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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
六章 紅き都市の城
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七十話 これから

最近お仕事が増え忙しくなってます。残業ばかりです。


あー、剣豪進めたいよー。


・・・愚痴言ってすみません。


これからも地道に頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします。

「さて、随分と脱線したが、要するにその捜し人を見つける手伝いを報酬として要求したいのか?」


 話に一区切りついた感じになり、いつ戦闘する?今でしょ!とか言い出しそうな感じで迫ってきた黒鬼と獅子の頭を持った魔族から何とか逃げようと四苦八苦していたミカに魔王が問いかけてきた。


「ええ」


 これ幸いにとミカは魔王の問いかけに返事をし、さりげなく好戦的な魔族達から離れる。


「良かろう。捜索にあたってその者の特徴を教えてもらおうか」


「黒髪で黒のつり目、身長は大体185位だったかな?一メートくらいの刀、えっと、片刃でちょっと反りのある剣を装飾も何もない真っ黒の鞘に納めて持ち歩いてる人間の男です。ドワーフに一度聞いたところ刀を知らないようでしたので珍しい武器を持ってる男でなんとかなるかもしれません」


「ほう?強いのか?」


「いえ、そうでもないですよ」


 魔王の問いかけにミカはさらっと嘘を言う。


 何故強くないと嘘を言ったのか。


 理由は単純に弟の危険を減らすためだ。


(強いとか言ったら『調べるために』とかなんとか言って攻撃しそうだし)


 ミカはここに来たときの事を思い出す。


 誰も彼も会話の前に戦闘を行うような非常識集団の事を。


 現にこの場にいる好戦的な二人以外の魔族、蛇女も三眼の男も、ククルさえもどこか落胆した様子を見せていた。


 エルフの男の表情に変化は見られなかったがそれ以外全員が落胆の様子を見せたのだ。


 ミカは自分の予想は間違ってなかったと確信する。


「その者の名は?」


「アキラと名乗っていると思います」


「名乗っている、な。つまり、偽名か」


「彼は自分の名前が嫌いですから。他の候補は思い浮かびませんが、本名は確実に名乗っていないと断言できますね」


「その本名は?」


「名乗っていないのですから教える必要はないでしょう?」


 魔王の問いにミカは少し語気を強めて言い返す。


 言うつもりはないという意思表示だ。


 少し空気が重くなる。


「・・・良いだろう」


 先に折れたのは魔王の方だ。


 重たい空気がすぐに霧散する。


 元々深く聞くつもりは無かったのだろう。


 現に重たい空気に冷や汗を流していたのはタマモ一人だけだった。


「ただし、本来こういう仕事はコクロウが行ってきたゆえな時間をいただく」


「いえ、捜索してくださるだけでもありがたいです。よろしくお願いいたします」


 ミカは頭を下げて礼を言う。


 そして、これからどうしよう?と考える。


 時間がかかるということはそれだけ待たねばならない。


 むやみやたらと捜し回るのは愚策だと理解しているので自分から捜しに行くという案も―――情報を得るまでではあるが―――消える。


 そして、ここは異世界。


 スマホも使えない。


 ケータイゲーム機も本も持ってきていない。


 この世界の文字を読めないのでこの世界の本も読めない。


(どうやって過ごそう・・・)


 やることがなく暇になる事が予測できるのである。


 一日二日程度なら寝て過ごすのも有りかもしれない。


 だが、そんな短時間で世界から一人の人間を見つけることなどまず不可能だ。


 しかもその専門家らしいコクロウは既に死んでしまっているときた。


 この世界には魔法があるとはいえ、これでは1ヶ月でも厳しいだろう。


 いや、下手をしたら一年で情報さえ得られないかもしれない。


 そして、その間できることがない。


 鍛練をするというのもあるが、一日中できるものではない。


 休日は自身が楽しめる物があるからこそ休日足り得るのだ。


 何もできないというのは拷問に使えるほどのもの。


 休みたいとは思ったが、いざそれを現実的に考えると今のミカは『暇をもらう』が本当に『暇』にしかならない状態なのである。


「捜索中はこの城の一部屋を与えよう。情報を得次第知らせる故、好きに過ごすがよい」


 ミカの思いなど知らんとばかりに―――当たり前だ―――魔王が話を進めていく。


「全員聞いていたな?部下に伝えておけ。反りのある剣を持った男を殺すな。捜索対象だ、と。ミスリルや金剛等ない世界の武器、恐らく鉄の剣だろう。怪しいと思ったらアキラという名か確認しろ。こちらでも別途隊を用意するが・・・そうだな、情報を持ってきた者には第三宝物庫から好きな物を賜ってやると伝えろ。生きたまま連れてくれば第二を開けてやる、ともな」


