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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
四章 ラルバの危機
45/111

三十九話 わからないことだらけ

上手く書けないですが、何とかできたので投稿します。


サブタイトルは『わからないことだらけ』です。


話は変わりますがfateのネロ祭が始まりました。

高難易度のやつ強すぎじゃありません?


11/24 一部修正しました


2017/10/12 サブタイトル更新

 あれから魔物に襲われることもなく門にたどり着いた。


 ミカは道中、何故狐の獣人があんなに慌てて隷属のお願いをしてきたのか聞いていた。


 首輪には簡単に裏切ることができないようにする機能があるらしい。


 血の登録もその一つ。


 血の登録をすると首輪はその主人が死んだ場合、その主人の死後、約半刻以内に次の主人を得なければ奴隷を殺すらしい。


 だが、奴隷商人はこの登録をしないという。


 奴隷商人には一時的にこの効果を無効化する何かがあるらしい。


 その何かまでは分からないそうだ。


 ちなみに、彼女の首輪は奴隷の首輪ではなく隷属の首輪と言い、奴隷ではなく家畜やペットと同じ扱いになるらしい。


 閑話休題


 ミカ達は門の近くでまだ到着していないギルド副長を待つ。


 門からは例のスライムが見えている。


「・・・おっきいね。はぁ...。あれ、どうにかしないといけないのか~」


「・・・え!?」


 あのスライムの封印を行う、ということを知らなかった狐の獣人が驚きの声をあげる。


 それに対してミカは笑って一言。


「死んだ方がマシと思えるようなことがあるかもしれないよ?って言ったよね?」


「・・・は、はい。イワレテマシタ・・・」


 狐の獣人は泣きそうな表情で言う。


 ミカはそれを気にすること無くスライムを観察する。


 スライムの近くでは炎やら氷やら雷やらが舞っている。


 足止めをしてくれている冒険者達だろう。


 スライムは体の一部を伸ばし、その触手のような部位を剣型、鎌型、槍型等様々な形に変形させ足元の方を凪ぎ払っている。


 何故だか魔法は放っていない。放てない理由があるのだろうか?


 ミカは首を傾げつつ観察し続ける。


 スライムの移動速度は速くない。というか遅すぎる。


 ノロノロと、ナメクジみたいに足(?)をうねうねとさせて動いているが、この距離だと進んでいるのか判別がつかないくらいだ。


 もっとも、移動速度が遅いことは考えれば分かったことだ。


 警告の鐘が鳴ったのは日の出前。


 移動速度が速いのなら、町はとっくに無くなっている。


「・・・そういえばご主人様。先ほどはそれどころではなかったので聞けなかったのですがーーー」


 それは唐突だった。


 話題を逸らす為に考えて、疑問に思ったことを口に出しただけのもの。


「ーーーご主人様は人間ですよね?どこで魔族の言葉を習ったのですか?」


「・・・ぇ?」


 だが、ミカにとっては全く想定していなかった言葉。


 彼は言われた言葉の意味が理解できずに、思わず狐の獣人を見返す。


「え?」


 その反応にむしろ彼女が驚いた。


「そういえば、初めて主様に会ったときも一言(ひとこと)言ってたわよね?」


 シャーリィもこめかみに指を当てて考えるようにしながら呟く。


「確か、『普通の女の子じゃん』とか。あの時は魔族の言葉だった・・・気がするけど」


 自信がないのか最後にボソッと付け足したが。


 だが、この二人の言葉にリリィが首を傾げる。


「妾も最初は驚いたが、ミカは父様と話をしたいのであろう?なら、魔族の言葉を話せなければならんと考えるのは当然ではないのか?」


「主様、ちょっと論点が違う。人間に言葉を教える魔族がいる?」


「・・・心当たりはないな」


 三つの視線がミカに集中する。


「・・・」


 ミカはどうするべきかを考える。


 彼はずっと日本語を話しているつもりだった。


 この世界に来て、特に何かの力を得た感覚はなかった。


 だから、人間の言語は日本語に似ているのだと都合の良いように考えていた。


 リリィと普通に会話ができたから魔族も人間と同じ言葉を話していると思っていた。


(・・・話すしかないのかな?)


