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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
五章 元人間、現魔族最前線の町
52/111

四十六話 宿屋にて

ごめんなさい‼


fateの最終章が楽しくて完全に投稿を忘れていました。


全員集合みたいなの大好きです。みんなかっこよくて・・・幸せです。


しかし、皆さん。狩るの速すぎませんか?


4/14 サブタイトル更新

「・・・」


「・・・すぅ。・・・すぅ」


 真夜中。町の方も既に静まり返っている。


 この部屋の者もベッドの中に入って眠っている。


 真夜中とは言ったがこの世界は地球ほどには商業に積極的ではないため、まだ日本で言うところの10時ごろだろう。


 ミシィ...。


 廊下から木の板に重たいものが乗っかったときのような音が聞こえる。


 キギィ...。


 部屋の扉がゆっくりと開き、そろり、そろりと音を立てないように意識して男達が部屋へと侵入してきた。


「...寝ているか?」


 ベッド脇に近づいた男が他のベッドにそれぞれ近づいた男達へと問いかける。


 その男達三人が声を出さずに頷き、懐から短剣を取り出した。


 問いかけた方の男も同じように短剣を取り出す。


「...行くぞ」


 四人が同時に短剣を振り上げ、


 ガバッ!っと、毛布が三つ跳ね上がった。


 部屋の住人ーーーミカ、シャーリィ、タマモの三人が跳ね起たのだ。


 侵入してきた男達は突然のことに驚き硬直。


 その隙に三人は一斉に行動する。


 ミカはまず唯一起きていないリリィを狙っている男へと牽制的な意味を込めて枕を投げつけ、直後に自身を狙っている男の腕を毛布で包み武器を扱えなくさせる。


 ようやく再起動した男が毛布を取ろうとしている間に背後に回り込んで後ろ首を掴み、地面に押し倒し、その体に乗るようにして拘束する。


 どれも、一切止まることのない流れるような手つきだった。


 シャーリィは毛布が跳ね上がったことによってできた死角を利用して目の前の男の影を踏みつける。


 と、同時に自身の影をリリィを狙っている男の影へと伸ばした。


 何らかの魔法なのだろう。影を踏まれた男は武器を持って振り返っている途中のような不自然な体勢のままピクリとも動かない。


 また、シャーリィの影がリリィを狙っている男の影に触れたと同時にその男も同じように不自然な体勢のまま動かなくなった。


 二人同時に処理をしていたが、一人相手のミカよりも早く終わっている。


 タマモはそれよりもさらに早く終わっていた。


「ヤァッ!」


 正拳突き一撃。


「グゥッ!」


 ただそれだけで男が崩れ落ちる。


「え?あれ?」


 むしろタマモは自身が魔族の中でかなり弱い部類だと思っているため、一撃で終わったことに困惑していた。


「・・・ふぇ?・・・!?何だ!?・・・ど、どういう状況だ?」


 リリィが起き上がったのは全てが終わった直後だった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ミカ達はそれぞれ捕らえた相手の手首をシーツで縛って拘束した。


「二人とも良く気づいたね。ちゃんと寝てたはずでしょ?」


 個人個人を縛っているシーツの上から、さらに全員の手首を纏めてロープで縛りつつミカは跳ね起きた二人に問いかける。


「主様の周りに妾達以外の何者かが近づいたら私に報せるように簡易結界を張っていたのよ」


「私は獣種ですから。廊下の方から血の匂いがしましたし、足音も近づいて来たのが聴こえて起きました」


「すぐに起きなかったのは?」


「妾は起きた直後だったわ」


「ご主人様も気づいていたようでしたので。行動をされないなら知り合いかもしれないと思って・・・や、やはりすぐに知らせた方が良かったでしょうか?」


「いや、今回はいい判断だったよ」


 不安げに尋ねてきたタマモにミカは笑いかけながら誉める。


 頭を撫でているのは何となくだ。どことなく犬みたいだなぁと思ったのかもしれない。


 ホッとしたタマモは頭を撫でられたことに少し嬉しそうにはにかんだ。


 彼女の尻尾がゆらゆらと振られている。


 ミカの視線がそれに合わせてふらふらと揺れていた。


(・・・握ってみたい)


