二十六話
お久しぶりです。fateのイベントに苦戦している木崎咲です。
今回はピックアップがかなり仕事をしました。清姫礼装がいっぱいです。ついでに清姫本人も。
え?鬼さんは出てきませんでしたよ?(泣)
三神家の母、妹の葬儀後。父は何かに憑かれたかのように働き続けた。
趣味の道場破り擬きをやることもなくなった。
三神兄弟は春休みに入った。
ただ、何をするでもなくボーっと一日を過ごす日々が続いた。日課であった鍛練すらもしないまま。
もうすぐ、高校が再開する。そんな時期。
父が死んだ。
コンビニ強盗に殺されたらしい。
らしくない、三神兄弟はそんなことを思った。
テレビに写っていた犯人はまるで鍛えているようには見えない体つきをしていた。
何故、あり得ないではなく、らしくないなのか。
犯人は警察が来たとき近くにいた女性に拳銃を突きつけて脅したそうだ。
父はそれを助けようと犯人に掴みかかったらしい。
その時点で三神兄弟は思ったのだ、らしくないと。
父は誰かを助けるような性格をしていない。
そして、もし、そのような行動をするとしたら掴みかかるではなく、殴りかかるはずだと。
死んだ父の表情は苦痛や驚愕ではなく、笑っていた。満足しているかのように。
父が行動したから犯人が捕まった訳ではない。その時は、父が死んだだけで状況は変わっていなかったらしい。それなのに、満足顔。
女性は感謝していたそうだが完全に無駄死にだ。
死体を見て、それを聞いて、三神兄弟は理解した。
わざとだ。
父は死にたがっていたのだと。
この日以降、兄、竜は周りを信じなくなった。そして、命を軽く見るようになった。弟を除いて。
逆に弟、大蛇は誰かとの繋がりを求めるようになった。あくまで、その当時は。
父の表情の理由を理解したとき、二人は共通して思っていた。自分達は父に捨てられたのだ。と。
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異世界に飛ばされて三日目。
ミカは宿の一室で目を覚ました。
前日は買い物だけで一日が終わってしまった。
おかげで、準備は万端。
武器屋で剣も研いで貰ったので今日買う必要があるものは何もない。
彼はぐぐっと伸びをしたあと、その場で立ち上がり、埃を払うようにして服を叩く。
ミカが寝ていたのはベッドの横。床で寝ていたのだ。
「はぁ、もういっそ一部屋にしよっかな。毎回ここで寝るし。お金勿体ないし。布団貰え無いかな?」
理由は簡単。昨日もリリィが部屋に来たのだ。シャーリィも連れて。現在、ベッドで二人向き合うようにして寝ている。
昨日、二人になったんだから寂しくは無いでしょ?と聞いたら首を横に振ったのだ。
最初はそれでも、半ば無理矢理隣の部屋に押し込んだのだが、寝る時間になったらミカの部屋に入ってきた。
もちろん、鍵はかけてあった。
だが、ここは魔法のある世界。リリィは鍵穴に水を入れて、その水を凍らせることで擬似的な鍵を作ったのだ。
ドアも魔法に対する対策はしてあったようだが、鍵穴自体には無かったようだ。
ミカが報告しておこうと思っているとカチャリとその扉が開く。
「朝食が出来上がりました」
現れたのは朝食の知らせにきたクロアだ。少し警戒しているのか、扉の開き方が中途半端になっている。
「ありがとうございます」
「えっと、失礼しました」
ミカのお礼に何故か謝りつつ彼女は扉を閉めていった。最後まで中の様子を確認しないようにして。
「・・・はぁ。ほら、朝御飯できたよ」
ミカはため息を吐いてベッドで寝ている二人を揺さぶるようにして起こす。
「「んん~・・・。もう少し」」
が、彼女達はミカの手を握るように掴みつつ呻く。
ああ、いつまでも寝るパターンだ。と、ミカは起こすのを早々に諦め、手を払う。
「ハイハイ、じゃあお先に」
とりあえず、先に食べとこうと思っての一言。
だが、これに二人は過剰に反応した。
「ごめんなさい!!待って!!」
「置いてくな!!」
ガバッ!!と同時に起き上がり、ミカの腕にしがみついてきた。
「っとと!」
ミカはバランスを崩しつつも彼女達の方に倒れたりすることなく、何とか体制を整えた。
