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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
五章 元人間、現魔族最前線の町
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四十三話 現・魔族の町へ

不定期更新になってしまって申し訳ないです。


お仕事等が忙しくfateもろくにできません。


せっかく買ったのに(泣)


・・・作者の事情はさておき四十三話投稿します。


サブタイトルは『現・魔族の町へ』です。


5/13 サブタイトル更新

 昼過ぎ、日本で言うおやつ時位の時間だろうか?次の町が見えてきた。


 魔動輪の前、門の正面に立ってにトカゲ人間が武器を構えている。


 タマモはその手前できちんと停車して外に出る。


 彼女は喋らず、後部座席のドアを開ける。


 最初にリリィが、次に人間ではなく魔族の姿をしたシャーリィが魔動輪から降りてくる。


 シャーリィの魔族の姿は耳が少し尖り、背中に黒い羽、お尻の辺りに黒い尻尾が付いたリリィと全く同じもの。


 違うのは髪と瞳の色くらいだ。


 髪は赤の強い紫色で、瞳は真っ黒だ。


 リリィと同じ存在なのだから当たり前だが、この魔族の姿が本来の姿だ。


 彼女達は自身の右手の指を揃えて、自身の左首へと軽く当てる。


 門兵のトカゲ人間も同じように自らの右手を自身の左首へと当てる。


 これが魔族の挨拶らしい。


「我らの種族名は?」


「ヒスラ」


「我らが魔はーーー」


「誇りの印」


 リリィとトカゲ人間、改めヒスラ族の合言葉のような言い合いが終わり、問答をしていたヒスラ族の男とは別のヒスラ族の男が頷き何かをメモする。


「・・・何用だ?」


「情報を知らせに、あぁ、急ぎではありません。必ず必要なものではないのですが、知っておいた方が良さそう。程度のものですから」


 トカゲ人間の質問にはシャーリィが答える。


「そうか。今門を・・・、待て、もう一人居るな?顔を見せろ」


 トカゲ人間の言葉に無言でタマモが動く。


 彼女が開けた助手席の扉から雪のように真っ白な肌でポニーテールに(まと)めた長い黒髪を(なび)かせたミカが現れる。


 はっきり言おう。


 女にしか見えない。


彼女(・・)はラーン族の者です。長い間人間の国で情報を集めていました。人間の動きを報告する諜報隊の一人でその報告に」


「・・・」


 ミカは何も喋らない。


「誰かに似ていると思ったが、なるほど、あの女の血縁者か」


「ついでに、取り戻した町の観光も」


「そちらがメインか?まぁいい。手続きは終わっている。入って構わん。が、その魔動輪を邪魔な場所に止めた場合は我々が頂く。いいな?」


「ええ」


 シャーリィ達が頷いたのを確認して、タマモは再度助手席を開けてミカを座らせる。


 ドアを閉め、続けて後部座席のドアを開きミカと同じようにリリィ達を中に入れる。


 その後タマモは門兵へと例の挨拶をして運転席に乗り込む。


 大きな門がゆっくりと開いていく。


「さ、ここから魔族の領土。人間らしさはできるだけ捨てた方がいいわよ?」


 シャーリィの楽しそうな声を聞きながらミカ達は町に入るのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 魔動輪が町の中に入ったのを確認して門兵は門を閉める。


「・・・さっきの女に見覚えはないか?」


 リリィ達と話していたトカゲ魔族がもう一人のトカゲ魔族に問いかける。


「ん?お前もか?あの話してた奴だろ?どっかで見た気がすんだよな~」


「・・・城で見たことがあっただけか?・・・まぁいい。報告書はできたか?」


「今回多いんだよ。俺一人じゃキツイ」


「・・・いままで楽してた分だ」


「すでに九人。これ、いままでの三倍近いんだぜ?」


「・・・お前がどれだけ楽をしていたか理解した。・・・ほかの書類仕事も回すよう手配しよう」


 彼は次の通行人が現れるまで膝を付いてうなだれていたらしい。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ねぇ?さっきの、けんか売ってたの?買おうか?」


