三十一話
まだ、まだ大丈夫。
もはやいつ不定期に戻ってもおかしくない木崎咲です。
最近、キャラが勝手に動くという言葉を実感しまくってます。どうしてこうなったんでしょう?
追記
ちょこっと修正しました
「ーーー以上のことから私が普段はしっかりとしていると証明できます」
「うん。分かってる。じゃなきゃその仕事で信頼とかされないもんね!」
「はい!」
輝くようなルルの笑顔。
これが報酬なら長い証明に耐えた甲斐がある。
と、思えたらどれだけ格好いいか。
残念ながらミカの笑顔はひきつっていた。
「・・・長い」
シャーリィは隠しもしないうんざりした顔で呟く。
「うむ。優秀なのだな。うむーーー」
リリィは途中からこの言葉を繰り返すだけの機械になっていた。視線は何もない虚空を見つめている。重症だ。
「ルルさんが優秀なのは分かりました。それで、今後の事なんですけど」
ミカは愛想笑いをしながら、なんとか軌道修正をしようと試みる。
「はい。・・・はい?な、何の話、でしたっけ?」
初めて会ったときの『優秀な女の子』はそこにいなかった。
彼女は恥ずかしそうにとても可愛らしく小首を傾げたのだ。
漫画なら、えへへ。という文字が彼女の横に書かれてそうな仕草だった。
ミカは彼女へのイメージを修正する。
おそらく、アドリブに弱いのだろう。先ほどの証明にも『仕事を早く覚え、正確、確実にこなせる』といったものがあった。
今までそれが露見しなかったのはナナのおかげだろう。
「スライムへの対策です」
「・・・こほん!ただいまスライムへの緊急依頼が冒険者達に出されています。目的はスライムの誘導。可能ならば封印です」
「・・・それって、強制ですか?」
ミカは真剣な表情で尋ねる。
(もし、強制なら・・・)
冒険者を止めた方がいい。
ミカは思う。強敵と戦う場合必ず参加しなければならないなど死のリスクが高いだけの仕事だ。
彼女の答えによってはミカは冒険者を止めるつもりだった。
お金は倒した魔物の皮や爪等の素材を売っていけば何とかなるだろう。
では、何故ギルドに入ったのか。
プラスのお金が入るのもあるが、何より憧れがあったのが大きかったのだ。
「いえ、強制ではありません。私達のギルドは冒険者達に『死んでこい』などという命令はできません。少なくとも、このギルドは」
ミカの考えは杞憂だった。
ルルは笑ってミカの言葉を否定する。
「ですが、緊急依頼は優先的に受けないといけないものなので受けなければランクにマイナス点が与えられます」
「ランクにマイナス?」
「簡単に言いますとランクが下がったり、次のランクに上がりにくくなったりします」
そう言ったあと、ルルは顔を曇らせる。
「私個人としては、皆で逃げたいです。知り合いが死んだ。そんな報告は聞きたくありません」
彼女はミカの袖をキュッ、と握る。
「今回のことはランク一のミカさんには重いものです。ですから、一緒に避難しましょう?」
ルルは懇願するようにミカを見上げる。その瞳は不安に揺れていた。
「・・・一緒に隠れれば安全なんですか?」
対してミカは冷たく言い放つ。
「・・・え?」
「違うでしょう?今回ばかりは分からない。そもそも、この現状が普通じゃない。なら、普通の結果を想定するべきじゃない」
ミカは彼女の手を払い退けた。
「・・・頃合いかな」
ミカは呟く。
「・・・戦うのですか?」
「僕には僕の目的があります」
ルルの問いにミカは即答してギルドを出るため出口へと歩きだす。
「・・・帰って、来ますよね?」
背後から悲しげな声が聞こえた。
「・・・さぁ?」
ミカは顔半分だけ振り返り笑って返す。
「でもま、互いに無事だったら、いつか会えるんでない?」
引き留める声はもう聞こえなかった。
「ほら、ボーッとしてないで行くよ。リリィ、シャーリィ」
「う、うむ」
「・・・ええ」
