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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
三章 ギルド
28/111

二十五話

一万文字オーバーです(笑)


この小説は二話先まで作って投稿してます。この週は携帯を買い換えたのでちょっとテンションが上がってました。

「おおー」


「ずいぶんと替わるわね」


「なんというか・・・この町、時代がよくわからない。統一感がまるでないんだけど」


 リリィ、シャーリィ、ミカの順で言う。場所は闘技場の反対側。


 先程までの方は住居が多い感じだったが、こちらには住居のようなものがほとんどない。代わりに上にあまり高くなく、面積の広い服屋や飲食店、多数のものが置いてあるお店などがあり、奥の方には武器や防具、マジックアイテムなのであろうものを売っている店がみえる。


 その店は木製のものもあれば、煉瓦のようなもの。岩を削ったようなものなど様々な作りの建物があった。


 裏路地でのやり取りはミカ達のお腹が鳴ったため、続きは食事中にでもということになって一旦終了した。


 移動中、名前がないのは不便ということで、リリィそっくりの少女にミカがシャーリィと名前を付けた。


 ミカは彼女の主であるリリィが付けるべきだと主張したのだが、何故か二人揃ってミカにお願いし、それを断れなかったのだ。


 多数決は悪い文明。ミカはそう思ったそうだ。


 ちなみに名前の意味はシャドウ・リリィでシャーリィだ。


 彼女はリリィの影と言われるのを嫌がっていたが、ミカは名前の意味を説明しなかった。


 本人が喜んでいるので良いとしよう。若干の罪悪感を覚えたミカだった。


「とりあえず、ご飯でいい?」


「うむ」


 とにかく、お腹が空いていたためミカの言葉にリリィは即答。そして、二人はもう一人の、反応をしなかったシャーリィに目を向ける。


「な、なによ」


「いや、賛成か反対かを聞きたいんだけど」


「シャーリィは食事の前にやっておきたいことなどないか?」


 視線にたじろいだシャーリィにミカ達は尋ねる。リリィにいたっては覗き込むようにするおまけ付きで。


「特に無いわね」


「んじゃ、決定だね。ここでいい?」


 シャーリィの答えを聞いたミカは目の前の店を指差す。空腹が限界に近かったのでとりあえず最も近い店を選んだのだ。


「・・・この店は確か、値段が高い割には味がそこそことか言われとった、あ、ミカは字が読めんのか」


「リリィ、ご飯探しは任せる。ルルさんのおすすめ店を探して」


 ミカはリリィの言葉を聞いてすぐ、意見を変える。誰でも、評判のあまり良くない店に入ろうとは思わないだろう。


「シャーリィは食事できるのか?」


「ああ、そっか。食べれないかも知れないんだ。失念してた」


 店を探す際に気になったリリィがシャーリィに尋ねる。


 その問いに、魔法体も人間とたいして変わらないと思っていたミカが反応して、リリィと一緒にシャーリィを見る。


「可能だけと、必要は無いわね。妾は魔法だから、魔力があればいいの」


「食べれるんなら問題ないね。一緒に食べるよ。もともとそのつもりだったし」


 シャーリィの答えを聞いて、ミカは笑いながら答える。


「え?」


 その反応が予想外だったのか、彼女は一瞬固まり、からかうように微笑む。


「何?妾を口説いているの?」


 シャーリィは頬に手を当てている。少し赤くなった顔を隠すようにして。


 リリィがミカを睨む。


「いや、一人だけ食べてなかったら目立つじゃん。僕たちがいじめてるみたいだし」


 それらに気づいた様子もなくミカは軽く答える。お金を大事にするといっても食事と寝床に関してはしっかりとするつもりだ。ちなみに、服は必要最低限で良いと思っている。


 今度はシャーリィが少しムッ、としてミカを睨む。


 そんなやり取りをしつつ店を探すこと数分。ルルのおすすめ店を見つける。大きさ自体は小さめのお店だ。


「『タブンネ』確か、味がそこそこで量の多い店だったな 」


「・・・ああ、値段の割にお腹が膨れるって言ってた」


 リリィって記憶力いいよねー、と話しつつミカ達は入っていく。


「・・・何名だ?」


 サングラスをかけて、剃髪で、筋肉がムキムキの二メートル越え大男が、厳つい表情で問いかけてきた。


「三人だ」


 びびっていたミカをよそに、リリィが答える。さすが、魔族。ミカはちょっと尊敬した。


「・・・好きなとこに座れ」


 そう言って、店の男は厨房の方へと消える。


 店の中は先程の男以外誰もいなかった。昼飯の時間を大幅に過ぎているので少ないとは思っていたが、一人も客が居ないのには驚いた。愛想とは大切なんだ。ミカは初めてそう思った。


