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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
五章 元人間、現魔族最前線の町
53/111

四十七話 作戦会議

明けましておめでとうございます。


今年もちょこちょこ更新致しますので、よろしくお願いいたします。


4/14 サブタイトル更新


 あんな、作戦とも呼べないただの突貫などやるはずもなく、改めて作戦会議を始める。


 気絶していた男も目を覚まし、合わせて七人で向かい合う。


 なお、残りの一名であるタマモは周囲の警戒に当たっている。


「正直に言います。正面から挑むと負けると思います」


「じゃあ、どうするのだ?」


 開口一番のミカの言葉にリリィが問い返す。


 少しは自分で考えて欲しいと思うが、いつ次の刺客なのが現れるか分からないので話を進める。


「役割を分けようと思います」


「役割?この少人数をさらに分けるのはあまり良い手ではなかろう?」


 リリィがミカに問い返す。


 その事にミカは驚いた。


 こういう時、意見を言うのはシャーリィの方なので失礼だと分かっているが、リリィの事を頭の回転が良くない子だと思っていたのだ。


「むっ。その視線は何だ?」


「いや、何でもない」


 リリィが不快そうにミカを軽く睨んだ。


「で、その役割ですがーーー」


 ミカは彼女の視線も問いも無視して話を戻す。


「ーーー簡単に言うと、一組が囮をやり、もう一組が暗殺をやるって感じの予定です」


 言ってミカは男達の方を向く。


「とりあえず、相手の拠点を砦と言いますが。砦に出入口は幾つ有りますか?」


「は?」


「答えてください」


 男達は困惑しながら顔を合わせて、ミカを襲ったリーダー的な人物が口を開く。


「一つだ」


「ないね」


 ミカは男の意見をバッサリ切る。


「ええ。あり得ません。必ず抜け道のような、撤退用の別口があるはずです。元の城主が逃げるときの為のものでしょうし、世間に知られてたらおかしいので、おそらく隠されていたはずです。それっぽい、怪しい場所に心当たりはありませんか?」


 男達は再度確認するように顔を見合わせ、全員が首を横に振った。


「そうですか」


 ミカは軽く頷き、少し考えるように目を閉じた。


 しばらく、沈黙。


「・・・なら、チーム分けはこうかな?」


 ミカは目を開け呟く。


「得意魔法の特性上向いているリリィと、察知能力の高いタマモが暗殺役。二人は正面から入らず、必ず別口を探して入ること。あり得ないとは思うけど、本当に裏口的なのが無かったら窓からでもいいから」


「うむ。理解した」


「対集団戦が得意な僕と、高威力広範囲魔法が使えるシャーリィが囮役をする。囮って言ってるけど行けそうだったら将の首を取る。・・・無理だろうけど。正直、シャーリィじゃなくてリリィでもいいんだけど。まぁ、扱える魔法がリリィの方が安全に潜入できそうだし、上位属性に関する知識も豊富だからね」


