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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
三章 ギルド
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閑話三

ごめんなさい!!遅くなりました!!


ちょっとリアルが忙しくなってまして、来週はお休みします。

 ーーーなぁ、姫様。


 どうやって入り込んだのか、一人の青年が部屋の主である女性に言う。楽しそうに。


 ーーーこんなとこにとじ込もったままでいいのか?


 女性は驚いているのか、何も反応を見せていない。


 ーーー外の世界を見たい。誰にも、何にも縛られずに旅を、冒険をしたい。昨日、今日で話してただろ?


 彼女の瞳が揺れる。彼の言葉で彼女は彼の行おうとしていることに検討がついた。


 間違っていないならば、それは夢のような誘いだ。


 ーーー俺にはお前が必要なんだ。一緒に魔王様にでも会いに行こうぜ?


 その問いに女性はーーー



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「父様!城に魔族が侵入しています!」


 王座の間に入るやいなやアクリアが叫ぶ。


「何!?アクリアの部屋もか!?」


 玉座に座っている王の服には返り血のようなものがついている。側には血の付いた両手剣が魔族の山に刺さっている。数は五。この王、実はかなりの実力者のようだ。


 周りには誰も居ない。王一人だ。


 アキラは王の態度に意外感を覚えていた。その表情は娘を心配する親のものだったからだ。


「兄様達の部屋を確認するのに自らの護衛を放ちましたね?」


「うむ。側には彼しかおらんかった。アクリアの部屋は外部に知られていないはずなのだがーーー」


「何を考えているのです!」


 アクリアが、王に怒鳴る。


「この場で最も守られるべきはお父様御自身です!」


「何を言うか。大切なのは次代のものだ。それに私がこの程度の輩に殺られるとでも?」


 王がアクリアに言い返す。そこには初めて会ったときのような威圧感もなければ見下すような視線もない。


「父上!」


「お父様!」


「おお、レギンス、テティル。無事か!」


 扉から四人の人物が走ってくる。


 レギンスと呼ばれていたのは先頭にいる金髪碧眼の青年。キリッ、とつり上がった勝気な目が特徴的で、剣を持っているが寝間着のようなラフな格好をしている。


 次に赤髪で緑の目をした騎士、その後ろに何故かメイドがいる。入口で会ったメイドとは違う人物だ。


 最後尾は先頭と同じ金髪碧眼の青年。ーーー彼がテティルと呼ばれていた。レギンスと違い瞳は優しげで、ラフな格好をしているが武器を持っていない。


「あの程度余裕だ」


「嘘つけ、苦戦してただろ」


 レギンスの言葉を騎士が笑って否定している。


「体に異常はございませんか?」


「うん。大丈夫。助けてくれてありがとう」


 その後ろでは、メイドがテティルを気遣っている。


「その様子だと、やはり二人にも魔族が」


「あぁ。三体だ」


「テティル様のところにも三体いました」


「私もです」


 王の言葉にレギンス、メイド、アクリアの三人が答える。


「他に手がなかったとはいえ、殺さずに捕らえることができなかったのは痛い」


「どっちにしろ変わんねぇだろ。俺達が魔族の口を割らせることに成功しても、何言ってんのかわかんねぇだろ?」


 テティルとレギンスの会話を聞いて、アクリアは何かが引っ掛かっているのか難しい顔を浮かべる。


(そう、よね。言語が違うから分からーー待って。昨日、確か・・・)


 アクリアは前日、アキラ達兄弟と会ったときのことを思い出す。


 ーーあのとき、彼の兄はコクロウと話をしていなかったか?


