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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
六章 紅き都市の城
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五十八話 図書館戦闘

二週間も空けてしまいました。ごめんなさい。


今後もこのくらい、もしくは、これ以上に遅くなるかもしれません。


「わぁ・・・」


 タマモが圧倒されたような声を上げる。


 扉を開けた先にあったのは長い階段から見下ろすように存在しているきらびやかな玉座、ではなく大量の本棚だった。


「ハズレ。嬉しいような嬉しくないような」


 ミカは複雑そうな表情を浮かべて愚痴る。


 魔王という大層な肩書きを持った相手と会わなくてホッとしているが、目的地探しが終わらないことに面倒だとも思っているのだ。


 ミカは改めて部屋を見渡す。


 右を見ても左を見ても本だらけ。本棚に入りきらないのか積まれた本もいくつか見える。


 この部屋は図書室なのだろう。いや、室というには部屋が広すぎる。


 高さはおよそ二階分。本棚と本棚の間隔は二メートル位。全体の広さも中学や高校にあるような図書室等ではなく、県立の図書館と言った方がいいレベルだ。


 さすが、王のいる城。広さが半端ない。


(いや、それにしたって広すぎでしょ。どうなってるの?)


 ミカは首をかしげる。外から見た時の城の大きさからここまでの部屋は入らないと思ったのだ。


 疑問には思ったがすぐに首を振り考えるのを止める。無意味だというのもあるし、そもそも全貌を見たわけでもない。城のスケールが大きすぎて勘違いしたのだろうと判断した。


「誰かいるような感じもしないし。タマモ。ここはハズレ———」


 部屋を出ようとタマモに声をかけ、タマモが横にいないことに気が付いた。慌ててあたりを見渡す。


 幸いこの広い部屋を探し回る必要はなかった。ミカの立っていた位置からは積まれている本が邪魔で見えずらかったが少し動くだけで見つかった。


 タマモは本棚の前でしゃがんでいた。一番下の段にあった本が気になって手にしようとしていたようだ。


「ちょっとタマモ。勝手に―――」


 ミカの言葉はまたも途中で途切れた。


 タマモが本に手を伸ばした直後、その手と本棚の狭い隙間にタンッ!と短剣が突き立ったのだ。


 ミカとタマモは突然のことに目を見開いて固まる。


「気安く触れるな!」


 上から声。ミカ達は声が聞こえた方向、目の前の本棚の上を見上げる。


 いつの間にかそこには何者かが二人立っていた。顔や体格などは逆光のせいでわからないが、片方は声の高さから女性ということがわかる。


 タマモは二人組が見えなかったようでミカの横まで見上げながら下がってきた。


「この短剣の―――」


 ―――意味は?と分かり切ったことを聞こうとしたら、行動で返答が来た。


 上にいた人影、その片方がミカ達めがけて短剣を振りかぶりながら落ちてきたのだ。ミカは横にタマモは後ろに跳ぶ。


「うくっ!?ひゃあ!?」


 後ろに跳んだタマモは背後にあった本棚にぶつかり、目の前ギリギリを通過した短剣に悲鳴を上げる。


 ミカはそれを見てまだ空間把握能力が低いなと思う。まだ戦闘を経験して数日程度なのだから当然だ。


 むしろたった数日でミカとほぼ同時に反応できるようになっていることを誉めるべきだろう。


 上にいたもう片方は真下に落ちて床に刺さっている短剣を抜き取っていた。


 ミカは二人を視界に入れるように体の向きを調整し、二人の動きを注意深く観察する。


 同じ高さに降りてきたため彼女達の姿がよく見えるようになっていた。


 そう、彼()達。片方ではなく二人ともが女性だった。


 斬りかかってきた方は肩甲骨辺りまである薄い緑色の髪の女性で手入れに気を使っているのか頭の動きに会わせてサラサラと一本一本が流れるように靡いている。


 体つきは背が高く手足も長いモデル体型をしているが、起伏に乏しく、浅黒い日焼けをしているような肌をしていて、少し耳が尖っている。


 背中にリリィと同じような黒い羽が生えている事から恐らくインプ族だろう。


 服装は背中の羽が邪魔にならないようになのか背中を全開にした格好をしている。袖もなく、黒いインナーだけのように見える。目のやり場に困る格好だ。


 下もまた目のやり場に困る健康的な足が剥き出しのホットパンツで、蹴り技も扱うのか膝下まである鉄製っぽいブーツを履いている。


 もう一方は白銀色をした髪をポニーテールっぽい形で纏めている女性。かなり小柄だ。


 髪をかなり乱雑に扱っているようで、ショートカットよりも少し長い髪をただ単に頭の後ろで纏めているだけのように見える。前髪の方も目の上で適当にバッサリ切ったような感じで不揃いだ。


 こちらはまた色気も何もない白い半袖のシャツに紺の短パン、スニーカーのような靴という格好だった。


 ただ、それによって見えている二の腕から手首にかけて大きな羽のようなものが生えている。獣種は元となった魔物の特徴を持った姿になりやすいらしく、彼女はハーピィ的な鳥系統の魔物ベースの獣種だろうと予想される。