 本当はリリィが幻属性の魔法を使えることが潜入、暗殺役にした理由だが流石に会ったばかりの者に手の内を言うつもりはない。


 ミカの言葉を聞いたシャーリィからの返事はなく、彼女は曖昧な表情で沈黙していた。


 ミカはそれに疑問を持ったが問いかけることはできなかった。


「俺達はどうすればいいんだ?」


 男達がやる気に満ちているような表情でミカを見てきたからだ。


 それは、人質にされた人達のために何かがしたいと、ありありと分かる姿だった。


「二人は道案内を、もう二人は町の情報集めをお願いします」


 だから、ミカの解答に男達が不満顔を浮かべる。


 直接関われない内容に不満があるからだ。


 だが、ミカに意見を変える気はない。


「案内役のお二人は砦が見えてきたらそこで逃走経路を確保しておいてください」


 彼らが居ても足手まといになるだけだと分かっているから。


「これよりも数を減らすのはーーー」


「いえ、大切なことです。相手の実力が分からない以上、いつでも逃げれるようにしないといけません」


 ミカはそんな思いを口には出さずにさも大事なことのように言う。


 だが、一番の理由はーーー


「しかしーーー」


「全滅したら、次も無くなるんですよ?」


 ーーー男達が信用できない。


 そもそも、リリィ達がおかしいとミカは思う。


 自分達を殺しに掛かってきた相手を『人質が居たから』の一言で同情できることが信じられない。


「・・・負けなければいい」


「どんなことにも百パーセントはあり得ません」


『人質が居たから』殺しに来たのなら。


 目の前にその人質を出されたら背中から刺されることだってあり得るのだから。


「・・・わかった」


 男達がしぶしぶとだが、頷いたのを確認して、さぁ、続きを話そう。と思ったのだが、


「ちょっといい?」


 スッ、とシャーリィが手を上げた。


 狙ったようなタイミングに全員がそちらを向く。


「妾は主様からあまり離れられないわ」


「それはーーー契約の類い?」


 シャーリィの言葉にミカは一瞬固まる。


 彼女の言葉に驚いたのではなく、何て言うべきか悩んだのだ。


 彼女は魔法である。


 それを赤の他人に知らせるのは不味いと考えたため、固まったのだ。


 幸いにも本当に短い時間だったうえ、周りの者達は発言者であるシャーリィの方を向いていたため、そのことに気づいたのはシャーリィだけだった。


「契・・・ええ。そうね。妾と主様の契約の関係ね。これのおかげで妾達は強い魔法を放てるわ」


 彼女は前の町、ラルバでの薬草依頼の際に自身とその主の魔法が強力であることを理解した。


 魔法の威力に不信感を持たれないように、自身達の事を探られないようにするために、彼女はミカの発言を利用したのだ。


 ミカはその事に感心した。


「じゃあ、チーム分けは必然的に僕とタマモ、リリィとシャーリィになるわけだけど・・・リリィはどっちがいい?」


「ふぇ!?妾が決めるのか!?」


 ミカはリリィがシャーリィの話に首を傾げ、口を開いたのを見て少し慌てぎみに話を再開した。


 リリィがシャーリィの話に対して疑問を口にしてしまっては今のやり取りが無駄になってしまうからだ。


 ミカは牽制の意味も込めて意見をリリィに求める。


 今まで作戦全てをミカが仕切っていたが唐突に意見を求められてリリィが慌てて問い返してきた。


 ミカはニコニコと笑って見ているだけ。


『契約に関しては触れるな』という意味を込めて。


「・・・」


 彼女が口元を手で隠して、先ほどの慌てようが嘘に見えるほど静かになった。


 それを確認して、ミカは視線を戻す。


「魔法についてあまり知らない僕と、そもそも魔法を使えない獣種であるタマモじゃ魔法的な仕掛けがあったらどうしようもないから。潜入は無理だね。僕達は囮役をやる」


「・・・へ?」


 リリィが間の抜けた声を上げる。


「リリィ達は暗殺役をお願い」


「今、悩むそぶりも無かったな?何故妾に問いかけたのだ?」


 真剣にどちらが成功率の高い案かを考えていたリリィは聞いておきながら自身の意見も聞かず、あっさりと決めたミカを軽く睨みながら問いかける。


「それは・・・ねぇ」


「必要だったからよ」


 ミカとシャーリィの二人は顔を見合せ、苦笑い。


 その事にリリィがおもしろく無さそうな表情を浮かべていた。


「さて、役割が決まったので大切な事を言っておくよ」


 リリィからの抗議の視線を無視して話を続ける。


「リリィ、シャーリィ。今回、僕たち囮役からの手助けは無いものとして行動すること。僕たちも君達の手助けは期待しない」


「え?」


「ええ。でも、ピンチなのを見かけたら助けーーー」


助けるな(・・・・)


