表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
五章 元人間、現魔族最前線の町
58/111

五十二話:場違いな幸福感

獣っ娘が居るならばやらなければと思いやりました。


後悔はしていますが反省はしていません!


もし、別の小説とか書き始めたときに獣っ娘が出たらまたやるかもしれません。いえ、きっとやります!


4/1サブタイトル更新

「んぅ...」


 小さくうめきミカは目を覚ます。


 彼は起き上がらずに目だけをゆっくりと開けた。


 辺りは真っ暗だった。


「あふぅ。・・・眠っ...」


 あまり眠った感じがしない。


 辺りが真っ暗のため真夜中だと判断したミカは目を閉じゴロンと寝返りをうつ。


 ひんやりとした空気が頬を撫でた。


 床も冷たい。


 ミカは暖かい毛布のようなものを求めて手を伸ばす。


「んぅ?」


 モフッとした物に触れた。


 こんな気持ちいい布持ってたっけ?と疑問を持ちながらも深くは考えずにそれを引っ張る。


 けっこう重量があり、動かなかった。


 だから、ミカは持ってくるのを諦め、自らズルズルと寝ころんだまま移動。


 目の前にまで来たそれを軽く握る。


「...ぁ、...んっ」


 何か艶やかな声が聞こえた気がしたが、気にせずそれを少しだけ引っ張って自身の上に敷く。


 太さはお腹を何とか隠せる程度のものでしか無いがフカフカで暖かい。


 それに、お腹にかけると同時に同じ物が胸元に落ちてきた。


 それを抱き枕のように持って撫でる。


(・・・ん?落ちてきた?どこから?)


 疑問に思った直後だった。


「ゃ、・・・んっ...はぁ」


 ピクン。と抱き枕が動いた。


 ミカは目を開いて驚く。


 目の前に黄金色の髪を持った女の子の背中が視界いっぱいに広がっていた。


 というか、タマモが目の前で寝ていた。


 現状を理解できずにミカはフリーズする。


(え?あれ?なにこれ?昨日は確か・・・ん?昨日寝たっけ?・・・いや、襲われたんだ。で、砦で・・・あぁ、負けたのか)


 ミカは前日の事を順に思い出していく。


 宿で襲われ、また襲われるのはきついからと指示した者を殺そうと砦に攻め、相手が自分達を認識していないことにやらかしたと思いつつも後戻りもできず、その砦の主を拘束し、そして、何かよく分からない者に負けた。