「仰せの通りに」


 魔王の言葉に返事を返したのはエルフの男だけだった。


 だがそれは、魔王の言葉に不服が合ったからではない。


「その報酬、儂等にも適応されるのであろうな?」


 他の面々の瞳はギラついていた。


 報酬に目が眩んだ者はこんな表情をしているのかと、他人事のようにミカは思う。


「持ち場を離れるつもりか?」


 魔王の言葉に誰も答えない。


 ただただ笑みを浮かべて魔王を見ている。


「・・・わかった。では、報酬を少し変える。情報を見つけた者のいる隊のリーダーに第二宝物庫から好きな物をやろう。情報を得た部下には第三の宝物庫から見繕ってやれ。その時は特別に見つけた部下にも宝物庫内に入る事を許可しよう」


 ため息を吐きそうな様子で魔王が言う。


 周りの魔族が嬉しげに声を上げようとしたが、その前に魔王が口を開く。


「ただし!自身の仕事を無視したものが一人でもいれば、報酬は与えん。長であろうともな。隊のランクも程度に応じて下げさせてもらう」


「仰せの通りに」


「「「「・・・」」」」


 またもや返事を返したのはエルフの男だけだった。


 だが、今他の面々が黙ったのは期待などではなく、明らかに躊躇いから来たものだった。


「何。部下を上手く使えば難しい物でもなかろう。お前達は、地力はあるが総じて隊の扱いが下手だからな。よく考えて行動せよ。話は以上だ」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 魔王との会談が終わり、魔王が居なくなった(突然消えた)後もしばらく誰も動かなかった。


