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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
六章 紅き都市の城
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閑話七

ハッピーハロウィン!

トリックオアトリート!


メカエリちゃんとか予想外もいいところです。

こんなの誰が予想できますか!


失礼。取り乱しました。


今回は久々のアキラsideになります。


口調とかおかしかったらご指摘ください。

「魔族がスライムを操っていたですって?」


 酒場で女性の高い声が響く。


「お、おう?誰だあんた?」


「私が誰とか今はどうでもいいわ。そんな事より、今の話詳しく聞かせて」


 そのお嬢様然とした女性は青年二人組の座っている丸テーブルに上体を乗り出すような状態で問い詰めている。


 テーブルの上には焼き魚と酒が乗っているが、まだ手を付けていないようだ。


 手を付けていないように見えるのだが、彼らの顔は赤い。


 これはここに置いてある酒が何杯目かの酒で既に青年達が酔っている、というわけではなく、彼女の体勢が問題だったと言えるだろう。


 現に問い詰められている方の青年の視線はとある一部に釘付けである。


 青年が己の本能に負け、手を伸ばしかけた時、女性の頭に一振りの剣が落ち、ゴスッ、と鈍い音を酒場に響かせた。


「いったーい!」


「アキラ様!何をされているのですか!」


「だったらこいつ止めとけよ。それとも、情報を聞くときはあの態度が正解なのか?」


 頭を抑えた女性に別の女性が鞘に納めた剣を降り下ろした男を叱りながらかけよる。


 叱られた男は自身が叱られた事に納得がいかないようで鞘に納めたままの剣を腰に戻しながら文句を口にしている。


「確かにお嬢様の態度も良くありませんでした。そこは私も同意します。ですが、止めるにしても手ではなく先に口を出してください」


「いや、あっちの方が確実だろ?てか、何であいつが走り出したときに俺見て判断しようとすんだよ。俺よりお前のほうがあいつのこと詳しいだろ?」


「なっ!わ、私は別に、貴方を見ていた訳では―――」


「俺が視線に気づかないほど鈍感だとでも?」


「・・・気持ちには気付かない鈍感でしょう?」


「そんな事ねぇよ。っと、食事の邪魔して悪いが、さっきの話を連れが聞きたいらしい。なんなら、その食事代はこっちが持つ」


 欠片も説得力を感じられませんね。と呟きながらじと目を向けるメイド服を着た女性を無視して帯刀している男が食事中の男達に尋ねる。


「いや、そこまでしなくても構わない。ギルドから通達があった内容だからな」


「そんなんで稼ごうとしたらギルドに居られなくなっちまうしなー」


 問い詰められていた青年と、衝撃的な光景を目の当たりにして停止していたがようやく再起動を果たした青年が、声をかけてきた三人組へと答える。


「ギルドってそんなに厳しいのか?」


「いや?ただ噂が回るのが早い」


「ギルドが通達してるような内容は広めるようにっていう暗黙の了解があってな。その情報で稼ごうとすれば周りからの視線が痛くなって、いい依頼も回されなくなっちまうんだ」


「そんな事今はどうでもいいでしょう?スライムを操っていた魔族の情報を教えてください。できれば詳しく」


 帯刀している男はギルドの暗黙の了解についての方が興味があったようだが、お嬢様然とした女性がその男を物理的に押し退けて青年達に尋ねてしまったため聞くのを諦める。


「ラルバっていう町を知ってるか?」


「ええ。結構前線に近い、強さを競う大会のある町よね?」


「この時期は武闘大会が行われていたはずです」


 青年の質問に女性が質問で返し、メイド服を着た女性が補足を加える。


「いや、俺達はその町について詳しくないんでそれを聞かれても困るんだが・・・」


「まぁ、その町に魔族がスライムをけしかけたらしい。ギルドの通達は、魔族がスライムを操る道具を手に入れたようだから注意しろ、って感じだ」


「・・・他は?」


 待ってみても話の続きがなかった。


 思っていたより情報が少なかったからか、お嬢様然とした女性が催促するように青年達に問いかける。


「俺達はこの通達しか知らない。詳しくはギルドの受け付けにでも聞いた方がいい」


「見た感じ、この町に来たばっかだろ?ギルドはこの店を出て右に真っ直ぐ行けば見えるぞ」


「そう。ありがとう」


 彼女は青年達にお礼を言い、後ろに控えていた二人に声をかけて、三人組は店を後にする。


 少しの間のあと、青年達はそれぞれ酒に口をつける。


(ぬる)くなってるな」


「あぁ。そうだな」


「・・・でも、眼福だったな」


「・・・そうだな」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 何も頼まずに酒場を出た三人組は酒場を出る直前に聞いた通りに道を真っ直ぐ歩いていた。