「負けたってことは死んだのかな?でも、死んだって感じはしないよね?タマモがいるし。いや、一緒に死んだならありうる?」


「んっ...ぁ...」


 考え事をしている間、落ち着くので抱き枕を撫で続け、タマモが小さく呻く。


 その声でミカはようやく毛布や枕にしているものが何なのかを理解した。


 これ、タマモの尻尾だ。


「・・・」


 ミカはなでるたびにぴくぴくと反応する尻尾をじっと見つめる。


「ゃ・・・ひゃん!」


 好奇心には勝てなかった。


 ミカはギュウっと強く尻尾を抱きしめる。


 反応は劇的だった。


 タマモが声を上げながら、どうやったのかビクンと横向きに寝転んだまま数ミリほど跳ねた。


「え?え?な、なんぎゅ!?」


 タマモは自身に走った感覚に驚いて目を覚ましたようだ。


 彼女はバッと跳ね起き、立ち上がろうとして、変な声をあげる。


 ミカが尻尾を強く抱いたままだったため、尻尾が引っ張られるようになったからだ。


「ゃ、...んぅ。く、はぁ...。はぁ...」


 彼女は尻尾を見ようと体ごと振り向こうとして再度尻尾をピクンと跳ね上げさせ止まる。


 焦って自爆してしまったようだ。


 特に大きな運動はしていないはずだが、彼女の息が上がっている。


 ミカの抱えている尻尾はピクピクとしか動いていないが、抵抗しようとしているのが分かる。


 と、他人事のように見ているが原因はミカの腕の中にある尻尾だ。


 そのことにまだ気づいていないタマモは落ち着いてゆっくりと、体を動かさないようにして尻尾の方を見るために首を限界まで捻る。


 ミカと目があった。


「・・・」


 そして、ミカは口を半開きにして固まった。


 潤んだ瞳、赤く火照った頬に湿った唇。


 中学生位に見える少女が出すまさかの色気に固まってしまったのだ。


「・・・ぁ」


 タマモはミカと目があった瞬間に頬がさらに赤くなった。


 しかも、尻尾を抱えているのがミカだと分かった瞬間に抵抗が消えた。


 どころか、毛布のようにかけていた尻尾が照れてるようで、しかしどこか嬉しそうに振られている。


 しばし互いに見つめ合う。


「・・・ぁ、あの・・・ご、ご主人、様?」


「あ、ええっと・・・何か、ごめん」


 先に堪えきれなくなったのはタマモの方だった。


 彼女は伺うようにミカへと声をかける。


 その声で正気に戻ったミカは枕にしていた尻尾を離しつつ謝る。


 尻尾を離したときにタマモがちょっと残念そうにした点にミカは気づかなかった。


「い、いえ。だいじょうぶ、です。・・・その、不快ではありませんでしたか?」


「え?何が?」


「その、私の尻尾が・・・。人間の方達は私達獣種を好んでいないのですよね?」


 タマモは自身の尻尾を隠しながら、少し辛そうに口にする。


 この世界で獣種は魔物として扱われている。


 なので当然、この世界の人間は獣種を狩っている。


 その毛皮とか、尻尾とか、骨とかはいろんな物に使われ(前者二つは)人気を取っているのだが、獣種にとってそれは辱しめられていると取られている。


 だから獣種は自身達が人間に嫌われている、と思っている。


 好こうと思っているわけではないが。


 獣種の奴隷が人間に多く見られるのも一因だろう。


 人間には獣種をペットのようなものとして愛している者もいるのだが、獣種に取っては屈辱でしかない。


 だが、ミカはその事に関しては知らない。


「・・・他がどう思ってるかは知らないけど、僕は獣種、結構好きだよ?...まだタマモしか知らないけど」


 だから思っている事をそのまま口にした。


「す、すすす、す...」


「さっき触ってた尻尾だってフワフワモフモフで気持ち良かったし」


「き、きき、気持ち、い...」


「できれば他の獣種も触ってみたいーーー」


「それはダメです!」


 いきなり大きな声で詰め寄られてミカは驚く。


 何故怒鳴られたのか分からずにタマモをじっと見ていると、彼女はハッとしてまたもや顔を赤くし後退る。


 自分でも何故怒鳴ったのか分からない。


「ぁ、え、えっと...。その...。じゅ、獣種は基本的に尻尾や耳に触られるのを嫌いますので、・・・それで、その、あ、危ない、です」


「そうなの?じゃあ触らない方が良いのね?」


「は、はい!」


 タマモはミカの問いかけにブンブンと首を縦に振る。


「そっか...。ごめんね。なら、タマモも嫌だったでしょ?」


「え?」


「嫌なときは嫌って言っていいんだからね?・・・受け付けないものもあるけどその程度だったら気にしないから」


「ぁ、それは・・・ぅぅ」


 確かに獣種は尻尾や耳に触られるのを嫌っている。


 だが、それは『好きでもない相手から』触られるのを嫌っているのだ。


 好意を持っている相手ならば構わない。


 タマモはそう言いたかったのだが、真っ赤になりながら口ごもる。


 ーーー好きな相手なら悦ぶ部位である。


 いつ知ったのかは覚えていないが、その事を思い出したから。


 恥ずかしがったのだ。


(おかしな子だと思われてないでしょうか?)


 自身の行動に不安を覚えたタマモは伺うようにミカを見上げる。


 彼はタマモを見ていなかった。


(とりあえず死んでいないものと仮定して・・・鉄格子。牢屋か。他の声は聞こえないからあまり使われていない牢屋かな?これは・・・田舎に送られたってことかな?)


 キョロキョロと周りを見渡していたのだ。


 こんな自身をあまり見てほしくないと思っていたのにいざ見られていないとなると少し寂しくなる。


「ねぇ、タマモ。ここどこかわかる?・・・タマモ?」


「あ、はい。な、何ですか?」


 そんな事を思って反応が遅れてしまい、また、恥ずかしくなる。


「僕、ここに見覚え無いんだよね。タマモはどう?」


 言われてタマモは周りを見渡す。


「・・・え?牢屋?」


 彼女は何故牢屋に居るのか分からずに首を傾げ、理由を思い出そうとする。


「・・・あれ?そういえば、私、昨日は何を?・・・あ、人間に襲われたんでした。それで人間を助ける話になって・・・ご主人様と砦を攻めて・・・そう、魔族が突然叫びだして、それから・・・それから?」