 アクリアはアキラにその事を尋ねようと考えて顔を上げ、


「あれ?お父様、アキラはどこに?」


 近くにアキラが居ないことに気づいた。


「あの男なら、扉の前におるぞ?」


 全員が入口の近くの壁に寄りかかるようにしているアキラに目を向ける。


「家族会議、終わったか?」


 注目されたことに気づいてアキラは首を傾げながら問い返す。


 返ってきたのは警戒だった。


「いつの間に!!」


 アキラの存在に気づかなかった騎士がアキラに剣を構えながら声をあげる。


 学校などで話しかけられたくないと思うことのあるアキラ達兄弟は隠れごとが得意なのだ。空気になれるとも言う。


「いや、お前達が来る前にいたから」


 驚愕の反応を見せた騎士にアキラは軽く笑いながら言う。こういう反応を見るのは兄弟揃って好きなのだ。


「さて、私はお前に聞かなければならんことがある」


 王が改まってアキラに問う。


 アキラは笑いを引っ込める。そのような雰囲気ではなかったからだ。


「何故、脱獄しておる?魔族を手引きしたのはお前か?」


 初めて会ったときのような、いや、アクリアを見下したりしていたときの比ではないほどの威圧感が王から発せられた。


 直接向けられたアキラは冷や汗を流す。直感で分かってしまったのだ。


 戦えば負けると。


「待ってください、お父様。アキラは私を助けてくれたのです。彼がいなければ私は今、ここにいませんでした」


 アキラが何かを言う前にアクリアが口を開いた。その解答に王は意外感を表して問い返す。


「ほう?ならばこの者が魔族を?」


 威圧感も弱まっている。


「ええ。実力は私より上、だと思います」


「へぇ・・・」


 反応したのはレギンスだ。彼は好戦的な瞳をアキラに向ける。戦ってみたいのだろう。


 その視線を受けた本人は無視を決め込んで、王の問いに答えはじめた。


「脱獄した理由は死ぬ気がないからだ、です。魔族については知らない。そもそも、魔族を知ったのが昨日なので」


 一応敬語を使おうとしているのは分かる、たどたどしい言葉で。


「はぁ?何言ってんだ?魔族を知らない?」


 レギンスは視線を呆れたような物に変える。


 が、テティルは驚きアキラをまじまじと見ている。


「どうされましたか?」


 その様子に気づいたメイドがテティルの顔色を伺っている。だからこそ、彼の呟きにメイドだけが反応を示した。


「...服の質が違う?なるほど、そういうことですか」


「服?」


 だが、彼女の疑問に答えるものはいない。言えないのだ。


 アキラが別の世界の人間だ、何てことは。言っても信じて貰えないだろう。


 それに、『鏡』は王族のみに伝えられるもの。そこに例外はないのだ。


「ふむ。アクリア、彼と会ったときのことを話せるか?」


「はい」


 アクリアは王の問いに頷いて、アキラと初めて会ったときのことを軽く話した。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふむ、なるほど。魔族を知らない、ということは嘘ではないのだな」


 アクリアの話を聞いて当事者以外が頷いている。鏡の事については、遠い所に転移できるものとして扱われ、アキラの故郷はその遠いところということになった。


 嘘ではない。


「あ、そうだ王様。家の修理費どうしてくれんだ?」


 所々補足していたアキラが当時のことを思い出して問いかける。彼等の家は目の前のアクリアと、アクリアと戦っていた魔族によってボロボロにされているのだ。


 言葉については聞きにくいという事で喋りやすい方で良いと許可を貰った。


「何、娘の不始末だ。できるだけのことはしよう」


 できることがあればな。王は言う。


 異世界、地球には誰かさんが行けなくしてしまったので。


「おう。助かる」


 その誰かさんことアキラはそれに気づかずに感謝の言葉を口にする。王なら大抵のことはできるだろうと思っているようだ。


「確かに魔族の仲間では無いらしいが、アクリアと戦っていたやつが何でアクリアを助けんだよ?」


「別にアクリアを助けたつもりはねぇよ。結果として助けたことになっただけだ」


「え?」


 レギンスの言葉を否定したアキラに、アクリアは少しショックを受けたような表情をする。


 照れ隠しも何もない、淡々と言った態度にそれが本音だと分かったから。


 表情の変化は大きくなく、その場で気づく者はいなかった。


 いつもなら、レギンスはともかく、家族である王やテティル、表情の変化に悟いメイドや勘の鋭い騎士は気づくのだが、彼らはアキラの言葉に視線を鋭くして睨んでいたため気づけなかった。