ミカの呼び掛けに二人はルルを気にしながらもミカについていくのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「・・・いいの?何か最後っぽかったけど」
「いいの。それに、最後じゃないわ」
いつの間にかルルのそばにナナが立っていた。
「せっかくチャンスを作ってあげたのに。ミカさんに告白しなかったの?」
「・・・バレてた?」
「伊達に姉妹やってないわよ。何処に惚れたのかはわかんないけどね。嫌な目にしか合ってないじゃない」
「・・・あはは。本当に、どうしてなのかな?」
ルルの瞳からは涙がこぼれていた。
「ミカさん、私を見てなかったよ。私が好きって言っても断られるのが分かっちゃった」
「・・・全く、相変わらず弱いわねお姉ちゃんは」
ナナはルルを抱きしめた。
「今度会ったら、ちゃんと告白して、ちゃんと振られなさいよ。前に進めなくなっちゃうから」
「・・・フフ。経験者は言うことが違うわね」
「うっさい」
「むぎゅ!ナナ、苦しい」
姉妹のじゃれつきを見ていた女性は優しい視線を向けていた。誰もが彼女達の味方をしている。
男達は誓う。あの男女、次会ったら殴る。と。
★★★★★★★★★★★★★★★★★
「良かったのか?」
「なにが?」
「彼女のことよ」
リリィの問いにミカは首を傾げ、シャーリィが補足する。
彼女がルルを指していることはさすがにわかった。
「別にいいよ」
が、ミカの口調は軽かった。
二人もこれ以上はミカに突っ込まなかった。嫌な思いをしそうだったからだ。
「それより、スライムをどうする気なのだ?」
「どうするって?」
リリィの問いにミカは首を傾げた。何を言ってるのか分かんないといった表情を浮かべている。
「どうにかする気ではなかったのか?」
「いや、そんなつもりないし」
ミカの答えにリリィは絶句した。
「・・・うわ。あの子絶対勘違いしてるわよ」
シャーリィが引いた様子で呟く。
「?」
ミカは首を傾げた。
そのようすを二人はあり得ないものを見る目で見ている。
「・・・何言ってるか分かんないけど、とりあえず今後の話、していい?」
「「・・・はぁ」」
二人は深いため息を吐いたあと、こくりと頷く。
「その態度に納得できないけど、まぁいいや。この町出るよ」
ミカはとても軽い様子で爆弾発言。
言われたことが理解できず、二人は固まった。
それに気づかずミカは続ける。
「ちょうどスライムが来てる方が魔族領の方だったよね。面倒だけど大きく迂回するしかーーー」
「待って、ちょっと待って」
「何?何か間違ってた?」
シャーリィが慌ててミカの方針にストップをかける。
ミカは意見があるものだと思って問い返す。
「町を出る?ここのみんなを見捨てるのか?」
リリィがミカを睨み付ける。
その問いに答えはなかった。
答えなかったのではない。答える暇が無くなったのだ。
ドゴォ!っと、ミカ達の目の前に何が横から飛んできた。
「・・・っつ!」
「フェルディナさん?」
飛ばされてきたものと、飛んできた方向の二つを警戒していたミカが問いかける。
飛んできたのはフェルディナだった。
彼女は結構強いはずだ。その彼女が飛ばされてきた。
ミカは素早く周りを見渡す。彼女を飛ばした犯人を探しているわけではない。
逃走経路の確認だ。
ミカがある程度の力をもった相手と遭遇した場合必ず行うことだ。現実はゲームとは違い、ボスクラスと当たっても逃走が可能なのだから。
「・・・弱い」
男の声とその足音が響く。場所はフェルディナが飛ばされてきた方向。
自らの存在を隠す気もないようだ。
「っ!くっ!」
フェルディナが何とか立ち上がる。見えにくいが足には深い切り傷があり、血が流れていた。
彼女の装備には傷を治すものがあったはずだ。だが、その傷が治る気配はない。
(あれ、アキレス腱を斬られてる。何で立てるの?)
