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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
六章 紅き都市の城
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五十九話 想定外

fate/goイベント完走。とてもいい話でした。

ネタバレしない為にこれ以上は言いませんが原作プレイ者には嬉しい内容でした。

戦闘時のキャラの動きとか特に。


・・・執筆サボってた訳ではありませんよ?・・・本当ですからね?

 勝てない。


 その一言がよっぽど効いたのか、タマモの瞳に涙が溜まり始める。


「わ、私達、殺されちゃうんですか?」


 押しきれると言い切っていたのは何だったのかと言いたくなるほど彼女の声は弱々しい。


 これでも堪えている方なのだろう。涙目ではあるが泣いてはいない。


 そんなタマモを安心させるようにかミカは彼女の頭を優しく撫でる。


「ごめんごめん。確かに勝てないけど。勝てないイコール負けるって事じゃないよ」


「どういうことですか?」


 ミカの言葉が理解できないのかタマモが首を傾げる。


「彼女達は本気を出してない。正確には出さないようにしてる、んだと思う」


「どうしてですか?」


 タマモの疑問を無視してミカは一歩前に出る。


 それに反応してこちらをじっと見ていた二人組が攻撃してくる、ということはなく、彼女達はミカへの警戒レベルを上げるだけだった。


 やはり、とミカは思う。やはり周りを気にするようにして戦っていたのは連携を取るためだけ(・・)ではないと。


 この部屋で行われた戦闘。床や本棚には傷ができているが、本棚にある本や積み置かれている本には傷一つ無い。


 積み置かれている本に至っては崩れているものが一つもなく、本以外に付いた傷に目を瞑れば、入ってきたときと部屋の内装が変わっていない程だ。


 彼女達はミカ達と戦いながら本を守っていたのだ。


 ただミカ達が大振りな攻撃をしなかっただけだろうと思われるかも知れないが、それは違う。


 誘導されたのだ。


 彼女達は大振りな攻撃よりも決めやすい一手を打てるような隙をあえて見せていた。小振りの攻撃が有効な時に大振りの攻撃をする馬鹿はいないだろう。


 それに、彼女達はここで戦闘を行うことに消極的だ。


 彼女達はタマモが構えてからしか攻撃をしてきていない。積極的に攻撃してきたのはタマモが本を取ろうとしたときだけ。


 そしてこれは本を守るためだと考えると積極的に含まれなくなる。


 これらの要因によってミカ達は彼女達と拮抗できている。


 本を守るために彼女達は全力を出すことができず、彼女達が戦闘を避けているからミカ達は仕切り直しの時間ができている。


 ここまでしてようやく拮抗できているのだ。全力でこられたら勝ち目はない。


 それを確認したミカは次にどうするべきか考える。


(問題はここからどうやって引き分けにもってくか。本を人質・・・は危険か。戦闘を止める代わりに情報を聞く―――)


「僕たちは敗けを認める」


 緑の女性が唐突に―――意外とボーイッシュな感じの声で―――そんな事を言ってきた。


 勝利を諦め、どうやって上手く負けるかを考えていたところに転がり込んできた提案にミカの思考がしばし停止する。


「・・・は?」


 ようやく出せたのはそんな間抜けな声だけだった。


 タマモも背後で口を空けて固まっている。


「このまま戦闘を行えば、本を傷つけてしまいます。ですので、敗北を認める代わりにここの本を傷つけないで貰いたいのです」


 そんなミカ達の反応を無視して白銀の女性がこちらもまた格好とは裏腹な上品な言葉使いで続ける。


「・・・いや、いやいや。実力差くらいわかってますよ?貴女方ならここを傷つけずに僕たちに勝つことくらい可能でしょう?」


 ミカは直前に考えていたことも忘れて、つい相手を持ち上げるような事を言ってしまう。


「確かに可能かもしれない。だが、断言できないんだ。君の実力がわからない(・・・・・)


 緑の女性がミカをしっかりと見据えてそんなことを言う。


 ミカは彼女の言葉の方がわからない。と言いたげな表情で首を傾げている。


(わたくし)の相手を担ってくださったそこの少女は大したことありません」


「はぅ!」


 白銀の女性が何となしに言った一言にタマモが傷つく。


「だが、僕の相手をしていた君は計れなかった」


「そんなはずはないでしょう。ほら、僕、回避しかできなかった程度ですし」


「それは嘘だろう?」


 ミカは本気で言っているのだが、何故か敵対しているはずの女性に断言された。


「僕の攻撃に対する対応は完璧の一言だ。一撃を当てるどころか、かすらせることすらかなわなかった」


「それは回避に集中していたからであって―――」


「いや、君は周りを見る余裕すら持っているようだった」


「どこがですか。貴女に誘導されていたでしょう?」


「それに、攻撃しようと思えばできただろう?」


「いや、それは・・・」


 緑の女性の言葉をずっと否定していたミカが言葉をつまらせる。


 否定できなかった。勝てるかはともかく攻撃することは可能だったから。


「もう一度言うが、僕は君の実力がわからない。君の動きは速い訳でもない。なのに僕の攻撃が当たらない。まるで未来でも見えているかのように君は軽々と僕の攻撃を避けていた」


