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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
四章 ラルバの危機
47/111

四十一話 欠陥魔法師

私は確信しました。


周一は無理だと。


いえ、頑張ればできるんですが、こう、出来に納得できないんです。


今回もあまりよくないかもです。ごめんなさい


7/12 サブタイトル更新

「「きゃあ!」」


 魔動輪の急カーブにリリィとシャーリィは悲鳴を上げる。


 扉にぶつかる直前、魔動輪に安全装置として設定されている魔法によって激突の衝撃は弱まり、どこも痛めることはない。


「スライムがもう一体いました!」


 狐の獣人が遅れて報告する。


 だが、それが彼女達の耳に入ることはなかった。


「「ミカ!」」


 放り出されたミカが見えたのだ。


 リリィは運転している獣人に詰め寄る。


「今すぐ戻れ!」


「もう間に合いません!」


「それでもだ!」


「死にに行くようなものです!」


 リリィは早々に説得を諦める。


「・・・今すぐ殺してやろうか?」


 リリィはずっとかけていた、自身を人間に見せる魔法を解き自身の手を狐の獣人の首筋に近づけ脅す。


 手には影の刃を纏っている。


 その上、自身の魔力コントロールをあえて手放し威圧もする。


「ひっ!」


「今、ここで、死にたくなければ、戻れ」


 一音一音区切るようにして彼女は命令する。


 その姿は魔王の娘と呼ぶのにふさわしいものだった。


「わ、私はまだ、死にたくありません」


「なら戻れ」


「・・・」


 狐の獣人は無言で再度急カーブをきる。


「きゃ!」


 唐突なものだったため、リリィは再度体制を崩してしまう。


 その隙に狐の獣人はハンドルを再度戻そうとするが、


「何をしてる?」


 シャーリィがそれを止めた。


 その瞳は怒りに染まっている。


「我が主の、現魔王、その娘の命だ。逆らうこと叶うと思うな」


 いつの間にか彼女の近くに無数の魔法が浮かんでいる。


 どれも鋭く、貫通力重視のものだと分かる。


 狐の獣人はもはや涙目だ。


「どちらにしろーーー」


 それでも彼女は、シャーリィ達を説得しなければ生き残る道は無い、と考え口を開く。


 だが、それが最後まで言い切られることはなかった。


 バシャッ!っと水風船が破裂したような音が聞こえた。


「「「・・・え?」」」


 三人ともが固まる。

 

 その光景を信じられなかった。


 急カーブを描いたことによって正面からやや横にずれたところに見えていたスライムが爆発四散したのだ。


 その中心、爆心地に一人倒れているミカが見える。


 三人とも呆然と、しかしハンドルは本当か確かめようと少し彼よりに曲がっていた。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「ウグッ!」


 ミカは背中から落ちた衝撃で呻く。


 スライムに、正確にはジェル状の何かに包まれる感覚はあった。


 だが、それは放物線を描いて飛んでいたミカを一時停止させる効果だけを発揮して一瞬で消えてしまった。


 当然高さは車の高さのままなので受け身もなく落下したミカにはそれなりのダメージがあった。


「い、いたい?」


 死ぬのか、と思っていたミカは現状が全く理解できずに混乱したまま空を見上げて呟く。


 顔を右に向ける。


 近くには自身の右手があり、遠くにはスライムが見える。


 自身の右手を一度グーパーと閉じて開く。


 自身の体の感覚が正常であることがわかり、首を傾げる。


 現状を確かめようと左にも顔を向ける。


 目の前に車が迫っていた。


「っ!危なぁ!」


 とっさにミカは上体を起こす勢いをそのまま使って前方に飛んで回避。


 死を受け入れようとした人間には見えない反応だが、理解できないような現象よりも圧倒的によく聞く、分かりやすい死は、理解できるがゆえに怖い。


 つい、避けてしまった。


(と、とりあえず、生きてる訳ね?ここが死後の世界じゃなければ。何で?)


 ミカは自身が生きていることに疑問を持つ。


 あの状態から助かるとは思っていなかったから。


(スライムもあんなに遠くに・・・ん?違うかあれは封印に失敗したやつで、僕を飲み込んだのはーーー失敗した?)