「なぁ、アクリア」


 帯刀している男―――アキラがお嬢様然とした女性―――アクリアに声をかける。


「何?」


 彼女は三つ編みにした金髪を揺らしながら振り返る。


 髪型というのは人の印象に大きく影響を与える。


 これは変装の一種だ。


 彼女は今、一般人より少し高めの衣服を着て眼鏡をかけた姿をしている。


 また、この世界にもカラーコンタクトのようなものがあるらしく、瞳の色が青色から黒に変わっていた。


 端から見ると貴族のお嬢様、といった見た目になっている。


 勿論、コーディネートしたのはメイド―――ラナである。


 何故、一般人のような姿にしなかったのか。


 最も大きい理由は態度を変える必要が無いためだ。


 メイドが主人に敬語を扱うのは普通。


 メイドが他の人に敬語を使うのは普通。


 そして、一般人がメイドを連れているのは普通ではない。


 という理由である。


 それに、自然体で良いということはボロが出にくいということでもある。


 楽になりすぎて王族で有ることをポロっともらす可能性はあるが、急に態度を変える方が疑われやすいと考えたのだ。


 幸い、アクリアは元々王族然とした態度が自然体ではなかったので本人もやり易いそうだ。


 そんな態度でも、どこか気品が感じられるのはさすが王族と言えるだろう。


 ちなみに、アキラはアクリアに雇われた傭兵設定である。


 これなら多少暴言を吐いても疑われることはない。


「魔族がスライムを操ってたら問題あるのか?」


 ただ、異世界出身なのでこの世界の常識が無い、という点でミスマッチだったと言わざるを得ない。


「・・・」


 その設定を作った人物であるラナは信じられないものを見た、といった表情でアキラを見る。


「その視線。信じられないものを見たって思ってるだろ?」


 アキラがどや顔で言う。


 酒場で言われた『気持ちには気付かない鈍感でしょう』という言葉を否定できた瞬間だろう?と言いたげである。


「スライムは魔物の中でも最強の一角に入るわ」


 アキラの言葉をスルーしてアクリアがスライムについて説明する。


「斬ったら殺せないか?」


「スライムはほぼ液体なの。斬っても刺しても意味無いわ」


「あー、そのタイプか。魔法でやれと?」


「・・・その程度で倒せるのなら最強の一角にはなりません」


 ようやく復帰したラナが答える。


「スライムは魔法も吸収します。吸収できない魔法もあるようですが、それは個体によって違うようで、確実に倒せる者は存在しません。少なくとも、人間には」


「・・・なるほど。物理魔法共にダメ。何もできないなそりゃ」


「ええ。誘導がせいぜいです」


 スライムについて話しているうちに冒険者ギルドが見えてきた。


「例えスライム一体だとしても、魔族が操る手段を得た状態で攻めてきたのなら、人、国の数は確実に半数以下にまでなると言われているわ」


 アクリアはそれを確認して、そう話を締めくくった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 時間が昼頃、しかも日本ではおやつ時と言われるであろう時間帯。