 そんなミカをほおっておいて二人はテーブル席に座ってメニューを開き食べるものを選び始める。といっても、ミカは読めないのでリリィ達に任せるしかないため問題はない。


 ミカも席についたところで、先程の男がメニューを聞きに来た。


 三人とも同じ、オークの黄金焼、というものを注文。男が去ったのを見て、ミカは魔法をイメージする。


 対象はシャーリィ。効果はシャーリィにだけ声を聞かせるように空気の振動を調整するもの。


 ミカは口を隠すようにして手を組み、確認のために声を出す。


「・・・リリィ」


「何だ?」


 シャーリィにしか聞こえないようにしたつもりの声にリリィが反応した。効果は発動しなかったようだ。


 ミカはため息を吐く。どういう基準で魔法が失敗するのかわからない。


「...まぁ、今はいいや」


「?」


 ミカの呟きが良く聞こえずリリィは首を傾げる。


「リリィ、シャーリィでもいいけど、僕達の会話を周りに聞こえないようにする事ってできる?」


 ミカの唐突な質問。


「できるぞ」


「妾も。主様と違って完璧とはいかないけど」


 二人は特に疑問を持たずに答える。


「じゃあリリィ、お願い」


 内緒話があるということだろう、ミカの声はリリィ達にギリギリ聞こえるような小さい音量のものだった。


「うむ。・・・できたぞ」


 重要な話とわかったのであろう。リリィ達も真剣な表情をしている。


 彼女が張った魔法は幻属性のもの。一定範囲内の生命体に自分達の声を聞こえてはいるが認識できなくさせるといった効果だ。


「・・・自分ではわかんないね。すみませーん!」


 効果が出てるかの判断がつかなかったため、ミカは厨房の方へと声をかける。


 返事はない。とりあえず、OKだと判断してミカは話を始める。


「さて、人殺しをしてしまった訳だけど、今回はちょっとミスだね」


 かなり軽い口調で話しているが内容がとても黒い。だから、ミカは盗聴対策をお願いしたのだ。明らかに悪役の会話である。


「どうして?あいつらは主様が魔族だって知ってたのよ?口封じは正解でしょ?」


 シャーリィも当たり前のようにそんなことを言う。


「そう。リリィの正体がバレていた。君の主様の魔法はそんなにバレやすいもの?」


 それだけで彼女は悟った。


「・・・主様に害をなそうとしてる者がいる。しかも、そいつは主様の正体を知っている魔族ね。そいつがあいつらに依頼をしていた」


「町中での殺人はこの際小さな問題かな?目撃者も、死体もないし。口封じは当然として、その前に拷問とかをするべきだった」