 ここまで考えてミカは現状がまずいままだと気がつく。


「あ、封印失敗したってことは」


 リリィ達が狙われるということ。


 だが、ミカは彼女達を助けるべきか悩んでしまう。


 先程の光景。自身を引き殺そうとしているかのように見える行動のせいだ。


 ーーー彼女達は寝返ったのではないか?さっきのは生きていることに気づいて止めを刺しに来たのではないか?


 そのようなことを思ったのだ。


 スライムが突進の準備をしたのが分かる。


 ミカは周りを確認する。


 黒い、スライムだったものの破片が見える。


 ジェル状の土には吸収されない物質のようで細かいものまで残っている。


 動き出さないか気がかりだが、それよりも何でできてるのかが気になり出す。


 ーーースライムは魔石が魔物化したものでーーー


「あ」


 スライムが何故爆散したか理解した。


 理解したのとほぼ同時にスライムが突進を開始した。











 ーーーミカめがけて。






「ちょ!?何故にこーーー!?」


 言い切ることもできなかった。


 リリィはあっちでしょ!?と思いつつ再度飲み込まれるミカ。


 そして、再度繰り返されるスライムの爆散。


 ミカは魔石を扱えない。


 魔力を込めただけで魔石が壊れてしまうからだ。


 スライムは魔石が魔物化したもの。


 それによって取り込んだ相手から強制的に全てを奪う魔物。


 だが、あくまでメインは魔力だ。


 スライムは魔石であるがゆえにミカの魔力を吸収すると死ぬらしい。


「今までの苦労とは・・・」


 そう呟くミカの前に魔動輪が止まる。


「ミカ!」


 バタン!と壊れるのではないかと思うほど強く扉が開きリリィがミカめがけて飛び込んでくる。


 ミカは素早く彼女の両手と影に目を走らせた。


 武器は持っていないか、魔法の発動をしていないかの確認だ。


 武器も魔法も準備していないことを確認したミカはそれでも彼女を避けようと顔を上げ、


「へ?グッ!」


 つい呆けてしまいそのままぶつかる。


「・・・よかった。ぐすっ。また、妾のせいで、誰かが死んで、しまうって、恐くて、痛くて」


 リリィがポロポロと涙をこぼしていたのだ。


 押し倒されたミカは自身の上で泣く彼女にどうすればいいか分からずに固まる。


「・・・ミカ?何で主様を警戒してるの?」


 続けて出てきたシャーリィはリリィが抱きつく前にミカが向けた視線に気づいて問いかける。


「い、いや、だって、引き殺そうとしてきてなかった?」


「あれは、その・・・。ちょっと、信じられない光景に固まっちゃって」


「ふーん。口では何とでも言えるよねー」


「ウグッ」


 ミカの言葉にシャーリィは胸辺りを押さえて呻く。


 彼女もそう取られるかもと思ったから口ごもったのだ。


 どうしよう?とシャーリィは思う。


 彼に嫌われると考えると胸の奥が痛くなる。


 何とか弁解をしたくても、言う言葉が見つからない。


 数秒たっても何も言えなかった。


 リリィの泣く声だけが響く中、かなり遅れて狐の獣人が顔を伏せながら降りてきた。


 彼女は無言でミカに近づく。


 ミカはリリィの頭を撫でてあやしながらも、彼女を警戒する。


「・・・何のよう?」


 先程の弱々しい表情は何だったのか。そう思えるほどシャーリィは彼女へと鋭い視線を向ける。


 シャーリィの問いには答えず彼女はミカの前で四つん這いになって項垂れた。


(え?何してんの?)


