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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
五章 元人間、現魔族最前線の町
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四十八話 行動開始

どうも。スランプ気味の木崎咲です。(え?元々そんなに技量ない?うん。知ってます)


プロット作っているのにそれの通りに進んでくれないのです。


何故・・・?


4/13 サブタイトル更新

「その大通りを左に行って、まっすぐ行けば着く。鉄柵のある建物だ。他には無いからこれで分かるはずだ」


「あ、建物の特徴聞き忘れていました。ありがとうございます」


 ミカはここまでつれてきた男に一礼。


 そのまま一緒に行こうとしている男を手で止める。


「ここまでで大丈夫です。では、逃走経路の確保をお願いします」


 男の方はどこか釈然としていないような表情を浮かべていたが、ミカは気にせずに示されたほうへと歩き去る。


「いいんですか?」


「いいの」


 タマモからの問いにも軽く返す。


「それより、今回タマモがやることは前のコボルト戦と同じ、僕がタイミングを見て送るからその敵だけを倒しておいて。あの時と違って嫌がらせはしないから安心して」


「それは、魔族相手にも可能なんですか?」


「さぁ?」


「え?」


 タマモは不安になって問い返したのだが、ミカの回答はその不安を解消してもらえるものではなかった。


「できるからこの作戦じゃないんですか?」


「そんなこと言われても、ねぇ?そもそも相手の実力も兵力もわからないんだから。わかるわけないじゃん?」


「ですが・・・」


「なら他に策はある?策っていうか戦法」


「・・・」


 タマモは口ごもった。


 彼女は自身の実力が低く、下手な手だと足手まといになってしまうことを理解しているからだ。


「・・・砦が見えた。何もないなら戦法は変えないでいくよ」


 男に言われた鉄柵のある建物が見えた。


 いや、正確には男と別れてすぐに建物事態は見えていた。ただ、そこからでは鉄柵が見えていなかっただけだ。


 建物は石壁のような物に鉄で補強をしたかのような外見で、正直、壊れやすそうに見える。


 だが、幾つもの古い傷が有りながらも立ち続けるその姿から、見た目とは違いかなりの強度があると予想できる。


 大きさは砦にしては少し小さいように思える。


 ミカはそれをじっと見つめながら通りを歩く。


 道のど真ん中を、堂々と。


「な、ご主人様!隠れながらでないと魔法や弓が」


「それでいいの。僕達は目立つように暴れないとね」


 ミカはタマモの静止も無視して歩き続ける。


 何が飛んできても対応ができるように警戒しながらーーー



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「・・・ありえない」


「わ、わわ!」


 ミカはこの現状が信じられないのか顔を伏せたまま首を軽く横に振る。


 対してそのそばにいるタマモはこの現状が不利な状態だと思い慌てている。


 現在、彼らは砦の中腹辺りの広場で魔族の者達に囲まれている。


 その包囲網から一人の魔族がミカ達の方に踏み出してきた。


「貴様。自分が誰を敵に回したかわかっているのか?」


 その表情は怒りに染まっている。


「こんな対応、ありえない」


 対してミカは魔族の問いかけを無視して呟いた。


「・・・失敗した。そもそもの前提から間違ってた」


 ミカは諦めたような深いため息を吐く。


「何をぶつぶつ呟いている!」


「黙って」


「な!」


 魔族が震える。


 ミカの声音は無機質なものに近かった。


 それはこの魔族の事をどうでもいいものととらえているということ。


 魔族は恐怖からではなく、怒りから震えているのだ。


「・・・こいつらの主はあの夜襲で僕たちを殺したとでも思ってるみたいだね。あるいはそもそも眼中に無かったか」


 その様子にミカは気づいていたが、またもや無視する。


 彼が門に到達するまでの間に攻撃があった回数は何とゼロ。


 門の前で止められた時も、普通の対応だった。


『売られた喧嘩を買いに来ました』


 この言葉に門番達は呆けた表情を浮かべていた。


 その隙にミカ達はその門番を無力化して内部に入った。


『簡単すぎる』


 ミカは周りを警戒しながら砦を歩く。


 出会うのは巡見兵ばかり。


 それを全てミカ一人で撃破をしながら進み、その中腹辺りでようやく現在の状況になったのだ。


 対応が遅すぎる。


 攻撃した相手からの反撃を全く考えていなかったものの動きだ。


 だから、ミカは対応がありえないと呟いたのだ。


 覚悟がなっていない。


「ラーンのガキが!」


 ミカが物思いに耽っている間、魔族はずっと無視されていた。


 その事に堪えきれなくなったのか魔族がミカにその手の武器、槍を降り下ろす。


「誰がーーーって、わ!」


 背の事を気にしているミカは言い返そうとして、そのおかげで気がついた降り下ろしをとっさに避ける。


 追撃が来ると思って身構えたが、魔族はそれをしなかった。


「何が目的だ?」


 その代わりミカに問いかけてきた。


 その問いにミカはヘラヘラと相手をバカにしているような笑顔を浮かべる。


「言ったじゃないですかぁ。耳が悪いんですかぁ?しょうがないですねぇ」


「ア"ァ"!」


 表情だけではなく、口調も相手をバカにしているようなもの。


 もちろん、挑発だ。


 その挑発に攻撃してきた短気な魔族が苛立った声を上げた。


 だが、そんなことお構い無しにミカは口を開く。


「売られた喧嘩を買いに来たんですよ」


 一応律儀に答えながらミカはアイテムバッグからタマモの獲物ーーー薙刀(なぎなた)にしてはちょっと刃の分厚い物を持ち主に投げ渡す。


 長物が得意だけど突きが上手くいかないのなら、突きが不要な武器にすればいい。


 そう思って武器選びの際にシャーリィには薙刀を口で説明しながら造ってもらった。


 薙刀に詳しくないので見た目だけの物だったがタマモはそれを上手く扱えていた。


 だから、ミカは武器をそれに決定した。


 上の武器屋に戻ったあと、あった薙刀を購入したのだ。


 ちなみに、本人は気づいていないが、それは薙刀ではもちろんなく、どちらかと言えば中国の円月刀に近い何かだった。


「え?」


「え?じゃないよ。後ろ」


 突然渡された武器を見て首を傾げたタマモは言われたままに振り返る。


 そこには武器を手にした魔族が沢山いる。


 当然だ。


 現在、ミカ達は囲まれている(・・・・・・)のだから。


 タマモはとっさに身構える。


 その背中にスッと手を当てられた。


 彼女は少し力を抜いて手を当ててきた相手、ミカを見上げーーーようとする。


「へ?」


 気がつけば正面、間近にミカの顔があった。


 背中にはミカの腕の感触。


 そして、膝裏にも同じように腕の感触があった。


 状況の理解にしばしかかった。


(これ、・・・え?抱えられてる?)