彼女の戦闘方はスピードで相手を翻弄するもの。足へのダメージは致命的なものだ。
今日はもうまともに戦えないだろう。歩くどころか立つのすら厳しいはずだ。
そんな彼女が立ち上がったことにミカは疑問を持ったのだが、
(あ、ファンタジーだからか)
その一言で納得してしまった。
「・・・どうして」
そのファンタジーな存在認定を勝手にされたフェルディナが声のした方に向け口を開く。
「自身が何をしているのか分かっているのか!ダナル!」
出てきたのはミカも知っている相手。準決勝で戦ったダナルだった。
あの時と格好は同じだが、武器を二本持っている。
ミカの時に使った業物の両手剣と他の試合で使っていたのと同じ何処にでもありそうな両手剣をそれぞれ片手に持っている。
馬鹿力とは思っていたが、両手剣を二本振り回せるほどの馬鹿力だとは思っていなかった。
「あ?この間、テメェの親につけられた契約が解けたんでな。弱いやつに従う気はないって知らしめようと思ってな」
「契約?」
フェルディナは疑問を声に出すが、それにダナルはイラついたような表情を浮かべる。
「ああそうだ。今まで本当にイラついたぜ。俺より弱いやつの命令に従わなければならない。しかも、俺の能力も制限される。ふざけた契約だ」
「何の話だ。そんな契約、私は知らないーーー」
「テメェの親父は言ってなかったからな」
ダナルは剣を担ぎ上げ、フェルディナを見下す。
「今までの礼を貰う。ただ殺すだけじゃ足りねぇ。絶望の表情を浮かべて死ね」
「・・・くっ!」
フェルディナも支えにしていた剣を抜いて構える。が、やはり足へのダメージは相当なもののようでふらついている。
ジリッ、と地面を擦る音が鳴った。
ミカからだ。
「・・・身内の問題のようですね。それでは僕たちはこれで。ごゆっくーーー」
「行かせると思うか?」
家庭問題ほど面倒なことはない、とばかりにミカは逃げの一手をうつが世の中そんなに甘くはない。
彼らは目の前にいるのだ。既にミカ達は蚊帳の内に入ってしまっている。
一瞬でダナルがミカの前まで距離を詰めてきた。
そのまま、両手の剣を降り下ろす。
ドウゥ!と周りに砂煙が舞う。
「「ミカ!」」
「・・・ターゲットが増えてるだと?」
ダナルはリリィ達を見て一瞬困惑し小声で呟いたたが、すぐにリリィへと狙いを定める。
「そこで見てろフェルディナ。お前が弱いから、こいつらは死ぬ」
「っ!よせ!」
同じように剣を振り上げて、
「ワンパターンですね」
砂煙から出てきたミカに降り下ろし途中の手首を捕まれ、自らの力で投げ飛ばされる。
ミカの体には傷一つない。
速度が速くなろうが剣が増えようがあの降り下ろしはすでに何度も見ている。回避は難しくなかった。
ダナルは倒れることなく空中で体勢を建て直して着地、と同時に再度リリィへと突っ込む。
が、それはシャーリィの造った土の壁に阻まれる。
「ちっ!」
立ち止まったところにリリィの無数の火球が迫る。
それに気づいたダナルはバックステップで下がる。
いくつかは地面に当たり消えたが、それでも半数近くがダナルを追尾する。
右に左にステップを踏みながらダナルは無数の火球をその刃で切り裂いていく。
バチバチ!っとシャーリィの手から雷鳴が響いた。
それを聞いたダナルは見もせずにシャーリィへと向かっていく。
その判断は正しい。
雷の魔法はとにかく速いものが多い。その上、対象の真上から落ちるものもあるため、音がしたら術者を潰すように動くのが最も生存率が高い。
術者から直線的に放たれるものもあるが、そのことごとくは威力が低いものだ。
理由は自爆を防ぐためだ。
雷の魔法はその特性上、威力を上げると自身の目を焼くほどの光量が発生したり、爆音が轟いたり、周囲の空気を焼き術者自身が酸欠に陥ったりしてしまう事がある。
そして、対策を立てれば逆にその特性を利用して、相手の目を焼く、耳を潰すといったことも可能ではある。
その対策をシャーリィはしていなかった。
ダナルはそう判断して突っ込んだのだ。顔を伏せているのは自爆覚悟のものだった場合の保険だ。
発射される場合は一瞬溜めがあり、その瞬間に若干音が大きくなる。
その音を聞いた瞬間に耳を塞ぎながら壁を造れば完全に防ぐことが可能だ。
ダナルは音を聞き逃さないように耳を澄ませる。
シャーリィからの音が小さくなった。
その事に疑問を持ってダナルは顔を上げる。
シャーリィは笑っていた。
ダナルは悪寒が走り、とっさに下がろうとしたが、
「うおっ!」
背後から突風が吹き、強制的に前に、けれどシャーリィとは少しずれた位置に行かされる。
彼女の手から雷は放たれなかった。ただ、自身に注意を向けるためだけのフェイクだったのだ。
ダナルが着地した場所は土壁の前、リリィの火球が着弾した場所。
ダナルが着地したのとほぼ同時に火柱が立ち上る。
「ッ!」
ダナルは声をあげる前に火柱に包まれた。
「うわぁ、エグい」
そのさまをじっと見つめていたミカは呆然と、けれど、油断はせずに呟いた。
何がエグいのかというと、近接戦の得意なダナルに一切近づかせず魔法コンボを叩き込んでいる点だ。
彼は最初の一撃以外誰にも近づけていない。
(何気に彼女達ってチートじゃない?僕、必要ないよね?)