 シャーリィの言葉を遮ってミカは言う。


 彼女達は何を言われたのか分からずに固まった。


「あぁ、ごめん。言葉足らずだった。自身の役割を終えるまで他チームへの手助けはしないこと。もちろん、僕達が捕まっても僕達が何とかする」


「だが・・・」


「捕まった方がいい場合だって無くは無いんだから」


 そう言っても彼女達は頷かない。納得できないようだ。


 ミカは小さくため息。


「わかった。じゃあ合図を決めるよ。助けがいるときは・・・うーん。・・・手を上げて人指し指、小指の二本を立てて振る。右手で」


 ミカは右手で実際につくって見せる。


「手を拘束されたりとかで無理な場合は目を合わせた後に、固く両目を閉じて、右目だけを開けて、次に左目だけを開ける」


「何故声で言わんのだ?」


 リリィの疑問にミカは一度口を開いてから困ったように黙る。


「・・・ちょっと説明しづらい。タマモ。ちょっと来て」


 ミカはタマモを呼び寄せる。


 彼女は言われた通りに近づき、途中で何かに気づいて止まった。


 その反応を予想していたかのようにスッとミカは自ら近づいて耳打ちする。


「・・・できる?」


「か、書くものが!」


「はいこれ」


 ミカはタマモにノートを千切った紙とシャープペンシルを渡す。


 彼女はそれらを受け取り普通に扱い始めた。


 車のような物を見たときから思っていたが、この世界の文明は結構進んでいるようだ。


 魔法があるのに、とミカは意外に思う。


 パキッ。と芯が折れる音がした。


 が、コココッと、タマモが紙に書き込む音が響き続けていたので特に問題は無かったと判断。


 直後にタマモが半泣きでミカに振り返った。


「ご、ごめんなさい」


「ん?」


 何故謝られるのか分からずにミカは首を傾げた。


 彼女は恐る恐るシャーペンを差し出して涙をこぼしながら言う。


「へ、変な音がして、文字が書けなくなって、魔法ペン。壊して、しまいました」


「いや、芯が折れただけだから」


 ミカは内心で、『やっぱり、この世界の時代が分からない』と呟いた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 タマモは書いた紙をシャーリィに渡して耳元で囁く。


 顔が赤い気がするが、気のせいだ。ハプニングなんてなかった。


 きっと、急いで書いたから疲れたのだろう。


 現に今、窓に腕をかけて休んでいる。


 シャーリィは読み始め、すぐに手にとってリリィと二人でしか見れないような位置に持っていく。


「で、声を出さない理由だけど書いてある通り。簡単に言えばバレるからだね」


 ミカはこちらもタマモに書いてもらった紙を持っている。


 それを喋りはじめと同時にリリィ達に見えるようにした。


 そこには魔族の文字が一文だけ書いてある。


『下半分の文章に意味は無し』


「え?でむぐっ!?」


 リリィは何かを言おうとしたがそれはシャーリィに止められる。


 紙には魔族の文字が沢山書いてある。


 最初の一文に『これは盗聴対策である』と。


 シャーリィはそこから折り目が付いているところまでの上半分(・・・)をスルー。


 下半分のはじめは『眼の対策は十分か?』だった。


 シャーリィは慌てて魔法的、肉体的問わず一定以上の距離からでは文字に影が落ちて読めなくする簡易的な対策を行い続きを読む。


『手は左手で人指し指と中指を立てる。眼の合図は右目を閉じるだけ』


 シャーリィは読み終えたら紙をすぐに畳んだ。


「理解したわ。合図はさっきのでいいのね?」


「もちろん。二度は言わないよ?」


「ええ。大丈夫」


 彼女は意味深な笑顔で人指し指と小指を伸ばした右手を振る。


 念のための演技だ。


 ミカは頷いた。あたかも、正しいと言わんばかりに。


 それを確認したシャーリィはその立てた指の間から出した炎で紙だけを焼き尽くす。


 証拠隠滅だ。


「あ、おい!俺達が読んで無いぞ!」


「これは城に入る私たちにしか意味の無いものよ」


 男達の声をシャーリィが封殺する。


「さて、最後に質問は有りますか?」


「紙の中身はなんだ?」


「もしもの場合の逆転の手です」


 男達の質問に嘘を答えるミカ。


 とても自然体で男達はミカの言葉が嘘だと分からなかった。


「他は?」


 誰も手を上げない。


「では作戦を開始します。僕とタマモが出て・・・僕達が完全に見えなくなったら出て来て。案内も一人お願いします」


 言って、ミカはタマモと適当に近くにいた男を一人引き連れて宿を出る。


(誘ってるのか、舐めてるのか。はたまた忙しいのか。できれば舐めていてくれると助かるね)


 ミカは内心で呟く。


 長々と話していたのに襲撃は無し。


 できれば魔族の配下を捕まえたかった。


 情報量が心もとない。そう不安に思いながらミカ達は町に消えていった。



『初めの上下は逆だそうです』


これが、タマモが囁いた内容です。


次回は、行動開始。です。

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