 タマモは現状を理解すると同時に赤くなった。


「作戦。始めるよ」


 ミカはタマモに呟く。


 タマモの様子に気づいたそぶりは無いし、彼女の反応を待つことも無かった。


 彼はタマモを抱いたまま全力ダッシュ。


 いや、ダッシュではない。


 足裏から爆風を噴出して飛んでいた。


 ミカは勢いそのままに敵兵を飛び越える。


「ひゃぁぁぁぁぁ!」


 タマモの声が広場に響く中、トトン、と人を飛び越える程の大ジャンプ後の着地音とは思えない軽い音を鳴らす。


「ふぅ。さっすがぁ」


 端から聞いたら自画自賛しているような台詞をミカは吐き、広場から同じように爆風を発生させながら高機動で廊下の方へと向かう。


 彼は魔法の凄さを改めて実感していた。


 魔法無しでは人を飛び越えるなど不可能に近い。


 それを人を抱えながら三人分ほど飛び越えることができたのだ。


 凄さを実感するには充分だろう。


「っと!」


 ミカは空中で体勢を立て直す為に左肩辺りで爆風を起こす。


 今使っている魔法は『ウィンドボム』を改良した魔法だ。


 ミカは必要になると思う魔法を重点的に練習していた。


 このウィンドボムは自身の間近でしかできないが、飛んだり、跳んだり、距離を取りたい時など使える場面が多かったので特に重点的に練習してきた魔法だ。


 おかげで今では最も扱いやすい魔法になっている。


 ちなみに、小規模とはいえ間近で爆風を起こすことは危険行為らしい。


 危険行為なら最初に言って欲しかったと当時思ったという。


 自身を傷つけずに間近で魔法を使っていたミカを見てリリィは『魔法の制御能力は化物じみているな』と呟いていたそうだ。


「・・・」


 自身の努力を少々思い出しながら廊下に戻り、充分な距離を取ったミカはタマモを下ろす。


 下ろしたのだが、彼女はミカに抱き付くような体勢のまま離れない。


 このウィンドボムを使った高起動移動には欠点がある。


 不安定なことだ。


 先ほどの左肩辺りで爆風を起こした場面以外でも、足を蹴り出す方向が毎回違っていた。


 これは足裏から爆風を噴出する角度を調整しているためだ。


 魔法はイメージが大切。


 爆風によって生じた圧力を仮想の床にするようなイメージでミカは床ではなく宙を蹴っている。


 前回ラルバで戦ったダナルは空中を飛んでいた。


 そんなことをされてはただの人間であるミカには打つ手がない。


 そのために空中で戦えるように考えたのがこの高起動移動だ。


 しかしこの魔法、まだ真っ直ぐ飛ぶことができない。


 こんな状態では空中戦も不可能だろう。


 そして、この不安定さ故にタマモは恐怖した。


 彼女の先ほどの状態は安全ベルト無しでジェットコースターに乗っているようなものだった。


 恐らくだが、ジェットコースターに乗ったこともない少女に、恐怖するなというのは酷だろう。


 だが、現状は敵兵が迫ってきている状態だ。


 ミカは両手をタマモの肩に置いてぐぐっと力を込めて押す。


「・・・っ、はぁ」


 びくともしなかった。


「命令。手を離せ」


 時間がないのでミカは命令をする。


 首輪が一瞬だけ赤く光る。


 タマモはビクッと一瞬体を硬直させ、ゆっくりとだが、手を離した。


 彼女はミカを涙目で見上げ、自身の体勢に気がついたのか真っ赤になってバッ!と離れた。


「あ、あうあ...」


「ハイハイ。泣き顔見られたからって真っ赤にならないでよ。既に二回目なんだから、っと」


 ミカがタマモを相手している間に魔族が廊下に入ってきた。


 それだけなら予想通りなのだが、先頭の魔族が一メートル近くある火球を放ってきた。


 廊下にいるせいで回避は不可能。


 そのため、ミカはとっさに隠れる。


 ーーータマモの背後に。


「へ?」


 火球は彼女に当たり爆発した。


「仕留めた‼」


「誰を?」


 ミカは魔法を放った魔族の足下にいた。