「危ないなぁ。そんなに必死にならなくても、ただご飯を先に食べとこうって思っただけだよ」
「「一緒に行く」わ」
「・・・分かった、待っとくから準備して」
ミカは彼女達の髪型が整うまで待った後、朝食を食べに行った。
今回はまだ冷めていない朝食にありつけた。
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「んっ!」
「どう?気持ちいい?」
リリィの耳元でミカが囁く。彼女の頬は赤く上気して、少しだけ息が荒い。
「ミ、ミカ。んぅ、ふぅ。少し、痛い」
「そう?これは、どう?」
ミカの手が彼女の柔肌に触れる。
「あっ、んんっ~」
彼女は堪えきれないと言った声を漏らし、すぐ耐えるようにして下唇を噛んで呻く。
「ほら、力を抜いて」
「そ、そんなの・・・」
「大丈夫、優しくするから。それとも・・・僕が、力入らないようにしてあげよっか?」
男のはずのミカが艶やかに囁く。
その声、言葉にリリィがピクンと反応。
答えは行動で返ってきた。
リリィからの抵抗が無くなる。
「よろしい」
ミカの顔がリリィへと近づいていき...すっと離れた。
「はい、終了。お疲れ様」
ミカの言葉にリリィは、ほぅ、と息を吐く。
ミカはリリィに手を差し、彼女もその手を取って立ち上がる。
ストレッチ終了である。
「触れたくらいの力で声を上げるのは、ちょっとまずいでしょ」
「痛いものは痛いのだ。仕方なかろう」
「はぁ。これから毎日、朝と夜に一回ずつやるよ」
「・・・どうしてもか?」
「どうしても」
現在地はギルドの訓練所。ミカの魔法実験の時に使った広場の近くで、模擬刀などを振るっている人がいた場所だ。
大会の待機場所で知ったリリィの筋肉の硬さは、これからの戦闘などで支障をきたすと判断した。なので、ミカは彼女達にも最初のストレッチをやらせたのだ。
関節が柔らかくなれば、それだけで怪我をしにくくなるし、魔法主体だとしても、関節の可動域が増えるだけで接近された場合の対処も増えるためやっといて損はないと考えたのだ。
本人はあまり乗り気ではないようだが。
「も、もう、ぐすっ、嫌。妾は、嫌よ」
ミカ達から少し離れた所から、涙混じりの声。
声の主であるシャーリィは息も絶え絶えといった表情で壁に背中を預けている。
リリィの分身の様なものであるシャーリィもリリィと同じくらい体が固かった。
彼女はリリィの前にミカのストレッチを受けたのだが、リリィと違いミカの言葉に反して力をずっと抜かなかったのだ。
なので、ミカはちょっとしたツボを押して彼女の力を無理矢理抜き、仕返しも込めて少し強めに伸ばしてやった。
結果、泣かした。
今でも自分の足の付け根辺りを手で撫でたりしている。
リリィが、ミカの言葉に抵抗せず従ったのは既にシャーリィの惨状を見ていたからだ。
ミカもちょっとやりすぎたかな?と思ったのだが不思議と後悔はしなかった。
「シャーリィ」
ミカが名前呼ぶ。それだけで彼女はビクッ、と反応する。
「押すよ?」
「ごめんなさい」
どうやら、彼女はミカに逆らえない様になったようだ。
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全員分のストレッチを終えて、ミカ達はギルドの受付に行く。
今日は初の依頼を受けるつもりだ。そのための準備も既に整っている。
現在、シャーリィの中にはミカのものは一切入っていない。全てアイテムバッグに詰め込んでおいた。
これでもし、裏切られることになっても貴重品を盗られることはない。
所詮は契約関係。利害の一致で行動しているに過ぎない。裏をかかれたりすることは当たり前だ。
ミカは一緒に過ごしても、彼女達を完全に信用することは出来ないらしい。
「ルルさんちょっと良いですか?」
「あ、ミカさん。どうかされましたか?」
ミカは受付にいたルルに話しかける。ナナも受付にいたが、ルルの方が近かったのでそちらを選んだようだ。
「依頼についての質問があるんですけど、今、大丈夫ですか?」
「はい。構いませんよ」
「依頼を受ける際のことで、受けられる依頼の種類と受諾可能数、あと範囲を教えて貰えますか?」