 この場ではリリィだけが引いていた。正しい感性なのだが、二人が平然と話すので自分が間違っているのかと思ってしまう。


 やはり、多数決は悪い文明だ。


「・・・二人に心当たりはある?」


「妾が意識を持ったのは一昨日よ?わからないわね」


 シャーリィは首を横に振って答える。


 リリィはしばらく考えていたが、彼女も無言で首を横に振る。


 静寂が場を包む。


 コトリ、と空気を変えるかのように料理が置かれる。


「・・・食え。落ち着く」


 男が笑顔で置いたものだ。かなり、気が利いている。惜しむらくは、笑顔が凶悪なことだろう。子供が見たら泣く類いのものだ。


 シャーリィが軽く手を上げて答える。この中で男にびびっているのはミカだけのようだ。


 置かれた料理の見た目は魚のフライそっくりで、上にはタルタルソースのようなものがかかっている。


「「「いただきます」」」


 サクッ、とフォークで一口。


「あ、豚カツだ」


 ミカは呟く。オークはやはり豚肉に近い味のようだ。


「美味しい」


 美味しいのだが、多い。四人前くらいあるのではないだろうか。


 二人もサクサクと食べている。


 リリィは二人前を食べた辺りからペースが落ち始める。


 ミカもそれより少し多いくらい食べた辺りからきつくなり、一旦フォークを置く。肉オンリーというのはご飯ありよりきつかった。


「とりあえず、難しい話は後にして、今後の予定だけど。町を回って必要なものの買い物でいい?」


 ミカの問いに二人は全く同じ動作で頷く。口にものを含みながら。


「二人は何かやっときたいことはある?」


 フルフル、と二人は首を横に振る。


 リリィは限界なのかフォークを置いた。


 シャーリィはそのままパクパクと肉を口にいれていく。


「・・・シャーリィ、無理してない?ペース早いんじゃ・・・え?」


 そこでミカは気づいた。彼女の舌が黒くなっている。


 ミカはしばし、固まって、さらに気づいた。


 彼女の喉が動いていない。


「シャーリィ!?」


「何?」


 彼女はきょとんとしながらミカを見る。何ともない。


「あれ?・・・あ」


 そういえばとミカは彼女が元はなんの魔法かを思い出した。


 ミカは自分の皿をシャーリィに差し出した。


「食べきれません。収納お願いします」


「妾も」


 彼女はリリィの影。アイテムボックス擬きだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 食事を終えたミカ達は、ラックマジックというマジックアイテムショップに訪れていた。ルルのおすすめ店である。