 そう思ったが、それが実行されることはなかった。


「それよりもミカ。また(・・)最後?」


 行動する前にシャーリィが質問をしたからだ。


「何のことだ?」


「主様はいつも最初だものね」


「?」


 リリィの問いかけにシャーリィは曖昧に答えた。


 それが何のことか分からず彼女は首をかしげる。


「就寝が、よ」


「え?だが、ミカはーーー」


「そう。最初に起きる」


 リリィはミカを心配して見つめる。


「僕の故郷ではもっと遅く寝て早く起きるとか普通にあったからね」


 ()れだよ、慣れ。


 と、ミカは軽く言う。


 だが、それは何かを誤魔化しているもののように見えなくもない。


 リリィは『本当に大丈夫なのか?』と心配するだけだったが、シャーリィはミカの解答を素直に信じていいのか悩む。


「そんなことより、この男達への尋問が先でしょ」


 その一言で全員が捕らえた男達の方へと意識を向ける。


 タマモが殴った男以外は全員意識があり、内二人は怯えた表情でミカ達を見上げている。


「さて、どうして襲ってきたのかな?」


 ミカの問いかけにピクリと、唯一震えずにミカ達を見ていた男が反応した。


「主様」


「うむ。ぬしら、人間だな?」


「・・・人の言葉。やはり、意思疏通のできる魔族は他にも居るのか」


 リリィ達は男達にも分かるように言葉を人間のものに変えた。


 そのリリィの問いに男は答えずミカ達四人を順に見て一人呟く。


 その内容から既に人間の言葉を話すことのできる魔族と会っていることが分かる。


 が、ミカは違うところが気になっていた。


(・・・僕は違うんだけどなぁ)


 人間だと言いたいが、言えない。


 魔族の町に魔族として入っているのだからこれは当然なのだ。


 例え、相手が人間だったとしても他に耳があるかもしれない。


 なので、ミカはもどかしい思いをしながらも、とりあえず男達の回答を待つことにする。


 男が頭を下げた。


「は?」


 突然の行動にミカは間抜けな声をあげてしまった。


「頼む。人質を取られているんだ。助けてくれ」


「は?」


 同じ単語だが、響きが違った。


 まるで、受け入れられるわけのない提案を出されたときのような、『ア"?』と言う単語に書き換えてもいいような、そんな低い声だった。


「どういうことだ?」


 だが、そんなミカのことは誰も気に留めずにリリィが話に乗り出した。


「この町にいた非戦闘員の女性や子供が攻めてきた魔族に囚われてる」


 男が悲痛な表情で語り出す。


「だから、その強さを見込んで頼む。皆を助けてくれ」


 男は必至に頭を下げる。


 自身のことなど考えず、人質にされたものを助けたいがために。


「・・・」


 そんな男をミカは無言で見下ろす。


 その視線はどこか冷めたい。


「ミカ。助けに行こう」


「妾も主様と同意見よ」


 リリィとシャーリィは迷いなく言った。


 助けを求められたら助ける。


 そうすることが正しいことなのだと思っているかのように。


 本当に魔族なのだろうかと疑ってしまう。


 ちなみに、タマモは会話に参加していない。


 相手は人間で人間の言葉を話している。


 特別な生まれでもなんでもないタマモは人間の言葉を理解していないため会話に参加できないのだ。(ミカはその事に気づいていない)


「二人とも何も考えてないでしょ?その意見は却下」


「なら、ミカは何か考えがあるのね?」


 正直何も考えていなかったシャーリィはミカの解答を聞いて別の意見を期待した。


「ないよ?」


 だから、リリィ達はミカの解答に一瞬固まる。


「そもそも、この人達は僕たちを殺しに来てたんだよ?何でそんなのを助けなくちゃいけないの?」


 本当に分からないといったキョトン顔でミカは彼女達に問いかける。


「・・・だが、それは人質を取られていたからで、仕方なくーーー」


「だから何?他人の為に殺されてくれって?バカじゃないの?」


 リリィの言葉をミカは遮り嘲笑う。


「そんなことよりもこの場ーーー」


「そんなこと?人質の事をそんなことと言うの?」


 ミカの言葉をシャーリィが静かな声で遮る。


 主がやられたことを返した形だ。


 意識したことではないだろう。現に彼女は今、怒りのこもった瞳でミカを睨んでいる。


「命がかかってる話なのよ?」


「・・・まず、他人の事より自身の事を心配した方がいいよ」


「・・・どういう意味?」


 スッ、とシャーリィが身構える。


 シャーリィが警戒している相手は自身だと気づいたミカはため息吐く。


 力ずくで言うことを聞かせようとしているように見えたのだろうか?