 ただ、ぼーっとしているわけではなく、誰も彼も考え事をしているような感じだ。


 そんな中、ミカは一人だけ困惑していた。


「えっと?とりあえず、僕の部屋はどこなの?ってかリリィは戻らなくていいの?」


「ミカの部屋はククルが知っておるだろう」


「はい。ミカ様、もう部屋に戻られますか?」


 ミカの疑問にリリィが後半の問いをスルーしつつ前半の答えを知っているものを示す。


 示されたククルは間髪入れずに返事をし、ミカに問い返す。


 まるで『はい』を選択したらストーリーが進みそうな問いかけだな~、等と思っていたら返事が少し遅れてしまった。


「・・・とりあえず空いてるやつに任せりゃ良いか。なんとかなるだろ」


 その間に三眼の魔族が呟き、扉の方へと向かって行く。


「...報酬は魅力的だが、今は忙しい時期だ。奴等の時間を減らすのも忍びない。が、報酬を取ることができれば、今後奴等の危険が減る。むぅ...」


 蛇女の魔族が何やらぶつぶつ呟きながら彼の後を追っていき、


「・・・無理だな」


「・・・残念じゃ」


 獅子の頭を持った魔族と黒鬼が互いに肩をすくめて呟き、扉の方へと歩いていく。


「欲しいものある?」


「いえ」


「特には」


 リューリティティはラスティローレンとフェアの二人に軽く問いかけ、即答した内容に少し悲しげな表情を浮かべる。


「本当に?」


 リューリティティは少し強めの口調で再度問いかける。


「その、宝物庫に何が入っているのかわからないので何とも・・・」


「ただ、興味はあります」


「そ」


 改めて返ってきた二人の返答に少し嬉しそうにしながら返事を返し、何故か、エルフの男へと視線を向ける。


「・・・」


 彼はリューリティティを一瞬見ただけで何も言わず、扉の方へと歩きだす。


「あ、あの!グラディウスさん、ですよね?」


 扉をくぐる直前に声。


 その声を聞いたエルフの男は足を止め、振り返る。


「何?」


 彼は彼女―――タマモが言った名前に過剰に反応していた。


「グラディウス?それって・・・」


 ミカは呟きその名を最初に言った少女―――リューリティティの方を見る。


 彼女もまた、驚いた表情でタマモを見ていた。


「その、あの時お礼を言えていませんでしたので・・・。お城に入れてくれてありがとうございます」


 タマモはエルフの男に近づいて頭を下げる。


 その対応に、今まで表情をあまり動かしてこなかったエルフの男が驚愕の表情を浮かべてタマモを見下ろしていた。


「・・・待って、タマモ。何言ってるの?」


 タマモから少し離れた所にいるミカが問う。


 タマモの言っていることには明らかに間違った点が存在していたから。


「城に入れてくれたのはインプ族(・・・・)の男でしょ?」


「え?インプ?・・・いえ、彼はエルフですよね?」


「だから、その男じゃないでしょ?」


「え?彼でしたよ?」


「え?」


「え?」


 ミカとタマモは顔を見合わせて首を傾げる。


 互いの記憶に食い違いがあった。


 その内容が小さなものであればどちらかの勘違いだと判断するのだが、今回の食い違いは種族、つまり、見た目全てだ。


 これは明らかにおかしいとミカは思う。


「・・・どういう事ですか?」


 ミカは食い違いの発生原因であるエルフに問いかける。


「・・・」


 エルフは答えない。


 ただじっとタマモを見下ろしている。


「え、っと・・・」


 タマモは見られ続けていることに恥ずかしさが込み上げてきたのか落ち着かない様子で視線をさ迷わせる。


 唐突に、音もなく、エルフの頭上に目が現れた。


 それを見てミカは間違っていたのは自分の方だと理解する。


 あの目は城に入れてくれた魔族がミカ達を追い出す前に使った物と同じだった。


「魔法が通じていない訳ではない。が、記憶操作のみが通じていない。何故?・・・そうか、獣種には特定の魔法が殆ど通じない、上位種と呼べる種族が存在したな。お前はその類い、見たところ妖弧の魔物関連からなる獣種。それも上位属性を弾くほどの強力な、最上位に近い獣種か」


「っ」


 目の前のエルフ、グラディウスの言った『最上位に近い獣種』と言う言葉にタマモの顔が強ばった。


 彼女は伺うように、いや、恐る恐ると言ってもいいような態度でミカを見る。


「記憶操作ねぇ、へぇ・・・そう―――」


 ミカはタマモを見ていなかった。


 ―――ただ、エルフの男を睨んでいた。


「―――殺す」


 ミカが唐突に呟く。


 ミカの思い出、特に家族全員がいた頃の思い出は忘れたくない大切な記憶だ。


 それを改竄される可能性がある。


 それだけで理由には十分だった。


 彼は近くにタマモが居ることも忘れて、全力で魔法を発動、加速し、グラディウスに迫る。


 まるで消えたかのように見えるほどの加速。


 だが、グラディウスは即座に対応する。


 ミカが目前に迫る一秒に満たない時間。


 その僅かな時間で彼の背後に無数の文字が浮かびあがる。


 その文字は全て、一文字一文字光っているように見える。


 視覚に捉えることができるほどに魔力が圧縮されているのだ。


 だが、その現象を初めて見たミカにはそれがわからない。


 勝手な予想で弾幕のような魔法が来ると思い込み、対策として風を纏う。


 そして、ミカが消えた。


 消えたかのように見える、ではなく本当に消えた。


 タマモとリリィはミカが風を纏って消えたのだと思ったのだが、グラディウスの方も文字を消した。


 彼が戦闘体勢を解いたことに二人は首を傾げ、


 ズザーッ!と何かが地面を滑る音が辺りに響く。


 それはリリィ達の背後から聞こえた。


()っ。邪魔を!」


 リリィ達が振り返った先ではミカがリューリティティに組伏せられていた。


 リューリティティはミカを自身の背後に強制転移させ、それによってバランスを崩して転けたミカを捕らえたのだ。


「落ち着く。記憶を好きに変えられるわけじゃない」


「でも変えられるんでしょ?なら―――」


「記憶の中の、グラディウス本人の外見だけ。他はできない」


「その言葉を信じろと?」


「事実」


 ミカはしばらくリューリティティを睨んでいた―――捕まった時点で力で勝てないと悟ったのだ―――が、彼女が少し腕を捻るような仕草をしたのを感じてそれもやめる。


「わかった。わかりました。今は諦めますよ。いつの間にかあのエルフ消えてるし」


「え?」


「何?」


 ミカの言葉に再度振り返ったリリィ達の前にはククルが一人佇んでいるだけだった。


 視線を向けられた彼女はゆっくりとミカの目の前まで移動し、大きな胸を揺らしながらしゃがみこむ。


「お召し物を用意しなければなりませんね」


 彼女はミカを見て楽しそうに言う。


 先ほど地面を盛大に滑ったお陰で、彼のお気に入り(ジャージ上下)は悲惨な状態になっていた。


 ミカはリューリティティへジト目を向ける。


 さすがに悪いと思っているのか、彼女は気まずげに視線を逸らすだけだった。


グラディウスの魔法は、正確に言うと記憶を変えるのではなく、彼に対する認識を変えるものです。


ですので、ミカは図書館でリューリティティに言った『エルフの男で』という台詞も『インプの男で』と言ったのだと認識を変えられてます。


本来は本文で説明できないといけないんですよね。ごめんなさい。


文章中に説明する技量をつけれるよう頑張ります。

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