「・・・そこまでしてでも死にたくないと?」


 ミカが首を傾げる中シャーリィが彼女へと見下し、怒りながら問いかける。


 ミカは知らないが、獣種にとって四つん這いになるということは獣と同等だと揶揄される屈辱的な行為であると同時に最大限の許しを請う姿勢でもある。


「ミカ。彼女は捨て置くべきよ。主人であるミカを見捨てて逃げようとしたのだから」


「・・・」


 シャーリィの言葉に彼女は何も言わない。


 四つん這いは獣と同等の扱いをされる行為。


 獣は喋らない。


 この体制を取った獣種は相手からの許しが無い限り決して喋らない。


「それが普通の対応でしょ?」


「え?」


 ミカの言葉にシャーリィは首を傾げる。


「誰でも、結局、大切なのは自分なんだから。人間は自分の為にしか行動しない生き物だよ。...あ、彼女人間じゃないか」



 これがミカの考えだ。



「自身を守るために誰かを見捨てるなんてよく聞く話」



 お金を求めるのは自身が生きるのに必要だから。



「感情を理性がどうこうできるのなんて物語の中だけ」



 友達を助ける理由は自身が悲しまないため、あるいは、日常をつまらないものにしないため。



「彼女の行動が間違ったもの、何て僕は思わない」



 仲間と協力するのはその方が自身の目的に、より速く到達できるから。



「むしろ分かりやすいでしょ?」



 どれもこれも、自分のためだ。



「ほら、いつまでもそんな体勢とってないで。次の町に行くよ。君が運転するんだから」



 そして、そんな考え方をする自分が大嫌いだ。



「彼女を許すの?」


「許す?」


 シャーリィの問いにミカは首を傾げる。


 いつの間にかリリィは泣き止み、狐の獣人も顔を上げていた。


 どちらも驚いたようなそんな表情を浮かべている。


「彼女が僕に謝るようなこと何かした?」


 ミカは真顔で問い返し、助手席に乗り込んだ。













「あの、魔動輪を操作してたのは私で戻ってくるときにーーー」


「それはぜひ謝って欲しい。怖かったから」



 □■□■□■□■□■□■□■□■□



「ふっ。牢獄生活も慣れたか?ラーグ・クラウン。元・王よ」


 相手の顔も見えないような暗い暗い牢獄。


 その内側へと話しかける男。


 表情は見えないがその声音からニヤニヤとしていることがありありと伝わる。


 側には無言で立っている人影が一つ。


 全体的に露出の高い服を着飾っている女性だ。


「何用だ?」


 何かが入っていてもわからないようなほど真っ暗な牢の中から低く、威厳に満ちた男性の声が響く。


 その声音にあるのは興味。


 それ以外には何も含まれていない。


 恐怖も怒りも絶望も何もない。


 その事に牢の外にいる男は舌打ちをするが、すぐにまた若干の笑いを含んだ声に戻る。


「喜べ。お前の娘が見つかったぞ?」


 ジャラッ...。


 牢の中から鉄が地を滑る音が微かに響く。


 その事に男は気を良くしたのか声が若干弾む。


「何でもラルバと言うところで人間何かと戯れていたとか」


「ほう?」


「だが、安心しな?もうすぐ死ぬだろうからな」


 男が楽しそうに言うが、牢屋の中からは「そうか...」という小さな呟きが聞こえただけ。


 それが悲しみによるものだと思ったのか男は機嫌を良くする。


「あの世で親子水入らず、仲良くしとくといい」


 そう言って笑いを堪えつつ男は立ち去る。


 その背後に女性は無言でついて行く。


「・・・ククル」


 完全に足音も聴こえなくなったところでラーグと呼ばれた魔族が呟く。


「はい」


 それに答えたのは男について行ったはずの女性だ。


 いつの間にか彼女はラーグの横に立っていた。


「それで?」


 ただ一言だけ問いとも思えない問。


「リリィ様はラルバという現状最も我らの領土に近い人間の町で発見されています。ミカと名乗る者と行動を共にしているようです」


 それを彼女は正確に理解して答える。


「リリィ様はその男と獣種を加えたメンバーでスライムの誘導を引き受け、スライムを撃破」


「何?撃破だと?リリィが殺ったのか?」


「いえ、ミカと名乗る者が行ったようです」


「ほう?興味深いな・・・。そいつは人間か?」


「・・・分かりません」


 その答えにラーグが驚いたような気配を出す。


「ぬしでもか?」


「外見や行動からは人間だと判断できます。ですが、魔力の量が異常です。あんな量、私は見たことがありません。エルフでさえあり得ない」


「ふむ。そこはまだ調べてゆかねばならんか」


「はい」


 女性は首肯した後、ラーグを捕らえている鎖に触れる。


「・・・魔王様ならこの程度の牢から脱け出すことなど容易いはずです。現にこの拘束は既に意味を成していません。何故捕まった振りをなさっているのですか?」