これは昨日聞き忘れたことだ。正確には、忘れていたわけではなく別の話が全く終わらなかったので聞けなかったこと、だ。
「依頼には、指定した魔物などを倒す討伐系
一般人では危険な場所にある薬草や鉱石などを取ってくる採取・採掘系
不自然なことが発生したエリアなどで原因を調べ、可能ならば対処する調査系
要人や貴重品を別の町まで守る護衛系
緊急事態に対処するための緊急依頼
があります。一応、分類できないようなものもありますが、それまで話すと時間がかかりすぎますのでメインとなるこれらだけお話しします。
受けることのできる数ですが、種類によって違います。
討伐系は基本的に一つです。他の討伐依頼を受けるのでしたら前の依頼を破棄しなければなりません。前回話した通りにキャンセル料を払ってもらった後に、依頼を受けてもらいます。基本的に、というのは、緊急依頼の中身が討伐だった場合はその二つを受けることが可能だからです。
採取や採掘系は基本的に持ってきてから依頼を受ける形にしている方が多いですね。その方が効率もいいので。掲示板の依頼をメモしておいて討伐依頼のついでに取る。この形が一番楽です。ただ、それまでの間に別の人がクリアした場合は無くなっている可能性もあります。
依頼をしてから行いたい場合、採取や採掘系は受ける数に制限はありません。利点は依頼を確実に自分達が行える点ですね。ですが、一週間の期間が存在していますのでそれをオーバーすればキャンセル料を払っていただきます。
これを知らない人は意外と多いです。ミカさんも気をつけてください。
調査系はその範囲内の討伐系、採取・採掘系以外の依頼は受けることができなくなります。調査の重要度によっては緊急依頼より優先されることもあります。
護衛系はほかの依頼を一切受けることができなくなります。緊急依頼も例外ではありません
緊急依頼は基本的に優先して受けなければなりません。例外は先ほど話した通りです」
事務的に語るルルの言葉を、ミカはアイテムバッグからノートを取り出して、メモしていく。
ちなみに、昨日のお金の単位や、魔法の詠唱等々のメモも夜のうちに、覚えている範囲でだが、取っている。
町でリリィの影から取り出すわけにはいかなかったので、その場でメモは取れなかったのだ。
「アイテムバッグを買ったんですか?」
「ええ、あったので」
「・・・ああ、お金はありますもんね」
ルルは少し羨ましそうにミカの事を見つめる。
「あ、ちょっと待ってくださいね」
ミカはアイテムバッグに手を突っ込み、イメージ。
アイテムバッグの欠点はイメージが必要なので中身を覚えておかなければならない点だ。名前だけだったりうろ覚えだったりでも可能なようだが、何気に大きな欠点だと思う。
取り出したのは翼の飾りがついたシルバーネックレス。それをミカはルルへと渡す。
「・・・え?えっと、え?」
「昨日、一昨日とさんざん迷惑をかけたお詫びです。お金持ってるのに、あまり高くないもので申し訳ないんですが・・・」
ミカはこのネックレスを買うのに大分迷っていた。彼女に合うかどうかではなく、お金がもったいないと考えていたのだ。
だが、彼女に迷惑をかなりかけた自覚があったので必要経費と割りきった。それでも、少し安いものを買っているのだが。
アイテムバッグ?あれは衝動買いだ。後の事など考えていなかった。
「ぁ、いえ、その...ありがとう...ございます」
ミカの、買った時の気持ちなど全く分からない彼女は、蚊の泣くような声でお礼を言う。
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました」
ミカはペコリと頭を下げる。こういうのは誠意が大事なのだ。
が、彼女はミカの様子に気づかず、少し赤くなったままネックレスを見つめていた。
「ミ・カ・さん。こういう時はかけてあげないと♪」
「はぁ、そういうものですか?」
隣からナナの聞いただけでニヤニヤしているのが分かる声。
その声に、ミカは首を傾げつつも、ルルの手に己の手を伸ばす。
「だ、だだだ大丈夫です。自分でできますから」
彼女は少し下がることでミカの手を避けて、何度か失敗しながらもネックレスを首にかける。