 そう思うもミカは黙っている。


 自身でも理解していないのだ。説明することができない。


 それに、説明できたとしても、信じてもらえるような話ではない。


 異世界から来ました何て信じるものはいないだろう。


 リリィなら、もしかしたら鏡のことを知っているかもしれないが、知らなかった場合面倒なことになる。


 だから、黙るしかない。


「えっと、父様と話すのに魔族の言葉が必要?・・・リリィ様は魔族なのですか?」


 だが、今回はその行為が吉とでた。


 狐の獣人がリリィの言葉に疑問を持ったのだ。


「「・・・あ」」


 二人はしまった!という表情を浮かべて、助けを求めるようにミカを見る。


 ミカは小さく笑う。


「そこで『・・・あ』。とか言ったら認めてるようなものだよ?」


 結果的にだが話を逸らしてくれたから。


 感謝しているのだ。


「そういう時は『父様が、ね?』とか、どこか含みを持たせると良いよ」


 今後は注意してね。ミカは少し明るく言う。


 ちなみに、アドバイスの内容は適当である。


 二人は『は~い...』とどこか叱られた子供っぽい返事。


 ミカは周りを確認する。


 幸いにも先ほどの会話を聞いたものはいない。


 現在も人がいるのは離れた所の門番と城壁の上にいる弓兵や魔法使い的な格好をしているもの位だ。


「ちょうどいいし、首輪の効果を試しておこうかな」


「・・・へ?」


 ミカは言って獣人と向き合う。


 やはり、主人から奴隷への命令は悪い方のイメージが強いのか、彼女は顔をひきつらせた。


「・・・ちょ、ちょっと、心の準ーーー」


「命令だ。人間の国ではリリィ達の種族について口外するな」


「ーーー備をさせて・・・え?それだけ、ですか?」


 彼女があたふたとしている間にミカは命令をする。


 ミカの命令を読み取ったのか一瞬だけ首輪の後ろにある鎖マークが赤く光った気がした。


 ミカの命令内容が思ったより簡単なものだったことに彼女は首を傾げる。


「うん?それだけって、これ僕たちにとっては結構大切なことだからね?下手したらスライムと人間の挟み撃ちにあうからね?」


 ミカは命令の内容に疑問を持たれたと思い説明する。


「この町だけじゃないよ?魔族と人間は敵対してるんだから。もし、喋って町全体が相手になるとかなったら・・・」


 捨てるからね?


 ニッコリ笑ったミカの脅しにコクコクと首を縦に振る狐の獣人。


 そう、脅しだ。


 説明は何故か脅しになっていた。


 これでは首輪の効果がわからない。


 しかし、ミカは脅しをしている自覚がないようでその事に気がつかない。


「ミカ、その・・・」


 リリィが言いにくそうにしながら口を開く。


 狐の獣人は脅しになっていることを指摘するのかと思ったのだが、


「隷属の首輪の強制命令は首輪に触れる必要が・・・」


 命令の方法を指摘してきた。


「あ、そうなんだ。でも今回は普通のでいいよ。強制命令って何か消費するんでしょ?」


「抵抗の強さによってはそのまま壊れちゃうわ」


「・・・マジですか、欠陥品じゃないですか」


「・・・壊れるのは命令を遂行した後だから、人間にとってはあまり大きな問題じゃないの」


 嫌そうに顔をしかめながらシャーリィが言う。


 彼女はちょいちょいと、ミカに手招き。


 それに従ってミカは彼女のそばによる。


「ちょっと動かないでね」


 シャーリィが狐の獣人に言って、ミカには指で首輪の後ろ部分。鎖のようなマークがあるところを指差す。


「このマークが首輪の耐久値よ。これが真っ赤になると壊れるわ」


「それが何で人間にとって問題じゃないの?逆らえるようになったら殺しにくるでしょ?」


「・・・大体半分くらいになったら自害させるのよ」


「そういう使い方もあるのか。なるほどね~」


 奴隷なんてそんなものだと思っているミカは嫌悪感を表すこともなく言った。


 その言葉に三人が顔をしかめるたり、うつむいたりとそれぞれ反応する。


 その後しばらく、誰かが口を開くことはなかった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「失礼。手続きに手間取りました」


 待つこと二十分ほど。門の前にギルド副長が車に乗って現れた。


 色は銀色で日本の車との違いはあまり見受けられない。


 強いて言えば衝撃を受け流すためか、前面が知っている車よりもさらに丸みをおびているように見える。


 車には詳しくないので気のせいかも知れないとミカは思う。


「いえ。こちらこそ無理を言って申し訳ありません」


「それはこちらのセリフです。スライムの封印など無理をお願いしてしまい申し訳ありません」


 二人して頭を下げあう。


 互いに顔を上げて、それが同時だったことに少し微笑む。


「いえ、封印するのは私ではありませんから。それは彼女達にお願いします」


 ミカはリリィ達を示す。


「そうなのですか?では、改めまして、スライムの封印という無理をお願いしてしまい申し訳ありません」


 ギルド副長はリリィ達に頭を下げる。


「・・・努力するがあまり期待せんでくれ」


「できるかどうかはまだ分からないの」


 リリィ達は任せろとは言わず、本心を言った。


 その事にギルド副長が驚く。


「・・・謙虚、なんですね。魔族は自信過剰な者だと思っていましたが、貴女方のような魔族もいるのですね」


「リリィ様達が魔族だと何故・・・アグッ!」


 ギルド副長の言葉に狐の獣人が驚き、つい命令を破ってリリィ達の種族について口にしてしまう。


 直後に首輪の後ろにある鎖マークが一瞬光る、それと同時にピピッと音がなった。


 その後に彼女が呻いた。


 首輪の効果だ。


 リリィ達二人は狐の獣人に近寄る。


 副長には何も言わない。


 ギルド長が知っていたのだ。


 その副長も知っているものだと予想できていたからだ。


それ(・・)は・・・獣種?買われたのですか?」


 ギルド副長は狐の獣人を見下す。


 おそらく無意識のものだろう。


 それだけ獣人が人間より下の存在という意識が当たり前のものとしてこの国にあるということだ。


 ミカはギルド副長の問いに首をかしげる。


 質問がおかしいのではなく反応がおかしいと思ったのだが、すぐに言葉が違うことを思い出す。


(・・・便利だけど何気に厄介だよね。自分が話してる言葉も相手が本当は何語を話しているかも分からないの)