「何。征服を目指した者がどのような手で成すのかに興味が出たのでな」


「それが、娘を危険に晒すものでも?」


「・・・むしろ余は、余が最も大事なものを喪ったときどのような行動に出るのか興味がある」


「それは・・・」


「フッ。()(ごと)だ。許せ」


「お(たわむ)れでも私の教え子が死ぬこと何て話さないでください」


「余の娘だ。そう易々とは死なん。そんな鍛え方はしておらんだろう?」


「ええ。ですが、リリィ様に実戦経験はありません。ですからーーー」


「敵前で硬直すればおしまいか?なら、初日に娘は死んでいると報告があっただろう。生きていると報告が可能。それは実戦を乗り越えたことに他ならん」


「それは・・・。いえ、そうなんでしょうが・・・」


「この生活も娘が確実にここに戻ることが可能とわかった時点で終わらせる。その時は娘に迎えを寄越す」


 わかった時点で、と言っているが、その声は既に戻ることを確信しているかのように聴こえる。


「それが早いことを祈ります」


「フッ。何にだ?」


「さぁ?」


 気づけば彼女は牢の外から声をかけていた。


 彼女はその場で一礼して牢屋から出ていく。


 外は雲一つ無く綺麗な星空が空を覆っている。


 牢屋の扉を閉め、彼女は唇の下に手を当て、夜空を見上げる。


 それだけの仕草なのにどこか艷があるのはそのスタイルの良さゆえか、はたまた、衣装によるものか。


「・・・相手の力量も計りきれない。魔王様を本気で捕らえていると思っている彼らの眼はなんなのかしら?」


 星が一つ落ちる。


 不吉の象徴、流れ星だ。


 それを見た彼女は少し驚いた表情を浮かべ、クスッ、と笑う。


 その笑顔は誰もが見惚れそうな、そんな笑顔だった。



 ■■■■■■■■■■■■■■■■



「アキラ。これからどうするの?」


「アクリア様。そのような荷物は私が持ちます」


 アクリアはラナの言葉を無視して自身の荷物を持ち上げながら問いかける。


「竜兄を探す」


「手がかりはあるのですか?」


「家の前で竜兄が戦ったトカゲ男は魔族なんだろ?なら、目的地は決まってるーーー」



 □□□□□□□□□□□□□□□



「ご主人様。私達はどこに向かえばよいのですか?」


 狐の獣人が前を向いて運転しながら尋ねる。


「・・・リリィ、約束は覚えてる?」


「お父様に会わせることか?覚えておるぞ」


「ぇ」


「そそ。だから、目的地は決まってるーーー」








「「ーーー魔王城だ」」







 二人は互いに同じ場所を目指す。







 例えそこが人間と敵対している危険な場所だとしても。







 お互いに大切な相手(兄弟)のことを思って。
















「あ~・・・。ところで、タイミングが合わなくて聞けなかったんだけど・・・君の名前って、何?」


「え?」


「また・・・」


「いや、人間がこれを知らないのは仕方なかろう」


「私達の種族に名前はありません。必要がありませんでしたので」


「・・・マジか。まぁ僕たち四人しか居ないし、名無しでも問題はないのかな?」


 彼が、名前の偉大さを知る日は近い。


リリィ達はミカがスライムに飲み込まれる、その一回目は見ていなかったため二回目でああなりました。


前書きにも書きましたが周一は納得できないのでまた、不定期更新に戻します。

最後のも無理やり感があるんですよね。


二章もできてないですし、プロットは大切だと学びました。たぶん今月は更新できないと思います。頑張って話数を貯めます。


では、作者が未熟だったため一章で説明できなかったかつ、今後説明の予定がないあれこれを。


ラルバの町並みに統一性がなかったのは、元々獣人の町でそこから魔族が合流、自身が住みやすい 物を造り、そこをさらに人間が攻めて奪い、使えるものをそのまま使ったりとかしてるからです。


フェルディナは小さい頃につけられた大きな傷が胸元にあり、コンプレックスになっています。その事で家族から大切にされ、危険の多い前線から離されていました。力がなかった訳ではありません。


あと、分かりにくいでしょうがミカの性格は基本周りに優しくしているように見えるけれど内心では相手のことを疑う。隠れ自己中って感じですかね?説明しづらいです。

私は何でミカをこんな面倒な性格にしたのでしょう?


やりたいシーンがそんな感じだからですよね~。

五章辺り。

遠いな~。


1/31 章をつけました。また、一章が長いので分割しました。タイトルは思いつきの物なので変更するかもしれません。


3/5 うちミスがあったのでちょこっと修正。

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