 全く似通う点の無い二人だが一つだけ共通点があった。


 身体の一部を欠損していたのだ。


 薄い緑色をした髪の女性は右目に三本の、獣の鉤爪に引っ掻かれたような傷があり、右目が開かれていない。傷はかなり深く、ほぼ確実に失明しているだろう。


 最もここは魔法のある世界。彼女が失明している前提で行動するのは危険だと頭の片隅では思っておく。


 白銀色をした髪の女性は左耳が無くなっている。こちらは恐らく刃物によるものだ。根本から綺麗に斬られている。


 と、二人を観察している間にタマモが慌ててミカの横に逃げてきた。


(斬りかからないんだ)


 タマモが逃げ出すとき、タマモの目の前にいた薄い緑色の髪をした女性はただ短剣を構えるだけで攻撃してこなかった。


 その事をミカは不思議に思う。タマモは明らかに隙だらけだったのに何故攻撃しないのか?と疑問に思ったのだ。


 ミカが首を傾げている間に、彼の隣に来たタマモはそこで反転して槍を構える。


 と、まるでそれを待っていたかのようなタイミングで二人組が動き出した。


「っ!」


 ミカはバックステップで緑色の髪の女性が振るった短剣を回避する。その剣線の速度にミカの顔がひきつる。


 見えない訳ではない。が、振るわれてから動いていては体が追い付きそうにない。


 ミカは思考を切り替え、相手の構えや動き出しから行動を読むため、しばらく回避に専念する。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「は、やいっ!」


 一方、ミカがバックステップで短剣を回避したのとほとんど同時に、ガキィ!とタマモの槍に白銀色の女性の短剣による横凪ぎがぶつかっていた。きっちり防いだように見えるが実際は違う。


 タマモは一瞬彼女達を見失っていた。咄嗟に自身の急所を守るように槍を構え、たまたまそこに白銀色の女性の放った一撃が来たので防御ができただけだった。


 相手の速度から防御に回っていてはすぐにやられてしまうと判断し、すぐさま反撃に出る。


 タマモは短剣を防がれ、少し距離を取った白銀色の女性に肉薄し槍を降り下ろす。


 その一撃は避けられたが、すぐさま槍を短く持ち直しさらに肉薄する。槍の利点を殺すような行動に驚いて少し動きが鈍った女性にタマモは様々な角度から槍を振るう。


 柄側からも殴っている事から槍というより長い棒のように扱って攻めているようだ。


 女性は防戦一方に見える。


(行ける!)


 タマモは気付かなかった。


 彼女がタマモを見ていないことに。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「っと!」


 ミカの目の前数センチを銀線が通過する。


「何気に本が邪魔」


 ミカは足下にある本へと視線を向けてぼやく。


 足の踏み場を探さなければいけない、何て言う程ではない。が、本当に避けたい方向に限って本が邪魔をするのだ。


 それでも回避するだけなら問題はない。本が邪魔な時は先ほどのようにギリギリだが、他の所では余裕を持ってかわせる。


 緑色の女性がミカへと上から降り下ろすような回し蹴りを放つ。


 ミカはそれを視認する前、彼女の動き出しからその軌跡を予測し回避する。


 彼女の筋肉の動きには少々違和感があり、初めは読みにズレがあったのだが、今では余裕を持って回避できる。


 そう。今の一撃も余裕を持って回避した。例え他の武器を隠し持っていたとしても対象可能なほどに。


 だからミカは彼女が何故そのような表情をしているのか分からなかった。


 攻撃をかわされたはずの女性が笑みを浮かべていたのだ。


(っ!しまった)


 少し遅れて気がついた。


 ミカは彼女から距離を取り、歯噛みする。


 視界内にタマモが居ない。


 これはタマモがやられてしまった、という事ではない。現に今も剣撃の音は聞こえている。


 ただ、聞こえてくる方向が問題だ。


 タマモの剣撃はミカの背後から聞こえてきている。


 ミカはすぐに女性へと跳び、空中で横に一回転。遠心力を利用した全力の回し蹴りを放つ。


 今まで回避しかしていなかったミカの突然の攻撃に女性は驚き、直後にミカの行動の意図に気がついたのか称賛の表情を浮かべ、その一撃をしっかりと防いだ。


(やっぱり。誘導された)


 ミカは蹴る前の回転を利用して背後の確認をし、確信した。


 現在ミカとタマモはほぼ直線上に、背中を向けるようにして戦っている。そして、どちらの正面にも女性がいる。


 つまりミカ達は彼女達に挟まれた状態まで誘導されたのだ。


(集中しすぎた)