 魔族はとっさにその鋭い爪を降り下ろす。


 ミカはその腕を取り、足で相手の足を払って低い姿勢のまま背負い投げを行う。


 裏神月流・岩砕の斧(がんさいのおの)


 裏神月流の技の一つで、想定している状況が『自身がしゃがみ状態、かつ相手の攻撃が足の踏ん切りが弱い不安定な体勢からの振り下ろしの拳だった場合にのみ』と、なんとも限定されている技。


 だが、その代わりに威力は絶大だ。


 メギィ!と普通に生活していたら聞くことのないような音が廊下に響く。


 岩砕は顔砕を隠したもの。


 低い姿勢での背負い投げのため、相手はそのまま顔面を地面に叩きつけられ、声も上げずに気絶した。


 この技の利点は威力だけではなく、全体的に動きが小さいため技の速度が早く、隙が短いことだ。


 腕を振り下ろされてから相手を叩きつけるまでにかかった時間は一秒にも満たない。


「・・・仲間を盾にしただと?」


 廊下に移動する前にミカへと攻撃していた魔族が戦慄の表情を浮かべてミカを見ている。


 彼はミカの攻撃にではなくその前の行動に戦慄していたのだ。


 魔族の問いにミカは笑って答える。


「別に問題無いでしょ」


 ミカの言葉に疑問を口にした魔族だけでなく、他の魔族もおぞましい物を見るような目付きでミカを見てくる。


「それより、油断してるとーーー」


「・・・な!がぁぁぁぁぁ!」


 ミカの言葉の途中で魔族の一人が悲鳴を上げる。


「あー、ほら、ああなるよ?」


 そちらに首を向ければ、ちょうどタマモがミカから少し離れたところで魔族の首を跳ねているところだった。


 その魔族の片腕が無いことから悲鳴は腕を斬り落とされた時のものだったのだろうと予想ができる。


 ミカは視線を戻して火球を放った魔族に苦笑いを見せる。


 魔族はミカのことを見ていなかった。


「バカな!無傷ーーー」


 魔族の言葉が途切れる。


 理由は簡単。


「だから言ったのに。ああなるよって」


 ミカが手刀で魔族の首を跳ね飛ばしたからだ。


「こほっ。ご主人様。・・・酷いです」


 少し咳き込みながらタマモがミカに近づく。


 服は少し焦げているが、彼女の肌には傷一つ無い。


 命を軽く見ているところのあるミカだが、流石に理由もなく人を盾にするような性格はしていない。


 ミカは彼女の自己紹介の時に言った言葉を覚えていた。


 彼女は炎系統が効かない獣種だ。


 それが分かっているから盾にしたのだ。


 ーーーだからといってこの行動が正しいものかと聞かれれば誰もが首を横に振るだろうが。


「ごめん。とっさだったから」


 だからミカは真剣な表情を作って(・・・)謝る。


 自身の行動が人としておかしいものだと分かっているから。


「それより、タマモ。作戦と行動が違うよ」


「さ、作戦には、私を、その・・・て、離れる何てありませんでした」


「そこはほら、あの数相手に広いところとか難しかったからね」


「ご主人様も違う行動をしているじゃないですか」


「・・・確かに」


 ミカはタマモの言葉を聞いてしきりに頷いた。


「もう作戦はいっか。とにかく倒そう。それが作戦」


 ミカは笑って構える。


「なんですかそれ」


 タマモも笑いながら横に並んだ。


「無理だと思ったらすぐに下がって良いからね」


「ありがとうございます。...やっぱり優しいですね」


 タマモはお礼を言ったあとに、ぼそりと小さく呟いた。


 ミカには聞こえていなかったが、もし聞こえていたら熱があるのではないかと疑っただろう。


 だが、聞こえていなかったのだから突っ込むものは誰もいない。


 二人は特に示し合わせることもなく、同時に飛び出す。


 互いにただ、目の前の敵だけを見据えて。


次回は、『踊り狂おう』です。


はい。サブタイがどんどん思い付かなくなっています。ごめんなさい。

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