 そんな時間帯だからだろうか、ギルドの中は閑散としていた。


 ラナは複数ある受付のうち、迷わず奥から二番目の受付へと向かって行く。


 アキラ、アクリアの二人は誰かに声をかけられることもなく、彼女に付いていく。


「魔族がスライムを操ったという噂を聞きましたが、これは事実ですか?」


 ラナが受付嬢に、挨拶も無しに問いかける。


 その際、カードのようなものを受付に軽く見せていた。


 アキラも彼女と出会った翌日にもらった冒険者を示すカードだ。


「はい。ラルバのギルドを管理している者から連絡があったので確実でしょう」


 受付嬢は特に表情を変えることなく対応する。


 ラナは最年少でランクを六にまであげた冒険者であり、冒険者間ではそれなりの有名人だ。


 そんな彼女がいきなり、しかも、メイド服を着た姿で現れても受付嬢はいつもの態度、いつもの表情を変えなかった。


 アキラとアクリアの二人はその凄さに気づかない。


 ギルドの受付がどんなものかをそもそも知らないから。


 彼らはただ、『何で近くの受付に行かなかったんだろう?』と小さな疑問を持つだけだった。


「ラルバの町はどうなっています?」


 そんな二人を無視してラナは質問を続ける。


「魔族に建物を幾つか破壊されましたが、町は残っています。前線に近い町ですから魔物にも即時対応していたようです」


「では誘導に成功した、ということですか?」


「いえ、誘導はできず、スライムを撃破したそうです」


「え?」


 ラナが固まった。


「操られていたのですから、スライムは大して強力個体ではなかった、ということはないでしょうか?」


 代わりにアクリアが問いかけを続ける。


「いえ、上位や上級の魔法を使用しなかったらしいので最上位、とまでは言えないでしょうが門より大きい個体だったそうです。伝聞ですので本当かはわかりませんが」


「・・・」


 が、一度の回答で彼女は固まってしまった。


「・・・操る道具を手に入れたって聞いたが、形状は判ってるのか?」


 少し待っても二人が動かなかったので、アキラが質問を続ける。


「はい。現物を書き写した物が届いているので。既に破壊されたものの書き写しですが、形状は予想できます」


 受付嬢はカウンターの上に紙を置いてアキラ達に差し出す。


 二人はまだ動かないのでアキラが紙を受け取った。


「笛だな。フルートか?」


 アキラの呟きに反応したのか、いつもより少し遅めの速度で二人もアキラの持った紙を覗く。


 そこに描かれていたのは途中で割れてひびだらけになってしまっている筒状のもの。


 写真で撮ったかのような出来映えだ。


 それほどの出来だからこそアキラはそれが何なのかすぐに予想がついた。


「こんなになってるてことはその魔族との戦闘は激しかったのか?それとも、無差別攻撃にでも巻き込まれたのか?」


「いえ、その笛を持っていることを知らず魔族ごとだったそうです」


「迷惑なやつだな」


「本当に、迷惑なギルドマスターです」


「ギルマスがやったのかよ...」


 まさかの回答に驚くよりも呆れが大きかったのか、アキラはそう呟いて紙を返す。


「でも、操っていた笛を破壊したからスライムを誘導できたのよね?」


「いえ、お嬢様。信じがたい話ですが、誘導はできていないと彼女は言われました。恐らく、スライムはコントロールを離れてただ近くにあった町を攻撃したものと思われます。が、違いますか?」


 ラナの問いかけに受付嬢は首を横に振る。


「あれだろ?その笛で命令を変更もしくはキャンセルしない限り元の命令を遂行し続けるってタイプだろ?」


「そのようです。狙われていたのは二人組の男女です。獣種を一匹連れていた、とも言っていましたね」


「獣種を?物好きね」


 受付嬢の言葉にアクリアが理解できないとでも言いたげな表情でそう口にする。


「...獣種って何だ?ケモミミ少女的なあれか?」


「...ケモミミ少女が何か分からないけど、魔族の真似をしている魔物のことよ」


 獣種と言われてもそれが何か分からず、アキラは小声でアクリアに尋ねる。


 彼女は同じように小声で獣種について軽く説明する。


「...なるほど」


 その説明を聞いて、アキラは想像していたケモミミ少女を消し、妖怪のような存在を思い浮かべる。


 変更前の方が正しい形に近かったのだが、残念ながらそれを指摘できる者は存在しなかった。


「―――あの大会で準優勝ですか。中々の実力者ですね」


「ええ。ですが、ギルドマスターはあまり良い印象を持っていないようです」


 アキラ達がこそこそと話している間にラナが受付嬢からスライムを倒した者の情報をもらっていた。


「何でも彼の戦い方は自身が生き残ることを想定していない(・・・・・・・)とか」


「おい。それ、詳しく聞かせろ」


 その情報の一つにアキラが反応した。


「その戦い方をした男、黒の長髪で女みたいな外見じゃなかったか?」


「ええ。そうですが。知り合いですか?」


 受付嬢の質問に答えず、アキラはアクリアと顔を見合わせる。


「最初から魔族の町とかに跳ばされた訳じゃねぇのか?」


「・・・たぶん不完全な発動で位置が変わってしまったんじゃないかしら。私も本来なら私の部屋に出る筈だったもの。私の場合はそこまで離れた所に出なかったけど、運が良かっただけなのかもしれないわ」


「なるほど・・・」


 アキラは一人頷いた後、受付嬢の方へと向き直る。


「一つ聞くが、その男が何処に行ったか分かるか?」


「魔族領方面とだけ。時間を頂ければ問い合わせますが」


「どのくらいかかる?」


「この時間ですと・・・明日になる可能性が高いです」


「可能性が高い。速いと夜には終わるか?」


「はい」


「じゃあ夜、日が沈んだ直後にまた来る」


「分かりました」


「よろしくお願いします」


 聞くだけ聞いたアキラは丁寧に一礼をし、突然丁寧になった彼に周りが固まっている間に一人離れていく。


「捉えた。尻尾切んなよ、竜兄(りゅうにぃ)


 誰にも聞こえないような小声で呟き、アキラはギルドを出て行く。


「あ、ちょっとアキラ!」


「すみません、私達はこれで。アキラ様!お一人で何処に行くつもりですか!」


 そんな彼を後からアクリアとラナの二人が追いかけていくのだった。



メイドは見る目を持っている。


小説とかによく居る執事さん、メイドさんって読心術とか千里眼とか持ってますよねあれ。


最初に考えた人は彼ら彼女らにどれだけの事を期待していたのでしょうか。


ちょっと気になりました。

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