「・・・ふむ」


 そこで、ミカは思案顔で袋を見つめている。大きさは手のひらサイズで、なんのへんてつもない絹製の袋のように見える。


 リリィ達が言うには、これがこの世界の財布らしい。


 ミカは一旦視線を外し隣のものに目を向ける。


 そこには、手のひらサイズの絹製袋が置いてある。これも財布らしいが、性能が違うらしい。ミカの目には同じものにしか見えない。


 一つは既に売れたらしくあった財布は二つだけだった。


「・・・すみませーん!」


 ミカは自分では選べないと判断して、店主を呼ぶために大声をあげる。


「「何があった?」」


 が、反応したのは各々店内を見て回っていたリリィ達だけだった。


 後に、店主を呼ぶ際は謝ったりせずに普通に呼べと二人に言われた。あんな呼び方をする人は始めてみたとも。


「店主さんはいますかー?」


 改めてミカは呼び掛ける。


「どうされたかな?」


 奥の方からしゃがれた声が聞こえ、奥からおばあさんがゆっくりと歩いてきた。


「すみません。財布がほしいのですけれど、量が量でして、意見が欲しいのです」


「ほう?そんなに多いのか?」


「三百強です」


 ミカの言葉に少し驚いた様子を見せたが、すぐに片方の財布を手に取る。


「それだと、こちらになりますな。どちらも入るには入るが、こちらには検索機能が付いとります」


「検索機能?」


 突然出てきた機械的ワードにミカは首を傾げる。


「硬貨を十枚ほど借りても大丈夫かのう?」


「はい。銅貨でいいですか?」


()いよ」


 ミカは腰から銅貨を取り出し、おばあさんに渡す。


 それをおばあさんは財布に入れ、それを逆さまにした。


「ちょ!?・・・あれ?」


 硬貨は財布から落ちなかった。


 おばあさんは財布を上向きに戻して、呟く。


「銅貨三枚」


 再度財布を逆さまにする。


 ちゃりりん、と銅貨が三枚だけ落下してきた。


「おお~」


「このような機能じゃ。他の硬貨と同時に出すことも可能じゃぞ」


 おばあさんは驚いているミカに手を出すように指示する。


「銅貨」


 そう呟いてミカの両手の上で財布を逆さまにする。残りの銅貨全てが出てきた。


「買うかの?」


「容量はどのくらいですか?」


「確かなことは言えんが、千は行く事まで確認できておる」


「買います」


 そんな高性能な便利グッツ、現状では欲しいに決まってる。


「あいよ。二万三百リカじゃ」


 知らない言葉が出てきた、とミカは焦る。おそらくはお金の単位なのだろうがどれが一リカなのかわからない。


「ええっと~・・・」


「なんじゃ?計算は苦手か?銀貨二枚と銅貨三枚じゃ」


 もたついていたミカにおばあさんが助け船を出してくれる。


 ミカは受け取っていた銅貨三枚と腰から銀貨二枚を取り出して渡した。


 おばあさんは硬貨を受け取ったら何も言わずに奥の方に戻っていった。そして、覚えておく。銅貨一枚が百リカだと。


(そういえば、『いらっしゃいませ』もなかったっけ)


「ミカ、ミカ、アイテムバッグ見つけた!」


「何だって!!」


 ミカが日本の店との違いを思っていたら、リリィが肩掛けのバッグを持ってきた。


 ファンタジーを知っていたら誰でも欲しいと思うであろう、もっとも便利な道具の名前にミカは過剰な反応を見せる。


「こ、これが、何でも入る、便利グッツ」


「容量は決まっておるが・・・」


 震えた手で受け取ったミカをリリィは少々不安そうな顔で見る。予想外の反応だったようだ。


「買おう」


「え?確かに珍しいが・・・」


「買う」


「妾のかーーー」


「すみませーん。これもくださーい」


 衝動買いだ。リリィが何かを言っているが、知らないとばかりにミカはカウンターへと向かう。


 奥からまたおばあさんが出てくる。


「アイテムバッグか・・・。ミスリル貨三枚と銀貨五十枚・・・銅貨以下はまけてやろう。それでもかなり高価なものじゃ。払えるかのう?」


 気を効かせてくれたおばあさんが単位ではなく硬貨で言ってくれる。まけたのは財布も買ったからだろう。


 ミカは胸ポケットと腰からそれぞれ硬貨を取り出す。


「ふむ・・・。確かに」


 おばあさんはまた奥に戻っていった。防犯は大丈夫なのだろうか?


 ミカは受け取ったアイテムバッグに何かを入れてみたかったが、荷物を今リリィから出してもらうわけにはいかないのでしばらくお預けを食らう。


「・・・くっ。帰りたいけど、まだ買わなければならないものが」


 一人でミカは格闘していたが、諦めて次の店に向かうことにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 次に訪れたのは服屋だ。異世界の服では目立つだろうと考え、服を変えようと思ったのだが、


