乗車する。
彼女から隠れるようにミカを盾にしながらシャーリィも続く。
「そうそう。先ほどの視線だが―――」
二人乗り切った所で蛇女が口を開く。
「―――ひっぱたかれても文句は言えんぞ?」
扉が閉まる途中で聞こえた彼女の声は多分に警告を孕んだものだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ずいぶんと薄くなっておったな……。保って五、いや、六と言ったところか……」
蛇女の魔族はバスを見送り呟く。
そして、しばし何か考えているかのように止まり、首を横に振る。
「いや、我には関係のないこと。それよりも、こちらの情報を整理せねばな……」
彼女は手に持っている紙束を数枚ほど纏めてめくる。
途中までバスで読んでいたようで、彼女は続きと思われるページを開くと同時に体を反転させ、自身の書いたメモを読みながら城へと移動し始める。
「あの二人……ミカとシャーリィだったか。……懇意にしておったのはリリィ様と、リューリの奴だったか?あぁ、連れていた獣種の小娘もか。ふむ。……報せ位はしておく、か?」
明らかにメモに集中できていない様子で呟きながら、彼女は城へと向かっていった。
ミカは料理音痴ではありません。むしろパッと見で調味料を判断するほど料理慣れしてます。
自分で書いててあれですが、非情に見えて甘い性格って難しいですね。




