五十三話:どこまでも赤く
フフっ。ゲームのやり過ぎですね。ストックが無くなりました。
おかしいな~。ストックを溜めるために週一から十日間隔にしたはずなのに・・・。
4/1サブタイトル更新
ミカ達は牢から出て数分で出口を見つけた。
タマモがその獣種特有の高い五感を用いて外の空気が何処から入っているかを感じ取り、その方向へと移動していたため迷うことがなかったのだ。
見張りを一切見かけなかったのも大きい。
ミカ達はこのまま脱獄できるのでは?と思ったのだが、
「流石にそこまで甘くはないか」
「・・・どうしますか?」
ミカ達の視線の先には見張りとして色白のイケメンが二人、槍を持って待機している。
(な!?あれは・・・)
ミカは男達を凝視してあることに気がついた。
そう、耳が尖っている事に。
(で、でた。エルフ!)
ミカは、やっぱり魔法が強いのかな?ここにも精霊が居るのかな?等と少しワクワクしながら見つめる。
そこに階段から降りてきた別のエルフが何かを報告し始めた。
(・・・ここはエルフの集落なのかな?)
ミカはその様子を遠くから眺める。
「・・・ご主人様?」
「あぁごめん。あのエルフ達の会話聴こえる?」
ミカには距離がありすぎて聞こえないが、獣種であるタマモならと思い聞いてみた。
それに対してタマモは申し訳なさそうに顔を伏せる。
「すみません。彼らが話しているのは古い・・・確かエルフ固有の言語で、聞こえてはいるのですが何を言っているのかが分かりません」
「そう。じゃあどうするか・・・。牢に複数の出口とか作らないだろうし、どうにかして目を欺かないと。・・・リリィがいたら魔法一発だったわこれ」
ミカは一人で呟く。
リリィの能力はやはり便利だ。
上位属性使いはどれもこのくらい簡単にできるのかもしれない。
「・・・ごめんなさい」
「ん?」
そんなのと敵対したらヤバイな~等と思っていたらタマモが唐突に謝ってきた。
何故謝られたのか分からずにミカは首を傾げる。
「私には魔法が使えないので、その――――」
「あぁ。自分が役立たずとか思った?」
コクリ。とタマモが首を縦に降った。
その事にミカはため息を吐く。
その様はまるでそんな事はないと思っているかのようだ。
「今、ここまで安全に来られたのは誰のお陰?タマモでしょ?」
「ですが、元々ここの兵が巡回をしていませんでした。ですから――――――」
「僕一人でも行けたって?僕一人だったらそれも分からなかった訳だけど?方向だって反対に歩いていく可能性があった」
タマモが黙る。
そのおでこに軽くデコピン。
「あぅ」
「『何でもできる』を基準にしない。タマモは、今、とても役立ってるよ」
ミカは優しい口調で語りかけ、タマモの頭を撫でる。
彼女と視線が合った。
ミカが微笑む。
「///」
彼女は赤くなって顔を伏せた。
ミカには表情が見えなくなったが、パタパタと振られている尻尾を見て、喜んでいると判断した。
だが、その喜んでいる姿を見たミカの表情は暗い。
(今、味方は彼女しかいない。現状が理解できるまでそれを手放すようなへまは避けなくちゃ。・・・全く。最低だよね。僕は)
タマモを励ますような事を言ったが、結局、自分のことしか考えていない自身に嫌気がさす。
「・・・ご主人様?」
自然と彼女を撫でる力が強くなっていたようだ。
ミカは「何でもない」と囁き出入口の通り抜けかたを考える。
(見えなくなる方法がない訳じゃ無いんだよね・・・)
そう、自身を見えなくする方法は考え付いている。
自身の扱える魔法は風と水。
そのうち風を上手く扱えば見えなくなる方法はあるのだ。
いや、水の魔法だってあるのはわかっている。水の屈折率を上手く利用すれば、相手からは消えたように見えるだろう。
ただ、水自体が見えてしまうという致命的な問題点がある。
扱うのは魔法だ。もしかしたらそれも分からないような水だって出せるかもしれない。
しかし、それがどんな水なのか想像ができない。
対して、風の方はそこら辺の事を考えなくて良い。
自身の周りに光を屈折させる程の風を圧縮して纏うことで、その風より内側を見えなくするのだ。
纏うのは元々見えないもの。それが見られる心配はない。
だが、水だろうが風だろうが屈折率を利用する関係上大きな問題点が存在する。
(ただ、それだと門番だけじゃなく、そもそもの道すら見えなくなる)
光が屈折して見えなくなるということは、その内側に光が入って来ないということ。
人間の瞳は、対象の発光あるいは反射した光が眼球内部に入り、内部の網膜に当たることで信号を発し、それを脳へと伝達することで『見た事』を認識している。
人間を見るという行為も、人間に当たった反射光を網膜が読み取り認識している。
そのため、その光が入って来ないのならば瞳は信号を発しない。つまり、何も見えない完全な暗闇になってしまうのだ。
したがって、この、光の屈折を利用して見えなくなるという方法には『道を行き、門番の間を門番に当たらないように通り抜けた後、階段で躓かない』ことが目隠しした状態で可能である必要がある。
(あは。無理ゲー)
ミカは内心で乾いた笑いを浮かべる。
タマモの鼻を使えば行けそうか、とも思うが、纏うのは光を屈折させる程圧縮した空気だ。匂いが中にまで届くとは思えない。
(いや、待てよ。上下から見られる心配はないから上を開けておけば足下位は見えるかも?)