ここで大切なのは誉めること(主将情報)。それくらいは分かっている(教えてもらったという事実は忘れてる)ミカは『似合ってますよ』と言おうとしたのだが。
「痛っ」
言う前に、リリィがミカの脛を蹴った。痛いと言ったが、大して痛みはなかった。
「どうしたの?」
ミカは彼女の行動理由が分からず問い返した。
「別に」
が、プイッ、とそっぽを向かれる。
ミカは首を傾げたが、とりあえず今はルルさんだと思い、正面に向き直る。
「そ、それで!その...い、依頼の範囲ってどういうことでしょう?」
誉める前に話をそらされた。
タイミングを逃したので、そのまま彼女の話に乗ることにした。ミカにとってはどうしても誉めなければならないわけではないからだ。
「ランク一の冒険者はランク何の依頼まで受けることが可能ですか?ってことです。やっぱり、一つ上とかですか?」
「んんっ!コホン!えっと、その...あ、あれ?どうだったっけ?」
彼女は咳払いをして、意識を切り替えようとしたようだが、上手くいかず、ナナに助けを求めるような視線を向ける。
「ハイハイ。初めての異性からのプレゼントで赤くなったお姉ちゃんに変わって、賢妹がお答えします」
ニコニコとそれはもう楽しそうにしながらナナがミカの前に立った。ルルがほんの少しナナの後ろに下がる。
その際、ナナの肩を叩いていたが、ナナは微動だにしなかった。
「コホン。冒険者が受けることが出来る依頼は自らのランクの一つ上まで、というミカさんの認識は間違っていません」
わざとらしい咳払いの後、ナナは真面目にミカの質問に答える。
咳払い一つで表情が受付嬢のそれになったのは、やはり驚いた。やれば出来るのに、とミカは思う。
ニコリ
ナナが笑った。
「何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「いえ、別に」
反射的にそう答えていた。
「・・・続けます。自らのランクより低い依頼はどれでも受けることが可能です。ここは大丈夫でしょ?」
「はい」
「注意が必要なのはパーティーを組んでいる場合です。パーティーを組んでいる場合は最もランクの高い人と同ランクの依頼までしか受けることができません。一つ上ではないので気をつけてください。ただ、ランクが全員同じ場合は一つ上の依頼を受けることが可能です」
ナナの言葉をミカはノートにメモする。
「・・・どこの文字?」
「故郷のです」
ノートを見たナナの質問にミカは簡潔に答えた。他に答え方が無いので聞かれてもこれ以上答えるつもりはない。
幸いにも彼女は、ふーん、と言ってそれ以上聞くことはなかった。
「ねぇ、故郷に彼女はいる?」
「どうしたんです?いきなり?」
「いいから」
ミカは唐突な質問の意味が分からず首を傾げたが、有無を言わせぬ口調で返される。
「いませんよ」
「そ」
ナナは小さく頷いた。どことなく嬉しそうだ。
「?」
結局、質問の理由は答えて貰えなかった。
「ミカ、依頼見てきたわ」
掲示板の近くで依頼書を見ていたシャーリィが戻ってくる。
その手には二枚の紙が握られている。
「同ランクはこの薬草採取。一つ上はフォレストウルフの討伐ね。他はちょっとつまらなさそう」
ランク四より上に面白そうなのがいくつかあるんだけど、などと言いっているシャーリィから紙を受け取り、そのままナナに渡す。
「フォレストウルフの討伐の依頼を受けます。薬草も探したいので特徴を教えて貰えますか?」
「承りました。少々お待ち下さい」
ナナは後ろの控え室の様なところに入っていく。
ガタン、と何かを開ける音が聞こえ、すぐに戻ってきた。
「こちらが薬草の見た目です」
彼女は一枚の紙をミカに渡す。
「これが・・・薬草ですか」
雑草にしか見えなかった。
「これ、貰っても大丈夫ですか?ちょっと見分けられる自信がないので」
「はい。構いませんよ」
「ありがとうございます。それでは」
「お気をつけて」
ミカ達はギルドを出る。
この時、薬草採取が討伐依頼と同等に楽しいと言ったシャーリィの言葉をよく考えるべきだった。
それを知るのはもう少し後のこと。
今回ので、私はあっち系の描写は苦手かもと思いました。
後々のためになんとかしなければ。
次週は、はじめてのクエスト。です。