「今さらだけど、僕の服あまり目立ってなかったんだよね。疑問に思ってなかったけど」


 その理由が今、ミカの目の前にあった。


「似た服が有ったからなんだ」


 そこに掛けてあったのは日本に有っても不思議ではない見た目のジャージっぽい服だ。


 もちろん、素材が違うので手触りも違うし、少々動き難そうではある。


 だが、鎧なんかよりは当然動きやすいだろう。


 ここでミカは服を買う必要性が感じられなくなった。


 洗う際もリリィの魔法一発で、乾かす必要もない。予備も胴着がある。


 ミカはファッションを軽視している。ただお金を浪費するものだと考えているのだ。


「服はまたいずれでいいや」


「「ええー」」


 ミカの呟きを聞いて女の子二人が不満げに声をあげる。


 その手にはそれぞれ男物の服を手にしている。


「・・・女の子は女の子の格好をするのがいいと思うな」


 リリィの影の中、正確にはシャーリィの中にあるミカの荷物に服がほとんどないのがわかっている二人はミカに似合いそうな服を選んで楽しんでいたのだ。


 ミカはそれがわかっていながらもそんなことを言った。言外に自分のは要らないと言っている。


「これはミカ用よ」


「服はある程度持っておいた方が良いぞ」


 が、二人も譲らない。


 ミカは二人の持っている服を見る。


 シャーリィのは和服っぽい、甚平に近い紺色の服。ミカの髪は長いからだろうか、シュシュのようなものも持ってきている。リリィのは無難なものを選ぼうとしたのだろう、現在ミカが着ているジャージと比較的似ている薄緑色のジャージっぽい服を持ってきた。


「必要?」


「「必要」」


 ミカの問いに即答する二人。


 しばし、見つめ合う。


「・・・わかった」


 ミカは根負けして買うことにした。


 返事を聞いて二人がパアッと顔を綻ばせる。


 ミカはその表情を見て、思案顔を浮かべる。


 己に向けられた裏の無い笑顔を見るのは何年ぶりだったか思い出せなかった。


「あれ、似合いそうよね」


「これも」


「・・・え?あ。ちょっと!その二着だけでしょ!?」


 最終的に三人それぞれ、四着ずつ買うことになったのだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 場所は変わって武器屋。その前に防具店へとよったのだが変化はない。


 ミカの戦闘スタイルは柔。硬い防具を身に纏うとうまく戦うことが出来ないと判断したからだ。


「武器は刀がいいんだけど・・・」


 店内を見回ったミカが言う。この店にはそれらしきものはなかった。


 やはり、刀は異世界では珍しいものなのだろうか?


「刀って何です?」


 そんなことを考えているとひょこっと、外見が十歳程の男の子が現れた。


 その瞳は好奇心に染まっている。


 こういう相手はそれがある程度満たされないと満足しないと知っていたミカは諦めて話すことにする。


「僕の故郷にあった武器だよ。『折れず、曲がらず、良く斬れる』を信条にしている片側にしか刃のない片手剣、いや、曲刀の方が近いかな?・・・まぁ、そんな武器」


「へぇ・・・。『折れず、曲がらず、良く斬れる』ねぇ。言うのは簡単だけど、それって難しいよね?作り方知りたいなぁ」


「子供に刃物は危ないよ。大人に成ってから、ほどほどにね」


「誰が子供ですか」


 ミカの説明を楽しそうに聞いていた子供が『子供』という言葉に反応して睨んでくる。


(あ、この反応って)