ミカは内心で思う。
彼がやったのは投げ飛ばしだけ。しかも、受け身をとられている。
対して、彼女達はどうだろう。
二人で魔法を上手く使って誘導し、ダナルを焼いている。
明らかに彼女達の方が相手にダメージを与えている。
そう思っていた。
「ーーーズァ!」
火柱が切り裂かれた。
「・・・なっ!」
「嘘、無傷?」
そこには、先ほどと変わらないダナルの姿があった。
リリィとシャーリィは驚愕で固まる。
「あの剣を持ったダナルに魔法は効きません!」
「そういうのは先に言ってくれません!?」
フェルディナが叫んだ声にミカが突っ込む。当然の返しだ。
知ってるのと知らないのとでは対応が変わるのだから。
再度ダナルがリリィへと向かっていく。
「リリィ、シャーリィ!三分耐えて!」
「うむ」
「・・・努力するわ」
ミカは二人に叫んでフェルディナの方に向かう。
リリィとシャーリィは返事と同時に土や岩、氷の壁を造ったり、ダナルの足下を氷らせたりして時間を稼ぐ。
「質問いい?」
ミカは時間がないため口調を楽なものにしてフェルディナに問いかける。ダナルの戦闘方に疑問を持ったのだ。
「何?」
「あの剣ってのはどっち?」
「黒い方です」
これはミカの予想通り準決勝で使用した剣の方だった。
「じゃあ、何であいつはその剣があるのに魔法を避けたりしてたの?」
「それがダナルの戦い方だからです。あの剣を持ったときのですが」
フェルディナそう言ってダナルの方を見る。
多数の壁を破壊しながらリリィ達を追い詰めている。
「彼は剣の能力を隠すために最初は魔法を防いだり、避けたりします。そして、敵が当たれば勝てると思っている魔法を剣の能力で強引に突っ込み、驚愕したところの隙をついて一気に仕留めるのです」
魔族にはとても効果的でした。と彼女は苦々しく呟く。
「で、もうそれはバレたから攻めまくってきてるわけですか」
視界では少しずつだが、近接戦が混ざり始めている。二人は手に持っている鞭を振るっているが、あれでは牽制程度の効果しかないだろう。
「あの剣が防ぐ魔法は全てですか?」
ミカの質問にフェルディナが少し考える。
「・・・いえ、持ち主に直接的な害を与えるもの。あるいは、本人がその魔法を害と判断したものが防ぐ対象・・・だと思います。身体強化は発動していましたから」
「・・・なるほど。見えない、風や空魔法で間接的なら攻撃できるわけね」
もし、全て防ぐと答えられたら、何故風が防げなかったのかを考えながら戦わなければ成らないと思っていたが、それは杞憂だったようだ。
「その傷、治さないんですか?」
ミカはアキレス腱を指差しながら問いかける。
彼女は首を横に振った。
「治さないのではなく治らないのです。ダナルの剣にそのような効果はなかったはずですが・・・」
「斬られたのはもう一本の剣にじゃない?」
「ええ。ただの両手剣のはずーーー」
「見た目を誤魔化す方法なんていくらでもあるでしょ。他にも何かしらの魔法、あるいは魔法道具が塗られてるか付けられてるとか」
「・・・そう、ですね」
彼女はミカの言葉に暗い顔で返す。
何故今のやり取りでそのような表情を浮かべるのか気になったが、そろそろ戦況が不味い。すでに、近接戦の距離で戦闘をしている。
遠距離が得意な彼女達に近接戦は厳しい。
見ているだけでもそれが分かる。
「ありがとうございます。僕は戦闘に戻りますので」
「わ、私もーーー」
「迷惑です。今のあなたでは邪魔にしかなりません」
彼女の言葉にミカは強く答えて、彼女の返答を待たずにリリィ達の援護に向かう。
「・・・どうして私は、こんなにも弱い」
彼女の呟きに答えるものは誰もいなかった。
ルルは記憶力が良く、マニュアルや指示を暗記して行動しているためアドリブに弱いタイプ。
逆にナナは指示を無視することが多くたまにやらかしてしまうが、アドリブには強いタイプ。
来週は(間に合えば)戦い方、です。
タイトルがうまく思い付きません。あと、ストックができません。・・・頑張ります。