 昨日の記憶が途中で途切れていることに気がついた。


 思い出そうと唸っているタマモにミカが補足する。


「タマモが急に気絶したんだよ。で、タマモが倒れた後に攻撃したであろう何かを見つけて戦闘になった。そして、負けた」


「ご主人様が負けたんですか?それに、何かって何ですか?」


(もや)みたいな・・・いや、あれが本体じゃないか。外見が隠されてて分からなかったけどたぶん、魔族。カウンターが有効だと分かったんだけど、どうにもできなかった」


「靄?幻覚?・・・あ。思い出しました。私を気絶させたのはラーン族の女性です。ご主人様は幻属性の魔法をかけられたのではないですか?」


「女性?・・・あ、そういえば何か柔らかいものに触れれたからカウンーーー」


「柔らかい、もの?」


 ミカの言葉にタマモがジト目を向けてきた。


(・・・あぁ。いらんこと言った)


 ミカはタマモを見ることができずに視線を明後日の方に逸らす。


「・・・あの魔族の胸は大きかったですもんね~?服も下着みたいでしたもんね~?」


「・・・いや、僕には靄にしかーーー」


「今の間は何ですか?」


 当時の感触を思いだし、もしかしたら本当に触ったのかも?と思っていた間です。何て言えるわけがない。


「そ、そういえばーーー」


「男はやはり大きい方が良いんですか?厭らしいです」


 話題を変えようとしたが、残念ながら上手くいかず、そのままタマモが愚痴り始めた。


「だいたいあんなもの戦闘では邪魔になるだけです。羨ましい。それなら戦場に出ずに娼婦でもやってれば良いんですウラヤマシイ。どうヤったら大きくナルンですか。どんなマホウをツカえばああなるンデスカ。チッ、寄越せヨ何ガビョウドウダーーー」


 ブツブツと呟くタマモの姿にミカは恐怖を覚える。


 ーーー神シネ。


 次に放ったこの一言にはとても、それはもう言葉に表しきれないような迫力があった。


 その迫力ある言葉はなおも続く。


「シネ、シネ、シネシネシネシネシにゃう!?」


 このまま聞いていては精神がどうにかなりそうだと思ったミカはタマモの耳を掴んで引っ張る。


 効果覿面。彼女はビクリと跳ね上がり、へなへなと力無く座り込んだ。


「な、なな、にゃにをーーー」


「そ・う・い・え・ば、タマモには魔族の姿が見えてたの?」


 ミカは話しやすいようにしゃがみこみ、タマモの言葉を無視して質問する。


「え?あ、はい。前にもお話したと思いますが私の特徴として幻属性が効きにくいというのがありますから」


「うん。それは聞いてたけど、リリィの幻覚は効いてるよね?」


「そういえばそうですね。・・・私は幻属性が効きにくいだけなのでリリィ様の魔法がその抵抗を越える程のものだったのかもしれません。・・・ちょっと自信が無くなりました。魔族も私を気絶させた後に魔法を使ったのかもしれません」


「・・・となると、ここから脱獄したとしても、あれと出会ったらまたここに戻される、あるいは殺される、か」


「脱獄できるんですか?」


「だって普通に魔法使えるし。見張りの気配もしないよね?」


 ミカは見えるように水の刃を作って見せる。


 タマモはそれを見て、慌てたように辺りを見渡す。


「・・・何も起こらない?」


「ね?これだけ長話してても誰も来ないし。正直、情報が無いから迂闊な行動したくないんだけど・・・。ここ、確実に異常が起こってるって考えるよね?」


「・・・普通、牢には魔法が使えなくなるアンチマジックや、魔力の高まりを検知し報せるクラックマジック等が仕掛けられています。それらが解かれているならばすぐに出るべきです」


「・・・こんな好都合な状態とかあり得る?正直、罠だと思うんだけど?手錠をされた形跡も無いし」


「どのみちここに残っていては殺されるか、それより酷い目に合うかの二択しかありません」


「あ、やっぱり?さすが魔族」


 ミカは呟きながら水を纏った手刀で鉄格子を三本ほど斬り落とす。


 高さは人が四つん這いになれば通れるほど。


 逃げると決めてからの行動は速かった。


「...こんなことなら僕もピッキング練習してれば良かった」


 ミカはぼやきながらも斬った鉄格子を支え、音がしないようにゆっくりと下ろす。


「タマモ、リリィ達がどこにいるかはわかる?」


 ミカの問いにタマモはスンスンと鼻を鳴らす。


「ここには連れてこられていないようです」


「なら、今回やることは、このエリアから逃げること、荷物の回収をすること、リリィ達と合流することの三つか・・・。今回は前回と違って戦闘を避けないとだから索敵が肝になる」


「はい。頑張ります」


 ミカがお願いする前にタマモが返事をした。


「よろしく」


 その事に少し驚いたが、説明の手間が省けたと考えてミカ達は脱獄を開始した。


ブックマーク減ったらどうしよ・・・。いえ、気にしませんとも。減ろうが続けます。


完結まで頑張って見せます!


次回は、どこまでも赤く。です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