「それは貴女が本気を出してない、いや、出せなかったからでしょう?だから僕は貴女の攻撃を避けられた」


「それだよ」


「それ?」


 ミカは彼女の言いたいことが分からずに首を傾げる。


「僕は君の実力が全くわからないのに、君は僕の実力をある程度理解している。そんな相手がただの弱者だとは思えない。それに君はフェアの実力も理解しているだろう?」


「いや、本気を出してない相手の実力なんてわかるわけがありませんよ」


「貴方が仰っていたではありませんか。『彼女達、実力の半分も出してない』と」


 ミカの否定を獣種の女性―――フェアと言うらしい―――がさらに否定してきた。


 ミカが驚きの表情を浮かべたのを見て、「(わたくし)とて獣種の端くれ。五感には自信があります」と胸を張る。


 が、ミカが驚いたのはそこじゃなかった。いや、聞かれていたのにも驚いたが、それよりも彼女の出した声に驚いた。


 ミカの言った言葉をミカの声で言ったのだ。声真似なんてレベルじゃない。全く同じ声だった。


「そして、その言葉は正しい。僕は全力じゃない。フェアも。それでも周りを見る余裕がなかったと言うのかい?」


「・・・ええ。誘導されたのは事実ですから」


 驚いていて反応が少し遅れたが、ミカはそう答えた。


 すると、二人組が困惑したような表情で顔を見合わせる。


 ミカは何か不味ったかな?と不安になるが、不安に駆られている時間は短かった。


「・・・ずいぶんと謙虚なのですね?」


「・・・まるで魔族じゃないみたいだ(・・・・・・・・・・)


 もっとも、それは安堵できたから等ではなく、困惑の方が大きくなったからなのだが。


(魔族じゃないみたい?それって、今、僕が魔族に見えてるってこと?リリィがいないのに何で?)


 全く予想していなかった言葉にミカはその困惑を表に出してしまう。


 その反応に二人組の視線が鋭くなる。


「・・・フェアどう?」


「・・・私にはラーン族にしか見えません」


「考えすぎ、なのか?」


「で、ですが、もし、人間がそのレベルの変装を可能としていたら、また・・・」


「大丈夫。ここは安全だ。もし、何かあってもリューリ様が助けて下さる」


 彼女達はいつの間にか互いに抱き合うような体勢を取って、意識しなければ分からない程度に震えていた。


 どうやら人間にトラウマがあるようだ。彼女達の傷は人間が付けたものなのかもしれない。


「あたっ」


 と、彼女達の過去を思っていたら唐突に頭頂部を殴られたような衝撃が襲ってきた。


 殴られたと言っても大した威力はない。子供のパンチ位だ。


 ミカは頭上を見るが、何もない。足下に本が無いことから本が落ちてきたわけでもないのが分かる。


「あうっ」

「ひゃう」

「いつっ」


 ミカが首を傾げていると、タマモが、次に白銀の女性が、そして緑の女性が次々に悲鳴を上げて軽く頭に手を当てている。


「何事?」


 ミカはその光景を目の前で見たのに何も分からなかった。突然彼女達が変な声を上げて頭を押さえたようにしか見えなかった。


 自分も同じ目にあっていなかったらきっと変人を見るような目をしてしまっただろう。


「うるさい」


 ミカは目を見張る。


 いつの間にかミカ達と女性達の間、ミカの視界のど真ん中に少女がいた。


 見た目は中学生入りたてか、もしくはそれよりも幼く見える少女で、体つきも見た目相応。先ほどの声も変声期を迎えていないような幼いものだった。


 肌は白く人間の少女と対して変わらない体つきをしている。正直人間にしか見えないが、ここにいるということは何らかの魔族なのだろう。


 頭から流れている髪の毛は向こう側が透けて見えそうな程透き通った空色をしている。


 そして、その髪が長い。とにかく長い。一度も斬ったことが無いのではないかと言いたくなるほど長い。


 頭から流れた髪が地面にまで到達しそこからさらに背後へと扇状に二メートル近く広がっているのだ。


 当然少女の耳は髪に埋もれて見えなくなっている。


(・・・まぁ、魔法だよね?空間転移的なやつかな?)