 何より原因が分からないことが不気味だ。


「ええ。知っての通り僕のパーティーは近接メインがいませんからね」


 だが、分からないことは分からない。


 情報が何もないのだから今は横に置いておくしかない。


「貴方も魔法主体なのですか?そうは見えませんが」


「武闘大会を見られてないんですか?」


「ええ。・・・ギルド長が仕事を抜け出したので」


 副長の問いに問い返したら無表情で返された。


 彼女はギルド長の穴埋めのために事務処理やギルドの管理などを回していたのだ。


 怒りも沸く。


(何でここでギルド長?)


 だが、ミカはその無表情の意味に気がつかなかった。


「僕の戦闘方はガンガン攻める系ではないんですよ。それよりそのギルド長は?彼、封印を見たいと言っていたような気がするのですが」


 ミカはさらに爆弾を投下。


 副長が笑った。


 何故か寒気を覚える笑顔だった。


「彼はギルドにいます。避難民の防衛ですね。彼なら縛られた状態でも守れるでしょう」


「・・・そ、そうですか。ギルドにいるんですね」


 ミカは後半を聞かなかったことにした。


「・・・んんっ。話しすぎましたかね。そろそろ行かせてもらいます」


 空気が悪くなったと判断したミカは副長の返事を待たずに車の運転席に乗る。


 運転席から見える景色も日本の車と大差ない。


 問題は操作できるかどうかだ。


(ペダルは二つ。ブレーキとアクセルかな?ん、ハンドルにボタン?何だろ?あ、ライトと、えっと、ワイパー?を動かす棒がないからその代わりかな?ハンドブレーキもない?意外と内装は違うのか~)


 ミカは日本の車との違いを確認する。


 ちなみに彼はまだ仮免許しか持ってなかったりする。


 免許を取れなかったことはとても後悔している。


 お金がもったいなかったので。


「・・・そうですね」


 そのミカにギルド副長が少し悩んだ様子を見せる。


 言うか言うまいか、そんな感じだ。


「『必ず、また来てくださいね』」


 ギルド副長が呟く。


「何ですか急に?」


 かなり小さく呟いたものだったがミカに聞こえたようだ。


 ミカはごそごそと車を探りながら問い返す。


「ルルからの伝言です。・・・いえ、あの子を泣かせるような真似はしないでください」


(人の恋路を手伝えるほどの経験がないのに。やはり、手伝うのは無理ですね。悪化するとより悪いですし)


 ギルド副長は途中何かを言おうとしたのだが、首を横に振って違う言葉に変えた。


 彼女はルルが新人の頃に仕事を教えた先輩で、ルルの手助けをしようと考えたのだが、彼女の伝言と一言だけ言うに止めた。


 恋人もできたことのない自分にできることはないと思って。


「はぁ。努力はしますよ」


(あれ?車の鍵がない・・・)


 対してミカは真面目に聞いていなかった。


 返事は生返事で、ギルド副長の方を見もしない。


 だが、ギルド副長は何も言わなかった。


 今回の依頼、それだけ厳しいものだと理解していたから。


 むしろ、『絶対に守ります』等とできるかどうか分からないことではなく『努力します』と現実的な返しをしたことに感心したほどだ。


 現実は車の鍵探しでまともに聞いていなかっただけなのに。


 感心されていることに気づく様子のないミカは車内を探し鍵が無いことに首をかしげる。


「・・・すみません。鍵がないんですけど、持ったままではありませんか?」


 ミカは探すのを諦めてギルド副長に問いかける。


「扉の鍵でしたら後部座席に置いてありますよ」


「扉の?いえ、それだけでなくエンジンのが必要何ですが」


「エンジン?」


 互いに首を傾げて向かい合う。


「・・・すみません。僕の知っているものと少し違うようで。動かし方が分かりません」


 ギルド副長の視線に呆れが混じる。


「・・・そこに魔石があるでしょう?それに魔力を込めてください。それで魔動輪は起動します」


 彼女は運転席と助手席の間の前方、日本の車ならエアコンがついている場所にはめられてある白っぽい石を指差す。


 ミカは言われるがままに魔石に魔力を込める。


 パキン!と魔石が砕けた。


「「・・・え?」」


 ギルド副長とミカが驚いて固まる。


 本当にただ魔力を流し込んだだけなのに魔石が砕けたのだ。


 ミカとギルド副長はしばらく驚愕の表情で見つめあったまま動くことができなかった。



次回は一章最終話『欠陥魔法師』の予定です。


来週までに頑張って作ります。


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