そう、要は光が入って来る穴があれば良い。もちろん横から入って来る線一本の光だとどうしようもないが、上から入って来る光ならば足下位は照らせるはず。
「...タマモ。驚くかもしれないけど声を出さないでね」
「え?はい。わかりました」
実際に考えた方法を試してみようと思い、ミカはタマモに一言言っておく。
もし、成功した場合に驚きの声を上げられたら門番に気付かれると思ったから。
ミカは集中するために一度深呼吸してから魔法を発動する。
まずは身に風を纏うことから。
全身を覆うだけなら何度かやったことがあるので問題なく発動する。
次により多くの空気をその風に無理矢理詰め込むイメージ。その際、一気に送り込むのではなく、ゆっくりと詰め込むイメージをしておく。
いきなり大量に送り込んではコントロールできない可能性がある。というのもあるが、それよりも問題なのは周りの風を圧縮し纏うイメージの関係上一気にやると強い風が発生する可能性があるのだ。
だからミカはそっと、そ~っと空気を取り込む。
「...っ」
声を上げそうになったタマモが慌てて自身の口を手で覆う。
彼女から見て、ミカの体がぐにゃりと歪み始めたため驚いたのだ。
そこからどんどんと体が弧を描くように歪んでいき、タマモからミカの姿が見えなくなった。
「...うん。何も見えない。タマモはどう?僕が見える?」
ミカの姿が見えないのにミカの囁き声が近くに聞こえ、タマモはビクッと少し動いたミカの方を正確に見つめる。
彼女、正確には彼女達獣種は人間と比べて五感が非常に優れている。彼女はミカの声からミカの位置を正確に読み取ったのだ。
「...はい。見えないです」
もちろんミカには見えていないのでそれに対してミカが疑問を持つことはない。
彼女の言葉にミカは頷くが、それが彼女に伝わることもない。
(後は、この風を、タマモが入れる程度に広げてーーー)
見えなくなる魔法はできた。
だが、風は自身の体に纏った状態だ。これではタマモが入らない。
自分だけが見えなくなるのでは彼女を置いていかなければならなくなってしまう。それでは困る。
そのため、ミカは自身を中心にゼロコンマ五メートル程圧縮した風を広げようとする。
もちろん失敗しないように細心の注意を払ってそっと、そ~っと行うことは忘れない。
大きさを決めた理由としては、彼女は小柄だからこのくらいで十分だと思ったこと。遠距離魔法はできないが風の刃の手刀ができるのだからそのくらいの距離ならいけると思ったことが上げられる。
そう。このくらいならいけると思っていた。
「・・・っ!」
頭痛が起こる。じわじわ強くなるのではなくいきなり強いのが来たため広げようと集中していた意識が逸れてしまった。
ミカを中心に爆風が発生する。
「キャッ!」
間近にいたタマモが背中から壁にぶつかった。
中心にいたミカにも風は襲ってきたのだが、それは本当に四方八方、上下左右前後から同じような力で襲ってきたため吹き飛ばなかった。というか、むしろ動けなかった。圧縮されて死ぬのでは?と思うほどの衝撃だった。
「なんだ!?」
「何者だ!?」
当然そんな衝撃に音が伴わない訳がなく、見張りの二人に気付かれた。
「いっ、くっ...。ごめん、ミスった。タマモ。相手の足が見えたら僕が転がすからその兵を気絶させて」
「っ。はい。わかりました」
ミカ達は自身を襲った衝撃ですぐに動くことができなかったが、幸いにも見張りの二人は警戒しながら近づいてきたため、体勢を整える事が間に合う。
だからといって余裕があるわけではない。
ミカはすぐさまタマモに指示し、直後に見えた門番のものと思われる足を踵側から払う。
完全に不意を突くことができたのか、抵抗はほとんど感じなかった。
足を振り上げるようにして背後に倒れているエルフ兵を無視してミカは通路に躍り出る。
その背後に隠れるようにしながら距離を詰めたタマモが倒れている途中のエルフ兵の腹部へと拳を叩き込んだ。
「…ゴプ!?」
兵が口から血を吹き出す。
兵の体は一瞬でくの字に折れ曲がり、直後に地面へと激突した。
正直ミカは『あれ、内蔵破裂して死んだんじゃね?』と思ったが今はスルー。顔がひきつっているのはしょうがない。
当然そんな目に遭った兵は白目を剥いて気絶していた。
それを横目にミカは少し離れたところで硬直している兵へと駆け寄る。
門番を任されるだけあって、そのエルフ兵はすぐさまミカへと槍を突きだしてくる。
(遅い!)