 ミカは、目の前の相手の動きを読むことだけに集中しすぎた、と反省する。


 二人組は目の前の相手にしか攻撃してこなかった。相方と距離が離れてしまうことも(いと)わず。


 その事からミカ達は一対一が二組ある戦闘として戦っていた。


 だが、実際は違った。彼女達は最初から二対二として戦っていたのだ。その違いが如実に現れた。


 思い返せば目の前の彼女は戦闘中も周りを気にするようにして戦っていた。そもそも彼女達は一対一と思い込ませるように動いていたのだ。


 ミカはそれを別の理由だけだと思いこんでいたため気づくのが遅れてしまった。


 ミカは全力の蹴りによって少しだけできた距離をさらに開けるように数度バックステップして構えを変える。


 体を横に向けて視線は横目で睨むように前へ、意識は後ろを警戒する。


 それを隙と見たのか、緑の女性が短剣を構えミカへと向けて走り出す。狙いは上半身。


「ふぇ?キャア!」


 背後から声が聞こえたのは、そう当たりをつけた直後だった。


 背後から飛翔音。何かしらの能力によってか、タマモがミカめがけて一直線に飛ばされてきたのだ。


 正面の緑の女性が勝ちを確信したかのような目をする。恐らく背後の白銀色の女性も同じような目をしていることだろう。


 ミカが正面の女性の短剣を避ければ、飛ばされてきたタマモがやられる。


 かといって女性の短剣を防ごうとしても、速度的にタマモの方が先にミカへと激突する。そうなれば短剣をどうにかするなど不可能だ。


 ミカはそう状況を分析しながら迷うこと無く一歩横にずれる。


 その動きに正面の女性は「やはり」と言いたげな表情を浮かべる。大方、自分の命惜しさに仲間を犠牲にしたとでも思ったのだろう。


 が、その考えは間違っている。ミカの行動はまだ終わっていない。


「い、よっ、と」


 ミカはまず半回転しながら『い』の音と共に、こちらに背を向け、体でくの字を作りながら飛ばされてきたタマモの腰辺りに左手を当て縦回転を加える。


 続けて『よっ』の音と共に少し回転したタマモの背中を回転の勢いを殺さぬように叩き上げる。


 そして『と』の音と共にタマモから離れるように軽くサイドステップ。


 直後にタマモの真下、かつ、ミカの真横を緑の女性が通過する。


 ミカの視界には驚きの表情を浮かべている白銀の女性が収まっている。


 ミカはそれを見て、してやったり、と言いたげな笑みを浮かべる。


 きっと横を通過している緑の女性も白銀の女性と同じような驚きの表情を浮かべていることだろう。


 他者の驚いている表情を見るのはけっこう好きなのだ。それが自身の行いによって浮かべたのであればなおのこと。


 こんな事が好きで、よくやるからミカは道場で奇術師などと呼ばれているのだ。


「あうっ」


 ミカに投げ飛ばされたタマモが落下して尻餅をつく。


 人を飛び越えるほどの高さから落下した衝撃はそれなりにあったと思うのだが痛みを感じている様子はなく、タマモは何が起きたのか分からないといった表情で座り込んでいる。


「前に言ったでしょ?戦闘中に座り込まない。すぐ立つか、動く」


「は、はい」


 ミカに言われてタマモがすくっと立ち上がる。


 タマモが立ち上がっている間、ミカは二人組を警戒しておく。僅かな時間とはいえ立ち上がるという行為に生じる隙は大きすぎるものになるためだ。


 二人組は隙を狙って攻撃することよりも体勢を整える方を選んだようで、ミカ達を警戒しながらジリジリと互いの距離を調整している。


「どう?」


「押しきれます」


 ミカの簡潔すぎる問いにタマモは悩むこと無く返した。


「吹き飛ばされてきたのに?説得力ないなぁ~」


 ミカはタマモの即答に呆れ、呟きつつ二人組への意識はそのままに視線だけを少しずらす。


 ずらした先にあるのは積まれた本。それをミカは視界に納めた。


 それだけで、二人組が二人ともミカを注視する。


 その事にタマモは気づかない。


「確かに飛ばされましたけど、あれは威力―――」


「彼女達、実力の半分も出してないって気づいてる?」


「―――のな、い・・・え?」


 ミカの呟きに反応したタマモが言い訳らしきものを言い始めるが、その声に被せながらミカはタマモに問いかける。


 タマモが言われたことを理解できないといった表情でミカを見上げる。


 それを『気づいていない』という返答と解釈し、ミカは彼女の視線に込められた『説明が欲しい』という思いを理解しつつも無視して言いたいことだけを言う。


「経験、地力。空間把握もここは彼女達のマイホームだしね。こっちはそのどれもが劣ってる。おまけに呼吸も合ってるみたいだし。地力でも負けてるのにその上・・・何だっけ?天地人の利点も全て向こうにあるって感じ?」


「天、地?・・・わかりません。つまり、どういうことですか?」


 タマモが声に出してミカに問いかける。


 ここでミカはようやくタマモの方に視線を向け―――


「つまり、僕たちの力じゃ勝てない。絶対に」


 ―――何でもない事のような軽い口調でそう断言した。


もうすぐゴールデンウィークです。皆様何しますか?


私は引きこもってfate/goのイベントを頑張ります。


え?執筆が遅れる理由はこれじゃありませんよ?

本当ですからね?

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