 ミカはその広がっている髪の一部が積まれた本の下敷きになっているのを見てどうやって現れたのかを予想する。


 普通に移動してきたのであれば、髪の毛数本が本に挟まれるならともかく、髪の毛の束が下敷きになることなどあり得ない。


 それに、髪が長いというのはそれだけで動きが見えやすくなる。動いた軌跡をなぞるように髪が動くからだ。


 ほぼあり得ないことだが、例えここまで移動するのに人の動体視力を超えるような速度で来て無音で停止したとしても、あれほどの長さであれば髪が線を引いて見えてしまうのだ。


 と、そんなことを考察していると目の前の少女が動き出した。


「っん」


 グイッ。


 少女が女性達の方向を向こうとして顔をしかめる。その動きによって髪が引っ張られ、その痛みでようやく髪が本の下敷きになっていることに気づいたようだ。


 少女は自身の髪の上に乗っている本を横目に見ながら片手を首の後ろに持っていき、ふぁさぁ、と払う。


 本来ならそんなことをしても引っ掛かったまま止まる、もしくは髪が抜け落ちたり切れたりしてしまうだろう。


 だが、彼女は払いきった。髪の毛の先までふわりと軽く舞う。


 髪が抜ける、あるいは千切れるほど力を込めた訳ではない。


 彼女の視線の先にある積まれた本全てが一瞬だけぶれたのだ。


 ミカの目には彼女の髪の毛がそのぶれた本を透過して舞ったように見えた。


 属性とかは全く分からないがとりあえず魔法だということだけは分かる。同時に魔力の無駄遣いではないかという思いも湧いたが、逆に言えば簡単には無くならない程の魔力を持っているということでもあるのだろう。


 ミカは少女の見た目で緩くなっていた警戒レベルを数段上げて三人を観察する。


「監視だけ。そう言った」


 自由を取り戻した少女が改めて女性達に向き直って言う。


 ほとんど抑揚のない棒読みのような声だった。


 位置の関係上ミカ達には少女の表情が見えなくなる。


「ですが、あの少女が本を手に取ろうとしたのです」


 頬を膨らませながら銀色の女性が言う。先ほどまでの雰囲気とは大分違う幼い表情だ。


「いけないこと?」


 少女が首を傾げる。


 女性の甘えた表情は完全スルー。というか気づいていないのかもしれない。


 緑の女性も相方の態度はスルーで少女の疑問に答える。


「当然です。ここの本は全てリューリ様の物。部外者が気安く触れることなど許せません」


「読まれない方が嫌」


「少なくとも許可を得るべきです」


「面倒」


 緑の女性の言葉を少女は全て否定する。


 少女はまだ何かを言おうとしていた緑の女性の口に手を当てて黙らせると、それらのやり取りを見ているだけだったミカ達の方へと振り返る。


「来て」


 少女の行動を警戒していたミカ達にただ一言だけ口にして、ミカ達の返答も待たずに少女は奥へと歩いて行く。


「付いてこいってこと?」


「そうなる。聞きたいことがあるそうだ」


 ミカの問いに緑の女性が答え、こちらもまたミカ達の返答を待たずに少女を追いかけて行ってしまう。


 ミカはどうするか考える。十中八九罠だと思うが情報を得られる可能性を無視できない。


 彼女達の誘いを無視すればこの部屋から逃げるのは容易いだろう。


 だが、ここで情報を得なければ、また山勘で玉座の間を探さなくてはならない。そんなことをしていればいずれ衛兵やらに見つかってしまうだろう。


 対して、彼女達の誘いに乗ればこの城の構造などを聞くチャンスが生まれる。玉座の間やもしかしたらミカ達の持ち物を置いている場所なども分かるかもしれない。


 しかし、もしこれが戦闘を行いやすい場所に移動する為のものであり全力戦闘になった場合、確実に負けると断言できる。


 どちらを選んでもリスクが大きい。


 ミカはタマモの意見も聞こうと思って頭だけ振り返る。


 彼女はミカに、どうしますか?という視線を向けるだけだった。


「・・・はぁ」


「え?どうして私を見て溜め息を?」


「・・・いや、何でもない」


 自分でも考えようよ、と思ったのだが、考えてみれば彼女は奴隷でミカの行動に付いていくしかないのだ。ミカの言葉を待つのは当然である。


「・・・いつでも逃げられるようにしといてね」


「わかりました」


 どちらもハイリスクならリターンが多い方が良いと考え、ミカは彼女達に付いていく方を選択した。


戦闘を期待していた方はごめんなさい。

でも、自分より弱い相手が簡単に回避とかしてたら本当に弱いかわからなくなりますよね?


後、今回のでふと思いました。


もしかして、私の小説って進むの遅いです?

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