 ミカの読んできた小説に似た場面があった。確かその場面は女の子だったが、


「もしかして、ドワーフの方ですか?」


「そうですよ」


 この世界の男ドワーフはずんぐりした髭の小さいオッサンではなく、ショタのようだ。


「これは、失礼しました」


「いえ、見たところ同い年位のようですから、そう畏まらなくても良いですよ」


 こういう場面では、実は少女は自分より年上だった、という場合が多かったので下手に出たミカだが、ドワーフの年齢は対して離れていないらしい。


「それにしても、そんなに良い剣を持っているのにまだ求めるんですか?」


「え?」


 ドワーフの男が指しているのは、ミカの腰にある剣。


「これ、脆いですよ?」


「何いってるんですか?これは、純ミスリル製の剣で・・・もしかして、魔力を流さずに使用してたんですか?」


 ミカはドワーフの問いにこくんと頷く。


 すると、ドワーフは表情を変えてミカから剣を引ったくった。


「ちょーーー」


「黙ってください」


 ドワーフは剣を抜き鋭い表情で刀身をくまなく見つめる。


「細かい傷がありますね。魔力の流し込みが少し雑だったのでしょう。はっきり言って、宝の持ち腐れです」


 そう言ってドワーフは剣を鞘にしまう。が、改めてミカを見たドワーフは首を傾げる。


「・・・ちょっと待ってください。手をよく見せてもらっていいですか?」


「え?あ、はぁ」


 状況に少々置いていかれてる感のあるミカは曖昧に頷きながら両手を前に出す。


「・・・この傷は貴方のせいでは無いようですね。前言を撤回します。すみませんでした」


 ペコリと頭を下げる。


「ですが、どうして脆いと思ったのですか?」


「え?えっと、大会で使用してーーー」


「ああ、なるほど。確かにあれならば、傷ついてももとに戻りますね。これは、拾い物なのではないですか?冒険者の死体にでも会いました?」


「こ、ここに来る途中に、はい」


 嘘ではない。


「なるほど、冒険者の初心者ですね。武器についての説明をするので奥に来てもらっていいですか?」


「そんなこともしてくれるんですか」


 正直に言って嬉しい話だ。


「他の店は知りませんが、僕達の武器が雑に扱われるのは我慢ならならないので。断るなら、武器を売りませんよ」


「願ってもないことです。是非に。連れはどうしたら?」


 リリィ達は各々で武器を見て回っていたので少し離れたところにいる。


「一緒に受けてもらいます」


 そう言われたのでミカは他二人もつれて奥に入っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 武器屋の奥は錬鉄場になっていた。


 その入り口近くにあった椅子に三人は座っている。向かいには先程のドワーフ用の席が一つ。


「ミカ、これは妾達も受けなければならんものなのか?」


「暑いわ...」


「知識はあって困るものじゃないよ。・・・はい、ごめんなさい。巻き込んで」


 ミカは彼女達の抗議の視線に小さくなる。


「さて、準備が、と。どうしたんですか?」


 様々な金属の棒を持ってきたドワーフが椅子に座りながら、ミカの態度に首を傾げる。


「いえ、お気になさらず」


「そうですか?では、始めますよ」


 ドワーフはまず、鉄の棒を手にした。


「まずはこれ、鉄です。鉄の特徴は頑丈で、加工がしやすいことです。あと、原価が安いです。大半は鉄の武器になります。

 ここからは鉄の剣を比較対象にしていきますので、平凡なものとでも思っててください」


 鉄の棒を丁寧に置き、今度は銅の棒を手にした。


「次は銅です。銅は鉄と比べて頑丈さがほんの少し弱いですが、魔力の通りが鉄より良いです。といっても、鉄がほとんど通さないんですけどね。

 武器としては鉄の方が優秀ですが、混ぜたり、塗装したりすることで鉄の頑丈さのままで魔力を通すことのできる剣ができます。これを銅の剣と言っています」


 説明に合わせて棒を持ったり置いたりしながらドワーフは説明をしてくれる。


「次は銀です。これで武器を作ると切れ味が凄い物ができるんですが、欠けたり、曲がったりなどしやすい上に劣化もしやすいというものになります。

 かなり丁寧に扱わなければなりません。

 鉄を混ぜれば少々切れ味が落ちますが、劣化しにくくなります。それでもただの鉄の剣より丁寧に扱わなければならないことに変わりはないのですけどね。

 また、銀には聖水などを使わなくても破魔の力というものが宿っているらしく、ヴァンパイアやレイスなどの一部の魔物や魔族に効果的だそうですよ。僕はそれらに対しての戦闘経験がないので伝聞なんですがね」