 見ればリリィも不安そうにミカを見ていた。


「・・・警戒する方向が違う。僕達は襲われたんだよ?場所を知られてるみたいだから夜襲が彼らだけだとは限らない。てか、たぶんこれは使い捨てだと思う。弱いし」


 リリィ達はハッとした表情を浮かべ、タマモが外を警戒し始める。


 遠距離から建物ごと攻撃してくる可能性に気づいたようだ。


「で、だよ。リリィはこの部屋を魔法で、こう、包むように守ることってできない?もちろん魔法を通さないように。シャーリィは影を使えば弓とかの物理攻撃全部もらえるでしょ?」


「無理よ。一定以上の速度の物は収納できないわ」


「防御の方も厳しいな。タイミングが分かれば話は別なのだが・・・」


 むっ。とミカは言葉に詰まった。


 これまで見てきた彼女達の魔法。その凄さを知っているためできると思っていたのだ。


(籠城が不可能・・・。他の手は・・・)


 顎に手を当てどうするか考える。


「あ、あの、助けていただけるのでしょうか?」


「って、この町のこと全然知らない。・・・はぁ~。なら手なんてもう一つしかないじゃんか」


 男が問いかけてきたが、ミカはそれに気づかず深いため息。


「この人達をけしかけた相手を倒すしかないか~」


 本当に面倒そうに呟く。


「え?でも、今『ここを砦にしたい』みたいな話をしていませんでしたか?私はご主人様の最初の意見に賛成です」


 外を警戒していたタマモが驚いてミカの方へと振り返る。


 他の二人は何も言わないが、驚愕の表情を浮かべたことからミカの次案が彼女達にとって予想外の物だということがわかった。


 その反応にミカは少し呆れる。


「こっちの場所がバレてて籠城できない。防御面も確実なことは言えない。他のところに隠れたくてもここに来たばかりの僕たちに隠れるのに良い場所なんてわからない。ほら、もう攻めるしかないじゃん。敵の拠点はこの人達が知ってるんだろうし」


 あぁ、そうか。といった納得の声は聞こえなかった。


 タマモはそういうものなのかな?と首を傾げている。


 本当に手はそれだけしかなかったのかと純粋に思っているだけだ。


 この反応はまだ理解できる。


 だが、残り二人の反応は違った。


 パァッと言う擬音が似合いそうな笑顔をミカに見せてきたのだ。


 その笑顔にミカは嫌な予感がした。


「相談は終わった。ぬしらに命令した魔族を妾達が倒す」


「それは、つまりーーー」


「うむ。人質の救助に手を貸してやろう!」


 リリィがとても楽しそうに、上機嫌に、男達へ報告する。


 彼女はミカの理由を助けるための口実、もしくは照れ隠しか何かの類いだと思ったようだ。


「・・・待って、そんなこーーー」


「すまない。恩に着る」


「いや、だからーーー」


「魔族の将がいる場所には俺たちが案内する」


「リスクを背負う余裕なんてーーー」


「いや、させてくれ。俺たちの人質だ。例え自己満足だろうが何かをしたい」


「うむ。是非頼む」


「・・・」


 ミカは諦めた。


 視線の先ではリリィ達が男達を捕らえていたロープやシーツを斬り解放していっている。


(警戒心、薄いな~)


 ミカはそのさまを他人事のように眺める。


 男達が虚言を吐いていて、リリィ達を攻撃する可能性を考えてはいたが、害されてもリリィ達の自業自得で処理しようと思っていた。


 言葉を勝手にプラス方向に勘違いされ、訂正の言葉を何度も遮られ、ストレスが溜まっていたミカは『痛い目を見れば良いのに』と内心思ってもいた。


 だが、そんな思いとは裏腹に解放された男達はリリィ達と共に作戦などを話始める。


 ミカは、はぁ~、と一人ため息を吐く。


「・・・何?」


 その動作で少し下がった頭に置かれる手。


 タマモがミカの頭を撫でたのだ。


「あ、いえその。ご主人様に元気が無いように見えたものですから...。げ、元気付けようと...。わ、私は嬉しかったのですが...」


 声はどんどんと尻窄みになっていて、目の前に居るのに後半は何を言っているのか聞き取れなかった。


「あぁ...いや、うん。まぁ、いっか。ありがとう」


 自分より小さい子に励まされたことにちょっと複雑な表情を浮かべたがミカはタマモにお礼をする。


「い、いえ。こちらこそ」


 何故か赤くなってお礼を言い返すタマモを見て、恥ずかしいならやらなければ良いのにとミカは思っていた。


「ミカ。作戦が決まったぞ!」


「皆で砦に行って、皆で倒して、皆で助ける!」


「それは断じて作戦とは言わない!」


 リリィ達の言う作戦。そのあまりの内容に他の客が居ることも忘れて叫ぶミカだった。


次回は作戦会議です。

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