 町に入って最初の一言がミカのこれだ。


「さっきの?」


「僕のこと女って紹介したでしょ?」


 シャーリィが知らん顔で言った言葉にミカがさらに不機嫌になる。


 彼は自身の外見が女性っぽいことを結構気にしているのだ。


「しょうがないじゃない。その種族を選んだのはミカ自身でしょ?」


「確かにそうだけど。普通に男って言えばいいじゃん」


「その外見で?」


「すごいですよね・・・。肌の色と髪型を変えただけで、印象が大分変わっています。その・・・綺麗です」


 タマモが運転中なのでミカのことを見たりはしないが、そんな感想を口にする。


 ミカの外見は白人のような白い肌。髪はリリィが前の町で買ったシュシュの様なものを使って纏めたポニーテールをしている。


 瞳の色や髪の色、耳の形等に変化はない。


 服装もジャージのままなのだが、タマモの言う通り印象が大分違う。


 印象というものの中でも色というのはそれだけ大きな要素なのだ。


「うん。嬉しくないからね?」


 タマモの感想をミカは真顔で言い返した。


「そういえばその種族について説明しておらんかったな」


「その前に決めたものね」


 リリィの言葉にボソリとシャーリィが呟く。


 その姿はどこか笑いを堪えているように見えた。


「その種族はラーン族といって、人間には『他者に夢を見せ、その生気を食らう』と言われておる種族だ。外見的な特徴は日に焼けることの無い白い肌をしておることだけで人間との区別はほとんど無い。そのため諜報等の活動をよく行っておる。

 後は・・・その・・・顔や体つきが男女ともに良くてな、い、衣装もあれなものを好んでいて、・・・み、見せる夢も、その・・・」


 リリィはラーン族についての説明を行っていたのだが、その説明の途中で彼女は真っ赤になって口ごもる。


 ミカは彼女の言わんとしていることが分かってしまい顔を青ざめさせた。


「・・・嘘。何で言ってくれなかったの?」


 ラーン族は日本で言う夢魔の類だと。


「ミカが即効で決めちゃったからじゃない。『これほとんど変化が無くていい』って」


 ちなみに男の数は少ないわ。とシャーリィがニコニコとしながら付け加える。


「・・・この話は止めよう。今変えたら目立つどころじゃないし」


 この体は夢魔じゃない、人間のもの。と、ミカは自身に言い聞かせる。


「では、これからどうしますか?」


 ミカの言葉にタマモが直ぐに乗ってきた。


 こういう所は素直にありがたいと思う。


「とりあえず人気(ひとけ)の・・・魔族気?の無い場所でこの魔動輪を仕舞おう。その後に宿探しかな」


 前回宿が無くて困ったことを覚えていたミカは同じ轍を踏むまいとそう提案する。


 当然その時の苦労を一緒に経験したリリィも、その時の苦労を知っているシャーリィも頷く。


「ま、魔動輪を、仕舞う?え?こんなに大きいのが入るほどのアイテムバッグがあるんですか?」


 だが、一人だけ全く違う反応を見せた。


 シャーリィが魔法であることは知っているが、それが何の魔法なのか知らないタマモが驚き、運転中にも関わらず振り返ったのだ。


「ちょ、前見て、前」


「あ、ごめんなさい!」


 ミカの指摘に謝りながら運転に戻る。幸いにも誰かが魔動輪の前を横切る等のことはなかった。


「で、誰も居なさそうな場所知らない?」


「・・・ここに来た時はただ通過しただけだったのでーーー」


「適当な裏路地に入ればいいわ」


 ミカの問いに答えたタマモを遮ってシャーリィが言う。


「え?あ、はい」


「あ、あそこ。あの駐車場に止まって」


 言われてタマモが素直に裏路地を探すが、見つける前にミカが裏路地全く関係ない場所に止めてと指示する。


「え?え?」


「ほらすぐそこ。左にウィンカー出して」


 二つの指示に混乱したタマモにミカはさらに言う。


 とりあえずタマモはミカに従った。


「ここ。普通に大通りの前よ?そこら辺に魔族が歩いているけど。仕舞う?」


 止まった魔動輪の中でシャーリィが問いかける。


「いや、いい。それより武器屋っぽいの見つけたから先に行こう?武器選びなら対して時間は掛からないし、何よりまた戻ってくるのも面倒だしね」


 問いかけられたミカは扉を開けつつ答える。


 魔動輪で道を走っているときにラルバの町で見かけたような看板を見つけたのだ。


 ミカはまだ字を読めないので本当に武器屋かどうかは分からないが、少なくとも剣は見えた。


 それがあれば十分だろう。


 それに、もし大したものがなかったとしても宿の場所や、武器屋の場所などを聞くことはできるので行動が無駄になるということもない。そう思って・・・。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ミカ達は店の中に入る。