 ドワーフは銀を置いて、ミカを見つめる。


「さて、では次。ミカさんはよく聞いて決めてくださいね」


 そう注意をして、次の金属を持ち上げる。


 薄い水色をした奥の透けて見える金属。


「ミスリルです。ミカさん、話を聞いて使えないと思ったら是非売ってください。高値で買いますよ」


「使えると思ったら持ってて良いんですね」


 ドワーフの笑顔にミカも笑って返す。


 おや、その返しは予想外でした。と、それでもドワーフはニコニコとしたままだ。


「ええ。構いませんよ。

 では、ミスリルの説明を。ミスリルはどの金属よりも脆いです。簡単に砕けてしまいます。

 ですが、それを補ってあまりある特徴があるんです。

 それが、魔力の通りが高く、込めた魔力に応じて、強く変化することです。もちろん、込めた魔力に応じて頑丈にもなります。

 更に、相手の魔法を斬ると、その魔力を少し吸収して、威力を低減させることが可能です。

 他の金属に混ぜたり、塗装したりすることで、その金属の魔力の通りを良くすることもできます。

 ただ、このミスリルは使用者を選びます。魔力の質、量、共に優れていなければ扱いきることは難しいんです。

 そして、高い。値段が、原価が高いんです。魔力の通りが良いものは色々な物に使えますからね。なのになかなかとれないんですよ」


 だから、ミスリルは欲しいんです。と言ってミカの剣を見てくる。


「魔力を今通してみていいですか?」


「あ、ちょっと困ります。高いものがあるので。後でお願いします。僕にも見せてくださいよ」


 言いつつドワーフは最後の金属を手に取る。キラキラと光を放つ金属。


「で、有名な金属である金です。ぶっちゃけ高いだけです。貴族様の道楽用ですね。


 後は、ここにない最もレアな金属、金剛と言うものがあります。これは、魔力の通り以外が全ての金属に勝る現状最も優れている金属です。魔力の通りもミスリル以外に勝っています」


 ドワーフはそう言って、パンと手を叩く。


「では、店の裏で剣に魔力を通してみましょう」


 後半説明が雑になったのは、これのためのようだ。


 彼に引っ張られるようにして錬鉄場を出ていくことになった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「じゃあ、僕が採点しますので、お願いします」


「あれ?そんな話でしたっけ?」


 武器屋の裏はボロボロの剣やら、鎧やらが散乱した中庭のような場所だ。これらは後で、別のところに持っていって使える部分を再利用するらしい。


 何故か採点されることになっているミカは腰から剣を抜く。


「では、いきます」


 魔力を剣に流すのもどうせイメージだろう。そう思ってミカは集中する。魔力を手から更に先へと伸ばしていくイメージだ。


 少しして、剣が薄く、水色の光を発し始めた。


「なっ!」


「「...キレイ」」


 ドワーフが驚いたり、女の子達が喜んだりしていたが、この作業が結構大変なようでミカは気づかない。


「・・・ふぅ」


 反応が出たのに満足したミカはイメージを止めて力を抜く。


「どうしたんです?」


 そこでようやく、ミカは周りの反応に気づいた。


「い、いや、今のは・・・。すみません、これは受け取れないですね」


「え?嘘。これ、不良品?」


「いえ!違います!」


 さっきまで欲しいといっていたドワーフが受け取れないと言ったのでミカは不安になって聞いたが、ドワーフはとんでもないとばかりに首をブンブンと横に振る。


「今のは、相性がとても良い証だそうです。僕も始めてみました」


「相性が良い人って珍しいんですね」


「そもそも、純ミスリルの剣なんて持ってる人がほとんどいませんよ」


 ミカは剣を鞘にしまう。


 それをしばらくじっと見ていたドワーフは手を出してきた。


「ギウル。僕の名前です。良ければ名前を聞いてい良いですか?」


「ミカです。よろしくお願いします」


 ミカは笑顔でその手を握る。


「こちらこそ。メンテには是非うちに来て下さい」


 二人は女の子そっちのけでそんな話をしていたのだった。


長い長い買い物回でした。


来週は閑話Ⅲです。

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