「お前、人が殺されかけてるのを見ても助けようとしないってのか?」


 レギンスの殺気混じりの低い声。アキラはそれを聞いても態度を変えることはなかった。


「まぁ、目の前にそんなのがいたら、まず、自分でどうにかできるか考えて、余裕そうなら助ける。が、分からないなら無視だな」


「あ"?」


 レギンスのドスの聞いた声も無視して続ける。


「どうして他人なんかのために命をかけなきゃなんねぇんだよ。今回、魔族を殺したのは俺の武器を勝手に使おうとしたからだ。この刀は俺と竜兄以外に使わせない。使おうとしたやつは誰だろうと殺してやるさーーー例え人間だろうとな」


 周りの者達は最後の一言を聞いて、アキラを警戒すべき相手と判断し、それぞれがそれぞれの反応を見せた。


 レギンスは戦闘体制を取り、それを補佐するように騎士が剣に手を伸ばす。


 メイドはテティルを守るように構える。ちらっと見えたが、太もも辺りにナイフが仕込んであるようだ。


 アクリアは、アキラに付くべきか、家族に付くべきか迷っているようで、視線がフラフラとさまよっている。


「静まれ」


 王の声。張り上げた訳ではないのにそれはとても響いた。


 全員が王に注目する。


「彼がどう思っていたかはともかく、娘を助けたことは事実だ。父として礼を言う」


「あー、えっと、ご丁寧に?」


 王の言葉にアキラは頭を軽く下げつつ返した。疑問系だったのは返した言葉が正しいものか分からなかったからだ。


「だが、王としては脱獄を罰せねばならん」


「大人しく捕まるとでも?」


「逃げるなら私が相手をすることになるが?」


 王はちらりと自分の剣と魔族の死体がある場所に目を向ける。


 ああなるぞ?という警告だろう。


 アキラは黙るしかなかった。


「何、怯えずともよい。娘を助けた者だ。悪いようにはせん」


「それはどうもご丁寧に」


 アキラはややなげやりに答える。不服ではあるが、従うしかない。少なくとも今は。


「それで、魔族のことだが」


 この話題を長引かせるのは精神的にきついと思ったアキラは話題を最初の物に戻す。


「王様も、城内部に内通者が居ると考えてるな?」


「でなければ、アクリアの部屋は分からんだろう。あそこは外部から見えない場所にあるからな」


「おかげで、日当たりが悪いけどね」


 アキラの推測に王が頷いて答える。この城は四方に塔が建っており、それに囲まれるようにして中央の大きな建物が建っているように見えるが、実はその中央は中庭用の空洞があり、アクリアの部屋はそこに面しているのだ。


 窓がその中庭側にしか無いので外から、正確には中庭以外から覗かれる心配はないのである。


 ちなみに、中庭には城の最上部近くに天井があり、角度的に覗くことはできないようになっている。おかげで、日も入ってこないらしい。


 天井は、透明な硝子のようなのに頑丈という不思議素材でできている。そこが割れてない以上空から侵入されたわけでもない。


 女の子にそんな薄暗い部屋を与える親はどうかと思うが。


「まぁ、なんにせよ失敗してんだから、今日は安全だろ?」


「準備して失敗してるなら、証拠は消されてるかもね。一応、僕はこれから探しに行ってみますが」


 皇子二人が思い思い口にし始めた。お手上げ状態なのだろう。


「お供いたします」


「今日は寝ずの番かね」


 メイドはテティルについていき、騎士は警備に当たるようだ。


「各自、警戒はしておけ」


 王が言って、解散する。警戒心が薄いのではなく、それぞれを信じている感じだ。


「どこへ行く?アキラとやら」


 さりげなく、流れにのって出ていこうとしたアキラだが、王に阻まれた。


「確かアクリアの部屋の隣が空き部屋だったな?とりあえずはそこがお前の部屋だ。アクリア、案内してあげなさい」


「はい。アキラ、ついてきて」


「罰はいいのか?」


「今はそれどころでは無いのでな」


 そう言って王も死体から剣を抜き、魔族の息が止まっているのを確認した後、奥の部屋へ入っていった。あそこが王室なのだろうか?