 最初に視界に入ったのは普通の直剣。その左右に西洋っぽい厚めの剣や曲刀、短剣等の刀剣類が並べられている。


 他にも離れたところに槍や戟等の長物。ーーー驚いたことに大鎌もある。


 別の方にはハンマーや槌などの打撃武器。


 それらがきちんと種類毎に置かれている。


「うん。ちゃんと武器屋だ。タマモ、武器は何がいい?何が扱える?」


「えっと、扱える武器はありませんが、・・・弓か槍みたいなものがいいです」


 ミカの問いにタマモはどこか言いづらそうに、後ろめたそうにしながら答えた。


 彼女はまだ戦闘に怯えている。


 冷静に戦っているように見えるが、それは恐怖を隠すのが上手くなっただけ。


 そもそもたった数日で恐怖が消えるわけがない。


 ましてや、いままでろくに戦ったことの無いような少女だ。むしろ、たった数日で隠せるようになるだけでもすごい方だろう。


 だから、彼女は少しでも距離の取れる武器が良いと思ったのだ。


 恐怖を少しでも和らげるために。


 そして、そんな自分が嫌になる。


 ミカは自身を見捨てようとしたタマモをそのまま連れてきている。


 主人を見捨てるなど普通なら殺されてもおかしくない事をしたのに。


 その上、自身は自分が恐いからと言って他者にその前衛を任せようとしている。


 そのことに罪悪感を覚えたから後ろめたそうにしたのだ。


 ミカはその事に気がつかなかったーーーというか気づこうともしなかったーーーが、シャーリィは違った。


「・・・」


 彼女はどこか蔑むような目でタマモを睨んでいる。


 その事に気づいたタマモは何も言い返さず、さらに縮こまった。


「ま、扱ったことないならとりあえずいろいろ持ってみよっか」


 そんなやり取りがあったことにもまた、気がつかず、ミカは目の前にある刀剣類、その中で見た目から格好いいと思った西洋っぽい大きな剣を取って、


「・・・持って!みよっ!か!」


 取ろうとして、


「ングググッ!」


 倒れてきた大きな剣を全力で支える。


「ミ、ミカ!?」


「え?あ、ご主人様!?」


 他の武器を見て回っていたリリィと顔を伏せていたタマモがミカの現状に気づき声をあげる。


 近くにいたタマモはすぐさまその剣を自身が持つ。


 ひょい。と、軽そうに行われたことが地味にショックだった。と彼は後に語る。


 ちなみにシャーリィはミカの何気ないピンチを呆れたような表情で見つめているだけだった。


「・・・それはどう?」


 ミカはなに食わぬ顔でタマモに言う。


 今の一幕を無かったことにするつもりのようだ。


 タマモはあえてそれを指摘すること無く剣を上下に持ち上げる。


「たぶん、振り回すと持っていかれると思います」


「でも、獣じ、んんっ。獣種って力がある種族なんだよね?それでもダメなの?」


 タマモの答えにミカは首を傾げて疑問を口にする。


 途中日本の言い方である獣人と言いそうになったのを訂正していたがおかしな目で見られることはなかった。


「えっと、私は鍛えている訳ではないので獣種の中でも力は弱い部類だと思います。下手をしたら最弱かもしれません」


「・・・それ、結構重たかったんだけど?」


「人間ならそうかもしれませんが、私達獣種なら子供でも、持つだけならできると思います」


「獣種は人間より力の強い種族だと言ったろう?ミカが人間だから人間を比較対象にするが、そもそも獣種と人間は生き物としての基礎能力から違うのだ。人間が鍛えれば持てるものを獣種等の基礎能力から違う種族が持てぬ筈はない」


 リリィの説明にミカは驚く。


 人間より強いとは聞いていたがそれは力が強くなりやすいからとか、人間より長い寿命で鍛えた結果だからだとか思っていた。


 まさか、産まれたときから人間より強いものだとは全く思わなかった。


(確か、人間より獣種が強くて、その上にドワーフが居るんだっけ?ドワーフ化け物か・・・)


 ミカはギウルのことを思い出す。


 片手で羽虫でも払うようにでかいオークを吹き飛ばしていたギウルを。


(そういえば、同じ位の年とか言ってたっけ・・・そこいらの冒険者より強いとかも・・・)


 ミカは頭を振って思考を止める。


 これ以上考えたら最終的に自身の非力さが際立ってしまうと思ったから。


「とりあえず、振り回してみないと分からないよね?試し振りしていい場所がないかここの店主に聞いてみようか」


 ミカはそそくさと会計の方へと歩き出す。


 実は彼女(リリィ)達も馬鹿力なのではないのか?という考えから逃げるようにして。


できれば10日間隔を目指します。


次回は『ミカ流、武器の選び方』です。

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