その突きの最中にある槍をミカは自身へと当たらないように横に一歩避けながら―――。
「っ!?」
槍を掴み取ろうとしていた腕を引っ込め、首も横へと大きく傾ける。
槍が頬を掠めた。
唐突に槍が加速したのだ。筋肉の動きに依るものではない。もし、そうであればそれを見切れるほどの眼を持っているミカにとっては効果がないはずなのだ。
(今のは、自身以外の力で押された感じだった・・・。魔法か)
他に思い当たるものがなかった。
おそらく、自身を強化する類いではなく、ミカのウィンドボムに近い反動を利用した魔法だろう。
「カッ!?」
ミカはお返しとばかりにノーモーションからの肘鉄を鳩尾へと叩き込む。
もちろん、自身を加速させるようにウィンドボムを扱うのを忘れない。
それでも気絶せずにエルフ兵が槍を振るおうと体を動かしたが、
「お、休、み!」
ミカは素早く後ろに回り込んで相手の首を肘裏で挟み両手を合わせる。その合わせた手で後頭部を押し込むように首を締めた。
裸締め。その中のバックチョークと言われる有名な技だ。
何とか逃れようとエルフ兵が暴れるが完全に決まったバックチョークはたとえ技をかけた相手が非力だろうが容易に抜け出せるものではない。
完全に抵抗を感じなくなったところでミカはエルフ兵を解放する。
完全に気絶しているのを確認したら、念のためそのエルフ兵の鎧を脱がしてその上に足を乗せておく。
絞め技で落ちた際の応急処置だ。
「...あ」
攻撃してきた相手を助けようと思っていた訳ではないがつい癖でやってしまった。
「・・・まぁいいや。武器貰いますねっと。あの報告に来てたエルフが何を言っていたのか気になるけど・・・。タマモ。とりあえず出るよ」
ぶつぶつと呟きながらミカは落ちていた槍を拾ってタマモに渡す。
「・・・私は槍が―――」
「無いよりマシ」
少し驚いた様子で槍を見つめていたタマモの言葉を予想していたミカが遮る。
確かにそうだと思ったタマモはそのまま槍を受け取った。
「前よろしく。罠とか待ち伏せに警戒して」
「はい」
ミカの指示にタマモは頷き階段を上る。その背後にある程度の距離を取ってミカが続く。
これはタマモを囮にしているわけではなく、もしも接敵した場合に行動できなくなるのを防ぐためだ。
階段は何とか二人並べる程度の横幅しかない。力士のような体の大きい人物の場合は一人しか通れないだろう。
そんな狭いところで並んだら、ただでさえ戦いにくい階段なのにさらに戦いにくくなってしまうと考えたのだ。
ちなみに、こんなところでは戦闘で槍を振るうことができない、と気づいたのは階段の中腹辺りでだったりする。
閑話休題。
階段は長かったが、それでも上り続けて二、三分で出口が見えてきた。
ここまで罠の類いは一切なし。
時刻が夕方なのか出口から漏れている光は紅色をしていた。
「タマモ。出口付近でも罠や待ち伏せへの注意を忘れないように」
「はい」
ミカは上手く行き過ぎていると疑いタマモに指示。出口を見つけて安心したところを捕らえるつもりなのだろうと考えたのだ。
二人は階段を走るペースを落として出口へと近づく。
「ご主人様。出口には誰も居ません」
タマモは音と匂いからそう判断した。
「・・・いや、考えてみれば獣種のタマモが居ることは相手にバレているはず。対策をたてられていると考えるべきだよ」
だが、ミカは警備が薄い事がどうしても気になり罠を疑う。ミカ達は警戒をさらに強めて出口をくぐる。
「・・・な!?」
外に出ると同時に周りを見回したミカが驚愕の声を上げて固まる。
敵兵が居たわけではない。
外の景色が珍しいものだったわけでもない。
日の光によって赤く染まった道、草花、岩、木々。そのどれもが普通のもの。
ただ一点。
太陽が中天で夕日よりも紅い輝きを放っている点を除いて。
今回の透明になる方法は勝手に予想したものです。物理的に違う可能性がありますが、そこは、こう、魔法だからでお願いします。
前書きでも言いましたが、ストックが無くなってしまいました。次回は十日で出せないかもしれません。ごめんなさい。
次回は『行くべき場所(行きたい場所ではない)』の予定です。
できてないのでタイトルは変わるかもしれません。