「行くわよ」


 アクリアの呼び掛け。


 アキラは彼女についていく。


(さて、竜兄はたぶん、魔族側だろうな。なら、目指す場所は魔王城か?・・・ゲームみたいに魔王城はあんのか?道案内が欲しいな・・・)


 城を抜け出した後のことを考えながら。もちろん、罰を受ける気など更々ない。


 すでにこの城に入らざるおえなかった理由である刀は取り戻した。次の目的は兄と合流することだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 移動中はアクリアが話し相手になってくれたので退屈はしなかった。


「じゃあ。魔族の言葉、分かるの?」


「たぶんとしか言えねぇな。一言しか聞いてねぇし。分かるかも知れねぇが、あいつが人間の言葉を学んでただけかもしれねぇぞ?」


「そっか。そういう考えもあるのね。魔族同士もコミュニケーションはとってたように見えるし。何で気づかなかったかな?」


「先入観があったからだろ」


「否定できないわね。っと。ここが私の部屋だから、隣の部屋がアキラの部屋よ。また、明日」


 襲われた部屋とは別の部屋。彼女は、いや、もしかしたら王族全員が複数の部屋を持っているのかもしれない。


「おう。また明日」


 アキラは適当に手を振りながら返事をしてあてられた部屋に入る。


 中は豪華だった。この一言につきる。


 流石にシャンデリアやベッドの天幕などの細かいものは無いが日本の高級ホテル並みかも知れない。


 本人は行ったことがないので、おおースゲー、等の感想しか出なかった。


 アキラはとりあえず、ダブルほどのサイズがあるベッドに突っ込む。


 クッションが効いていて、沈み込むような感触。牢獄とは大違いだ。


「姫さん助けただけでこうも変わんのか・・・。この世界の人間は猜疑心(さいぎしん)も弱いのか?」


 ポツリと呟きつつ、アキラは今後の事を考える。


(案内が居ないってのは問題だよな~。城を抜け出すのに時間をかけすぎれば見つかるリスクが高まる。いくらざる警備だからって長時間かければばれるだろ。それに今は警戒中だしな。この部屋が見張られてる可能性もあるか・・・)


 アキラの思考は抜け出した後のことにシフトする。


(そもそもここは、星のどの辺りで魔族領はどこからだ?魔族領何てもんもあるかわからねぇな。集落みてぇなもんかもしれねぇし。そして何より文字が問題だな。読めねぇし)


「結局、中でも外でも案内係が必要じゃねぇか」


 アキラはそう愚痴る。この城にしたってそうだ。広すぎてここからどう行けばいいのか分からない。現在地はアクリアの部屋の隣、中庭らしきものが窓から見える。が、中庭が屋敷の中央なのかもアキラには分からない。


 ならば、アキラの取る手は一つ。元々計画していた方法が一番手っ取り早い。


「どうやって、アクリアの部屋に侵入するかだが・・・」


 すなわち、アクリアの誘拐である。


 話せば、おそらくだが、彼女はこの誘拐に抵抗をしないだろうとアキラは考えている。


 魔族領での情報が入るのは国にとってプラスだろうし、根本的な問題解決が計れるとなれば、他所の世界だって心配していた彼女はきっと行動する。


 だが、王がそれを許さないだろう。先程のやり取りで彼女を大切にしていたと分かった。危険なことと分かっていることをさせようとはしないだろう。


 だから誘拐という手に出る。


 最初は王の態度を見て彼女の心配をしたから計画したものだが、今回は完全に自分のためだ。


 それに、彼女もそちらの方が都合が良いだろう。


 ここに来るまでの会話で彼女は外の様子が気になる等の事を言っていたが、同時に謹慎が解けてないと愚痴ってもいた。


 誘拐ならば、謹慎など関係ないだろう。悪いのはルールを破ったアクリアではなく、誘拐したアキラになるのだから。


 それに何より彼女は冒険に憧れている感じだった。


 説得の言葉は用意した。


 後は、彼女の部屋の侵入方法だ。


 しばらく、考えて、考えて、考えて、考えて、考える。


「・・・じゃあ、行くか」


 アキラは行動を開始する。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌日。王都カルディナはある話題で持ちきりになった。


 王都の姫、アクリア様が誘拐された。


 情報では、黒髪黒目で、刀という珍しい武器を扱っている者が犯人だそうだ。


誰もアクリアの所に人間が居たことを知らないため、全て魔族だけの計画と思っています。


死体は協力者が処分済み。


前書きでも言いましたが来週はお休みします。


再来週は、戦闘準備は万端?です。

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